マジャの話：ガザの新たな「殉教者」
2008年11月7/9日
サマー・サバウィ
CounterPunch原文
マジャの表情を見ると、そこに現れている計りしれない苦痛に、圧倒される。この一カ月というもの、マジャは耐えきれないほどそわそわしていた。ガザに住む父の病気が重く、閉ざされたガザに行くことを許されるまでに父が死ぬかもしれないと思っていたのである。
マジャは私に、父の死そのものよりも、父の人生と尊厳が無意味なものになったと知ったことが何よりも苦しいと語った。ガザの悲惨な状態に目を向けない世界にとって、パレスチナの人々の苦しみに対してますます冷酷になったイスラエル人にとって、さらにガザの人々の看守としてふるまいつづけるエジプトにとってだけでなく、パレスチナの指導者たちにとっても、無意味になったことが、苦しいと。父の病をファタハが利用し、父の死をハマスが利用した。
マジャの父には腎臓透析が必要だった。一カ月にわたって痛みはひどかった。イスラエルによるガザ包囲のためにガザにあるシファ病院の医薬品と機材の予備部品の不足は危機的なレベルに達し、その結果、マジャの父の苦しみも長引くこととなった。病と死の匂いがするシファ病院の廊下を彷徨うマジャの父をはじめとする多くの患者にとってそれでも十分ではないとでも言うかのように、ファタハは保健医療部門のストライキを呼びかけた。別の言葉で言うと、ファタハは医療関係職員に対し、仕事に行かずに家にいないと給与を支払わないと伝えたのである。
教員と医療関係者を代表しているファタハの労働組合指導者たちが今年末までストをすることに決めたのは、包囲されたガザ地区でハマスの支持基盤を弱体化させるためだった。けれども、ファタハの決定は各国のオブザーバーたちの多くから批判された。ガザの患者や学童に重大な悪影響を与える一方、ハマスを弱体化させるという目的は達成できないからである。
たくさんの医師や教師がファタハの呼びかけを聞き入れ、職場に行かなかった。ガザ包囲のために基本食料は不足し、市場で手に入るものはすべて一番高い値段を付けた人に売られる。だから、ガザで正気でいる人ならば誰も給料を失う危険を犯したがらない。
そうした中で、苦痛のため歩くこともままならないマジャの父は、不幸なことに、シファ病院で医者を探し、機能している透析器を求め、電力が復旧するのを待ち、医薬品が届けられるのを待って、一カ月ものあいだ、あちらこちらへと移動を強いられていた。エレベーターが止まっているため、息子達が彼を必死である階から別の階へと運びつづけた。マジャは、こうした状態がどれだけ彼の尊厳を傷つけたかを思い、涙にくれた。
マジャの父の死は、何年もの間、マジャと家族を分断してきたイスラエルによるガザ包囲の残酷さを知らしめる一例である。それにより、ガザに暮らす、マジャの愛する人々が常に生命の脅威の中で暮らしていることを、彼女は思い知らされた。それはまた、もっとも悲惨な人道的状況にあるときでさえ、彼女がガザに行くことは阻止され、また、家族がガザを出ることも禁じられるような状況を思い知らせるものでもあった。それはまた、世界で最も人工過密な地帯に閉じ込められた１５０万人のパレスチナ人に対する全面的な破壊と集団的懲罰を阻止するために私たちの誰一人介入していないことを思い起こさせる出来事だった。
マジャは泣き、途切れ途切れに、次のように語った。「世界のどこに、１００万人以上の人がろくに食べ物も薬もないまま閉じ込められ、訪問権も剥奪されている地域があるでしょう？」
マジャを抱き締めながら、私はガザに暮らす私自身の家族について思いを馳せ、子供たちがいつか祖父母に会うことのできる日が来るのだろうかと考えた。これほどまでに残虐な扱いを受けるなんて、いったい私の愛する祖父母たちが何をしたのだろう、長男そして孫たちと会う喜びさえ奪われるなんて、と。
ガザに病に犯された父や死の床にある母を持つ多くの家族が、最近では、危険を犯して、怪しいギャングや闇市場の商人たちに多額の金を払い、エジプトからガザに危険な地下経路で入ろうとしている。愛する家族に再会するためだけに。他の家族は、私自身の家族のように、毎日、包囲封鎖が終わるのではないかと期待を持って、毎日ニュースをチェックしている。
