イラク:ハディーサの市民無差別虐殺
◎虐殺部隊は以前沖縄に配備されていたこともあるキャンプ・ペンドルトンの海兵隊
◎陸自のゲリラ戦共同訓練の教官を務める部隊。米軍再編、日米軍事一体化の危険な本質が明らかに


(1)日本も他人事ではない。今回の虐殺部隊と沖縄とゲリラ戦訓練

 昨年11月19日朝早く、イラクのバグダッドの北西240キロにあるハディーサの町で米海兵隊員が24人もの市民を虐殺したことが明らかになり、海兵隊と軍の権威を根底から揺るがしている。ブッシュ政権のイラク戦争の不当性、非人道性を明らかにし、政権に打撃を与えている。この事件はイラクのソンミ虐殺事件である。海兵隊、海軍が事件の調査に乗り出さざるを得なくなっており、戦争犯罪の調査に取り組まざるを得なくなっている。事件は米軍の一大汚点であり、イラク戦争は誤りとの世論が6割にのぼり、大統領支持率が20%台と史上最低レベルに落ち込んだブッシュ政権に深刻な打撃を与えている。
 しかし、私たちがこれまで明らかにしてきたように、イラク民衆に対する虐殺はこれにとどまらない。この事件はイラクで日常的に無数に起こっている市民虐殺のほんの一例にすぎない。今回の事件を徹底的に暴き糾弾することにより、米軍のイラクでの戦争犯罪全体に国際世論の関心を再び向けさせるとともに、こうした残虐な占領体制に加担する小泉政府の犯罪性をも追及していきたい。
※「1万回のハディーサ」という記事が、このことを端的に表現している。「The 10,000th Haditha.」By Ted Rall 06/01/06 "Information Clearing House" http://www.informationclearinghouse.info/article13457.htm
※また、今回のハディーサ事件がまだ収まらない中で、早くも新しい虐殺事件が暴露され、米軍当局は否定に躍起となっている。新たに浮上したのはサマラでの非武装の市民3人の虐殺である。「In another town, Iraqis say US killed civilians」By Reuters 06/01/06 -- SAMARRA, Iraq (Reuters) http://www.informationclearinghouse.info/article13459.htm
※BBCは、「New 'Iraq massacre' tape emerges 」として、イシャキで今年3月11人の虐殺事件があったことを報道した。http://news.bbc.co.uk/1/hi/world/middle_east/5039420.stm
 これとは別に、イラクからの帰還兵が、市民を無差別殺戮した体験を告白する様子をニュースで流した。今回の事件の報道は、イラク戦争の残虐的な本質を急速に明るみに出しているのである。Iraq War Vets talk about random civilian killings http://www.informationclearinghouse.info/article13454.htm

 私たちが特に強調したいのは、今回の虐殺事件が日本と無縁ではないということである。先日、政府が閣議決定を強行した米軍再編、すでになし崩しで先行している日米共同演習、そして、実際の侵略戦争を共同で遂行するための憲法改悪等々が、今回の事件と密接不可分に結び付いているからである。
 今回の虐殺部隊は、以前沖縄に配備されていた事もある海兵隊である。しかも、陸自がこの部隊を教官にしてすでに実戦さながらのゲリラ戦訓練をしている。これは何を意味するのか。すなわち、米軍再編、日米軍事一体化とは、こうした虐殺部隊と一緒に共同行動するということなのである。更には、憲法が改悪され、イギリス軍と同様の形で、このような米海兵隊の虐殺部隊と共同行動するということは、自衛隊自身も、虐殺行為をするということを意味するのである!!


(2)全くでたらめな海兵隊の報告。浮かび上がった事件の真相

 海兵隊による当初の事件に関する報告は次のように行われていた。「ハディーサに駐留する第一海兵師団、第一海兵連隊、第3大隊、キロ中隊の海兵隊員達は、11月19日の早朝7時過ぎにハディーサのメインストリートを4台のハンビーでパトロールしていた。そのうち最後尾のハンビーが路肩爆弾の攻撃を受け、ハンビーを運転していたテラザス一等兵が即死し、同乗していた2名が負傷した。更に、中隊は付近の民家から銃撃を受けたので反撃した。路肩爆弾で15人の市民が巻き添えで死亡し、海兵隊の反撃で8人の武装勢力を射殺した」。この報告は米軍がイラクでの軍事行動で発表する典型的なタイプの報告である。毎日のように起こっている米軍襲撃とそれに対する反撃という報告であった。

