新テロ特措法再議決阻止!軍事疑獄の徹底糾明を!
−−軍事費大幅削減、米軍再編反対、海外派兵・侵略戦争加担反対の闘いと結びつけよう−−


[1]福田政権の冷酷、人民生活無視の政治に批判を集中し、新テロ特措法の再議決阻止へ!

(1)政局の急変とともに、新テロ特措法をめぐる状況が一変した。世論調査で軒並み福田政権と自民党に対する不支持が急増し、支持率は危険水域と言われる30%近くまで一気に下落した。福田・自公政権は一気に末期症状を呈している。これまで、インド洋給油について支持と反対が拮抗していた世論も、再議決反対の世論が50%を超えるまで一気に跳ね上がった。
※本社世論調査:海自給油活動「中止」が50%(毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/today/news/20071218k0000m010117000c.html
※内閣支持31%に急落、不支持48% 本社世論調査(朝日新聞)
http://www.asahi.com/politics/update/1220/TKY200712200359.html

 今回もまた年金問題の再浮上が引き金を引いた。桝添も町村も、そして福田自身が信じがたいほどの公然たる公約破棄と開き直りを行った。薬害C型肝炎問題は、厚労省と製薬業界の利益を守る福田政権を直撃した。景気後退の足音が大きくなり、インフレと物価高が、それでなくとも生活悪化に苦しんできた人々の不満を一気に高めている。この秋、噴出した防衛省をめぐる軍事疑獄、元事務次官守屋武昌と軍事専門商社・山田洋行の元専務宮崎元伸との贈収賄事件は、官僚と政治家がどれだけ甘い汁を吸っているかを暴露し、それにフタをしようとする福田政権への怒りとなっている。
※舛添厚労相と町村官房長官、年金問題で開き直り(産経新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071211-00000990-san-pol

 戦争や海外派兵は強引に会期を延長し再議決してまで「公約」を果たすが、国民の命や生活はたとえ「公約」してもそれを平然と破って開き直る。米国への「公約」には忠実だが、人民への「公約」は踏みにじる。官僚と政治家は甘い汁を吸い、堂々と人民の血税を費消するが、人民は賃下げと物価高で生活に汲々とする。悪化する労働実態と生活状態、これと日本の政治経済を牛耳る、やりたい放題の政治家−官僚−財界の癒着・腐敗構造との対比がますます鮮明になりつつある。UFO談義にふける姿はまさに自民党政治の腐敗と堕落の極み、末期症状を端的に現している。根は全て同じ、あらゆる問題、あらゆる諸矛盾が福田自民党政治に向かう構図が再び顕在化しつつある。今夏の参院選前夜の状況が再現されつつある。

(2)民主党は間髪を入れず、12月21日、参議院に「対案」を出した。 新聞報道に依れば、(イ)停戦合意が成立している地域などに限って自衛隊を派遣する。(警察官、医師等を含む)(ロ)医療支援、農業用施設などの復旧や整備、生活関連物資の輸送・配布等の復興支援に限定して活動する。(ハ)インド洋での給油活動も含めた「海上阻止活動」は、国連決議に基づく場合に、参加の要否を検討する。(ニ)この間物議を醸してきた小沢構想=武力行使を伴う国際治安支援部隊(ISAF)本体への参加は見送る、ただし自衛隊部隊には復興支援活動への抵抗を抑止する名目で武器使用を初めて認める、等が主な内容である。この対案提出は、政府案再議決阻止のための政治的手段という意味合いが強い。民主党は、自らの対案も政府案も採決せず、継続審議にするよう求める見通しだ。
 だが私たちは、如何なる場合、如何なる形でも自衛隊の海外派兵には反対である。それは憲法違反である。従って民主党の「対案」にも反対する。
※民主、新テロ法案に対案…両法案の並行審議を主張(読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20071221i318.htm?from=main3

