シリーズ<マスコミが伝えないイラク戦争・占領の現実>その7
<THE REALITIES OF THE OCCUPATION IN IRAQ WHICH MASS MEDIA DON’T COVER> SERIES 7
シンディ・シーハンのブッシュ大統領との戦い
The Battle Against President Bush By Cindy Sheehan
−−イラク反戦の“新たな集中点”“新たな結集軸”に急浮上。息子を殺された一人の母親の闘いが、アメリカの反戦運動に火をつける−−
“ The New Focus “ and “ The New Axis of Mobilization “ of Anti-War Movement on Iraq
-- The struggle of a mother, whose son was killed, lit and flamed up the anti-war movement in US --

「私たちには力があります。普通の市民でも
変化をもたらすことができるということを、
一人の母親が示しました。」(シンディ・シーハン)


[1]8月17日。全米1627カ所、50,000人以上が参加したシーハンさん支援の徹夜行動

(1)空前の広がりをもった8月17日のキャンドル行動
 8月17日、イラク戦争での息子の死の理由を問いブッシュ大統領との対話を求めてテキサス州クロフォードのブッシュの保養地に座り込むシンディ・シーハンさん(48歳)を支援する徹夜の抗議行動は全米1627カ所、50,000人以上が参加して行われた。全米にネットワークを持つ市民団体MOVEON.ORG(http://moveon.org/)が呼びかけたものである。一つ一つの行動は、数百人規模の小さな行動であるが、その広がりはワシントンからアラスカ、フロリダ、ミシシッピ、ハワイまでを包括する全米規模に達し、空前の広がりを持つものとなった。


アメリカはシンディと共に起つ
シーハンさんの支援サイト http://www.meetwithcindy.org/より

−−テキサス州クロスフォードの現場では日没とともに100人近い市民がプラスチック製の容器に入ったロウソクを手に、星条旗に覆われた棺を取り囲み、ブッシュとの対話と米軍のイラク撤退を要求した。
−−首都ワシントンでは、ホワイトハウスの北側で、500人もの人々が行動に加わった。ある参加者はブッシュに「次の保養地はイラクだ」と書いたメッセージを掲げた。
−−マサチューセッツ州のケンブリッジでは、独立して5つの徹夜行動が行われた。アパートの外で行われたような小さな集まりから、公共の空間で行われた行動まで様々な行動が行われた。サマーヴィルでは、約250人が、「シンディー・シーハンさんを支援するデイビススクエア」と呼ばれる集いを企画し、多数がキャンドルを持った。少なくとも10人の運転手が、車を運転しながら連帯の警笛を鳴らした。しかし、1人は彼の車窓から身を乗り出し、「テロリストは次におまえをやるだろう」と叫んだ。幼い子どもを連れたサマーヴィルの参加者は「1人でも事態を変えられるということをシーハンさんは行動で示した」と語った。
−−グロスターでは、約75人がキャンドルを持ち、町の漁師の妻の記念碑のまわりで大きな円を描くように集まった。ある者がギターを弾いて平和の賛歌を鳴らした。そして、別のものは「PEACE」の言葉が刺繍された虹の旗掲げていた。
−−ニューハンプシャー州コンコードの州議会議事堂前には約150人の市民が集まり、シーハンさんへの支持を表明した。さらに75人程度の抗議者が、自動車が通過するごとに反戦サインを掲げて、クィンシーのウエラストンビーチに集まった。
−−ハワイのホノルルでは、キャンドルがともされ、「シンディに会え」とかいたブッシュへのメッセージが掲げられた。
−−ロサンゼルスのノースハリーウッドでは、キャンドル行動に数百人が集まった。「子どもたちを家に帰せ」のメッセージが見える。
−−オレゴン州内でも、20におよぶ集会が行なわれ、数百人がラリーに参加した。賛同者は、キャンドルをともし、『Anti-war(反戦)』のプラカードをもち、歩道、駐車場、自宅前の階段などに立った。
−−バージニア州西部のカールストンでは、アフガニスタンとイラクで殺されたすべての米軍兵士の名前を書いた巨大な横断幕が掲げられた。 等々。
※Vigils to Support Cindy Sheehan http://www.political.moveon.org/cindyvigils/pics.html
以下に写真 http://www.flickr.com/photos/moveon/sets/774501/show/
以下に行動地図 http://political.moveon.org/cvigil/presentation_av.phtml
※Vigils to support Sheehan protest http://news.bbc.co.uk/2/hi/americas/4160032.stm
※Iraq War Protest Vigils Dot U.S.http://www.cbsnews.com/stories/2005/08/18/politics/main783973.shtml
※Sheehan Coverage Turns Local as Vigils Spread(地方紙の報道をフォローしている)
http://www.editorandpublisher.com/eandp/news/article_display.jsp?vnu_content_id=1001017658