マジャの父が死んだとき、ハマスの政府関係者が彼にした最大のことは、「包囲封鎖で殉教した人々の墓地」と名づけたガザの新たな墓地に彼を埋葬しようと提案したことだった。マジャがそのことを私に語ったとき、彼女は苦々しい笑いを浮かべた。これまで見たことのないようなもので、その苦さは私に伝染し、血管を駆けめぐった。彼女の言いたいことがそれでわかった。
包囲封鎖により、他の父が、子供が、母が、愛する人が殺されたと聞いても、慰めにはならない。放置されたことによる死、栄養失調による死、貧困による死、医薬品の不足による死、どんな死であれ、死は死である。死者を「殉教者」と名づけても、残された人々にとって慰めにはならない。あるアラブ人の詩人は次のように語っている。「死が我々にうんざりするまで、我々は死ぬ」。死がガザにあきあきするのはいつだろうか。
サマー・サバウィはパレスチナ系カナダ人の著述家。連絡先は、s a m a h s a b a w i atmark h o t m a i l . c o m
本サイトで既に紹介しましたが、『占領ノート 一ユダヤ人が見たパレスチナの生活』（エリック・アザン著、益岡賢訳・現代企画室・2008年10月刊）を出版しました。
■ 『ルート１８１』上映会
パレスチナ人とイスラエル人監督が旅するドキュメンタリー
2008年11月29日（土）午後1：30開始 午後8：30終了
13:30 上映開始（途中2回休憩あり）
18:50 上映終了
18:50 ～ 19:10 大休憩（20 分、ミントティの用意があります）
19:10 ～ 20:10 講演 岡真理さん
「ルート１８１ 国民の歴史に亀裂を穿つ旅」
20:10 ～ 20:30 質問と応答
会場 町田市民フォーラム3階ホール
（小田急線町田駅から徒歩8分、JR町田駅から徒歩5分）
参加費 一般 当日1200 円・前売 1000 円
■ みんなで考えよう！全国学力テストの公開と大阪版「夜スペ」
橋下「教育改革」は、本当に子どものためになるのか？
日時 １１月２３日（日）１４：００〜１７：００
場所 エルおおさか ７０９号室
京阪・地下鉄谷町線「天満橋駅」下車
講演 中嶋哲彦さん（名古屋大学大学院教員）
「全国学力テストは学校をどう変えようとしているか」（仮題）
杉並の現場から報告 長谷川 和男さん（杉並区教職員組合元委員長）
「藤原和博氏の和田中改革は何だったのか」
質疑討論
主催 「日の丸・君が代による人権侵害」市民オンブズパーソン
■ 「あきらめない―続・君が代不起立」上映会
１１月１５日（土）東京・八王子で、１１月２４日（休）東京・町田で、１１月２６日（水）東京・なかのZERO小ホールで、１１月３０日（日）渋谷アップリンクで、０９年１月４日（日）千葉・メディアエッグで上映会があります。詳しくは、「あきらめない−続・君が代不起立」上映スケジュールをご覧ください。
■ “働く女性のゲリラ的” 上映＋トーク
日時 11月14日（金）19：30～21：30（開場19：15）
会場 PA/F SPACE（パフスペース）
東京都新宿区馬場下町18フェニックスビル3階
地下鉄東西線「早稲田駅」出口2または3bから徒歩2分
地図
参加費 700円 （当日のみ・事前申込不要）
上映作品
『立ち上がるマイノリティと女性たち～アメリカの新しい労働運動』
（青野恵美子 / 2003年 / 17分 / 日本語 / 字幕なし / アメリカ）
『市民的不服従～ロサンゼルスホテル労働者の闘い』
（青野恵美子 / 2004年 / 13分 / 日本語 / 字幕なし / アメリカ）
『未来を開く女たち～パート．派遣の現場から』
（青野恵美子 / 2003年 / 23分 / 日本語 / 字幕なし / 日本）
主催・お問合せ
PA/F SPACE（www.pafspace.com）
tel&fax：03-5991-6117（浜田）、hmaa2806 at yahoo.co.jp
連連影展FAV（www.renren-fav.org）
fav at renren-fav.org