 結局のところ、世論と運動の動きがカギを握る。文字通り、ありとあらゆる領域で、金権腐敗と制度疲労が行き詰まり、政官財の目に余る人民支配が文字通り人民の生命と生活を直接破壊するまでになり、もはや今の自公政権のままでは延命すらできない段階に達している。少なくとも一度は政権交代なしには、一時的にすら世論が収まらないところまで来ている。
 今回の軍事利権と防衛省腐敗の噴出も、こうした自民党政治の歴史的終焉の一端を示すものである。年金問題、C型肝炎の問題、インフレ・物価高の問題、非正規雇用や労働法規の問題、医療や教育や福祉・生活保護の切り捨て問題、消費税増税問題等々、人民の生命と生活に関わるありとあらゆる問題が客観的に全て結び付いているのが今日の国内政治情勢の根本的特徴である。新テロ特措法再議決阻止、防衛省疑獄徹底追及と、ありとあらゆる人民運動を固く結び付けて闘おう。


[2]額賀・久間の証人喚問を! 軍需発注をめぐる「政界ルート」の追及が必要

(1)発端は軍事専門商社、山田洋行と日本ミライズとの内紛であった。そして事態は、防衛省元事務次官守屋武昌のゴルフ収賄での逮捕と妻の「身分なき共犯」としての逮捕から、守屋武昌の現金授受収賄での再逮捕、山田洋行元専務宮崎元伸の業務上横領での逮捕と贈賄での再逮捕、山田洋行米現地法人元社長秋山収の業務上横領での逮捕にまで及んでいる。次期輸送機CXエンジンをめぐる米軍事産業ゼネラル・エレクトロニック社との「不自然な」代理店契約と利益供与をはじめ、ロールスロイスと米GE間で争われた新世代護衛艦エンジン選定をめぐる便宜供与、哨戒ヘリ用装備チャフフレアディスペンサーなど山田洋行における20件を超える水増し請求、陸上自衛隊の生物剤検知装置の納入を巡る英メーカー採用、航空自衛隊の早期警戒機「E―2C」の関連部品納入、海自の大型掃海・輸送ヘリ「MCH―101」のエンジン採用、陸自の長射程地対地ミサイル「ATACMS」採用など、疑惑は次々と拡大している。
※守屋容疑者363万円収賄で再逮捕、装備品7種で便宜か(読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20071218it11.htm

(2)防衛省疑獄追及はまだ始まったばかりである。今回の軍事疑獄を「山田洋行」問題、守屋・宮崎問題に終わらせてはならない。守屋が証人喚問で明らかにした久間章生や額賀福志郎など歴代防衛大臣らとの宴席やゴルフへの接待と利益供与、宮崎による米国防総省元日本部長ジェームス・アワーと政治家、財界人の接待、山田洋行米現地法人による元米国務長官アーミテージへの巨額の献金、沖縄利権をめぐる守屋と衆院議員および沖縄県市長とのゴルフ問題などは、放置されたままである。
※守屋前事務次官 証人喚問詳報(23)沖縄で下地衆院議員とゴルフ(産経新聞)
http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/071029/stt0710291930027-n1.htm
※山田洋行 アーミテージに1億円の重大疑惑(日刊ゲンダイ)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071206-00000007-gen-ent

 確かに東京地検特捜部は、12月18日、守屋・宮崎・秋山を贈収賄容疑で再逮捕した。363万円が政官界工作に使われたと見られたのだ。今回の軍事疑獄は越年し、いよいよ政界ルート解明へ進むとも報道されている。しかし、東京地検が本気で今回の軍事疑獄全体を究明することなどあり得ない。久間は病気を理由に逃げ回っている。民主党も、額賀の証人喚問の一件で腰砕けになったままだ。何とそこでは共産党が先鞭を切った。追及の手を緩めてはならない。とりわけ名前の挙がった政治家、久間と額賀の追及が不可欠である。何としても、疑獄に深く関わった政治家を国会の場に引きずり出さねばならない。


