自由の名のもとに犯される犯罪

2004年10月14日
ディック・チェイニーのエルサルバドル
マーク・エングラー
ZNet原文


10月5日(火)のチェイニー=エドワーズの論争でチェイニー副大統領が多くの歪曲を行なったことを、我々は知っている。けれども、ディック・チェイニーが1980年代のエルサルバドル内戦を無茶苦茶にねじ曲げたことについては、あまり多くの注目が注がれなかった。ラテンアメリカ問題を調べている人々は、チェイニー副大統領が、エルサルバドル内戦を、現在のアフガニスタンの困難に類するものと述べたとき、ショックを受けた。

「20年前、エルサルバドルが同様の状況にあった」とチェイニーは言う。「ゲリラが国の約3分の1を支配し、7万5000人が死んだ。そして自由選挙を行なった。議会を代表して私は選挙監視員としてそこにいた・・・・・・テロリストたちが投票所にやってきて発砲したが、彼らがいなくなるとすぐさま、有権者は戻ってきて並び、投票権の否定を受け入れなどはしなかった。そして今日、エルサルバドルは、自由選挙のおかげで、はるかによい状況にある・・・・・・これはアフガニスタンにもあてはまる。そしてイラクにも」。

7万5000人の人々は、ゲリラにより殺されたのではなく、チェイニーが支持していたエルサルバドル政府とその手先の準軍組織「死の部隊」によって殺された、という極めて重要な関連事実を、副大統領は省略した。ついで重要な関連事実として、チェイニーが言及している1984年の選挙は、広範にイカサマ選挙と認められていた。純粋な反対派候補の多くが殺されており、また、米国は結果を操作するために1000万ドルをつぎ込んでいたのである。これが「民主主義輸出」のモデルであると言うのは、ネオコンたちが我々の前に何を準備しているかについて、極めて多くを語っている。

実際のところ、エルサルバドルが今日はるかによい状況にあるとすると、それは政府に反対する運動が続いているからである。1992年の和平協定の一環として設置された国連真実委員会は、レーガン屋たちがその頃強固に否定し、今日忘れ去りたがっている事実を明確にしている。同委員会は、人権侵害の約5%を行ったのはFMLNゲリラであり、一方90%はエルサルバドル軍が行なったとしている。残りの5%については、実行者が不明である。

ニュヨーク・タイムズ紙は、この報告が公開された際、次のように述べている:

「国連真実委員会は、レーガン政権が曖昧にしようとした真実をはっきりと示した----自由の名のもとで、エルサルバドルの軍により恐ろしい犯罪が犯されたことである。・・・・・・同委員会の報告は、1989年に6人のイエズス会士たちを殺すよう命じたのが元エルサルバドル国防相であったことを確認した。同報告はまた、4人の米国人修道女殺害を隠蔽しようとした者の一人は別の国防相だったとも述べている。右派の政治家でジェッシ・ヘルムス上院議員の英雄でもあるロベルト・ダビッソンがロメロ大司教暗殺を命じたことも明らかにしている」。

ニューヨーク・タイムズ紙のコラムニスト、アンソニー・ルイスは次のように結論する:「米国は、殺人者たちが支配するエルサルバドル政府を支持するために60億ドルをつぎ込んだ。我々米国がこれら殺人者に武器を与え、兵士たちを訓練し、その犯罪を隠蔽したのである」。この報告書は、ここで見ることができる。

ジョン・ケリーはイラク侵略に共謀しているが、1980年代には、米国がエルサルバドルとニカラグアの人権侵害のスポンサーとなっていたことに対して重要な立場を示している。右派がこれらの立場に怒りを今も示していることは興味深い。というのも、こうした右派は、中米の歴史から悪しき教訓を引き出している点で、チェイニーをそのままなぞっているからである。

顕著な一例:ヒュー・ヒューウィットによる、最近のウィークリー・スタンダード誌上での、残忍で不法なコントラ戦争擁護論。ヒューイットは、ケリー上院議員とハーケン上院議員は、1985年にニカラグアを訪問したことで、ヒューイットが「アメリカの敵」と呼ぶサンディニスタのダニエル・オルテガの「歓心を買おう」としたと言う。ヒューイットがこの告発の証拠として引用した当時のケリーの発言は、当時そして現在権力の座についている者たちの中米観よりも遙かに明晰である:

