小泉首相はイラク戦争支持の誤りを認めよ!
◎大量破壊兵器がなくても、イラク人を大量殺戮しても、イラク戦争は正しかったのか!?
◎自衛隊を今すぐイラクから撤退させよ!


[1]許されないブッシュ大統領の開き直り。「3万人の犠牲者」発言の真相。

(1) ブッシュ大統領は、12月14日の演説で、「開戦時の多くの情報が誤りだった」と語り、イラクによる大量破壊兵器の保有を核心とする開戦根拠がでっち上げであったことを「認めた」。しかし、口先では「イラク戦争開戦の責任は私にある」と述べたが、「3万人」の市民を殺した自分の戦争犯罪とその責任は何も認めず、イラク国民に対して謝罪も行わなかった。そればかりか、最後に「イラク戦争は正しい」と言って開き直り、イラクからの米軍の撤退を明確に否定した。侵略軍である米軍の撤退を決断せず、謝罪も補償も行わない「責任」など、責任の名に値しない。追い詰められた末のごまかし、開き直りに過ぎない。そもそもこのような重大なことを単なる「演説」で済ませようとすること自体、責任の重みを自覚していない証である。私たちはブッシュとアメリカ帝国主義を絶対に許すことは出来ない。

 ブッシュ政権は、この夏以降、議会での撤退論の浮上、CIA情報漏洩疑惑、シーハンさんをはじめ戦死者家族たちの「戦争の大義」を問う声の高まりと撤退の要求、2100人を越えた米兵戦死者、巨大ハリケーン・カトリーナによる被災者放置等々で追及され深刻な危機に陥った。とりわけ大量破壊兵器問題では、CIA情報員名漏洩事件が発覚し、リビー補佐官が起訴された。まさにイラク戦争の準備が進められていた2002年当時、「大量破壊兵器保有の証拠」をでっち上げようとしたブッシュ政権を告発しようとした人物を政治的に抹殺しようとし、ローブ補佐官、チェイニー副大統領といった政権の中枢が関わっていた疑惑が浮上し、“イラク戦争の正当性”が焦点となったのである。すなわち、大量破壊兵器があったかどうかだけではなく、政権中枢の誰がでっち上げたのか−−ここまで事態は進もうとしたのだ。
 ブッシュの一連の演説は、これまで追及され窮地にあった事実を「開戦情報は間違い」「開戦の責任は私にある」と認めることであたかも事態に対して真面目な態度を取っているかのように装い、最低のレベルにあったブッシュ政権への支持をいくらかでも取り戻そうという姑息な策動に他ならない。


(2) 大量破壊兵器の保有が誤情報であることについては、すでに2004年のはじめには米政府大量破壊兵器調査団の当時のケイ団長が明らかにし、同年10月6日には、同調査団の『ドルファー最終報告』が、「イラクには大量破壊兵器はなかった」「開発計画もなかった」と断定した。そして、当時のパウエル国務長官が情報が誤りであったことを認めている。最終報告からすでに一年以上が経っているのだ。戦争を始めて3年近く経ってようやく大統領自身が「認めた」のだ。遅すぎる! 追い詰められごまかし続けることができなくなって渋々「認めた」ふりをしなければならなくなったのだ。しかも、ごまかしと開き直りの形で。

 「3万人が死んだ」という発言も同じである。ブッシュ政権は、イラク戦争開戦当初から、イラク人犠牲者のカウントを明確に拒否し、それをとるに足らないものとして扱ってきた。メディアに報じられた今回の発言も、およそまともな流れで出てきたものではない。以下が記者とのやりとりである。

●記者の質問:「イラク戦争開始以来、殺されたイラク人のおおよその数を知りたいのですが。もちろん、イラク人という場合、民間人や、軍、警察、反政府運動家などを含みますが。」
●ブッシュ:「何人のイラク市民がこの戦争中に死んだかだって。イラク人に対する最初の侵攻と暴力が続いたから30000人かそこらが死んだんだろう。我々の軍隊だって2,140人くらいロスしてるんだぜ。」
●ブッシュは、次の質問者を遮ってさらにジョーク続けたという。
●ブッシュ:「質問を繰り返そうかい。その数が気に入らなかったら、修正したっていいんだぜ。」ホワイトハウスの記録では、続いて「(笑いと拍手)」と添えられている。