[3]三菱重工を頂点とする巨大軍事利権の全貌を暴かなければならない

(1)今回の疑獄事件で問題になったのは、5兆円近くの「防衛費」の中の過半を占める「物件費」2兆7000億円の中の、更に「一般輸入」(海外メーカーからの装備品輸入)に関わるごく一部である。「一般輸入」は、2001年1156億円、02年1326億円、03年1292億円、04年1334億円、05年1525億円と年々増額され、「物件費」に占める割合も01年の4.3%から05年の5.6%へと拡大している。まさにこの装備調達であまり目立たない部分が、守屋・宮崎らの贈収賄の“隠れ蓑”、政官財を結び付ける秘密の“財布”となってきたのだ。それそのものとしても直接的メリットとして、そのほとんどが「随意契約」という商社のいいなりの契約形態であること、一度納入されれば長期的にメンテナンス料や部品交換費などが転がり込むことなどがある。更に重要なメリットとして、最先端の技術・兵器の先取り、最新軍事情報の収集、ライセンス生産に向けた最新兵器の試用導入などという側面がある。まさに特別に「うまみのある分野」として分捕り合戦が繰り広げられてきた。90年代後半以降、正面装備で米国メーカーからの輸入品への依存度が急増してから、この「一般輸入」は急増した。三菱重工、川崎重工、石川島播磨など名だたる軍需産業により正面装備が独占されている中、新興の中小専門商社が食い込むのは、この分野しかなかった。しかも限られたパイを巡って100社を越える大小専門商社がひしめいている。この分野で受注するには、防衛省事務次官や政治家らを接待付けにして取り込むのが一番であった。そこでのし上がったのが宮崎であった。
※【国防利権】(下)商社任せ 危うい調達(読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/feature/fe8000/fe_ko_071201_01.htm
 防衛費の中のFMSや一般輸入の額については、出典によって数字が異なる場合がある。この記事では、06年度の一般輸入調達額が1158億円とされている。

(2)しかし、「一般輸入」を見ているだけでは、防衛省をめぐる軍事利権の全容は全く明らかにはならない。軍事利権が事件性を帯び軍事疑獄に発展するには、政治的圧力をはねのけるほどの相当の世論の反発がなければあり得ない。
 現に戦後をざっと振り返っただけでも、軍事疑獄はことごとく闇に葬られてきたことが分かる。約30年あまり前にロッキード事件があったが、それは民間航空機トライスターの全日空への導入をめぐる汚職容疑で田中角栄元首相らが逮捕されたにとどまった。実はこの事件では、もっと重要な問題、すなわちロッキード社から防衛庁が導入した対潜哨戒機P3Cをめぐる疑惑が追及されないままとなった。1978年にグラマン社が日本政府高官に渡したカネをめぐり火が付いたダグラス・グラマン事件も、検察が「政治家の刑事責任追及は、時効、職務権限のカベにはばまれ断念する」ことで事件捜査は強引に終結させられ、日商岩井関係者のみの起訴で終わった。2006年初めには防衛施設庁による空調工事・土木工事をめぐる官製談合事件が問題になり、1998年には防衛庁調達巨額背任事件・証拠隠滅事件により元防衛庁調達実施本部本部長などが逮捕されたが、これらは軍事利権の中心をなす主要装備をめぐる汚職事件ではなかった。
 そもそも東京地検特捜部による今回の事件摘発の狙いが、防衛省をめぐる構造汚職全体を追及することではないということである。元々、検察は金融庁・財務相(旧大蔵省・国税庁)との連係プレーで操作・摘発を行ってきた長い歴史がある。今回の目的は明らかに、防衛省の装備品調達の効率化と財政規律の確立である。検察権力は「権力の中の権力」であり、エリート的権力意識が強烈に強く、政治秩序、金融・財政秩序、治安維持など、現存ブルジョア秩序への強い目的意識性を持っている。防衛施設庁の官製談合事件などの影響によって傍流から事務次官に上り詰めた防衛省官僚トップと異端の新興軍事関連商社の実力派専務の逮捕は、これまで形成されてきた軍事調達システムの秩序破壊に対する検察の危機感であり、財政危機のもとでの無駄を排除した効率的な防衛予算の再構築をもとめる財務省の利害であり、総体として軍事官僚機構を弱体化させる異常な汚職・腐敗構造を排除しようという総資本の要求である。そこには、防衛調達の効率化を実現することで、目前に予定している消費税増税への道を掃き清めようとする魂胆も見える。
※『特捜検察vs.金融権力』(村山治著 朝日新聞社)