(2)闘いの「うねり」に火をつけたシーハンさんの行動
 シーハンさんが抗議行動を始めてからわずか10日目で全米規模の支援行動が成功したことは、第一に、溜まりに溜まっていた戦死者問題を一気に表面化させたことを示すものである。特に州兵・予備役などの戦死者問題が如何に深刻化しているかを明るみに出した。シーハンさんは、これまで泣き寝入りしてきた戦死者家族が声を上げるきっかけをつくったのである。そして州兵・予備役兵士の戦死者問題を地域問題から全米の問題へ転化する引き金を引いたのである。
 第二に、ブッシュのイラク戦争が米国民の支持を急速に失っていることを如実に示すものとなった。シーハンさん自身この運動の広がりについて「圧倒的で、驚くべきこと」と表現した。そして次のように語っている。「私は、アメリカが準備ができていたのでそれが起こったのだと思います」「可燃物はすでにありました、それはちょうど火花を必要としていたのです。これは明確にうねりとなるものです。この戦争が誤りであることを知っており、戦争が終結することを望む普通のアメリカ人には十分すぎるほど十分なのです。」

 米兵の犠牲者がこの8月20日時点で1863人に達したこと、世論調査でブッシュのイラクへの対応に不満を持つ人が60%を越えるなど米国民の意識が変化していること、米政府がイラクからの部分撤退を口にしまた否定するという迷走を繰り返していること、イラク戦争を焦点としたロンドン連続テロが起こったこと、その後最大の盟友のひとつイタリア軍が部分的であれイラクからの撤退を開始したこと、イラクでは憲法草案を巡って混乱し米軍への攻撃が激増していること等々、何かきっかけがあればイラク戦争反対が大きなうねりとなる状況が作り出されていた。このような状況にシーハンさんが現れ、火をつけ、燃え上がらせたのである。
 この行動によって、クロフォードの闘いは、片田舎のブッシュの保養地でのわずか数十人の闘いにとどまらず、文字通り全米を巻き込むイラク反戦闘争の最大の焦点になったのである。
※Vigils Across State, Nation Back Mother of Dead Soldier Thousands support woman at Bush ranch
http://www.boston.com/news/local/massachusetts/articles/2005/08/18/vigils_across_state_nation_back_mother_of_dead_soldier/



[2]シーハンさんの闘いは、ブッシュの戦争責任を問う戦死者遺族の直接行動からイラク反戦の集中点に発展

(1)戦死者遺族が反戦行動に立ち上がる衝撃−−タブーを破ったシーハンさんの行動
 イラク戦争で息子を殺された一人の母親が、ブッシュ大統領が夏休みをとる保養地で座り込みを行い、面会を求め続ける――これ自身は小さな取り組みであったが、米国社会にとっては大きな衝撃であった。この闘いについては、多くのメディアが好意的に取り上げ、推移を報じ続けてきた。この報道のあり方そのものが米国内の社会的変化を表している。そしてこの行動に、息子、夫や近親者を亡くした同じような境遇にある人々からの共感・連帯が急速に高まったのである。
 昨年4月、米国内ではABCテレビが当時721人であった米戦死者の氏名と顔写真の読み上げ映し出すという番組を放映し、イラク戦死者の問題を初めてクローズアップした。この番組は、大論争を引き起こした。また、今年4月にも米デラウェア州のドーバー空軍基地で飛行機から下ろされる、星条旗に包まれた米兵の棺の列などがウェブサイトで公表され、国防総省が公開しないよう圧力をかけるという事件が起こった。
※「米兵の棺写真を米メディアが報道 米国防総省が対抗措置」朝日新聞 http://www2.asahi.com/special/iraqrecovery/TKY200404230338.html