※3万人という数字が、ブッシュにとってどんな意味があるのか(Does 30,000 Mean Anything to Bush?)
http://progressive.org/mag_wx121305

 もう一度読み返してほしい。日本の大手メディアで報じられた、作られた「ブッシュの真摯さ」(?)と記者会見でのブッシュの真の姿!! ブッシュの、人間の命に対する信じられない軽さ、イラク人に対する蔑視、犠牲者に対する冒涜!! 2100人を超えた米兵の犠牲者についても同様である。イラク・ボディカウントやランセットの評価云々以前の問題である。「3万人の死者」発言は、単なる雑談、四方山話として出され、そのブッシュの発言に、主要メディアのぶら下がり記者らも一緒になって笑っているのである!!そして腐りきった記者会見の実情をまるでまともな会見として伝える日本の大手メディアの腐りきった現状!!
※「Iraqi civilian deaths mount -- and count」http://www.boston.com/news/globe/editorial_opinion/oped/articles/2005/12/17/iraqi_civilian_deaths_mount____and_count/


(3) ブッシュ演説の最も危険な点は、「大量破壊兵器があったのかどうか」「何人のイラク人が死んだのか」−−イラク戦争の焦眉の問題に答える形を取りながら、実際には驚くほど傲慢な態度で開き直り、正面突破を試みている点である。すなわち、イラク市民を3万人以上殺害したが、それがどうした。開戦理由となった多くの情報は誤りだったが、それがどうした。大量破壊兵器は無かったが、それがどうした。2100人を越える米兵が死んだが、それがどうした。とにかくイラク戦争は正しかったのだ。イラクにありがたいアメリカ型民主主義(と米国の権益)をつくってやったではないか、感謝しろ。ブッシュは神妙な顔つきをして、自らの不法な戦争を更に厚かましく正当化したのである。

 しかし、イラク戦争の最高司令官が、国際法上の開戦の唯一最大の根拠となった大量破壊兵器情報が誤りであることを認めた以上、イラク戦争そのものが大義名分のない根本的に誤った侵略戦争であることは明らかである。イラクの占領支配と米軍駐留、イラク人民の殺戮、アメリカが勝手に描いた「イラク民主化」のシナリオ−−これらすべてが誤りであることは明確である。ブッシュ大統領は今すぐこのことを認め、米軍を即時無条件に撤退すべきである。



[2]突き崩れるイラク戦争支持=自衛隊派兵の根拠−−小泉首相も同罪。

(1) 主要メディアは、ブッシュ発言をまるでブッシュが戦争の責任を認めたかのかのように報道した。そしてアメリカが侵略し、無実の人々を殺害し占領し勝手に決めた、@主権委譲、A暫定国民議会選挙、B憲法制定、C新憲法下での国民議会選挙というシナリオを「イラク民主化の道」であるかのように描き、ブッシュがしがみついている虚構の宣伝の片棒を担いでいる。
 それだけではない。日本のマスコミは、小泉首相と閣僚の開き直り発言を追及するどころか、全く問題にしていない。ブッシュ大統領同様、イラクの大量破壊兵器保有をまるで真実であるかのように宣言し、それを根拠に開戦支持に突き進み自衛隊を派兵したのは他ならぬ小泉政権である。その意味ではブッシュも小泉も全く同罪である。さらにメディアも大量破壊兵器のウソを垂れ流し、小泉に加担した責任を負っている。私たちは、国際法違反、国連憲章蹂躙の侵略戦争を支持しそれに加担している小泉政権の責任を改めて徹底追及しなければならない。