(3)しかし今回の事件をきっかけに、これまで闇に隠れてきた巨大軍事利権のドロドロとしたものの一端が暴かれようとしている。それは「日米平和・文化交流協会」なる外務省所管の公益法人とそれを主催する秋山直樹という人物である。
 日米の軍需産業と防衛省をつなぐこの協会は、軍事利権と装備品調達の公然たる「談合組織」である。この協会はまた、防衛族議員が巣くう「安全保障議員協議会」と一体化した組織だ。この両者が「日米安全保障戦略会議」を主催する。秋山は、協会の常勤専務理事、安全保障議員協議会の事務局長を務めている。国会で参考人招致を求められている曰く付きの人物だ。彼のスポンサーとなり後ろ盾になっているのが軍需産業のトップメーカー、三菱重工だと言われている。
 「日米平和・文化交流協会」は軍事利権の牙城であり、三菱グループをピラミッドの頂点とする一大軍事利権構造を形成している。理事には、久間や前原など党派を超えた防衛族議員、軍需産業と軍事商社の幹部、アメリカから元国防長官のコーエン、元駐日大使のアマコストらがいる。現防衛大臣の石破は今年9月まで、現首相の福田も3月まで理事に名を連ねている。会員企業には、三菱重工、川崎重工、伊藤忠商事、住友商事など、そうそうたる主要な軍需産業、軍事商社が入る。主な会員企業16社と防衛省の契約総額は、2001〜06年度で4兆8000億円、しかもその内3分の1近く、約1兆7000億円を三菱重工業が占めている。16社の自民党への献金額は12億7000万円、防衛省からの天下りは上位16社で201人にのぼる。天下りだけでなく「天上がり」という逆の癒着形態もある。公益法人を隠れ蓑にした、まさに癒着とくれてやりのための闇の組織なのである。
※首相、防衛族団体の理事務める 今年3月に退会(朝日新聞)
http://www.asahi.com/politics/update/1204/TKY200712040482.html?ref=rss
※日米平和・文化交流協会(外務省)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/annai/shocho/koeki/n_shinko_meibo.html

 一方、「日米安全保障戦略会議」も単なるシンクタンクではない。ミサイル防衛や集団的自衛権の行使解禁、武器輸出三原則の解禁など、自らが利権にありつくことができる政策を政権に対してごり押しするための会議であり、アメリカの要求に沿った形で日本の軍需産業と兵器調達のあり方を提言する会議である。2007年2月段階で、他ならぬ額賀と久間が副会長に座っている。

(4)それでは、これら三菱グループを頂点とする軍事利権の全容はどのようなものなのか。それがどこまで事件性を帯び、疑獄に発展するかは別にして、その全体像を暴露すべきだろう。本丸は、「物件費」だ。5兆円近くの防衛費の中で「物件費」は、2兆7000億円、防衛費の5割を超える。例えば、今年8月末に出された2008年度防衛省概算要求は、緊縮財政のもとで0.7%増の増額要求となり、4兆8172億円もの「防衛予算」が計上された。このうち「物件費」は2兆7218億円である。その内訳は、(イ)戦闘機・護衛艦などからなる「主要装備品」、(ロ)主要装備を動かすための燃料費・修理費・教育訓練費など経費に当たる「その他」からなる。(先に述べた「一般輸入」は、この「物件費」の一部で、別の分類方法で区分けしたものである。)
 とりわけ「物件費」の約3割を占める「主要装備品」は、三菱重工、川崎重工、NECなど日本の巨大軍需産業によって独占され、開発段階から生産・納入に至るまで軍需産業と防衛省と政治家との日常的な癒着関係がある。その中には、国産ステルス戦闘機の実証機開発費157億円のほか、MD1580億円、次期哨戒機(PX)の購買費として679億円(4機分)、F15戦闘機にレーダー能力を前進させるための近代化改修費として1123億円(32機分)等々が含まれている。これらの主要装備は、長期にわたる調達が保証され、軍需産業のドル箱になる。頭金だけを初期導入時の防衛費に組み入れ、ほとんどは「歳出化経費」の形で、繰り延べ返済で支払う方式をとっている。
 この主要装備をめぐる兵器・装備品の受発注システムは、まさに軍事費と軍事利権の相互作用で肥大化し膨らみ続けてきた日本の国家独占資本主義の典型的構造そのものである。民生品の市場競争から無縁の、全てが軍需産業に言いなりの特殊な「独占価格」「独占利潤」がまかり通り、血税を湯水の如くつぎ込む巨大な利権構造の中心環になっている。
※我が国の防衛と予算−平成20年度概算要求の概要(防衛省)
http://www.mod.go.jp/j/library/archives/yosan/2008/yosan.pdf
http://www.mod.go.jp/j/library/archives/yosan/2008/gunji.pdf