 米兵の犠牲者の存在の報道は戦争を遂行するアメリカにとってはタブーであった。メディアは米軍による掃討作戦については華々しく報道するが、米兵の死者のことが紙面を飾ることはない。米政府が厳しい報道規制の対象にしてきたからである。ブッシュ政権は、米兵犠牲者の数やその姿を国民の目から隠すことで、この戦争への批判や厭戦気分を封じ込めようとしてきたのである。
それゆえ、現に息子を殺されたふつうの母親が名乗りを上げ、メディアに顔をさらし、ブッシュの前に立ちはだかったことは大きな衝撃であり、全米に関心を呼び起こさざるを得なかったのだ。
 今回のシーハンさんの行動は、イラク戦死者の問題をメディアやウェブサイト上での姿ではなく、息子を殺された生身の人間が、直接行動によってブッシュの責任追及の意志を明らかにした初めての試みである。イラク戦争の2年半の中で、戦死者の問題が全面に出、それをめぐって運動が広がるのは初めてである。


(2)「大義のない戦争」−−息子の死を「無駄死に」と告発
 シーハンさんの一人息子ケーシー・シーハン氏(兵長、24歳)は昨年4月4日、バグダッドのサドルシティにおける戦闘で亡くなった。このサドルシティの戦闘は、ファルージャ、ナジャフと並んで、米軍のイラク占領支配が暗転する転機、泥沼化へと突き進む転機となった闘いである。米軍は2004年4月、反米感情が強く、スンニ派武装勢力の拠点と目したファルージャとシーア派のサドル派の拠点バグダッドのサドルシティおよびナジャフに対する大攻勢をかけ、一気に形勢を逆転しようと試みて大失敗した。この軍事作戦を契機に米兵の犠牲者数も急拡大する。米軍はその後、2004年8月にはナジャフのモスクを包囲した掃討作戦で政治的に敗北、撤収を余儀なくされた。そして2004年11月には町全体を封じ込めて無差別殺戮を慣行するファルージャの大虐殺をおこない、取り返しのつかない被害を与える一方、反米感情、反米闘争を一気に激化させた。
 ケーシー・シーハン氏が命を落としたサドルシティの闘いは、米軍がイラク人を虫けらのように殺し、また米兵を犬死にさせているイラク占領支配の泥沼化と掃討作戦の失敗の象徴の一つなのである。シーハンさんは大義なき戦争での米兵の犠牲を「みんな無駄死にしている」と弾劾している。
 シーハンさんのやむにやまれぬ行動は、同様の境遇にある遺族たちの心を揺さぶらずにはいられないのだ。


(3)シーハンさんの闘いは、イラク帰還兵、米兵家族、そして戦死者家族ら米軍関係者の反戦行動の最新の到達点。更にはイラク反戦運動の“新たな集中点”に
 彼女の行動は突如可能になったのではない。シーハンさんの直接行動が実を結んだのは、ANSWERやUFPJなど全米規模の反戦組織や退役軍人の平和運動組織が、軍人や戦死者家族の組織化に粘り強く取り組み、様々な支援・連帯行動を積み上げてきた成果でもある。

 シーハンさんは息子の死以降、ブッシュ大統領の戦争推進政策に対して疑問を投げかけ、平和のメッセージを発信し続けてきた。彼女は、「発言する兵士家族の会」(Military Families Speak Out)のメンバーとなった。そして2004年12月には共同創設者として「平和のための戦死者家族の会」(Gold Star Families for Peace)を立ち上げた。「平和のための退役軍人会」(Veterans For Peace)や「戦争に反対するイラク帰還兵の会」(Iraq Veterans Against the War)、「イラク戦争に反対する退役軍人会」(Veterans Against The Iraq War)といった帰還兵の団体に加えて、これら米軍家族、戦死者家族の団体が反戦平和運動に合流したことは、ブッシュ政権の責任追及を前に押し出し、米軍の即時撤退を求める運動をさらに先鋭化させることになった。