 ブッシュ大統領の演説を巡って、小泉政権の首脳は次々とブッシュ支持と開き直りの発言を行った。「イラク開戦支持は反省しない」、「国連決議に基づいて支持した」、「イラク戦争後テロの脅威は減退した」等々、開き直りとでたらめ発言を繰り返したのである。
 小泉首相は、「大統領は(戦争開始の判断は)正しかったと発言している。イラクが大量破壊兵器がないと証明すれば、戦争は起こらなかった」「日本は国連決議に沿って判断した」「(反省点は)あると思っていない」と語った。安倍官房長官も判を押したように、「大量破壊兵器を持っていないことを証明する責任はイラクにあり、イラクはそれを無視し続けた。武力行使は安保理決議に基づいたもので、日本の支持は合理的な判断だった」と語った。麻生外相はさらに、「イラクから発せられるテロの脅威が著しく減退したことは確かだ」とも語っている。彼らはブッシュ大統領が正しいと言えばどこまでもついていくという無責任極まる小泉政権のスタンスを再度確認した。あまりの政治的貧困さと無責任さにあきれるばかりである。私たちは、小泉首相と閣僚たちの事実わい曲と開き直りを絶対に許すことはできない。
※首相、イラク開戦支持「反省点ない」(朝日新聞)http://www.asahi.com/politics/update/1215/007.html
※イラク戦争、日本の判断の正当性改めて主張 官房長官(朝日新聞)http://www.asahi.com/politics/update/1215/004.html
※イラク発のテロ脅威減退 9・11と絡め麻生外相(共同通信)http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20051216-00000103-kyodo-pol



[3]小泉によるブッシュ擁護の恐ろしさ−−日本も「ウソに基づく戦争」=国際法違反の侵略戦争を認めるのか!

(1) 開戦情報は間違いだったというブッシュの言明は極めて重大なかつ決定的な意味をもっている。小泉政権もマスコミもブッシュ発言の持つ重大性について口をつぐんでいる。まずはその重大性から問題にしなければならない。
 開戦情報=「フセインは大量破壊兵器大量破壊兵器を持っている」「イラクはテロリストを支援している」の2点は、ブッシュ政権がイラクに戦争を仕掛けた際の国際法上の唯一最大の根拠であり「戦争の大義」だった。ブッシュは、「イラクによる大量破壊兵器保有」、従って「イラクの脅威」を理由に戦争に突き進んだのである。
 2002年秋には、ブッシュが大量破壊兵器の証拠があると言って安保理に「イラクに無条件全面査察を迫る」決議1441を採択させた。イラクが無条件全面査察を受け入れ、2003年2月〜3月に英米を除く安保理諸国と査察を行う国連監視検証査察委員会UNMOVICと国際原子力機関IAEAが査察の継続を主張し、米国の戦争決議案を認めなかったときに、安保理諸国の反対を押し切って勝手に戦争を始めた理由もこの「大量破壊兵器問題」であった。そして、先制攻撃戦争という明らかに国連憲章に違反するイラク戦争への国際的な批判を封じ込めたのも「イラクは大量破壊兵器を持ち脅威を与えている」という米の主張であった。

 要するに、2002年秋〜03年3月20日の開戦に至る過程で、国連安保理を舞台とする開戦派と査察継続派との対立の形で争われていた政治闘争の帰趨は、すなわち全世界を戦争の渦に巻き込むかどうかは、“米国の開戦情報”に全面的にかかっていた。−−それが間違いだったのだ。当時から私たちが大いなる疑惑を持って主張していた開戦根拠のでっち上げが、もはや誰も否定できないまでに明白になったのである。私たちが想像していた通り、それはブッシュ政権がでっち上げたものだった。それを最高責任者であるブッシュ大統領自身が認めざるを得なくなったのである。

 従って、イラク戦争に加担した者も責任を明らかにしなければならない。小泉のように「ブッシュは戦争は正しかったと言っている」と他人の責任であるかのようにすり替えたり、「イラクが証明しなかったから悪い」とあたかもイラクに責任があったかのように責任を転嫁するのはまともな政治家のする事ではない。その大義の下に一個の独立国家が崩壊させられ、国土が滅茶苦茶に破壊され、多数のイラク人が米軍によって殺されたのだ。「間違いでした」で済む問題ではない。まずはブッシュの戦争を全面的に支持してイラク戦争に加担してきた自分の責任を明らかにするべきではないのか!!


