外交官2人の死の全責任は小泉政権にある
今すぐイラク特措法を廃止し、自衛隊の派遣を断念せよ!
◎無法・違憲のイラク戦争への支持・支援を直ちに撤回せよ!
◎電話・FAX・メールで首相・外務省に抗議を集中しよう!     <抗議先>
◎イラク派兵反対で小泉政権の責任を追及し追い詰めよう!

 小泉首相はどこまでごまかし逃げ回るのか。彼は数の力でイラク特措法という違憲・無法の自衛隊派兵法を押し切っただけで、国民に何の説明もしていない。衆院選挙で逃げ、特別国会で逃げてきた。コソコソコソコソ、卑劣で無責任極まりない。一体何のために、誰のために自衛隊を派兵するのか。一体何のためにイラクの人々を殺しに行くのか。自衛隊を派兵すれば日本国民全体がイラクとアラブの敵になるのは目に見えている。事は国民の命に関わることである。今すぐ“イラク国会”を開き、徹底審議をすべきである。何の説明も出来ず、問題をはぐらかし国民の命を危険にさらすだけなら小泉首相は即刻辞めるべきである。
※大義名分はとっくの昔にデタラメなことがばれている。大量破壊兵器は結局なかったのだ。自民党安倍幹事長は、「エネルギー資源を頼っている地域の安定という我が国の国益」(朝日新聞11/29)が大義名分だと、新たなこじつけを行った。コロコロ変わる理由付けの中に、対イラク戦争での対米協力の無法性と不当性が現れている。

(1)米英の軍事占領の一端を担わされた2人の外交官−−小泉首相は外交官の死について全責任を負うべき。
 ついに、日本人外交官2人がイラク北部のティクリート付近で襲撃を受け、殺害される事件が起こった。邦人の、しかも政府を代表する外交官がレジスタンスと思われる者の襲撃を受け死亡するのは初めてである。悲劇的で残念なことである。
※日本人外交官2人殺害、イラク北部(朝日新聞)
http://www.asahi.com/international/update/1130/002.html

 しかしこれは起こるべくして起こった事件である。私たちは真相を知る必要がある。彼らは襲撃された場所で一体何をやっていたのか。これまでの報道を見る限り、2人の外交官は29日にティクリートで開かれることになっていたCPA(米暫定占領軍当局)主催の「北部イラク復興支援会議」に出席するために移動中だったという。
 しかしティクリートでなぜ今「復興支援会議」なのか。そもそもここに最大の疑問がある。皆殺し作戦の中心地で「復興支援」?! 誰がこんなデタラメを信じるであろうか。ここは今米軍が11月中旬より始めた大規模掃討作戦−−“アイアン・ハンマー”,“アイビー・サイクロンU”−−の最大の激戦地の一つになっていたはずだし、4月以来米軍によるイラク民衆虐殺事件の多発地帯であり反米意識が最も強いスンニ派三角地帯の中心地であった。米軍の残虐行為と大量殺戮作戦によって、反米抵抗闘争が最も支持を広げている地域なのである。
※米軍が今やっている掃討作戦は、かつて彼らがベトナムでやったのと似ている。あるいは今イスラエルがパレスチナにやっているのと似ている。村全体を有刺鉄線で取り囲み、身分証明書の携帯を要求、レモンやナツメヤシなどの農地をブルドーザーで破壊する蛮行。そしてゲリラを村ごと、村民ごと空爆で殺りくするという皆殺し。等々。−−今やスンニ派三角地帯は、イラクの「ヨルダン川西岸地区」と呼ばれる状況になっている。「イラク戦争被害記録」参照。

 殺害された2人の外交官は、人道復興支援などで派遣されているのではない。「CPAとの調整役」、つまり軍事占領権力に日本政府の命令で出向していた3人のうちの2人なのである。
※「外交官殺害『事前に予告』 奥参事官 生前語る」(朝日新聞12/1)。この記事によれば、日本政府関係者でCPAとの連絡調整に当たっていたのは、奥氏、井ノ上氏、ら3人であったという。
※興味深い報道がある。「イラク・殺害外交官 ODA調査も予定」(毎日新聞12/1)。この記事によれば、この訳の分からぬティクリート「復興支援会議」に併せて、殺された2人がイラク北部対象のODA(政府開発援助)の事前調査を行う予定だったというのだ。つまり米軍の大規模掃討作戦の展開地域にカネを投入し、切り崩していくというものである。米軍が軍事力で平定するとすれば、その後を日本の外務省が札束で買収していく作戦だ。これが「復興支援」の実態なのである。イラク民衆から米国も日本も同罪と見られるのは当然である。