 2005年3月イラク開戦2周年の闘いで、シーハンさんは、国内最大の空軍基地フラッグ基地のあるカリフォルニア州フェイエットビルで行われた5000人の反戦行動の先頭に立った。そして、設立からわずか半年、シーハンさんが作った「平和のための戦死者家族の会」は、アメリカのイラク戦争を巡る政治的対決点の最前線に躍り出たのである。
 シーハンさんの行動は戦死者の問題をイラク戦争における最大の問題として焦点化させた。同時に、シーハンさんは、戦争のための納税を拒否して、税金の不払いを宣言している。これによってシーハンさんは個人的な息子の戦死という問題を、予算での戦費支出という問題に結びつけ、イラク戦争と占領支配の継続問題を、米国民ひとりひとりが避けることができない、全国民的関心事へと高めたのである。
 今や問題はシーハンさんとブッシュ、戦死者の母親と大統領の個人と個人との対決を大きく越える意義を帯びている。1800人を越える米兵犠牲者、10万人のイラク人犠牲者とブッシュの戦争政策との闘い、イラク政策を巡る平和か戦争かの対決の集中点となったのである。
※以下、退役軍人、米兵家族の反戦サイト。それぞれシーハンさんの行動への支援を呼びかけている。
※Gold Star Families for Peace http://www.gsfp.org/
※Military Families Speak Out http://www.mfso.org/
※Veterans For Peace http://www.veteransforpeace.org/
※Veterans Against The Iraq War http://www.vaiw.org/vet/index.php
※Iraq Veterans Against the War http://www.ivaw.net/



[3]8月6日から始まったクロフォードのシーハンさんの闘いと支援。

(1)闘いの拠点「キャンプ・ケーシー」。8月4日のブッシュ演説に怒ったシーハンさんの直接行動
 シーハンさんの闘いは、8月6日から始まった。カリフォルニア州に住むシンディ・シーハンさんが支援者約50人と共に、赤・白・青の星条旗色に「弾劾ツアー」と描かれたバスでクロフォードを訪れ、大統領の保養地の牧場に向かって約80メートルにわたり行進した。しかし、牧場入り口まで8キロ前後の地点で、地元の警察当局に足止めされた。シーハンさんらはブッシュの牧場からその8キロ地点の道ばたにキャンプを張った。キャンプは、亡くなった息子の名を取り「キャンプ・ケーシー」と名付けられ、闘いの拠点となった。これが事の始まりである。
 シーハンさんを行動に駆り立てたのは直接的には8月4日のブッシュ演説である。ブッシュはそこで、戦死米兵を追悼すると共にイラク戦争遂行の必要性を訴え、「米兵たちは崇高な使命のために命を捧げている」と演説していたのだ。シーハンさんは言う、「どうして息子を殺したのか、息子はなんのために死んだのか、大統領に尋ねたい。その崇高な使命というのはいったい何なのか。」「イラクは米国にとって脅威ではない。みんな無駄死にしている」。
※Cindy Sheehan's Pitched Battle In a Tent Near Bush's Ranch, Antiwar Mother of Dead Soldier Gains Visibility http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2005/08/12/AR2005081201816_pf.html
※Grieving Mother's War Protest Draws Notice http://aolsvc.news.aol.com/news/article.adp?id=20050810193609990002
※Mother's Protest at Bush's Doorstep Raises the Stakes http://www.latimes.com/news/nationworld/nation/la-na-warmom11aug11,0,6888551.story
※戦死米兵の母、ブッシュ大統領私邸近くで抗議 http://cnn.co.jp/usa/CNN200508070011.html


(2)「ブッシュ大統領に戦争の目的を尋ねたい」−−息子と母親の名誉をかけて“大義なき戦争”の責任を徹底的に追及
 シーハンさんはイラク戦争の本当の目的を大統領に問いただそうとしている。彼女はマスコミとの取材において、明瞭に、次のように答えている。「私は、彼の戦争についてのまやかしの弁解を信じることができない」、「この戦争の真の目的が、石油とブッシュの仲間に金をばらまくためのものであるとことを確信している」、「なぜ息子が死んだのか、その理由を尋ねたい」と。“シーハンさんのブッシュ大統領との戦い”は、息子を失った家族、母親の平和を求める闘いである。しかしそれにとどまらず、戦争の真の目的の糾明、ブッシュ大統領の戦争責任の追及へとつながっている。クロフォードにおけるシーハンさんの闘いは、石油支配と軍事覇権のための戦争、石油産業、軍需産業などブッシュ政権の面々たちの私利私欲のための戦争に対する戦争責任の追及でもあるのだ。
※たとえば、シーハンさんは、6月16日には、大量破壊兵器の捏造を明らかにした"ダウニング・ストリート・メモ"に関連した議会公聴会において、でっち上げの戦争で息子が殺されたことを証言している。シーハンさんの闘いは、戦争に何の疑問も持たなかった一人の女性が、息子の死をきっかけにブッシュの政策に対する批判を強め、議会で証言するまでになった強い女性の生き様を示している。
※Cindy Sheehan's Message Repudiates George Bush -- and Howard Dean
http://www.commondreams.org/views05/0813-27.htm
※Why Mothers Push for Peace http://www.commondreams.org/headlines05/0813-06.htm
※「大統領に届け母の思い なぜ戦争を始めたのか問いたい」8月13日朝日新聞