(2) 「ブッシュは正しいと言っている」というふざけきった小泉の発言は論外である。日本の私たち小泉政権に次の問題について明確に答えるよう追及し詰問しなければならない。−−もし、当時大量破壊兵器がないと分かっていても日本はブッシュの戦争を支持したのか。デタラメな偽情報を振りかざすのではなく、あからさまに本音で「『大量破壊兵器はない』『テロリストとも関係ない』が、フセインは気に入らないから戦争を仕掛ける」、と持ちかけても小泉は支持するのか。問題はこういうことなのだ。小泉と政権の主要閣僚が次々と開き直ってブッシュを支持しているのは、要するに開戦情報の誤りが当時分かっていたとしても戦争を支持したのだと主張しているのである。

 実は小泉政権にとっての、重大な疑惑がある。防衛庁情報本部は当初、イラクは大量破壊兵器を「保有していると言われているが、明確な証拠はない」と結論づけていた。これは、米軍からのイラク情報、欧米や中東の防衛駐在官が収集した情報、報道資料、インターネットで集めた海外の論文等々を参考に作成されたものだった。しかし、その報告は幹部によって「保有する可能性は否定できない」に書き換えられた。しかも開戦直前になって、イラク戦争支持の緊急声明を準備していた小泉首相は自ら、「事務的なことはいい。米国の行動を支持すると言える材料をできる限り持ってきてくれ。あとは自分で考える」と指示したというのである。この決定的に重要な事実は、2004年9月25日の朝日新聞の小さな連載記事に掲載されただけで、国会でも一度も取り上げられていないし、メディアでも追及されていない。
 小泉は、今後も「ブッシュだ正しいと言っている」というだけで、でっち上げの侵略戦争を支持し自衛隊派兵を続けるのか。ここを徹底的に追及しなければならない。
小泉首相は「大量破壊兵器がある」と国民をペテンにかけてイラク侵略を支持し自衛隊派兵まで強行した責任を取れ!(署名事務局)


(3) 言うまでもなく、米が全世界に強引に突きつけた大量破壊兵器の情報が真っ赤なウソであると分かっていたら、国際世論は米国の侵略戦争に黙っていなかったであろう。それでなくても少数派であった米英の開戦派は完全に孤立したはずである。安保理諸国は米国の提案した開戦決議を拒否するという消極的な行動にとどまらず、国連憲章を真正面から踏みにじる侵略国家を非難したであろう。その場合には多国籍軍参加国はおろかブッシュの忠実な番犬であった英国や日本でさえ、国連内部で多数派工作をすることも難しくなっていたであろうし、それぞれの国内でも孤立し、極めて困難な事態に追い込まれていたであろう。何せ、2000万人〜3000万人の反戦平和運動が、国連の外で高揚していたのだから。

 小泉首相は、ごまかさずに正面から答えるべきだ。もし、大量破壊兵器がないと分かっていても米の戦争を支持したのか。その場合根拠は何か。大量破壊兵器を持たない、テロとも関係がない、周辺国に脅威を及ぼす可能性もない、そのイラクを米が気に入らないと言うだけで打倒しても構わない、そういう国際法の暴力的蹂躙を認めるというのか。(「独裁政権である」というのは口実にならない。なぜならイラン・イラク戦争の時は米国はフセインにてこ入れした−−気に入らない独裁政権ということが問題なのである。)