[4]ミサイル防衛(MD)と海外派兵型最新兵器の大量購入を軸とした防衛産業生き残り策

(1)ミサイル防衛(MD)は、当面のシステム導入だけで1兆円、総額では6兆円という試算もある巨大プロジェクトである。三菱重工を中心とする三菱グループはこのMDでも最大の受注を勝ち取っている。それは、迎撃ミサイルだけにとどまらず、イージス艦、地上レーダーや航空機、軍事衛星からのミサイル監視、統合運用するコンピューターシステムなどにまで波及する。08年度概算要求も含めれば、04年度からの研究開発と配備で約7000億円ものMD関連予算がすでに計上されている。
※ <海上迎撃ミサイル>整備に1兆円 費用対効果で議論(毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20071219k0000m010132000c.html
 スタンダードミサイル(SM3)配備の海自イージス艦“こんごう”は12月18日、模擬弾道ミサイルを迎撃する発射実験を強行した。米以外での発射実験は初めてのことである。“こんごう”は来月上旬、海自佐世保基地に実戦配備される。また地対空誘導弾パトリオット(PAC3)が11月末、今年3月の入間基地に次いで2カ所目となる習志野基地に配備された。全国で16の空自高射隊への配備が目論まれている。PAC3は現在米国製を導入しているが、08年度からは三菱重工がライセンス生産したものを配備する。日本の軍需産業の意図は、武器輸出三原則の緩和をおこない、日米共同開発した次世代MDが生産され日本以外の地域にも配備されること、事実上の武器輸出に道を開くことである。
※海自、迎撃試験に成功 ミサイル防衛 ハワイ沖 米国以外では初(東京新聞)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/news/CK2007121802073151.html

 アメリカがこれまで弾道ミサイル防衛(BMD)に投じた金は1000億ドル(11兆円)にのぼる。米による日本へのMDミサイル販売とライセンス生産の執拗な要求は、この巨額の開発・配備費用の回収という意図もあると言われている。実験費用だけで60億円に登る今回の“こんごう”の実験も「成功」と騒いでいるが、模擬ミサイルの発射時刻と発射位置をあらかじめ組み込んだ上で迎撃するという、当たって当然のごく初期段階の実験に過ぎない。予算編成の真っ最中に行ったということは、まさに要求貫徹のデモンストレーションであり、実効性に疑問があると導入への懸念が強まるため、「成功」を演出したのである。
 政府はさらに図に乗って、先制攻撃にも道を開く危険きわまりない「防衛省の事前命令」に踏み込もうとしている。
※ <海上迎撃ミサイル>事前の命令可能に 政府が要領改正方針(毎日新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071219-00000012-mai-pol

(2)MDと海外派兵型最新兵器導入を全面的に盛り込んだのが、2004年12月の「新防衛大綱」と「中期防衛力整備計画」である。それは、自衛隊の性格転換、すなわち自衛隊の侵略軍化、戦える自衛隊への転換と、日本全体を米軍の対中東戦略、対北朝鮮・対中国の軍事対決の最前線にすること、それに適した兵器を購入し、自衛隊の編成を組み替えていくこと、その中心の一つとしてミサイル防衛(MD)と武器輸出三原則の見直しを進めることが要求された。
 米帝の新しい軍事戦略に自らを全面的に組み込むこのような転換は、古くからあった「国産派」と「米国品輸入派」の対立を後景に追いやった。日本の軍需産業は、戦略面での対米従属だけでなく、兵器生産でも対米従属を推進した。日米軍事一体化が、作戦行動の一体化や情報・通信の共有化などの面からもはや独自路線をとることを困難にしたことで、日本の軍需産業もまた、米軍や米軍需産業の下請けとなって、米日の軍需産業が一体化する形で生き残る以外に道はなくなったのである。それはまた、財政危機下で野放図な軍事支出ができなくなる中、日本の軍需産業の要求にとどまらず、日本の総資本の要求となった。
※新「防衛大綱」「中期防」閣議決定批判(署名事務局)
(シリーズその1) (シリーズその2) (シリーズその3) (シリーズその4)

