『亜空間通信』883号(2004/11/04) 阿修羅投稿を再録

ホロコースト自由議論求めた仏の日本研究者が大学停職処分の朝日新聞報道に決定的重要欠落部分

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『亜空間通信』883号(2004/11/04)
【ホロコースト自由議論求めた仏の日本研究者が大学停職処分の朝日新聞報道に決定的重要欠落部分】

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転送、転載、引用、訳出、大歓迎!

 以下の1)の朝日新聞には、その情報源に違いない2)のロイター配信によるイスラエルの有力紙、ハーレツ記事と比較すると、決定的に重要な欠落部分がある。

 論調のほとんども、ハーレツそっくりである。しかも、現地フランスの有力紙、3)のリベラシオンにはない「右翼政党」というレッテルがべったり貼られているのである。

 これは言葉による情報操作、心理戦争の典型である。本物の右翼、むしろ極右は、イスラエルの政権党、リクード党の方なのである。

 まず先に、欠落部分を方を英語で示すと、以下である。

Gollnisch, who studied law and political science at Kyoto University in Japan, holds a chair for Japanese language and civilization at the Lyon university named after Jean Moulin - the hero of the French Resistance murdered by the Nazis in 1943.

 停職処分の事件の主人公のゴルニッシュは、「日本の京都大学で法律と政治科学を学んだ」のであり、「1943にナチスに殺されたフランスのレジスタンスの英雄、ジャン・ムーランの名を頂くリヨン第3大学」で教えていたのである。

 彼は、拙著、『アウシュヴィッツの争点』と、拙訳、『偽イスラエル政治神話』を日本語で読めるはずであり、実際に読んだのかもしれないのである。

 つまり、以下の朝日新聞報道の決定的重要欠落部分は、日本との関係の深さに関する部分と、ナチスとの皮肉な歴史的関係の部分なのである。

1)------------------------------------------------------------ 
2004年10月29日
朝日新聞
国際面(8)

ホロコースト「自由に議論を」
仏の日本研究者、大学停職処分
右翼政党No.2

【パリ=沢村亙】フランスの有力右翼政党、国民戦線(FN)のナンバー2で、日本研究者でもあるブルーノ・ゴルニシュ氏(54)が「ナチスによる死者数やガス室の有無について、自由に議論すべきだ」と発言。同氏が教えるリヨン第3大学は問題発言だとして27日、1カ月間の停職処分を発表した。

 ゴルニシュ氏は11日の記者会見で「(ナチスの収容所における)死者数について歴史家は自由に議論し、ガス室の有無も歴史家の判断に任せるべきだ」と発言。シラク大統領が「(ホロコーストに疑義を唱える)修正論者は厳しく罰せられるべきだ」と発言するなど批判が広がった。

 フランスではホロコーストを否定する言論は違法で、ペルベン法相は検察当局に予備捜査の開始を指示。今学期、ゴルニシュ氏が教える予定だった日本文化と国際法の講義も中止された。

 だが、国民戦線の党員には反ユダヤ感情が根強く、同党の政治局は18日、ゴルニシュ氏支援を決議。ルペン党首も以前、ホロコーストを「ささいなこと」と述べて訴追されたことがあり、ルペン後継を狙うゴルニシュ氏が党内での地歩を固めるために行った発言との見方もある。

 以下がロイター配信によるイスラエルの有力紙、ハーレツ記事の全文である。

2)------------------------------------------------------------
http://www.haaretz.com/hasen/spages/488942.html
w w w . h a a r e t z . c o m

Last update-23:00 14/10/2004

France mulls ways to sanction Holocaust doubter

By Reuters

PARIS - France is checking whether it can take legal action against a leading far-right politician who has questioned whether the Nazis used gas chambers in the Holocaust, Justice Minister Dominique Perben said on Thursday.

The University of Lyon has urged education officials to suspend Bruno Gollnisch, a professor of Japanese there, for questioning how the gas chambers were used in the wartime slaughter of the Jews and querying the death toll.

The president of the European Parliament, Josep Borrell, also called for legal action against Gollnisch, a European deputy who is also the number two man in the National Front party of extreme-right leader Jean-Marie Le Pen.

"Mr Gollnisch's comments are absolutely unacceptable," Perben told France Info radio in announcing the probe.

"In an affair like this, I think the response should not only be penal ... but it should be political and possibly also professional."

