六ヶ所再処理工場のアクティブ試験強行に反対する
−−反戦平和運動と反原発運動の結合を目指そう−−


はじめに−−イランや北朝鮮を批判する資格はない。他人事ではない、日本における核燃料サイクルの強行と大量のプルトニウムの製造

(1) 青森県六ヶ所再処理工場の事実上の再処理の開始であるアクティブ試験が差し迫っています。美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会、グリーン・アクションなど全国の反原発団体は、2月10日、全国の243団体と個人1260人の賛同を背景に、六ヶ所再処理工場のアクティブ試験を認めないよう求める要望書を青森県に提出しました。また、2月15日には、六ヶ所再処理工場のアクティブ試験を憂慮する全国の市民(32団体)が声明を出し、重ねて青森県知事に認めないよう求めました。事態は緊迫しています。
※「2月10日 青森県への要望書提出行動の報告」(美浜の会)
http://www.jca.apc.org/mihama/reprocess/aomori_yobo_report060210.htm
※「六ヶ所再処理工場のアクティブ試験を憂慮する全国の市民 32団体の声明」(美浜の会)
http://www.jca.apc.org/mihama/reprocess/seimei060215.htm

 私たち署名事務局も積極的にこの取り組みに合流しました。反戦平和運動にとっても、六ヶ所再処理工場のアクティブ試験開始は極めて重要な意味を持ちます。それは、核拡散防止条約(NPT)体制の危機を一層深刻化し、核軍縮を妨害するとともに、北東アジアの平和と政治的安定に極めて深刻な打撃を与えるからです。私たちは、政府・青森県に対し、六ヶ所再処理工場のアクティブ試験の中止を強く要求します。

 
(2) 日本政府はもとより、日本のマス・メディアは、この六ヶ所再処理工場の試験強行が、世界的に見ればどれほど異常で異様なものかを全く語ろうとしません。大量のプルトニウムを生み出し蓄積することが、どれほど政治的軍事的に、核武装の脅威を高めるか、そういう観点からアジアと世界は見ているかを、国民に知らせようとしていません。それどころか、自分のことは棚に上げてイランの核開発や朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の核開発を騒ぎ立てているのです。その異常さに国民は気づかなくてはなりません。他人事ではないのです。



[1]北東アジア、朝鮮半島の非核化、安定化の過程に直接打撃を与える

(1) 六ヶ所再処理工場の稼働は、それ自体が北東アジア、朝鮮半島の非核化、安定化に向けた動きに直接的に重大な影響を与え、それに敵対し重大な打撃を与えるものです。
 朝鮮半島を巡っては半島の非核化にむけて6カ国協議の枠組みで政治的話し合いが進められています。その中で最重要の焦点の一つは核拡散と再処理の問題です。米と日本は「核拡散防止」を口実に北朝鮮に再処理とウラン濃縮を放棄させようとしています。北朝鮮との間では、それを認めるのかどうか、認める場合何を条件とするかなどが交渉されています。

 この重要な時期に、日本が各国から疑惑を向けられている大規模な再処理工場を稼働させれば、話し合いを妨害するものになりかねません。六ヶ所再処理工場は非核保有国唯一の大規模再処理工場であり、その稼働は国際的な例外として再処理を認められる日本と、再処理を認められないばかりか米から攻撃の脅しまで受ける北朝鮮や他の非核保有国との差別と格差を際立たせ、屈辱感と不満を高めずにはおきません。
 「日本だけがなぜ例外なのか」「われわれも同じ権利を持つ」という主張には一定の正当性があります。日本政府が六ヶ所再処理工場を利用した核武装の意図を持つ持たないに関わりなく、六ヶ所再処理工場の稼働そのものが朝鮮半島の核拡散防止と安定、核軍縮に極めて重大な影響を与えることは明らかです。