 軍事戦略の転換に合わせた軍需生産の方式のこの転換は、「国産派」の利益代弁者・久間の発言にストレートに出ている。2003年11月の日米安全保障戦略会議での基調講演において、彼は「防衛庁の正面契約額が減少し、防衛産業が衰退の危機に瀕している」との危機感を訴え、「防衛産業の復興」を強く主張した。久間はそこで次のようなエピソードを紹介している。すなわち、防衛庁(当時)の担当官が「先生、輸入方式の方が価格が安い見込みです。この苦しい財政事情の下ではとてもライセンス国産とは言えません。」と言ったのに対して、久間が「何を言っているか。仮に価格が高くても国内防衛産業の振興や技術基盤の維持に資するなら、それは、予算が高くついても予算が国内にとどまると言うことで有益な予算だ。しかし、米国企業にのみ行ってしまうなら、それは、安くついても無益な予算だ」「生産方式は極力ライセンス国産にすべきだ」と怒鳴ったというのだ。日本企業がこうしたライセンス生産や米軍の装備を修理できる基盤の形成などを通じて、日本の軍需産業を米軍需産業の下請けに再編していくという意図を露骨に表明している。米軍艦船や航空機の修理なども含め、全面的な米軍の下請け化をより推進すること、米日軍需産業の圧力、軍事戦略の大義名分で、限られた軍事予算の縮小しつつある枠を突破しようというのである。
※第2回日米安全保障戦略会議 2003年11月21日 「我が国の防衛技術・防衛産業について」
http://www.rosenet.ne.jp/~nb3hoshu/AnpoFor2003KyumaK.html
※第5回日米安全保障戦略会議 2005年5月5日 「米国の海洋プレゼンスと日本の役割」
http://www.ja-nsrg.or.jp/speech02.pdf

 このように、危機にある軍需産業復興のテコになっているのは、「国産化・ライセンス生産方式」である。輸入価格15億円の攻撃ヘリAH1F(ボーイング)がライセンス生産で48億円、同じく40億円のF16をベースに共同開発したF2支援戦闘機(三菱・ローキードマーチン)が118億円等々、ライセンス生産が国内軍需産業の利益確保のために維持され、肥え太らされている。このような、ライセンス生産における巨額のくれてやりの一例が、「世界一高い戦闘機の倍近い」という、陸上自衛隊のAH64Dアパッチ戦闘ヘリコプターである。一機60億円と見積もられたヘリが、米軍再編の中で生産中止に追い込まれ、富士重工の専用の設備投資費が上乗せされたため、最後の調達となる来年度予算では一機216億円に跳ね上がっているのだ。
※陸自ヘリ一機216億円 『世界一高い戦闘機』の倍近く 来年度概算要求(東京新聞)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2007112702067646.html

(3)日本経団連は、2004年7月に提出した政府への意見書「今後の防衛力整備のあり方について−−防衛生産・技術基盤の強化に向けて−−」の中で、「先進国間の共同開発プロジェクト」の流れから取り残され衰退の危機にある軍需産業を救うために、とりわけミサイル防衛と日米共同開発、そのための武器禁輸三原則の見直しを提言している。日米の軍需産業トップで構成する「日米安全保障産業フォーラム(IFSEC)」による2002年12月の「共同宣言」の改訂は、この米軍の下請け化の進行を強く打ち出した。これは米国側8社と日本側12社で構成され、事務局は、日本経団連防衛生産委員会に置かれている。参加企業:(米国)ボーイング、ジェンコープ・エアロジェット、ジェネラル・エレクトリック、ロッキード・マーチン、ノースロップ・グラマン、レイセオン、サイエンス・アプリケーションズ・インタナショナル、ユナイテッド・ディフェンス・LP。(日本)三菱重工業、石川島播磨重工業、川崎重工業、島津製作所、東芝、アイ・エイチ・アイ・エアロスペース、小松製作所、ダイキン工業、日本電気、日立製作所、富士通、三菱電機など。
シリーズ日本の軍需産業(署名事務局)(上) (下)