「トンキン湾決議を振り返るならば」、「カンボジアにいた兵士たち、遺体を数えた歴史、ベトナムの歴史そのものの誤解釈を振り返るならば、そして今、中米の闘争を我々がどのように解釈しているかを見てCIAの関与を検討し、港に米国が機雷を設置したこと、コントラに資金を提供したことを見るならば、我々の歴史においてカンボジア・ベトナムに関与した時期と現在[中米に介入している時期]との間には、直接の避けがたい並行関係が認められる」とケリーは言っているのである。

ネオコンが言葉の意味をねじ曲げ続けたとしても、並行関係は続いている。チェイニーが米国の中米介入の記録を例としてあげたことから、我々は、今後も長く「自由の名のもとの犯罪」を我々が犯し続けることが確実にわかる。


2004年10月7日、米軍によりファルージャが空襲を受けました。結婚式を挙げていた家が破壊され、新婦は負傷、新郎は殺されました。全部で11人が殺され、17人が負傷。

米軍は、「信頼できる情報筋が,ザルカウィのリーダーたちが攻撃のあった時間に隠れ家で会っていることは確実だとしていた」と言い張り、また、自分たちの「精密な攻撃」は、ヨルダン人ミリタントのアブ・ムサブ・アル=ザルカウィの仲間たちによって使用されている隠れ家を標的とした,と述べています。

そもそも、米国は、「イラクに民主主義をもたらす」とか「大量破壊兵器の危険から世界を救う」(しかしその「世界」から、イラクの人々は確実に除外されている。世界中のほとんどの人も、また)、「自由をもたらす」と称して、イラクを侵略し不法な占領を続けてきた。

エリック・ホッファーは、次のように言っています。
悪事を正当化しようとする試みは悪事自体よりも、おそらく致命的な害悪をもたらす。過去の罪の正当化は将来の罪を植えつけ、培養することになるからである。実際、罪の積み重ねは正当化の手段になりうる。それが非道な行為ではなく、普通の行為であると自他ともに納得させるために、われわれは何度もそれをくり返す。
E・ホッファー 『魂の錬金術』 作品社
これに対して、ブッシュの言葉:
われわれは平和国家である。〔・・・・・・〕 これは、世界でもっとも自由な国、憎悪を認めず、暴力を認めず、殺人を認めず、悪を認めぬ価値観を拠り所とする国アメリカ合州国にたいする天の命令なのである。そして、われわれは飽くことを知らない。
ジョージ・W・ブッシュ アフガニスタン空爆宣言の際
A・ロイ 『誇りと抵抗』 集英社新書より再引用  
今、イラクで米軍が犯し続け、日本が加担している犯罪に麻痺し、どんなにイラクの人たちが殺されてもおかまいなしに「復興支援」「選挙に拠出金」などとイラク侵略と不法占領を覆い隠し正当化しようとする「政策」をこのまま何一つ言葉をあげずに認めていったら、私たち一人一人が、侵略や殺人が「普通の行為であると自他ともに納得させるために」、「何度もそれをくり返す」歯車の一つになってしまうでしょう。

別途、米軍によるファルージャでの大量殺害に対する抗議の手紙文例を作ってみました。少し時間がたっていますが、継続的にご協力いただければと思います。

最後に、二つ引用を:
後世に残るこの世界最大の悲劇は、悪しき人の暴言や暴力ではなく、善意の人の沈黙と無関心だ
マーチン・ルーサー・キング牧師

拷問[そして侵略と殺害]は、「内政問題だ」とか一過的なものだとしてそれを無視しようとする人々も、非人間化する。そのような無関心は人間の共感や思いやりの泉を枯渇させ、人類家族の全員に関する世界コミュニティとの社会契約を破ることになる。文明と自由は、無関心な態度をあたりまえとする人々により育まれたのではないし、そうした人々によって維持されることもない。
フレッド・モリス牧師

益岡賢 2004年10月14日 

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