(4) この問題はすでに過ぎ去った過去の問題、ありそうにもない仮定の問題ではない。現在の問題、小泉政権が今まさに、中国や韓国やアジア諸国から完全に孤立している真っ直中で、「日米同盟がうまく行けば、いずれアジア諸国との関係はうまく行く」というような首相が取り仕切る自民党政権の新しい軍事外交戦略の問題なのである。
 米がウソの情報をでっち上げて国際法上断じて認められない独立主権国家に対する公然たる先制攻撃と侵略戦争を強行したという事実。今、その根拠がウソであることが改めて明らかになった。ウソに基づく戦争を批判するのか、肯定するのか。大量破壊兵器はなくても構わなかったのか。しかし、小泉政権の閣僚が言っているのは大量破壊兵器がなくても攻撃して構わないと言うことだ。「米にとって脅威であると認定すれば攻撃しても構わない」ということ、露骨な侵略政策、戦争政策をとっても構わないということだ。米国が脅威だと認定すれば戦争を仕掛けてもいい?! もし、そうならば小泉政権は中国に対して戦争を仕掛けてもいいと考えるのか。米国どころか自国の外務大臣である麻生が「中国は脅威だ」と公言している。だとすれば、この「日本の脅威」を先制攻撃することは正当だと主張するのか!
※中国の軍事力「かなり脅威」 麻生外相(朝日新聞)
http://www.asahi.com/special/050410/TKY200512220179.html
※中国外務省、麻生外相の中国軍脅威論「極めて無責任」(日経新聞)
http://www.nikkei.co.jp/news/seiji/20051222AT1E2201022122005.html

 大げさに言っているのではない。12月14日の演説でブッシュ大統領は、テロリズムと大量破壊兵器の時代には、脅威が現実化するのを待っているわけにはいかないとして、国連決議や国際法が厳しく禁止している予防攻撃、先制攻撃戦略の正当性を改めて強調し、アメリカが必要と考えた場合はもう1つの国に先制攻撃を加えるとまで言明した。これがイラン、シリアを指しているのは間違いない。
 国際法に従えば、仮にある国が大量破壊兵器を持っていたとしても、それだけを理由にして戦争を仕掛けることなど許されていない。ところが、ブッシュ大統領は、開戦の根拠や犠牲者如何にかかわらず、国際法に違反してでも、アメリカがやると決めた戦争はやり抜くと言明したのである。小泉政権はブッシュが正しいと言えば、このような先制攻撃戦争も正当化されると考えるのか。私たちはこの問いを小泉に迫らなければならない。
※必要ならもう1カ国を先制攻撃=米大統領が強硬姿勢示す(ライブドア)
http://news.livedoor.com/webapp/journal/cid__1554359/detail


(5) 麻生の発言だけではない。現在日本で進められている軍国主義化と戦争準備は、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)や中国を仮想敵とし、「武力攻撃予測事態」という敵からの「攻撃の可能性」だけで、戦争をすることができる体制を作り出そうというものだからである。
 「国民保護法」に基づく基本指針は、中国や北朝鮮との核戦争まで視野に入れている。現実にはありもしない戦争の可能性を煽り立て、都道府県から市町村まで対処計画を作ることを義務づけ、危機感をあおり、「仮想敵」への敵意を作り出すことが着々と進められている。「フセインが大量破壊兵器を持っている」「テロリストの手に渡る危険性がある」というでっち上げと何ら変わらない。11月27日に福井県で行われた初の有事実働訓練での想定は、「美浜原発を国籍不明のテロリストが攻撃」であった。それは明らかに「北朝鮮の工作員」を念頭に置いている。「やられる前にやれ」「攻撃される前に攻撃せよ」−−このような意識を植え付けようとしているのである。



[4]大量破壊兵器はあったのか、なかったのか−−小泉首相はごまかさずはっきりと答えよ。

(1) 小泉政権は上に述べた本質的問題に何一つ真正面から答えず、無条件に「ブッシュ支持」を繰り返している。それだけではなく、今回の事態に対しても人を馬鹿にしたような不真面目な態度、いい加減な態度、嘘とでたらめを繰り返している。メディアからまともに追及されないのをいいことに言いたい放題である。しかし事は多数の市民を殺した戦争犯罪である。ごまかしや嘘で自分の責任を逃れることは許されない。一つ一つの言い逃れのでたらめをを徹底的に追及することが必要である。

