原子力汚染 vs 超々クリーン・マグマ発電(その4)

「新エネルギー」の御役所定義と助成金の有無

1999.10.4.mail再録。

 これまで3回、「臨界事故vs超々クリーン高温岩体発電」の題でmail送信し、ホームページに所収してきたシリ-ズに関して、編集部一同、羽織袴姿で平伏し、編集長より一言、「看板文字の一部塗り替え」の口上を申し上げます。

「臨界事故」の部分を、今回からの題名変更のみならず、ホームページ所収分にも溯って「原子力汚染」に変更します。

 勘の良い方は、きっと、すぐに下世話に勘ぐるでしょうが、確かに、最近の事件の余波にも鑑み、ホームペーシの検索でキーワードを「原子力」にすることの有利さをも、考慮に入れてはおります。しかし、それよりも重要なのは「大義」です。ウラン採掘現場における被曝、湾岸戦争で廃棄物の劣化ウランを弾丸や戦車の装甲に使った結果の悲惨さ、その使用の無反省、またもや最近のユーゴ戦争における使用などの、アメリカ帝国主義の戦争犯罪の告発をも加えて、さらに幅広い国際的な観点から、東海村臨界事件の処理を位置付けたいと願うからです。

 さて、前回、日経1999.10.3.記事「スクープ/東海村臨界事故で注目高まるが……新エネルギーに意外な弱点」への疑問を、若干記しましたが、この件に関する詳細の議論は、次回に、この際、多少のお目目被曝を我慢し、記事全文をスキャナー読み込み、ミスプリ校正、むにゃむにゃの後、改めて展開します。そうでないと、一方的になってしまうでしょう。

 とりあえず簡単に報告すると、本日夕刻、電話で日経の「スクープ取材班」の記者(ブンヤの多数派のハッタリ型男性ではなくて、優しい声で素直な女性。良かった!)と話すことができました。彼女は「高温岩体発電」という言葉自体を知りませんでした。エッと驚かないで下さい。恐らく体育会系デスクの命令の下、急遽、取材に走り回った彼女らの責任にするのには、いささか気の毒な事情があるのです。

 東海村こと、その草分けの原子力研究所の東海村研究所という舌を噛みそうなジョジョと、今度の事件の発注元の核燃料サイクル機構の2つの特殊法人は、科学技術庁の管轄下にあります。しかし、電力の監督官庁は通産省です。通産省に電話(03-3501-1511)して、「新エネルギー」というと、「新エネルギー対策課」につながります。ところが、何と、出た方は、「高温岩体発電」という言葉そのものを知らないのです。「高温岩体」は、この御役所では、「新エネルギー」の分類に入っていないのです。

 では、どこかと聞くと、しばらく周囲に聞いて回ってから、公益事業電力技術課の所管であると教えてくれます。そこへ電話を回してもらうと、出た方は、やはり、何と、「高温岩体発電」という言葉そのものを知らないのです。仕方なしに、昔の電報の注文のように、「温度が高い岩の体力の体」と教えると、やっと分かって、やはり、しばらく周囲に聞いて回ってから、「その担当の某と某は現在電話中ですから、あとでまた電話して下さい」と言われます。

 ああ、また、あの日米経済摩擦の主のNTTに、余計な高額の電話料金を、むしり取られる羽目に陥ってしまったのでした。ここで時間切れ、また明日の仕事にしました。

 上記日経記事で「新エネルギーの種類」と題された一覧表は「新エネルギー財団まとめ」となっているのですが、この「新エネルギー財団」(NEF)は、財界が助成金目当てに作ったのもので、記事の一部を借用すると、1997年の「新エネルギー特別措置法による国の助成制度」の受け皿になっています。しかし、「高温岩体発電」は、この法律の対象にはなっていません

 ああ、ここでまた、「新エネルギー」の御役所定義が入り乱れるのですが、通産省の管轄下の特殊法人、技術開発を主任務とする「新エネルギー・産業技術総合開発機構」(NEDO)では、「高温岩体発電」が「新エネルギー」に分類されています。

 ネフだか、ネドだか知らねえが、鬼畜米英の敵性言語の頭文字で呼び合うのは、いい加減にしろや、とばかりに、元軍国少年Aは、ますます機嫌が悪くなるのですが、とりあえず、ネドちゃん作成、本文164頁の小綺麗パンフレットから、以下、「高温岩体発電」に関する部分を紹介します。


『新エネルギー・産業技術総合開発機構の概要』

1989-1999
新エネルギー・産業技術総合開発機構
NEDO(New Energy and Technology Developement Organization)
[p.21-22]

高温岩体発電技術開発

昭和60[1985]~平成14年[2002]度、10年[1998]度事業費1.8億円

 高温であるが十分に天然の流体(熱水、蒸気)が含まれない岩盤を高温岩体(HDR:Hot Dry Rock)といい、火山国である日本には大量に賦存すると考えられています。高温岩体の持つ熱エネルギーを利用し発電するためには、まず地上から坑井を掘削し、高温の岩体に圧力を加えて人工的にき裂(フラクチャ)を造り、人工的な貯留層(き裂群)を造成します。次に地上から坑井(注入井)を使用し水を貯留層内を通過させ、岩体の熱エネルギーを奪った水を他の坑井(生産井)から蒸気・熱水として回収し、発電に利用します。

 NEDOは、昭和55-61年度の7年間にわたり、IEAとの実施協定に基づき、日・米・西独3国による共同研究を、米国ニューメキシコ州フェントンヒルにおいて行い、1ヵ月にわたり熱出力10MW級の循環抽熱試験に成功するなど、技術的経験・成果を蓄積しました。一方国内では昭和60[1985]年以来、山形県肘折において実験を行っています。

 平成3[1991]年度には、深度1,800m(温度約250℃)付近の浅部人工貯留層に対して、約3カ月の循環抽熱試験を行い、熱水・蒸気の安定回収に成功しました。また深度2,200m(温度270℃)付近の深部人口貯留層に対して、平成7[1995]年度は25日間の予備循環抽熱試験を、平成8[1996]年度には1ヵ月間の導通改善循環試験を行い、熱水・蒸気の安定回収に成功しました。

 平成10[1998]年度は、今後計画している2年間の長期循環試験のために必要な地上設備の設計、製作、工事等を平成9[1997]年度に引き続いて、行っていく予定です。


 上記の「10年[1998]度事業費1.8億円」という金額が、いかに貧弱であるか

  ご自分の財布の中身と比べては駄目ですよ。たとえば、「新エネルギー財団」取り扱いの助成金、年間約300億円とか、原子力研究所の年間予算約1千億円とか、核燃料サイクル機構の年間予算約1千5百億円とか、科学技術庁の年間予算約1兆6千億円とか、あのバブル戦犯、大手銀行への公的資金投入、約30兆円とかと、比べてみて下さい。

 研究費としては、1年に1回のボーリング調査すらできない金額なのです。小銭!小銭!ケッ!

 なお、別途、地震誘発の恐れがないかとの質問も受けましたが、その心配はないようです。鉱山やトンネル掘削の発破や、地下核実験などと比較することも必要でしょう。これも詳しくは次回に。

以上で:4終り。:5に続く。


5) 財界主導の助成金「新エネルギー」は騙し絵か?
「原発に死を!」シリーズ一括リンク
原子力汚染vs超々クリーン・マグマ発電一括リンク
週刊『憎まれ愚痴』41号の目次

週刊『憎まれ愚痴』41号の目次