自治労音協通信

 4面  NO44号/2001.5.22発行

わがまま音楽紀行(連載第13回)★個人旅行って大変やの巻

大阪市職労 宮本雄一郎

タイ庶民の足 テンソウという乗合バス

 風が吹く日、私のマンションのベランダでは鯉のぼりがバタバタと泳いでいます。
4月の長野県松代での総会とコンサートには一日だけですが参加させていただきました。子守のために次の日には大阪に帰りました。いつもわがままでごめんなさい。中央線で長野に向かう途中、雪をかぶった雄大な穂高連峰が列車の窓いっぱいに広がります。野には梨や桃の木が鮮やかな白やピンクの花を咲かせています。信州の春はこれからです。そして、家の屋根には鯉のぼりが風を受けて泳いでいます。雪山を背景に泳ぐ色とりどりの鯉のぼり、というのを私はこのとき初めて見ました。音協会員のみなさんの町の春はどうですか。

 2 タイ編その2

個人旅行は大変やねんさて、前号の「わがまま音楽紀行」では、延々2年間のわがまま放浪の果てにタイに戻り、バンコクで水平に空に浮かぶ月を見上げてウーンとうなったところまででした。ところで、私と友人が二人でタイに到着したのはクリスマスの当日でした。ドン・ムアン空港で降りてまず両替を済ませ、バンコク市内に出るためにバスに乗ります。
空港から市内へのバスは百バーツです。(1バーツは 2.7円) 世界一物価の高い日本に比べればタイの物価は安いですが、百バーツといえばタイではまともな食事が一回できるくらいの値打ちがあります。いつものことですが、個人旅行では現地に着いてから宿を探し、次の行き先への切符を確保します。「地球の歩き方」を片手に、バックパックを背中に背負ってホテルを探して歩きます。今回はバンコクで最大のアンバサダーというホテルをめざします。このホテルは巨大なので人に聞けばすぐにわかります。
少し歩くと高層のホテルが見えてきました。もうすぐです。でも、直接ホテルには行きません。なぜか? ホテルに直接行くと正規の料金で高いからです。別の旅行社で予約をしてクーポンをもらい、それからホテルに行くと安いのです。だから、「地球の歩き方」に乗っている旅行社を探して、炎天下にバックパックを背負って歩きます。この旅行社を探す、というのがやってみると大変なのです。気温は三十一度です。汗が吹き出ます。
とにかく、我々は目的の旅行社にたどりつきました。ビルの一室、8畳くらいの部屋をオフィスにしている小さな会社です。「そのホテルなら空室がありますよ。ツインで千バーツ(約二千七百円)です」。これは格安です。炎天下汗まみれになって旅行社を探した苦労が報われたのです。狭いオフィスの中で我々二人は「やったなあ」と顔を見合わせ、しばし個人旅行者の勝利の感慨にひたります。
ホテルが確保できたら次は飛行機の予約です。我々は勝利の勢いに乗って「カンボジアのアンコールワットへ行きたいんですが」と次の注文を出します。「いつからですか」「今からです」{
それを聞いて、旅行社の人はあきれた、という顔で我々を眺めます。甘かったのです。クリスマスから正月にかけては現地の人も大移動する時期なのです。今日着いたばかりの田舎者がスイスイと旅行できるほどタイの年末は甘くないのです。
我々はとりあえずホテルに向かいます。格安で一流ホテルに泊まれた勝利の感慨は一瞬で消え、足取りが重くなります。しかし、考えても仕方がありません。なるようになるのです。「明日があるさ」と気分を奮い立たせて、早速タイ風すきやき鍋をつつきながら、酔った頭で次の目的地に向かう技をあれこれと検討します。

 3 音楽は言葉を選ぶ?

ここでまたいつものように話が飛びます。まず、質問です。日本語とロック音楽は相性が悪いのでしょうか。あるいはロックは英語と相性がいいのでしょうか。これは長い間の私の疑問です。みなさんはどう思われますか。例えば、ロシア語や中国語、スペイン語やポルトガル語はどうでしょう。考えてみると、英語以外の西欧語のロックというのは私自身あまり聞いたことがありませんが、英語とロックの関係は、おそらく言葉の相性そのものよりも英語の普及度が強く影響しているのだと考えます。
ポルトガル語といえば私は最近ボサノバをよく聞いています。「ナラ・レオン」というブラジルの女性歌手のアルバムが特に気にいっています。歌を文章で説明するのは野暮なのですが、簡単にその特徴をあげると、地味で淡々としたボーカル、アンプラグドの素朴な演
奏、歌が特にうまいわけでもない、ということになるでしょう。
ただ正確な歌と演奏を届けるだけで、聴く人が何と想うかは別問題、というような淡々とした冷静な音楽です。それなのに、ボサノバのリズムというのは肉体的な影響力を持って迫ってきます。「Over The Rainbow」をポルトガル語で歌うナラ・レオンの声は切なく響きます。
ところで、ポルトガル語という言葉は日本語と同じく母音が豊富で、ボサノバのリズムにぴったり乗っています。それならば、日本語もボサノバと合うのでしょうか。ロック音楽は肉体的、現場的、即興的な音楽です。理性的なクラシック音楽とは反対に、そのリズムや歌は情緒的に訴えます。ロックの訴えは聴く人に影響を与えずにはいません。そして、その影響力は何語であれ同じです。ロックの言葉が持つ影響力はどこから湧いてくるのでしょうか。
           (続く)
ソンテウは窓がありません。乗り心地はまあまあです。


<ミニコンサートのお知らせ>

宮本雄一郎With山本隆俊ライブ 『ロックの起承転結』
とき6月16日(土)午後7時
ところ飲食店「風まかせ・人まかせ」
JR環状線玉造駅徒歩7分
大阪市天王寺区玉造本町1-2-1仙野ビル101
電話06-6768-1340
チャージ 500円


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