(3)“イラク反戦の新たな結集軸”−−シーハンさんの闘いに集まる支援・連帯の輪
 シーハンさんの元には、同じようにイラク戦争によって息子を失った母親、反戦・平和運動の活動家が集まり、クロフォードの牧場に立て籠もるブッシュ大統領を包囲した。テントには蟻が群がり、シーハンさんらは仕方なくトレーラーに移った。12日には抗議デモが行われ、支援者の数は100人に膨れ上がった。大統領夫妻が、支援者とのバーベキュー会場に行くために、シーハンさんらのいる道を横切った日である。シーハンさんはこの急接近に驚きを隠さない。しかし、シーハンさんは皮肉っている。残虐な侵略戦争に反対する多くの人をみて、消化不良をおこすというような繊細さをブッシュは持ち合わせていないだろうと。13日には200人を越える支援者がラリーを行った。さらに16日には近隣住民が、大統領邸の正門から約2キロの地点にあるキャンプ用地を提供した。これによってシーハンさんたちは8キロ地点から一気にブッシュ近づくことになった。 シーハンさんは「ここキャンプ・ケイシーでがんばる私たちを宇宙は支えてくれるのだ」と謝意を表している。
※MEET WITH CINDY(シーハンさんの運動のサポートサイト) http://www.meetwithcindy.org/
※The Grieving Mother Who Took On George Bush http://www.commondreams.org/headlines05/0816-04.htm
※The Mother of all Battles http://www.commondreams.org/views05/0816-22.htm

 シーハンさんは、右翼的なジャーナリストからの攻撃にさらされる一方、全国からの共感の声や、現役兵3人からの励ましが寄せられ、シーハンさん自身が勇気づけられていることを明らかにしている。 シーハンさんは、「私たちには力がある」(We have the power)の最後で次のように語っている(添付翻訳記事参照)。

私たちは今、クロフォード・ピース・ハウスにいます。私は怒りに駆られてここに来ましたが、いま私は全国いたる所からの支援に激励され、圧倒されています。私は、私たちのような進歩的な自由主義者がこれ以上怒らなければならないような理由はもう何もないと考えてきました。私たちには力があります。普通の市民でも変化をもたらすことができるということを、一人の母親が示しました。私たち民衆は、ジョージ・ブッシュに説明責任を果たさせなければなりません。ブッシュが私たちに確実に答えるようにしなければなりません。議会に対して、あるいはメディアに対して、彼が答える必要が無いのであれば、私たちは、彼に否が応でも私たちに対して答えさせましょう。
※“私たちには力がある!”シンディ・シーハンさん We Have the Power By Cindy Sheehan  http://www.commondreams.org/views05/0813-26.htm