 ところが、この報告が全くのでたらめであったことがばれてしまったのだ。ハンビーが路肩爆弾で攻撃され、1名死亡、2名負傷の損害が出たのは間違いない。しかし、中隊に対する銃撃はどこからも行われなかったのである。目撃者の証言によれば射撃していたのは海兵隊だけであった。路肩爆弾爆発後の武装勢力による襲撃は誰も見ていない。
 ワシントン・ポストによれば、この爆弾による攻撃から15分後(米軍犯罪調査局は爆発の3〜5時間後に起こった!と見ている:クリスチャン・サイエンス・モニター)、中隊は事件現場に近接する3軒の家に攻撃を仕掛けた。3軒の家にいた三つの家族の大半を射殺した。ワシントン・ポストが伝える目撃者等の話から、海兵隊は以下のように住民達を虐殺したことが浮かび上がっている。
※自分の家族7人を殺された時の状況を、イマム・ワリードさん(10歳)が話した内容がITV放送で流された。「Iraqi Girl tells of US Attack in Haditha」http://www.informationclearinghouse.info/article13452.htm
※また、最初に今回の事件をスクープした『タイム』誌のホームページには幾つかの写真、ビデオがある。「Collateral Damage or Civilian Massacre in Haditha?」http://www.time.com/time/world/article/0,8599,1174649,00.html

−−兵士達は最初に76才のアブデュル・ハミト・ハッサン・アリの家に侵入した。
−−そこで家の中にいたアリと妻、3人の男性、4才の孫のアブドラを至近距離から撃ち殺した。アリは体の中に9発も打ち込まれていた。
−−8才と5才の孫も撃たれたがかろうじて命を取り留めた。
−−息子の嫁と2ヶ月の赤ん坊だけが逃げ延びることができた。
−−次に海兵隊は隣のカフィフ(43才)の家に殴り込んだ。家にはカフィフ、妻、13才の娘、8才の息子、5才の娘、1才の娘がいたが、兵士は彼らに銃弾を浴びせ、台所と浴室に手榴弾を投げ込んだ。近所の人はカフィフが英語で命乞いをし、「私は友人だ、悪いものではない」と懇願しているのを聞いている。
−−しかし海兵隊はこの男と子どもをかばった妻、そして3人の幼い子どもを撃ち殺した。
−−13才のサーファだけが血だらけになりながらもかろうじて生き残った。兵士達は至近距離から、それも母子の体を貫通した銃弾が後ろの壁や床に深く突き刺さるほど近くから銃を乱射して殺している。
−−次に海兵隊は4人の兄弟のいる家に入っていって彼らを殺した。報道によれば、処刑の様な形で背中、頭を打たれて死んでいる死体の写真があるという。海兵隊は仲間の兵士が殺された報復に、戦闘が全く起こっていない状況の下で、民家に侵入し全く無抵抗な市民であることを知りながら虐殺、あるいは処刑にちかい形での射殺を行ったのである。
−−さらに海兵隊の中隊はこの現場に近づいてきたタクシー(運転手のキダールと工科大学の4人の学生が通りにある一人の学生の実家に行くために乗っていた)が事件に気づきあわてて引き返そうとするのに対して、銃を撃ちまくり、全く非武装の5人全員を射殺したのである。(タクシー乗客射殺事件の発生時間については報道によって爆発直後と、襲撃直後の二つの説がある)


 全くおぞましい事件である。しかし、もっと驚くべき事は、自分たちが殺した第3の家族とタクシーに乗っていた男8人を武装勢力(「8人の武装勢力」)だったので射殺したと発表し、自分たちが無惨にも虐殺した最初の二つ家族、女性、子ども全部(「15人の市民」)は爆弾の巻き添えで殺されたとすべての罪を無実のイラク市民になすりつけていることである。しかし、上に有るとおり、誰も米兵に抵抗したものはない。これらの家からには銃が一丁有っただけで撃った形跡もない。つまり海兵隊が一方的に無抵抗の市民を殺しまくったのに、その責任は全部殺された市民の責任にされてしまったのである。この扱いは、海兵隊がイラク市民を虫けらのようにしか思っていなかったことをよく表している。
※Washingtonpost ; In Haditha, Memories of a Massacre
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2006/05/26/AR2006052602069_pf.html
※CristianScienceMonitor; Officials suspect coverup of killings by Marines
http://www.csmonitor.com/2006/0526/dailyUpdate.html