(2) 巨大な再処理工場の建設によって日本が北東アジアでの非核化と安定に逆行していると主張しているのは北朝鮮政府ばかりではありません。昨年12月15日には、韓国のNGO67団体が六ヶ所再処理計画撤回の共同声明を発表して、運転に反対しました。アクティブ試験実施が迫る中、2月3日には韓国の10人の国会議員が稼働計画の撤回を求める声明を公表しました。
※「韓国NGOの六ヶ所再処理工場の運転計画撤回を求める声明」(核情報) http://kakujoho.net/rokkasho/k_js.html

 批判はアジアからだけではありません。昨年5月にはアメリカの「憂慮する科学者同盟」がノーベル賞受賞者やペリー元国防長官らを含む27人の専門家の連名で運転の無期限延期とNPT強化を呼びかけました。今年の1月26日には民主党のマーキー議員ら6人の議員が稼働開始に懸念を表明する書簡を日本政府に送りました。六ヶ所再処理工場稼働が核拡散防止体制に打撃を与え、根底から掘り崩し、弱体化させること、それによって恐るべき不安定が北東アジアに生じかねないことは明らかなのです。
※「米国の6人の議員、六ヶ所再処理工場に懸念表明」(核情報)http://kakujoho.net/rokkasho/lttr_sen.html#lttr
※「日本のプルトニウム・プログラムは、核拡散防止体制を脅かすとノーベル賞受賞者らが警告」(核情報)http://kakujoho.net/npt/ucs_npt.html

 日本政府は北朝鮮は核兵器開発をしようとしていると非難しますが、朝鮮半島の非核化と核兵器開発の衝動力を抑止し交渉を前進させるためには、日本自身が再処理を放棄し、プルトニウムの生産を行わず、核武装を絶対しないという意志を、口先ではなく現実に行動で示すことが必要です。日本政府は六ヶ所再処理計画が、アジアの非核化にとって最も危険な要素、北東アジアの安定を損ない核拡散と軍拡への引き金を引きかねない冒険になっていることを認めるべきです。



[2]六ヶ所再処理工場の例外的で特権的な存在。アジアと世界に脅威を与えるほどの規模の異常な大きさ

(1) 六ヶ所再処理工場は国際的に見ても極めて異例、例外的な存在です。存在そのものが国際的な核軍縮と核拡散防止の流れに逆行するものです。
 六ヶ所再処理工場は、非核保有国が進めている商業レベルで唯一の大規模な再処理工場です。現在、世界では核保有国だけが再処理工場を保有しています。核拡散防止条約(NPT)体制・国際原子力機関IAEAの下で、非核保有国は事実上使用済み核燃料の再処理を認められていません。IAEAのエルバラダイ事務局長は昨年再処理工場の新設を5年間凍結するプランまで打ち出しています。

 ブッシュ政権もまたごく最近、非核保有国の使用済み核燃料の再処理を米国内で行う計画を打ち出しました。非核保有国の再処理を自ら行うことで、これらの国に再処理をさせない計画です。これらは再処理−プルトニウム生産が商業利用と軍事利用が区別できず、核武装や核拡散の問題に極めて結びつきやすいことを示しています。また核保有国にとって非核保有国の再処理を認めると核兵器の独占が脅かされるので何としても阻止したいのです。その中で日本だけが特別、六ヶ所再処理工場だけが特例として例外的に認められているのです。


(2) 六ヶ所再処理工場の規模はアメリカに「核開発」や「核武装」の疑惑で追及されているイランや北朝鮮とは比較にならないとてつもなく巨大なものです。六ヶ所再処理工場の能力(年800トン)は、英セラフィールドの年1500トンの再処理施設を除けば、英、仏の最大級の商業用再処理工場と同じ巨大な規模です。(アメリカは商業用の再処理を動かしていません。)