 彼ら2人は、バグダッドが陥落し米による「戦後」の占領支配が日程に上り始めた4月半ば、米国防省の直轄機関として作られたORHA(人道復興支援室)に派遣され、占領権力がORHAからCPAに代わった後も、米の軍事占領支配に積極的に協力してきた外務省の出先であった。2人の仕事は、米英の軍事占領体制、治安弾圧がどう進んでいるかを本国へ報告する任務が中心であった。現に米英軍の部隊配置状況を報告している。また自衛隊派兵の準備のための現地窓口を兼ねていた。彼らは外務省の対米追随政策の人質であり、小泉首相のブッシュ大統領への忠誠の証であった。こうしたこと全体から見れば、殺された外交官は、ブッシュ追随の小泉首相の戦争政策の最初の犠牲者、被害者であるが、明らかにイラク民衆に対しては加害者、悪質な米軍の加担者である。
※ここにはORHAの一員、CPAの一員であることが、奥氏の口から語られている。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/annai/staff/iraq/20030601.html
※奥氏はCPAの国際調整評議会のオフィスに所属している。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/annai/staff/iraq/20030826.html
※ここには米軍の部隊の展開状況の報告がある。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/annai/staff/iraq/20030911.html
※奥氏はまた自衛隊派兵準備を担当する岡本補佐官ののイラク視察の一切を取り仕切っている。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/annai/staff/iraq/20030907.html

 ブッシュの後ろに隠れていれば安全だと考えていたのであろうか。「テロに屈しない」「ひるんではならない」「やるべきことはやる」「自衛隊派遣の基本姿勢は変わらない」等々、相も変わらず小泉首相、福田官房長官、川口外相は無責任を決め込んでいる。イラク戦争を支持した責任、日々イラク民衆を殺している責任、占領協力のために外務省職員を派遣した責任、そして外交官を死に追いやった責任等々、全ての責任は小泉首相と小泉政権にある。私たちは、今回の責任を徹底して追及し小泉政権を追い詰めて行かねばならない。

(2)相手は「テロ」ではない。反米・反占領レジスタンスである。
 2人の外交官を殺したのが誰であるかは、まだ不明である。幾つも情報が飛び交っている。しかし今のところ反米・反占領のレジスタンスの可能性が非常に高い。

 ところが小泉首相と閣僚達は、口を開けば「テロ」という言葉で問題の本質をごまかそうとしている。しかし仮に襲撃したのが反米・反占領勢力だとしよう。侵略者への抵抗は「テロ」ではない。米英の侵略者こそが「国家テロリズム」なのである。米軍が自分たちの思うように占領支配できないからと言って、大規模掃討作戦を拡大強化すればするほど、イラク民衆の反撃も拡大し激しくなるのは当然であり、正当で合法的な行為である。
※イラク人の8割、駐留軍に不信感…英調査(読売新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20031202-00000002-yom-int

 私たちは政府与党や大手メディアが、こぞって2人を殺害した者たちを「テロ」と決め付けることに抗議する。国際法に照らして一体どちらが侵略者でどちらが被侵略者なのか。どちらが加害者でどちらが被害者なのか。どちらが「テロリスト」でどちらがその犠牲者なのか。具体的に明らかにすべきである。

(3)「復興支援」というデマはやめよ。米英の占領支配こそ、日本の占領支援こそが真の復興支援を妨害している。
 また政府与党は、口を開けば「復興支援は続ける」「復興支援という基本姿勢は変わらない」等々と言うが、これほどウソと偽善に満ちた発言はない。殺された2人が何をしていたか、何をさせられていたかは、すでに述べた。

 では2人の出向先であるCPAは一体何をしているのか。まず第一に、占領に抵抗するイラク民衆への強権的弾圧と皆殺し作戦である。第二に、米国及び米系石油メジャーによる石油利権の略奪であり、石油収入の強奪である。そして第三に、米系多国籍企業と軍産複合体へのくれてやりである。CPAの本質はイラク人民の国富である石油収入を盗み取り、それを自国の多国籍企業に分け与えボロ儲けさせているのである。CPAの一体どこが「復興支援」なのか。ウソ八百はもうやめるべきだ。
※シリーズ「ブッシュと復興利権」参照。
(その4) donors_or_robbers.htm
(その2) goldrush.htm
(その1) reconstruction_spoil.htm

 米英の占領権力と一体となって「復興支援」に関わってきた国連の諸機関は、先に攻撃を受け撤退した。多くの民間NGOもまた、治安悪化で撤退している。米英の占領支配が続く限り、「復興支援」などは不可能なのである。こんな状況であるにもかかわらず、政府与党は「復興支援」の呪文をただ唱えているのである。大手メディアはなぜこのデタラメを正直に書かないのか。米英の占領支配と日本の占領協力こそが、真の復興支援を遅らせ妨害している事実をなぜ正直に書かないのか。

 復興支援と言うなら、まず米英の占領支配をやめることである。国連への権限委譲でもない。一刻も早くイラクの人民大衆に国家権力を委譲すること、民族自決権を保証することである。ましてやイラクに米軍基地を残すことでも、米系多国籍企業の経済支配を残すことでも、新たな「傀儡政権」作りをすることでもない。

(4)完全に破綻し迷走するブッシュの占領支配。
 イラク民衆の「ラマダン攻勢」によって、ブッシュのイラク占領支配は完全に破綻した。10月25日ラマダンが始まり、11月1日の抵抗の日を中心に、イラク人民の側から米軍、米の同盟軍、米軍に協力するイラク人に対する同時多発の連続した激しい攻撃が開始された。米軍の大型ヘリ、輸送ヘリが相次いで撃墜され、イタリア警察本部が自爆攻撃され、同時多発的に米兵が襲撃された。パレスチナホテル、石油省が攻撃された。11月の米と同盟軍の犠牲者数はイラク戦争を通じて最大だという。