a)まず問わなければならないのは、小泉首相は大量破壊兵器があるとした情報が間違いであったと認めるのかどうかということ。
 フセイン政権は大量破壊兵器を保有していたのか、保有していなかったのか、2つに1つ、イエスかノーかの問題である。ブッシュ大統領は、開戦時の情報が誤っていたとし、大量破壊兵器の保有の情報が間違いであったことを認めている。小泉首相はこのことを認めるのか、はっきりさせるべきである。
 このことについて小泉首相は、今回に限らず、過去一度たりとも答えたことがない。いや、大量破壊兵器が無いと言うことを否定し続けている。「フセインがみつからないからといって、フセインが存在しないと言うことになるのか」(2003年6月11日の国会答弁) はあまりにも有名である。大量破壊兵器の保有が間違いであったという2004年1月の『ケイ報告』が出たときも、小泉首相は「まだないとは断言できない」「今でも私はあると思っていますよ」などと言い続けた。当時の福田官房長官は「ないという保証はない。あるという可能性が高い」とさえ言い開き直った。そして、2004年10月、『ドルファー最終報告』が出された時点でさえ、「大量破壊兵器があると想定するに足る理由があったと考えている」「大量破壊兵器だけが開戦支持の理由ではない」と、無かったということを認めず、争点をはぐらかし、逃げ続けたのである。小泉は、米国政府の調査に対しても「いやある」と言い続け、それによって責任を回避し続けた証拠と根拠を明らかにすべきなのである。
「戦争の大義」、派兵の前提は崩れた!−ケイ証言を否定するなら、小泉首相はイラク大量破壊兵器の“決定的証拠”を見せよ−(署名事務局)
第1部 米政府大量破壊兵器調査『ドルファー最終報告』−−確定したイラク大量破壊兵器保有のウソ。確定したイラク戦争は違法な侵略戦争。開戦責任追及の原点に立ち返るべき時 (署名事務局)
 2004年10月の『ドルファー最終報告』は「核兵器は91年に開発計画を断念した」「化学兵器は91年に備蓄を自主的に廃棄した」「生物兵器も91−2年にわずかな備蓄も破棄した」とすでに1990年代はじめには廃棄したことを認め、開戦の根拠となった大量破壊兵器保有とはかけ離れていたことを結論づけている。


b)ないことをどうやって証明するのか−−「イラクが大量破壊兵器がないと証明すれば、戦争は起こらなかった」(小泉首相)は詭弁にすぎない。
 問題は、イラクが大量破壊兵器をないと証明できたかどうかではなく、現実にあったかどうかである。開戦時の小泉首相の言葉を見てみよう。
−−「もしも、今後、危険な大量破壊兵器が、危険な独裁者の手に渡ったら、どのような危険な目に遭うか、それはアメリカ国民だけではありません。日本も人ごとではありません。危険な兵器を危険な独裁者に渡したら、我々は大きな危険に直面するということをすべての人々が今感じていると思います。これをどのように防ぐか、これは全世界の関心事であります。(2003年3月20日の小泉総理大臣記者会見)
−−「イラクは12年間、国連の決議を無視し、大量破壊兵器の破棄をしてこなかったのです。」(2003年3月20日メールマガジン)

http://www.kantei.go.jp/jp/m-magazine/backnumber/2003/0320.html
−−「問題の核心は、イラクが自ら保有する大量破壊兵器、生物兵器、化学兵器を廃棄しようとしないこと、国連の査察に無条件、無制限に協力しようとしないところにあります。(2003年3月27日メールマガジン)等々。
http://www.kantei.go.jp/jp/m-magazine/backnumber/2003/0327.html
 
 小泉首相は、このように「大量破壊兵器」を「イラクが自ら保有する」と語り、イラクが大量破壊兵器を廃棄しようとしないことが問題だと主張しているのである。しかし、持っていないものをどうして証明できるのか、持っていないものをどうして廃棄できるのか、しかも持っていないものを廃棄したことをどうして証明できるのか。(自分自身の身になって考えればすぐに分かることである)