France anti-racism laws have made denying the Holocaust a crime, punishable by fines and even prison.

Gollnisch, who is known as the intellectual of the controversial party, said on Monday he recognized that the gas chambers had existed but thought historians still had to decide whether they were actually used to kill Jews.

He called for an open debate about whether the total number of Jews killed in the Holocaust was actually 6 million as stated.

He also questioned the objectivity of leading historian Henry Rousso, who is investigating charges that certain Lyon lecturers were denying the Holocaust, by calling him "a Jewish personality".

The CRIF umbrella group of French Jewish organizations publicly condemned Gollnisch's comments at a news conference about Rousso's report on Holocaust denial at Lyon University.

European Parliament head Borrell said: "I would like to say clearly to public opinion in Europe and to all those who suffered from Nazi ethnic cleansing that the European Parliament will not tolerate this kind of statement."

At his Monday news conference, Gollnisch also said that serious historians no longer accepted that all the judgements of the post-war Nuremberg Trials of leading Nazis were fair.

"I don't know if I will lose my chair as professor of Japanese or even be put in prison for saying that, but I stand by it," he added.

Gollnisch, who studied law and political science at Kyoto University in Japan, holds a chair for Japanese language and civilization at the Lyon university named after Jean Moulin - the hero of the French Resistance murdered by the Nazis in 1943.

 ところが、同じロイター配信なのだが、発信地のパリの「左翼紙」と分類される『リベラシオン』の以下の電網版には、「右翼」に相当する単語は存在しないのである。フランス語を読める方は、ぜひ見て欲しい。フランス語を読めなくても、ゴルニッシュの顔写真が掲載されているから、それを見て欲しい。

 http://www.liberation.fr/page.php?Article=249298

 ジャン=ムーランを電網検索すると、リヨン第3大学の正式名称が、ジャン=ムーラン(リヨン第3)大学となっている。むしろ、ジャン=ムーラン大学とした方が、現地の実感に近いのである。

 以下は、ジャン・ムーランに関する日本語の人名録の解説である。

ジャン・ムーラン (1899-1943)
 ドイツ侵攻時のウール・エ・ロアール県知事で、占領軍に協力せずビシー政府から休職とされた。1941年、ロンドンに亡命。42年にフランスに再潜入してレジスタンス全国評議会(CNR)を組織し、43年5月、パリで会合を開き初代議長となった。6月にリヨン近郊でゲシュタポに逮捕され、拷問の末ドイツ移送中の列車中で死亡した。

 私は、この事件を、自らも歴史見直し論者の一人の立場で、非常に身近に感ずる。フランスにおけるホロコーストの嘘に関する言論の自由の動きの鼓動が脈々と伝わってくるのである。

 以下の拙訳、『偽イスラエル政治神話』の原著者、ガロディは、「哲学者。アラブ諸国の知識人やイスラム教徒の間では英雄視されている。」(1997年2月28日の朝日新聞夕刊)

 このガロディも、フランスの反ナチスのレジスタンスの経験者である。

http://www.jca.apc.org/~altmedka/nise.html
電網木村書店 Web無料公開
『偽イスラエル政治神話』
ナチス〈ホロコースト〉をめぐる真実とは?
イスラエル建国・パレスチナ占領の根拠は?
(その1) 訳者はしがき1.
(その2) 訳者はしがき2.
(その3) 訳者はしがき3.
(その4) 訳者はしがき4.・著者の宣言・著者と訳者の略歴
(その5) 著者はしがき1.「なぜ、この本なのか?」
(その6) 著者はしがき2.「総論」

『偽イスラエル政治神話』の概要
はしがき
第1章:神学的な諸神話
第1節:約束の神話/約束の土地か、征服した土地か?
第2節:選ばれた民の神話
第3節:ヨシュアの神話・民族浄化
第2章:20世紀の諸神話
第1節:シオニストによる反ナチズム運動の神話
第2節:ニュルンベルグの正義の神話
第3節:"六百万人"の神話/ホロコースト
第4節:"民なき土地に土地なき民を"の神話
第3章:神話の政治的利用
第1節:アメリカのイスラエル=シオニスト・ロビー
第2節:フランスのイスラエル=シオニスト・ロビー
第3節:"イスラエルの奇跡"の神話
結論
原著者ロジェ・ガロディの「結論」

イスラエルの"新しい歴史家たち"[付録]
訳者解説

 以上。


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