(3)事件を組織的に隠蔽した海兵隊。これまで通り「武装勢力」犯人説でごまかし

 このイラク市民虐殺事件を、海兵隊は徹底的に隠蔽しようとした。というか、これまでと同じような方法で、事件を闇から闇に葬り去ろうとした。すでに述べたように、日常的に起こっている米軍による虐殺事件は、そのほとんどが、“事件”にならないどころか、「武装勢力」の仕業として処理されてきたのである。
※イラクでは誰が誰を殺しているのかについて、私たちは詳しく検討した。以下を参照。
シリーズ<マスコミが伝えないイラク戦争・占領の現実>その21
イラク民間人犠牲者とブッシュ政権の戦争犯罪(下) イラクでは誰と誰が闘っているのか

シリーズ<マスコミが伝えないイラク戦争・占領の現実>その18 イラク民間人犠牲者とブッシュ政権の戦争犯罪(上) イラクでは誰が誰を殺しているのか? −−「犯人はスンニ派テロリスト」の“神話”。最大の殺人者は米軍−−

 ところが、今回だけは、うまくいかなかった。ロサンゼルス・タイムスによれば、同じ部隊で路肩爆弾爆発後に応援で現地に入った海兵隊情報部隊の隊員は死体の写真を撮影しており、小さな子どもが無惨に殺されたことで(それに親しかった海兵隊員の無惨な死体を見て)強いショックを受けPTSDの症状を起こし、帰国後の今日も正常な日常生活ができない状態にある。現場の兵士達はあまりの凄惨さに、このような強い精神的衝撃を受けた。
 その事件が部隊内に知れ渡らないはずがない。この兵士は自分のデジカメを誰かがいじってコピーしたようだと話しているが、それだけでなく海兵隊の隊員自身が取った何セットもの現場写真、死体の写真があり、それは当然上部に報告されているはずだ。しかし、海兵隊部隊は虐殺事件を問題にすることなく握りつぶし無視し続けてきた。何度も言うが、これまでと同じように・・・。虐殺を隠蔽する米軍の体質は、ベトナム戦争のソンミ虐殺から現在まで何も変わっていないのだ。


(4)若いイラク人学生が真相究明に動く。「武装勢力」のせいにできなくなった海兵隊

 しかし、殺された方は黙ってはいない。ハディーサの地区の指導者が米軍を追及したので、米軍は渋々第1と第2の家族の犠牲者について1500ドルから2500ドル(10数万円から30万円弱)の補償金(!!)を支払った。これらの市民の虐殺が間違いであったことをイラク人に対しては認めた訳だ。しかし、これが米軍が考えるイラク人の命の値段である。人を一人殺しておいて10数万円!! これで彼らは胸を張って「きちんと補償した」と主張するのだ。しかし、米軍は残りの人々(8人の武装勢力)については、米軍攻撃の何の事実もないのに「武装勢力」であった、(だから殺されて当然)と補償の支払いを拒否した。

 米軍によって闇に葬られた事件を明るみに出したのは事件直後に現場に入り、凄惨な現場の状況や死体置き場での死体の状況をビデオで撮影した若い学生(タヘル・タベット)であった。彼の撮影したビデオは人権団体を通じて「タイム」社に届けられた。タイムは1月後半には海兵隊のスポークスマンにビデオの存在と事件について知らせたが、海兵隊は「そんなものはアルカイダなどの宣伝の類だ」と取り上げることを拒否した。タイムは更にバグダッドの米軍スポークスマンのバリー・ジョンソン大佐に知らせたが、大佐は「爆弾ではなく海兵隊が市民を殺したが、それは殺人ではなく『付随的損害』(つまり武装勢力との戦闘の巻き添え)だった」から責任はないと結論を下した。しかし、この段階になって軍はこのままでは事件が明るみに出ると恐れようやく調査を始めたのである。事件が表沙汰になったのは、3月にタイムがこの事件を紙面で取り上げたのでもはやもみ消すことができなくなったからである。
※TIME The Shame Of Kilo Company http://www.time.com/time/magazine/article/0,9171,1198892,00.html
※今回の事件発覚のきっかけになったのはビデオである。米軍がイラク戦争で最も恐れてきたのがこの“映像”による虐殺事件の暴露であった。なぜ未だにイラクでは、アルジャジーラが追放されたままなのか。そもそもなぜアルジャジーラが記者への恫喝・脅迫を含めて徹底的に弾圧されたのか。また、なぜ米軍による第二次ファルージャ攻撃の際に、メディアの同行が許されなかったのか、なぜ、まず最初に病院を攻撃・制圧し、そこでの報道を徹底的にシャットアウトしたのか。これら全ては、米軍による組織的虐殺を世界の世論の目から覆い隠すことが狙いだったのである。