 NPT体制の下でアメリカや日本政府が問題にしている北朝鮮の再処理施設で取り出しが問題になった量はプルトニウム10kg前後、原爆1発分程度です。現在問題になっているイランについては、再処理ではなくウラン燃料濃縮のパイロットプラントの問題であり、核燃料用のプラントを原爆用(高濃縮ウラン用)に大改造すれば年に原爆0.5発分程度、計画中の商業用濃縮プラントで年に20−30発分程度の原爆用ウランを生産する能力を持ち得るというものです。これとは対照的に六ヶ所再処理工場では、アクティブ試験では430トンの使用済み燃料から4トンのプルトニウムを取り出します。全面稼働時には年間800トン処理して8トンのプルトニウムを取り出します。その量は長崎型原爆1000発分にも相当します。すでに日本は国内に5.4トン、海外に35.2トン、長崎型原爆にして5000発分のプルトニウムを保有しています。六ヶ所再処理工場はこれに毎年8トン、1000発分のプルトニウムを付け加え続けるのです。これはまさに脅威以外の何物でもありません。

 日本政府は再処理工場を認めてもらうために「余剰プルトニウムを持たない」ことを国際公約としました。しかし、もんじゅの事故、各地でのプルサーマル計画の破綻でプルトニウムを使うメドさえ立たず、公約は守れていません。大量のプルトニウムを作り蓄積し続ける再処理計画は、公約違反であり国際的な疑惑を呼ばずにはいません。日本政府は「余剰プルトニウムを持たない」という国際公約の破綻を認めて、直ちに六ヶ所再処理工場の計画を中止すべきです。
※「青森県知事への要望書」(美浜の会)http://www.jca.apc.org/mihama/reprocess/aomori_yobo060217.htm



[3]六ヶ所再処理工場の試験強行と軌を一にして進む日本の軍国主義強化・反動化

(1) 六ヶ所再処理工場の問題は、小泉政権の下で進められてきた日本の軍国主義強化・反動化、憲法改悪の動きの中で捉えなければなりません。アジアの人々は必然的にそう見ています。
 すでに述べたように、六ヶ所再処理工場が運転されれば核兵器の材料であるプルトニウムが毎年原爆1000発分もの膨大な量が積み上がっていきます。その他、原爆製造に必要な技術をみてもすでに日本にはそろっています。技術的な問題だけから言えば、日本はいつでも核武装できる状態にある、政治的決断だけと言われています。この状況に、小泉政権がこの間行ってきた靖国参拝をはじめ中国、韓国、北朝鮮に対する威嚇的、敵対的な対アジア外交政策、国内における民族主義、排外主義の強まりが加わって、日本の周辺諸国に反感と日本の軍国主義強化への警戒が渦巻き、核武装への疑惑が高まっているのです。プルトニウムの蓄積そのものがアジアの核軍縮と安定に反するのです。


(2) もう一つ重大な問題は、日本政府による挑発的政治姿勢です。日本政府高官、とりわけ小泉内閣になってからの主要閣僚が核兵器保有や使用は可能だとの問題発言を繰り返していることです。02年2月、安倍晋三官房副長官(当時)は「小型であれば原子爆弾の保有も問題ない」と発言し、これについて福田官房長官(当時)も日本の核兵器保有は可能との見解を示しました。この見解は、決して「逸脱発言」ではなく、「憲法上は禁止されない」が「政策として非核3原則で禁止している」だけだというのは日本政府自身の主張でもあるのです。現に小泉首相はこの時、これらの答弁を容認した上で「憲法も変えようという時代だ。(非核3原則も)国際情勢や世論が変われば変わることもあるかも知れない」と非核3原則の変更の可能性にまで言及しています。
 「戦争放棄、軍事力不保持」の憲法9条に対する公然たる挑戦、頭からの否定です。「核武装可能」と主張し、「国是」である非核3原則や独自核武装放棄を国際公約したNPT加盟を「単なる政策」と軽視してはばからない小泉自民党政権のやり方そのものが、日本の核武装について国際的な疑惑を引き起こしているのです。

 これらの発言は何もないところで行われたのではありません。発言は2001年秋にアメリカが「北朝鮮がウラン濃縮計画を進めている」として対北朝鮮強硬政策を強める中で、日本の右翼が北朝鮮の核武装への対抗、ミサイルなど攻撃力の保持を叫んでいる中で、それと軌を一にして行われたものです。まさに北朝鮮に対して政府自身が核武装のオプションもあり得ると恫喝したのです。周辺のアジア諸国が日本の独自核武装もあり得ると受け取り警戒するのも当然です。