 ブッシュ政権は、現に生じている事態の前にあわてふためき、占領政策の混乱に陥っている。それを象徴する出来事が11月27日のブッシュのバグダッド電撃訪問だ。これは米軍の士気の低下が極限に達していることを示している。「イラクの人々の歓迎」を演出することに失敗し、わずか2時間半ですごすごと帰国せざるを得なかった。また米軍を削減すると言ったり増派すると言ったり、イラク人へ主権委譲をすると言ったり、いや主権委譲後も米軍を駐留させると言ったり。等々。−−占領政策は迷走を繰り返し始めている。

 今ではもはや明らかだが、そもそも米はイラク占領政策に関する緻密な政策など全く持っていない。アメリカは何の戦略も持つことなく、中東支配=軍事覇権と石油利権のためにイラクに駐留し、いたずらに自国の若い兵士の命を消費し、イラク人民の殺戮を継続しているにすぎない。そして忠実な「同盟国」に圧力を掛け、自国以外の兵士にも“死の身代わり”を要求しているのである。「出口戦略」の欠如、泥沼化、ベトナム化、イラクとベトナムの共通性−−このような話題がマスコミに登場しない日はない。

 米国務省は今回の事件について、「日本はイラク復興で重要な役割を果たしてきた。安定した統一的かつ民主的なイラク建設を支援するわれわれの決意が、このような凶悪な攻撃によって弱まることはない」と語った。イラク情勢が泥沼化している下で、この事件によって日本が動揺することに釘を指し、あくまでも日本の対米協力と自衛隊派遣を要求しているのである。一体、小泉首相はどこまで暴走するつもりなのか。

 日本の外交官だけではない。2人が殺された同じ日、スペインの情報部員7人がイラク南部で殺害された。この事件では、興奮した群衆が、路上の遺体をけったり踏んだりしていたという。侵略者への激しい憎悪がそこにはある。スペインは、10月に外交官が殺され、11月上旬には、バグダッドから外交官を引き揚げていた。米軍のみならず、同盟国全体がイラク人民の怒りを買っている。侵略者である米英に協力する国々全体がイラク民衆による怨嗟の対象になっているのだ。2人の死が示しているのは、政府の言う「復興支援」が、イラク民衆にとっては、受け入れることのできない占領支配、植民地支配に他ならないということである。
※スペイン情報部員7人殺害 イラク南部(CNN)
http://www.cnn.co.jp/world/CNN200311300005.html

(5)政府与党は揺れている。小泉首相、外務省に抗議を集中しよう。
 小泉政権が責任をとる唯一の道−−それはイラク特措法を廃止し自衛隊派兵計画を全面的に中止すること、米のイラク侵略支持を直ちに撤回すること、中東地域に派遣した自衛隊艦船を全面的に撤収することである。それができないなら小泉首相は即刻辞任すべきだ。

 今回の事件はまさに、自衛隊派遣が決定されようとする直前に起こった。今回の外交官の運命は明日の自衛隊員の運命である。私たちは小泉政権に対し2人の死の重さ、責任の重大さを真剣に受け止めさせなければならない。最新の世論調査では、実に8割の国民が自衛隊の派遣に反対・慎重であるという。政府与党内でこれまでになく慎重論が出始めている。政府与党は来年の参院選挙を気にし始めている。珍しく民主党が反対姿勢を前に出そうとしている。反戦運動の好機だ。電話・FAX・メールで首相と外務省に抗議を集中し、攻勢に出よう!
※イラク派遣:反対・慎重派が8割超(毎日新聞)
http://www.mainichi.co.jp/news/selection/20031201k0000m010033000c.html

 とはいえ首相も自民党も強気姿勢を崩していない。政府は今回の事件前11月28日、陸上自衛隊部隊を来年2月上旬から4波に分けイラク南部のサマワ周辺に順次派遣し、3月下旬までに約550人もの陸自隊員を投入する計画を明らかにした。さらに12月中旬までに自衛隊派遣の「基本計画」を閣議決定し、年内に派遣時期や活動地域・内容などを明記した「実施要項」を策定、今年中に先遣隊をクウェートとバグダッドなどに派遣するとしている。あと一押し、二押し頑張れば、政府与党の分岐を生み出すことができ次の展望が出てくるだろう。

2003年12月1日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局


抗議先

● 小泉首相
 〒100-0014 千代田区永田町2-3-1 内閣総理大臣官邸
  首相官邸 Fax: 03-3581-3883 Tel: 03-3581-0101/03-5253-2111
  WEBサイト投稿ページ: http://www.kantei.go.jp/jp/forms/goiken.html

● 川口外務大臣
 〒105-8519 東京都港区芝公園2−11−1 外務省
 外務省 E-mail: goiken@mofa.go.jp Tel: 03-3580-3311
 WEBサイト投稿ページ: http://www3.mofa.go.jp/mofaj/mail/qa.html