クロフォード・ピース・ハウスの前を通過する100人のボラティアによる横断幕。

[4]シーハン・バッシングと露骨な妨害活動。これ自身がシーハンさんの闘いのもつ大きさを物語っている

(1)逃げ回るブッシュ 。「シンディと対話しろ!」(Talk to Cindy!)、「シンディと会え」(Meet with Cindy!)の声が高まる
 ブッシュ大統領は、逃げ回るばかりである。逃げ回るブッシュ大統領の姿をマスコミは、皮肉に満ちた見解を交え中継している。資金提供者が集まるバーベキューには参加できてもなぜシーハンさんに会うことができないのか。5週間もクロフォードで「休暇」を取っているにもかかわらず会う時間を惜しむのか。ヘリコプターを使って出入りしているぞ。等々。
 逃げ回るブッシュ大統領を威厳に満ちた指導者としてではなく、追及されることに怯える卑怯者のように描く報道も散見されるようになっている。ブッシュ大統領が側近をシーハンさんの元に派遣し話し合いを持ったことも、逆効果となった。なぜブッシュ大統領本人が直接会えないのか。「シンディと対話しろ!」(Talk to Cindy!)、「シンディと会え」(Meet with Cindy!)の声はますます高まっている。
 ブッシュ大統領が正々堂々と会えない理由は明白である。彼は、石油支配と軍事覇権、石油メジャーと軍産複合体などブッシュ権の面々たちの私利私欲のための戦争に大量の兵士を動員し、2000人に迫る勢いの戦死者、公式発表でも1万人を大きく超えた負傷者を生み出した張本人である。どれ程の若者の命を奪い、親族を悲しませれば気が済むのか。


シーハンさんの運動を支援するサイトから

(2)右翼の妨害・破壊活動。右翼系メディアによるブッシュ擁護、シーハンさんへの誹謗中傷
 シーハンさんへの悪意ある誹謗中傷が右翼的マスコミから垂れ流されている。今や有名になった超保守系のブッシュの応援団FOXテレビはシーハンさんを「変人」「狂人」と罵声を浴びせている。各地の地方のケーブルテレビなどの保守系マス・メディアもこれに加わっている。しかしこのような反応は、いかに彼らがシーハンさんのこの闘いを恐れているかを示すだけである。

 その他の企業メディアにも、一方ではシーハンさんの行動を紹介しながら、他方ではシニカルな姿勢を示すケースもある。ワシントン・ポスト紙は8月13日、“シンディ・シーハンの長くて激しい戦い(Cindy Sheehan's Pitched Battle)−ブッシュ大統領の牧場の近くのテントの中、兵士であった息子を失った反戦の母親が注目されている”との見出しの記事を掲載した。その記事の中で、先週の土曜日からブッシュ大統領との面会を求めて牧場近くでテントを張り、抗議するシーハンさんを行動へと駆り立てた背景を詳細に紹介している。シーハンさんが反戦平和団体“Gold Star Families for Peace”(平和を求める戦死者の家族)の設立者の一人であり、今回の行動の目的を反戦平和運動の拡大にありその目的は達せられたと報道した。同紙は、こう言いたいのだ。「シーハンはただの主婦ではない。」「ブッシュの戦争に反対する活動家なのだ」と。
※Smearing Cindy Sheehan(シンディ・シーハンさんをおとしめること)
 http://fairuse.1accesshost.com/news3/salon7.html
 この記事は、保守主義者たちが、シーハンさんが「自分の息子の死を、反戦闘争に利用している」、「座り込みはマイケルムーアにけしかけられてやっている」、国際的な女性の反戦組織「コードピンクと関係がある」などと誹謗して、彼女の行動をおとしめようとしていることを暴露している。彼女はこの記事の中のインタビューで、自分の考えをきっぱりと主張している。(翻訳参照)

 一方、大統領の地元は親ブッシュの意識も強く、シーハンさんの活動は執拗な妨害にさらされている。シーハンさんたちは白い十字架500本と米国旗40本を立てて、戦死者の慰霊碑としていた。そこに16日、男が小型トラックで突入し、十字架や旗をなぎ倒したのである。男は逮捕され、不法行為などで訴追されたが、保釈金3000ドルを払って釈放された。シーハンさんたちは、容疑者に接近禁止命令を出すよう当局に請求する方針である
 7日には近くに住む男がシーハンさんたちのテント近くで空に向けて銃を発砲した。また、シーハンさんを「国賊」「国家安全保障の脅威」などと中傷してプラカードを掲げる集団などが、現地を訪れている。150人もの右翼の行進があった。またクロフォード住民の中には、シーハンさんたちが居続けることで、設置された簡易トイレによる衛生上の問題や、交通上の問題が生じると、当局の取り締まりを求める声があがっている。
 しかし、これに対してシーハンさんらは、「みなさんの心配を解決するのは、実は簡単だ」「この道の先の住人が出てきて、シーハンさんさんと話しをすればいい」のだと楽観的である。
※Mother's Iraq-war Protest near Bush Ranch Picks Up Steam
http://www.commondreams.org/headlines05/0815-03.htm
※Crosses vandalized at antiwar mom's Texas camp site
http://www.alertnet.org/thenews/newsdesk/N16165034.htm