(3) 日本政府は建前上、国際的には独自核武装をしない、六ヶ所再処理工場と核武装は関係がないという立場を取っています。しかし、たとえ六ヶ所再処理工場が直接核武装と結びつくことがない場合でも、日本が周辺諸国に対して核の恫喝を行っていないということではありません。小泉政権が行っている日米安保最優先政策は、アメリカの先制攻撃戦略への加担を全面的に強化し、地域の平和と安定に打撃を与える攻撃的で危険極まりない政策です。日米安保とは核安保であり、日米軍事同盟とは日本政府自身がアメリカの核兵器を威嚇と恫喝のために利用する道なのです。
 日本政府が米と一緒に米の核兵器を振りかざして、米と一体になって中国や北朝鮮、アジア諸国を恫喝し、この地域の平和と安定を現実に損なっているのです。アメリカの核と軍事力が日本政府にとって効果的である限り、日本政府が再処理工場と核武装を結合して核武装に踏み出す危険性は潜在的なものにとどまります。アメリカとの同盟とその核兵器を利用できる限り、日本がアメリカの世界戦略、アジア戦略に盾突き対抗して、また、アジア諸国政府やその人民からの猛反発を押し切ってまで独自核武装に進む必要はないのです。


(4) 私たちがここで強調したいことは、まず目前の現実的危険性と闘わねばならないということです。米の核安保への加担という日本が現に果たしている差し迫った危険な役割に目を向けなければならないということです。アメリカの核戦略が全世界、とりわけアジアにもたらす危険性と、これへの日本の全面的な軍事的加担がもたらしている危険性です。今進行中の在沖・在日米軍基地再編問題も、この核安保強化との関係で捉えなければなりません。相手の攻撃力を封殺することで一方的攻撃に条件を作り出すミサイル防衛(MD)への加担。核攻撃、通常攻撃の出撃基地、訓練基地の全面的提供。自衛隊の米軍への一体化の促進と協力、支援。何よりも米による一方的先制攻撃、侵略を容認する日米同盟。これらをまず問題にして闘わなければならないのです。

 再処理工場にしても、ウラン濃縮工場にしても、政府の計画は何十年にもわたる長期計画です。このような長期展望の下では、アジア情勢や日米関係がどう展開するかなど、予測は不可能です。私たちは、日本の「独自核武装」の芽を将来的に叩き潰しておくためにも、今回のこの六ヶ所再処理工場の試験強行を阻止しなければなりません。「独自核武装」の危険、潜在的危険性そのものを芽のうちに潰しておかねばならないのです。


(5) 前述のごとく、たとえ日本政府が当面核武装というオプションを選択する可能性がなくても、アジアの各国が日本の軍国主義に対する疑惑と警戒を強め、積み上がるプルトニウムに対して緊張を前提にした軍事的、政治的対応をとり、結果として核拡散と軍拡を引き起こす現実的可能性は有ります。日本の対米軍事加担、核戦略加担の現実の下では、その可能性は単に有るだけでなく、ますます大きくなりつつあります。小泉政権の下での日本の軍国主義の強化・反動化の進行の結果、私たちは再処理工場運転と闘ってアジアにおける核拡散と軍拡の危険と闘うだけではなく、小泉政権の進める軍国主義、憲法改悪、教育基本法改悪、米軍と米軍基地再編、米軍と自衛隊の一体化、有事法制など一連の軍国主義のエスカレーションに対して闘うことなしには、アジアの平和と安定、核拡散の防止を手に入れることはできません。