(5)米兵の責任も、ブッシュ政権の責任も問われない非道−−世界最大の侵略国家アメリカが戦争犯罪を免れる仕組み

 現在この事件については海兵隊と海軍犯罪調査局の二つの捜査が行われている。いわば身内の「捜査」だ。米議会でも事実を明らかにし、追及しようとの動きもある。海兵隊司令官は事件が明らかになるや直ちにイラクに飛び、海兵隊に士気とモラルの維持を命じ、適切な対処をしたかのように振る舞った。米軍当局は早くも「ごく少数の兵士の問題だ」「全体は問題ない」といつものトカゲのしっぽ切りを行おうと躍起になっている。数十人の下級兵士を尋問し、そのうち数人に責任をおっかぶせるつもりである。アブグレイブの事件と同じような形で、真の責任者であるブッシュ政権と米軍のトップの責任を免れようとしているのである。今回の事件に最大の責任を負うべきは、何の大義もない侵略戦争に出動させ、ただ石油支配と軍事覇権のためにだけ占領支配を継続し続けるブッシュ大統領とその政権そのものである。

 今回の事件は、小手先のやり方で終わりにできる問題ではない。この虐殺事件だけに限定しても24人もの無抵抗の市民を意図的に殺害した重大事件であって、明るみに出たものではベトナムでのソンミ村虐殺事件以来の深刻な犯罪である。それでは事件と事実が明らかにされれば、実行者と責任者は犯罪にふさわしい処罰を受け、被害者は補償されるのか? とんでもない。そんなことにはならないことが今の深刻さを表している。
 イラクの市民が見ている中での事件だから、徹底した追及が行われれば事実は明らかになるかも知れない。しかし大量殺人にふさわしい処罰は行われず、責任も取られないことは明白である。なぜなら責任追及がされない仕組みを米軍がイラクに押しつけているからだ。ベトナムで500人もの村民を皆殺しにした直接の責任者カリー中尉は世界中の糾弾の中で裁判にかけられ、有罪を宣告され終身刑になったが、わずか3年で釈放された。

 アブグレイブでイラクの民衆を拷問にかけ、虐待し、殺した米軍は、最も下部の兵士の責任にして、彼らを何年かの刑にしただけだ。真の首謀者であるラムズフェルドや国防次官、そして何よりもブッシュ大統領自身は、開き直っている。それだけではない。米軍は侵略した国で兵士が殺人や犯罪を犯しても、その国に犯罪を裁かせない協定を認めさせている。イラクの場合もイラク政府は米兵の犯罪を裁く権利さえ持っていない。現地の裁判にさえかけさせず、米国内で、米軍お手盛りの証拠によって裁判を行い、せいぜいごく軽い形式的な処罰を与えるだけなのだ。

 さらに、ハディーサにおける市民虐殺は明らかに戦争犯罪であり、国際法にも違反する。しかし、国際刑事裁判所でこの戦争犯罪を裁くためには、米国が国際裁判所規定締約国であるか、あるいは国際刑事裁判所での扱いに同意していなければならない。米国は国際刑事裁判所規定に対して一旦はクリントン政権が行った署名をブッシュ政権が撤回し、国際刑事裁判所そのものに反対している。そして自国兵士を裁くことを拒否しているばかりか、日本も含めて他国に対し犯罪米兵を国際刑事裁判所に引きわたさない協定を押しつけ、認めさせようとしている。恐るべきごろつき国家と言うほかない。世界で最も頻繁に他国に対する侵略を繰り返し、市民を虐殺している国家であるアメリカが、虐殺した兵士を裁くことも、処罰することも被侵略国(だけでなく日本など同盟国に対しても)にはさせないようにしているのだ。米兵がどんな残虐な行為をしても、イラクの人々はそれを罰することはできないのだ。こんな不法がまかり通っていることそのものが、イラク戦争と今日のイラク占領の不当性を如実に示している。


(6)虐殺部隊キャンプ・ペンドルトンの海兵隊。陸自が対ゲリラ戦訓練で共同演習

 イラク市民で米軍に虐殺されたのは今回の犠牲者だけではない。一般市民の虐殺は日常的に起こっている。その数は数え切れないくらい多数にのぼると考えられる。すでに述べたように、海兵隊の当初の報告は、それこそ当たり前のように起こっている日常的な「武装勢力」に対する米軍襲撃の報告と瓜ふたつである。そのことは、これら同様の報告がなされている事件の中でも米軍による同様の虐殺が行われていることを示唆している。