[5]軍事疑獄追及の闘いを、米軍再編反対、軍事費大幅削減、対米従属=海外派兵型の軍事外交路線反対の闘いに結び付けよう

(1)今回の防衛省疑獄問題は、沖縄普天間基地の辺野古移設と全国的な基地再編、在日米軍のグアム移転をめぐっても巨大利権、いわゆる「米軍再編ビジネス」がうごめいていることを暴露した。すでにマスコミなどでは額賀や久間、小池百合子や山崎拓、さらには小泉時代の首相秘書官飯島勲、民主党の前原誠司などの名前があがり、政界全体を巻き込む利権構造の一端が浮かび上がっているが、まだまだ闇に埋もれたままである。
 辺野古基地建設は、海上座り込み運動をはじめ地元の粘り強い闘いによっていまだに建設のメドさえ立っていない。安倍政権は今年5月、海上自衛隊を辺野古基地建設「事前調査」強行に動員するという前代未聞の暴挙を働いた。このときの事務次官は守屋であり、防衛大臣は久間であった。埋め立て方式とフロート方式、V時滑走路の建設場所での対立は、このような沖縄の反対運動とは全く別の次元で、すなわち辺野古基地建設が沖縄の土建企業と東京のゼネコン・マリコンの利害に絡む1兆円を超える巨大プロジェクトであることを巡って続いている。もっとも「QPI(埋め立て)工法とメガフロート工法のダブルエージェント」という守屋についての評価に現れているように、守屋がどちらの側に立っているのかという問題はあいまいであり、最終的にどちらに転んでもそのおこぼれを預かれるような画策をしていたことが明らかになっている。

 グアム移転は、沖縄の海兵隊が家族を含めて17000人が移転する総額1.2兆円の巨大事業であり、日本側7000億円、米側5000億円の負担が明らかにされている。日本側は、司令部棟、家族住宅、インフラ整備等を担当するとされるが、他国の軍事基地建設にカネを出すというのは前代未聞である。しかも一件2000万円程度の住宅が8000万円もするという法外な見積もりが作られているなど、米軍と米ゼネコン、日本の軍需産業とゼネコンへの野放図なくれてやりという側面が強い。今年8月の防衛省説明会には、三菱重工業、三菱電機、三菱商事、三井物産、大成建設、清水建設、米系コンサルタント会社、設計会社、鉄鋼、金融機関など900社以上が参加した。巨額の移転利権を逃すまいと、大小様々な企業が群がっているのだ。この点でも日本ミライズの宮崎は、米大手ゼネコンの下請けに入り、グアム移転利権に食い込もうと画策していた。
※沖縄米軍再編も捜査 防衛省幹部ら参考人聴取 東京地検(朝日新聞)
http://www.asahi.com/special/071029/TKY200712020201.html

(2)政府・与党と財界・軍需産業は、米軍再編をも金儲けと利権の手段にする中で、米軍再編を容認する自治体と拒否する自治体を予算の上で選別する許し難い蛮行に打って出た。一方で、日米の軍需産業に甘い汁を吸わせるべく数兆円の巨額の利権を与えながら、他方で、「米軍再編推進法」を活用し、基地受け入れなど拒否する自治体には徹底した補助金削減攻撃をかけるというものだ。
 防衛省は11月末、この再編交付金について、対象33市町への本年度配分額を内定した。総額は約45億7000万円で、来年8月に原子力空母ジョージ・ワシントンが配備される横須賀基地がある神奈川県横須賀市が最も多い5億8400万円となった。米陸軍第一軍団司令部のキャンプ座間移転では、相模原市が1億5600万円、米軍機訓練移転を受け入れた茨城県の百里基地周辺では、5市町に計6億円。石川県の小松基地周辺では、4市町に計6億3500万円。沖縄県のキャンプ・ハンセン周辺では、計画反対から容認に転じた金武町、宜野座村、恩納村の3町村が再編交付金の対象に追加された。
 当然、米軍再編計画に反対している自治体とこれを支持する住民は怒りを爆発させている。神奈川県座間市、山口県岩国市、沖縄県名護市などは拒否を貫いたが故に、交付金の対象外となった。その集中点が岩国である。政府は岩国市に対して、空母艦載機70機の受け入れ要求の拒否を理由に、全く無関係である市庁舎への35億円の補助金打ち切り攻撃を加えている。すでに建設は3年目に入っており、市長は市債での資金調達を模索しているが、自民党多数の議会はこれを拒否した。岩国市民は昨年3月住民投票によって「受け入れ反対」の意思を明確にしている。福田政権は、米軍再編を受け入れない自治体は財政破綻に追い込むことも辞さない構えだ。これに対して全国から激しい怒りの声が上がっている。12月1日には、岩国市錦帯橋下河原で「国の仕打ちに怒りの1万人集会 in 錦帯橋」が行われ、全国から1万千人が結集した。全国各地で粘り強く取り組まれている反基地闘争は、今回の軍事疑獄、「米軍再編ビジネス」を糾弾しながら、その横の連帯を強めつつある。米軍再編反対闘争、反基地闘争の意義はますます高まっている。
※在日米軍再編反対!「再編推進法案」を阻止しよう!(ピースニュース)
http://www.jca.apc.org/~p-news/hankiti/saihen_suisin0702.htm
※キャンプ座間に新指令部はいらない!150人が参加して 定例デモ(ピースニュース)
http://www.jca.apc.org/~p-news/hankiti/071215STOPZAMA.htm