■ 「湯浅誠さんと考える格差・貧困問題」
講師：湯浅誠さん
（NPO法人自立生活サポートセンターもやい事務局長）
日時：2008年12月1日（月曜日）18：30－20：30
会場：東京都港区立港勤労福祉会館 第一洋室
〒108-0014 東京都港区芝5-18-2
交通：JR田町駅三田口下車徒歩5分
第一京浜国道沿い（芝5丁目交差点かど）
または都営地下鉄三田駅下車、
Ａ7出口でてすぐ左隣
地図 http://www.3710pic.com/mkf/web/map.html
TEL： 03-3455-6381(代)
参加費：700円
お問い合わせ先：Keiss1979@aol.com
■ さらば戦争！映画祭 ２００８
日時：１１月１５日（土）１０時〜２０時（開場９：４０）
場所：
銀座線「虎ノ門」駅３番出口 徒歩５分
「霞ヶ関」駅A１３番出口徒歩１３分
（〒105-0001 東京都港区虎ノ門2-9-14 電話 03-3502-5499）
プログラム：
１０：０５ 『靖国YASUKUNI』
１２：１０ 張 雲暉プロデューサー トーク
１２：３０ 休憩（６０分）～ハイナンNET短編映像(３０分)～
１３：３０ 『時代を撃て・多喜二』
１５：００ 休憩（２０分）
１５：２０ 『ヒロシマナガサキ』
１６：５０ 西本治子さん(被爆者)トーク
１７：１０ 休憩（２０分）
１７：３０ 『早咲きの花』
１９：１５ 菅原浩志監督 トーク
■ ミサイル実験反対 日本＝ハワイ連盟署名
海上自衛隊イージス艦ちょうかいによるハワイでのスタンダード・ミサイル（ＳＭ３）実射訓練に反対する声明への賛同署名をお願いします。 署名期間は、１１月７日から１１月１２日まで。
英語ページはＰetition campaign against SM3 intercepting test on Chokai offshore Hawai'iへ。
■ コロンビアで先住民族運動への弾圧
開発と権利のための行動センターをご覧ください。
■ パネルディスカッション
「外国人登録証はなくなるの！？ 新たな在留管理制度を考える」
日時：11月15日（土）1時半開場、2時開始（４時半頃まで）
場所：東京芸術劇場 大会議室、各線池袋西口より徒歩４分
パネラー：
金昌宣 （朝鮮商工新聞編集長）
金哲敏 （弁護士）
李春熙 （弁護士）
島本篤エルネスト
（神奈川県在日外国人教育連絡協議会事務局長、高校教員）
司会：金舜植（弁護士）
主催：在日本朝鮮人人権協会
〒110-0016東京都台東区台東3-41-10-3F
電話03-3837-2820
Eメール jinken94@yahoo.co.jp
■ 不当逮捕
１０月２６日、麻生太郎首相邸を見にいこうとしただけで、３名が不当に逮捕されました。ほとんどのマスコミが、最初、公安の発表を垂れ流しました。それについての情報が麻生でてこい！！リアリティツアー救援会ブログにあります。逮捕の瞬間の映像もあり、当初のマスコミ報道（「警官に暴力を振るって」「再三の警告を無視し」など）が事実無根であることがわかります。
■ 関西クィア映画祭 秋の上映会
BOTH～インターセックスとバイセクシュアル
日時：2008年11月22日(土) 13時開場
場所：京都大学 京都大学・文学部新館・第1講義室（1階）
詳細は、関西クィア映画祭 秋の上映会 BOTH インターセックスとバイセクシュアルＨＰをご覧ください。
■ 最高裁裁判官国民審査で、竹内行夫にバッテン（×）を！
説明チラシ（ｐｄｆ）。トップページは弁護士 毛利正道のページ。
■ 日米合同軍事演習反対 １１．２２あいば野集会
日時：2008年１１月２２日(土) 受付開始13:00～
13:00～ 申し入れ
13:45～14:15 ＜ミニコンサート＞
14:15～15:15 ＜反対集会＞
15:15～16:15 決議、デモ
場 所：今津町橘公園
（JR湖西線今津駅下車徒歩三分、高島市役所別館横）
主 催：フォーラム平和関西ブロック
（TEL:077-522-4644 滋賀県民運動センター）
あいば野に平和を！近畿ネットワーク
（TEL&FAX:077-574-0204 憲法を生かす会滋賀）