(2) しかも以下で述べるように、イラクは大量破壊兵器を保有していないことを証明しようとしたが、英米は難癖をつけ、イラク戦争に突き進んだのである。

a)「日本は国連決議に沿って判断した」(小泉首相、安倍官房長官)はウソ。−−国連決議は武力行使を認めていない。米国は国連安保理で孤立し勝手に開戦し、日本はそれを勝手に支持した。
 小泉首相は、「フセイン大統領が国連決議に従わない」ということを、巧みにすり替えながら3つの意味で使っている。まず第一に、大量破壊兵器を廃棄しないという意味である。これは全くのでっち上げであった。破棄も何も、元々大量破壊兵器はなかったのだ。この点についてはすでに述べた。

 第二に、フセイン大統領が無条件査察に応じないという意味で使っている。しかし、これも真っ赤なウソである。
−−まず、フセイン大統領は2002年9月、国連の無条件査察を受け入れることを表明した。
−−続いて2002年11月、イラクの国家主権の侵害である理不尽な「強制査察」を求める安保理決議1441を受け入れた。
−−さらに2002年12月8日には、大量破壊兵器を保有していない証拠=「自主申告書」を国連に提出した。ここでイラク政府は「大量破壊兵器を持っていない」と申告した上で、12,000nに及ぶ膨大な証拠資料を取り揃え提出した。
−−2003年1月9日、2月28日、3月7日の、UNMOVICとIAEAの評価報告・中間報告において、UNMOVICとIAEA自身がイラク側の査察への全面協力を肯定的に評価している。査察の実務でもイラクは誠実に対応し決議違反はなかった。

 第三に、イラクに対する戦争を認めた国連決議、いわゆる「武力行使決議」は存在しない。2003年2〜3月、米英は、2002年11月に採択された安保理決議1441の「重大な結果を招く」の部分を理由に、開戦に突っ込もうとしたが、安保理多数派に拒絶された。米英は1441違反を諦め、イラク開戦を認める「新決議」を国連で採択する方針転換して、執拗な多数派工作を続けたが、これも安保理多数を獲得できず、断念したのである。すなわち米英は国連決議違反を開戦根拠にすることを断念し、国連ではなく米英単独開戦、有志連合による開戦に突入したのである。

以上のように、小泉首相や安倍幹事長の言う「日本は国連決議に沿って判断した」は全く根拠がないウソである。いったいどの安保理決議が戦争を始めることを認めたというのか。小泉と安倍はその根拠を示すべきである。
ブッシュの対イラク攻撃準備と国際情勢(]U) こんなウソとデタラメがイラク攻撃の論拠になるのか?
−−国連と世界各国の民衆をバカにする9/12ブッシュ国連演説と9/24ブレア報告−−
(署名事務局)

ブッシュの対イラク攻撃準備と国際情勢(]W)国連安保理決議1441に抗議する−−ブッシュは「強制査察」を開戦の口実にするな (署名事務局)
ブッシュの対イラク攻撃準備と国際情勢(]Z)まさか、こんな茶番劇がイラク攻撃の根拠になるの?「決定的証拠」出せず。ウソとはったりのパウエル国連報告(署名事務局)


b)「イラクから発せられるテロの脅威が著しく減退したことは確かだ」(麻生外相)のウソ。
 「創氏改名は、朝鮮の人たちが『名字をくれ』と言ったのがそもそもの始まりだ」「靖国を問題にしているのは中国と北朝鮮だけ」等々、妄言を繰り返してきた麻生外相が、今回のブッシュ演説でも妄言を吐いた。「イラクから発せられるテロの脅威が著しく減退したことは確かだ」と発言したのである。
 この発言は二重の意味で誤っている。まず第一に、ブッシュが言っている「誤情報」には、「大量破壊兵器の保有」だけでなく、「イラクとアルカイダとの関係」「イラクによるテロリスト支援」も入っている。これも、イラク戦争を正当化するためのでっち上げだったのだ。ブッシュは「誤情報」発言で、このことも認めたのである。
※イラクとアル・カイーダ結びつき情報、作り話か(読売新聞)http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20051106-00000114-yom-int
※ネオコンの情報操作を調査 アルカイダ誇張で国防総省(共同通信)http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20051119-00000088-kyodo-int