[4]ブッシュ政権になって加速するアメリカの先制攻撃的核戦略、新型核兵器開発とNPT条約体制の内部からの崩壊の動き

(1) 今日、核拡散防止条約(NPT)体制を崩壊寸前の状態に追い込んでいる最大の原因は、ブッシュ政権の核戦略、軍事戦略に他なりません。ブッシュ政権は発足直後から従来の核政策、軍事外交政策を転換させ始めました。「核管理」的側面が強かったとは言え曲がりなりにも進められてきた「核軍縮と核拡散防止」に露骨に逆行する政策を行い始めたのです。米ソ間で「抑止力」とされてきた核戦略の大転換を行い、核兵器を「使える核兵器」に変え、「ならず者国家」などに対して先制攻撃、先制核攻撃も辞さないという攻撃的な戦略を採用したのです。それを確認したのが2001年の『核態勢報告』(NPR)です。この戦略に従いブッシュは、世界の反核・非核の世論や運動をあざ笑うかのように、ABM禁止条約破棄、核実験全面禁止条約(CTBT)批准拒否など、戦後冷戦時代に核危機を回避するために甚大な努力の末に積み上げられてきた核軍縮措置を相次いで破棄し拒否したのです。

 それだけではありません。他国の核開発を戦争に訴えてまでも阻止しようと目論見ながら、自らは公然と地中目標攻撃用の小型核兵器の開発、短時間に核実験再開できる態勢作りに躍起となり、さらには相手の核攻撃力を無力化するミサイル防衛(MD)の開発・配備を強行し始めました。これらはアメリカの核戦略を、さらに攻撃的な核戦略に大転換するものです。世界最大の核保有国が核の脅威を増大させ不安定化させる政策に転換。−−これがNPT体制を内部から崩壊させ始めているのです。


(2) 核拡散防止条約(NPT)とその監視機関となっているIAEAは、核拡散防止と核兵器の廃止を大義として掲げながら、現実にはアメリカのヘゲモニーの下にあります。イラク戦争の際には米のウラン濃縮疑惑に乗ってイラクに全面査察を迫り、後には疑惑が全くでたらめであることがわかっていながら米が戦争を仕掛けるままに放置しました。明らかにアメリカの先制攻撃戦争戦略の道具に成り下がっています。「イラクの核兵器開発」「イラクの大量破壊兵器」はアメリカの作った全くの嘘、でっち上げだったのです。

 北朝鮮に対する非難と恫喝、イランに対する非難と恫喝も同様の性格を持っています。どちらも六ヶ所と比べると極めて限定されたものです。しかし、これら諸国が計画に固執すれば米からの戦争の恫喝に直面します。ごく最近、イランに対しては予想通りペンタゴンがバンカーバスターで核施設を破壊する攻撃の計画を持っていることが明らかになりました。アメリカの気に入らない国、政府を攻撃するための道具として「核開発問題」が持ち出されているのです。

 しかし、このようなアメリカのヘゲモニーへの従属そのものが、NPT体制を空洞化・崩壊の危機に追い込んでいます。最大の核保有国であるアメリカが核独占体制の強化に血道をあげ核軍縮に逆行するだけではなく、逆に非核保有国を戦争と核攻撃で脅す現実が、NPT体制に対する強い不信を生み出しているのであり、米による核脅迫こそが、米の侵略や攻撃を恐れる国々をして独自の核開発への衝動を生み出しているのです。


(3) さらに、NPTとIAEAの原子力に関する基本政策そのものが恣意的、差別的なものです。核保有国には濃縮も再処理も認め、更に軍事利用については査察さえ行いません。核兵器非保有国については、ドイツや日本などごく一部の国にウラン濃縮を認めているだけで、再処理については商業規模では六ヶ所しか認めていません。そして、その他の国については、核兵器の技術につながるからと濃縮も再処理も一切認めないのです。
 核保有国が核軍縮を履行せず国際的に核の脅威を与えていること、核保有国と非核保有国の間にこのように露骨な不公平があることは、独自の濃縮や再処理技術の獲得、さらには核保有への指向を生んでいます。政治的軍事的強国を目指した核武装指向、周辺の国への威圧のための核武装指向、そして米からの核の威圧に対抗するための独自核技術開発と核武装指向、これらの実例を私たちはインド、パキスタン、イスラエル、南アなどに見てきました。北朝鮮、イランも独自の核技術の開発、非軍事的核開発の権利を主張しています。