(3)予算編成が大詰めを迎えている。軍事費を聖域にしてはならない。今回の軍事疑獄は、軍事費を政官財の食い物にしている構図を明るみに出した。今回の事件を単なる「調達改革」に終わらせてはならない。われわれは、軍事費の大幅削減を要求する。
 それ以外にも、特別会計の「余剰金」約50兆円が「埋蔵金」問題として、初めて俎上にのぼった。数百兆円ある特別会計の中に政治家や官僚が利権として隠している資産がこれ以上あることは疑いない。軍事利権や、特別会計に「埋蔵」されたこれら数々の利権を放置して消費税増税を強行することなど言語道断だ。来年の予算国会でも軍事疑獄追及の手を緩めず、軍事費削減のキャンペーンにつなげていこう。

(4)今回の軍事疑獄、軍事利権構造とブッシュ=小泉の軍事戦略は不可分一体のものである。われわれは、小泉政権以来の対米従属型の新しい軍事戦略の転換と軍事疑獄、軍事利権の一体性を強調する。小泉政権によるインド洋への艦船の派遣、イラクへの陸上自衛隊派兵とともに推し進められた戦後軍事外交路線の転換、すなわち戦時に、戦場そのものに自衛隊の陸海空全ての武装部隊を海外に送り込むという憲法9条に真っ向から違反する路線転換、米軍と一体化・融合する形で海外派兵体制を構築しようと目論む新しい路線は、それに直接関わる新しい利権構造とその疑獄化を促進している。ブッシュの侵略戦争への加担は、自衛隊の兵器・装備調達の面においても質的な変化をもたらしているのである。「専守防衛」型兵器から「周辺事態対処」型兵器へ、さらには海外派兵、対テロ・対ゲリラ戦重視の「攻撃的侵略的実戦」型兵器への転換である。守屋と宮崎の贈収賄で問題になっているチャフフレアディスペンサー、生物剤検知装置、次世代護衛艦エンジン、次世代輸送機CXエンジン等々こそ、海外派兵と対テロ戦争のための侵略型・海外派兵型兵器である。
 確かに小泉以来のこの軍事外交路線の暴走はまだ止まらない。しかし、この間、幾つかのブレーキがかかり始めている。米軍がイラク戦争・占領で泥沼化し、アメリカ帝国主義の衰退が加速し、ブッシュ政権が末期症状を見せ始めた時から、ブッシュ戦略と一体のものとして進んでいたこの路線に陰りが出てきた。米の対北朝鮮政策の転換を背景にして、対北朝鮮戦争挑発を利用することもできなくなった。致命的だったのは参院選での敗北である。安倍政権の行き詰まりと自壊の中で、この路線を集団的自衛権行使解禁、憲法改悪にまでエスカレートさせようとする策動が挫折した。自公政権はテロ特措法の期限切れと撤収を余儀なくされた。小泉以来のこの路線に急ブレーキがかかったのである。福田政権下の「ねじれ国会」の中で今回の事件が表面化したのも同じ流れである。軍事費を大幅削減するためにも、軍事戦略の暴走を止めることが不可欠の条件になる。軍事疑獄追及の闘いを、軍事費大幅削減、対米従属=海外派兵型の軍事外交路線反対の闘いに結び付けて闘おう。


2007年12月22日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局