 事件を起こした海兵隊部隊はかつてファルージャにおり、大規模な住民虐殺を繰り広げた部隊である。ファルージャでは市内に残る男性をすべて敵と見なして無差別に殺しまくった。海兵隊員の多数も死亡し、負傷した激烈な戦闘で、米兵は考えることをやめて殺人を続けた。彼らはハディーサで仲間の死に逆上し、ファルージャでやったことを繰り返しただけである。米軍のイラクにおける戦闘行動そのものが、米兵を市民を殺しても平気な非人間的な殺人者に仕立て上げていっているのだ。

 彼らの部隊海兵隊第1連隊はキャンプ・ペンドルトンの部隊である。この基地の海兵隊こそ交代で沖縄に送り込まれている部隊であり、沖縄駐留海兵隊そのものといっても構わない。海兵隊第1連隊自身が80年代には沖縄に配備され、出撃に備えていた。最近は別の連隊から部隊が沖縄に派遣されているにすぎない。そして、彼らは同時に陸上自衛隊がこの冬に島嶼攻撃訓練で教えを受けた部隊でもある。自衛隊の共同演習の相手部隊、対ゲリラ戦の教官を務める部隊なのだ。幾多の戦闘で勲章をもらっている。米軍の「精強な部隊」とは結局、平気で虐殺を行う部隊なのだ。犠牲者は今回の24人ではない。ファルージャで、またスンニ派三角地帯を含むイラク全土で、何千人、何万人が米軍の犠牲になっている、そういう殺人部隊であり、彼らこそ現在小泉政府・防衛庁が米軍再編を通じて日米一体化を推し進める自衛隊のパートナーなのである。いわゆる日米軍事一体化とは何を意味するのか。私たちは、そのことを自覚しなければならない。


(7)今回の事件以上に多いのは「戦闘」を口実とする住民への無差別虐殺。米軍と自衛隊はイラクから即時無条件に撤退せよ

 もう一つ重要な事実がある。それは米軍が殺人を正当化するもう一つのテクニックを持っていることだ。今回は海兵隊員が戦闘もないのに無抵抗の市民を殺したから米軍も問題にしないわけには行かなかった。今回は戦闘がなかったので正当化のテクニックが使えなかっただけである。しかし、少しでも戦闘が有れば、あるいは米軍が戦闘をでっち上げれば、話は変わる。
 どれだけ市民が米軍によって殺されてもすべて正当化されるのである。今回の海兵隊の報告のように、路肩爆弾の爆発に続いて武装戦力の攻撃、銃撃が行われることも日常的に起こっている。そのとき米軍は周りに大勢の市民がいようといまいと無差別に撃ちまくる。あるいは襲撃がなくても「危険を感じて」周りを無差別に撃ちまくる。この時、米軍の兵士は市民を殺すことを認められている。そのことで処罰されることもない。米軍の交戦規則には、危険があると思ったら相手を射殺しても構わないと書いてある。そしてこれら「戦闘に関連した」市民の虐殺は「付随的損害」(Collateral Damage)と呼ばれる。これがもう一つの殺人正当化のテクニックである。つまり殺そうと思って殺したのではない、戦闘になったので仕方がない。そう報告すれば、どれだけ殺しても追及されない。そして市民や犠牲者の家族は我慢しろというわけだ。これで米軍に銃を向ける市民が出てこない方が不思議である。米軍がイラクではまり込んでいる現在の泥沼状態は、米軍自身が占領における乱暴極まる市民殺害で作り出しているのだ。

 しかし、今回の事件は、イラク占領体制の犯罪性、米軍パトロールが日常的に生み出している無数の虐殺事件の一端を白日の下に暴露した。戦闘がありもしないのに殺された人々、戦闘に引っかけて殺された人々、米軍は戦闘という口実さえでっち上げれば、堂々と人殺し、市民殺しができるのである。そしてそれを日常的に行っている。だから武装勢力の執拗な攻撃を受けるのだ。その占領にいつまで加担するのか。米軍による殺人の自由にいつまで加担するのか。更に支援し続けるのか。私たちは、ブッシュ政権と米軍に対して今回の事件の真相究明、即時無条件撤退を要求する。同時に、このような残虐極まりないイラク占領体制にどこまでも加担する小泉政権の犯罪性を糾弾する。自衛隊の即時撤退を要求する。

2006年6月1日
(6月5日一部加筆・訂正)
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局