(4) ブッシュ大統領は最近、米国内での再処理の再開への方針転換を明らかにしました。クリントン政権以前からの商業用再処理停止から方針転換し、再処理再開そして原子力発電拡大の方針に進むというのです。この政策は原油価格の高騰の下で再び原子力発電に採算性を求める電力資本を後押しするとともに、国内の原子力発電拡大のためにネックになる廃棄物処理場問題、高レベル廃棄物処理、最終処分場探しの挫折という現実を、使用済み燃料の再処理によって覆い隠し、廃棄物問題を引き延ばそうとするものです。同時に、国際的に非核保有国に高まる再処理禁止への不満を、アメリカが肩代わりすることでかわし、核兵器独占体制を維持することに目的があるのです。もちろん米国内では、反対運動が組織され、ブッシュの思惑通りに進むものではありません。


(5) 私たちは核拡散と核武装がこれ以上広がることには反対です。核保有国の無政府的増大は核戦争の危険を高めるからです。広島、長崎の惨禍はいかなる理由があっても核戦争をすることは許されないと教えています。
 今日、NPT体制の矛盾を激化させ、体制を内部から崩壊させようとしているのは先制核攻撃の戦略を採り続ける米政権です。しかし、NPTが米の妨害で弱っているからといって、その崩壊に手を貸し、核武装の無政府主義的拡散に同調するのは間違いです。NPTの再検討会議では、途上国やアジェンダ連合など非核保有国の側が世界中の反核平和運動と連携して米と核保有国に核軍縮を押し付けようとしています。しかし、残念ながら核軍縮の展望はまだ見えません。

 私たちは米国がNPTの帝国主義的な政治的軍事的利用、NPTを戦争と核独占の道具として使うことに反対します。国際的な政治的力関係が反核平和の側にまだまだ決定的に不利な中で、NPTの核軍縮及び核拡散防止の原則をどのように核大国に押し付けていくのか、模索するしかないと考えます。ただ言えることは、アメリカや核保有国がNPT体制を私物化し、その危機と崩壊を加速させているのに対抗して、NPT体制の維持と特権の剥奪、そして何よりも核保有国の核軍縮を要求して闘うことこそ核拡散防止と政治的安定、平和への道ということなのです。



[5]NPT体制の内部からの崩壊に手を貸す日本政府。反戦平和運動と反原発運動、環境保護運動の結合した力で六ヶ所再処理工場の運転を阻止しよう

(1) NPT体制を内部から崩壊させようとしているのは米政権だけではありません。まさに六ヶ所再処理工場の運転を強行しようとしている日本政府も同罪です。日本政府が「日本はNPTの優等生だ」「国際的に認められている」と主張しても、「われわれはもっと小規模な研究施設でも戦争を仕掛けられかねないのに、なぜ日本だけが例外なのか」と諸国は考えます。それは当然です。これ以上NPT体制を崩壊させないためにも、核拡散の競争を生み出さないためにも、六ヶ所再処理工場は絶対に稼働させてはならないのです。


(2) 反戦平和運動の最大の目標の一つは、核兵器の廃絶です。私たちは、核軍縮と核拡散の防止を要求します。原発と核燃料サイクル、いかなる核開発にも反対します。
 六ヶ所再処理工場のアクティブ試験は、反原発・環境保護の運動と反核・反戦平和の運動が結びつき、力を合わせて阻止しなければならない課題です。再処理工場によって大量に生み出されるプルトニウムは、超危険で猛毒の放射性物質=環境破壊物質であるだけでなく、原爆の材料でもあるからです。再処理工場の運転は、脱原発を目指してプルサーマルと闘う反原発運動にとっても、核軍縮を目指し、非核化と核拡散防止による平和と安定を目指す反核・平和運動にとっても力を結集して闘わなければならない課題です。二つの運動の力を合わせて六ヶ所再処理工場の運転を阻止しましょう!


2006年2月22日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局




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