 第二に、アメリカがイラク戦争を起こしたことで、「テロ」の脅威が高まっているというのが真実である。様々な地域、国々で、米英・多国籍軍のイラク侵略に抗議する「テロ」が現に頻発した。
2004年3月11日のスペインでの大規模な列車テロ、2005年7月7日、7月21日のロンドンでの連続同時テロ、これらはいずれもイラク戦争がらみである。ブッシュとともにイラクへの攻撃を加えたイギリスとスペインに対する攻撃であったと伝えられている。テロ直後に、スペインのアスナール政権は崩壊し、新政権の元でスペイン軍はイラクから即時撤退を敢行した。イギリスはブッシュに対する忠誠を誓いながらも、イラクからの部分撤退を決定しいる。「イラクから発せられるテロの脅威が著しく減退した」どころか、テロにさらされた当事者たちは、イラク攻撃によって世界の民衆の怒りをかき立て、報復の危険を感じているのではないのか。
「対テロ戦争」政策の破綻示した「ロンドン・テロ」 根本問題は「イラク派兵」。小泉首相は自衛隊を直ちに撤退させよ! (署名事務局)
スペイン社会労働党の勝利と軍撤収表明を受けて−−改めて自衛隊派兵の中止・撤収を求める 3・20国際反戦行動を機にイラク反戦の闘いをさらに強化しよう (署名事務局)



[5]イラク開戦のウソを認めない小泉の強硬姿勢は憲法改悪への動きと一体のもの−−自衛隊をイラクから撤退せよよう!

(1) 小泉政権はデタラメな主張を繰り返しながら、ブッシュ政権と「対テロ戦争」(=途上国に対する先制攻撃戦争)に対しては絶対忠誠の姿勢を取っている。しかし、それは憲法を全面的に踏みにじり日本自身を戦前のような他国に対して侵略戦争のできる国に変えていく超危険な策動である。小泉首相の、イラク開戦のウソを認めない強硬姿勢は、今まさに突き進んでいる国民投票法案を先駆けとする憲法改悪への動きと一体のものである。またそれは、イラク派兵を踏み台にし、海外派兵を恒常化させる「恒久法」の制定や、沖縄辺野古への基地建設強行を突破口に、陸海空の日本の自衛隊の指揮所を米軍の司令部と一体化し、日本と自衛隊を侵略的な米軍の戦略・作戦の下により一層組み込み、米軍と融合・一体化させようとする米軍再編など危険な動きと一体のものである。


(2) 私たちは何よりもまず、自国の小泉政権に対し、ウソで始められたイラク戦争そのものへの加担を自己批判させ、直ちに自衛隊をイラクから撤退させるよう要求しなければならない。
 もはや、自衛隊がサマワにとどまる根拠は完全に無くなった。ブッシュ大統領が、「開戦時の多くの情報が誤りだった」と認めたことで、小泉首相にとって、「イラク戦争はブッシュ大統領が正しいと言っている」という以外に、事実上何の根拠も示すことができなくなっているのである。
 サマワの自衛隊はすでに何もやっていない。給水活動は今年2月に終了している。「復興支援」を口にしながら、壁の塗り替えなど学校や建物の「補修」をアリバイ的に進め、地元の建設業者らに発注した工事の完成式典に参加したり、「点検」や「視察」をしているだけである。

 興味深い調査がある。12月はじめにイラク市民に対して行われた世論調査では、半分以上の人が米軍のイラク戦争が誤りであったと答え、7割を超える人々が、連合軍がイラクにいることに反対しているのである。自衛隊も例外ではない。 無法な侵略戦争への加担、占領支配への加担をやめ、自衛隊は今すぐ撤退すべきである。
※What Do The Iraqis Really Want?(time.com)http://www.time.com/time/magazine/printout/0,8816,1139829,00.html 
※「National Survey of Iraq」BBC  http://news.bbc.co.uk/1/shared/bsp/hi/pdfs/12_12_05_iraq_data.pdf

2005年12月26日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局