[5]ブッシュ政権のイラク政策に懐疑を深める米世論と占領支配の泥沼化

(1)イラク政策への支持を失い始めたブッシュ政権
 8月6日に公表されたニューズウィークの世論調査によると、アメリカ人の61%がブッシュ大統領のイラクへの対応に不満を持っていることが分かった。また、大統領の支持率は42%で過去最低に並んだ。不支持率も51%で半数を超え、イラク政策への不満の拡大が明らかになっている。
※Newsweek Poll: Bush’s Battle http://www.msnbc.msn.com/id/8849936/site/newsweek/
※Newsweek poll: more bad news for Bush http://www.dailykos.com/storyonly/2005/8/6/19054/07151

 ギャロップ社の調査でも同様である。「イラクにおける状況についてどう思うか?」といった設問への回答を見ると、今年の5月以降、イラク情勢の認識について悲観論が多数を占めるようになり、その傾向は8月になっても変化していない。米国のスケジュールに従って傀儡の「イラク移行政権」発足はどうにか達成したが、安定化の兆しが一向に見えない情勢に米国市民は冷ややか視線を向けていることが分かる。また「ブッシュ政権のイラク政策について」への回答を見ると、今年の6月において、「全部隊を撤退させるべき」が急増し、8月になるとその意見が33%を占め最大の声となっている。しかし「現状を維持するべき」がそれよりわずかに低い数値(28%)にとどまっていることから、米軍の出口戦略がまったく描けない政治状況の中で、撤退に賛成、反対が非常に拮抗している世論を読み取ることができる。
 さらに今月に実施された別の調査結果がある。「フセイン政権を倒したことによってアメリカが安全になったのかどうか?」との問いかけに対して、回答者した市民の48%が「イラク戦争によってアメリカは安全になっていない」と回答した。かつてブッシュ大統領は、「テロとの戦争にとってイラクの武装解除こそが重要」と吹聴し、戦争に突き進んだ。しかし今や米国民は、ブッシュ政権によるイラク戦争とその後の占領支配に対して、非常に懐疑的になっている。イラクにおける反米武装勢力の頑強な抵抗は米占領軍によるイラク軍事支配の土台を揺るがし、戦争支持で固まった米国世論に冷や水を浴びせている。そして徐々にではあるが、撤退を求める機運は着実に高まっているのである。

イラクにおける状況をどう思うか?
  2005/8月 2005/5月 2005/3月
非常に良い/
どちらかと言うと良い
43% 42% 52%
非常に悪い/
どちらかと言うと悪い
56% 56% 45%

ブッシュ政権のイラク政策について
  2005/8月 2005/6月 2005/2月
増派すべき 13% 10% 10%
現状を維持すべき 28% 26% 38%
部隊を縮小すべき 23% 31% 32%
全部隊を撤退させるべき 33% 28% 17%
意見なし 3% 5% 3%

(2)ますます泥沼化するイラク占領支配
 米の占領支配の破綻は、ますます顕著なものとなっている。憲法起草は暗礁に乗り上げている。8月に入り米軍兵士の犠牲者数は急拡大している。8月20日の時点で死者の数は64人を超えた。米国内では、パートタイム兵士(州兵、予備役兵)の犠牲が拡大していることが問題視されるようになっている。十分な訓練期間も経ずに、貧弱な装備で死地に追いやられているといった批判が沸き起こっているのである。
 また駐留部隊の規模を縮小するのかどうかをめぐり、ブッシュ政権は揺れ動いている。ブッシュ大統領は「イラクから早まって撤退すればイラク人を裏切り、自由拡大とテロとの戦いの勝利に向けた米国姿勢に疑問を投げかけることになる」(13日のラジオ演説)と語り、火消しに躍起になっている。そして、有力な同盟軍の一翼を担ったイタリア軍の早期撤退が問題になりはじめている。ブッシュ政権のイラク政策の破綻は誰の目にも明らかであり、米国はいつまで見通しのない戦争で多くの出血と莫大な出費を出し続けるのか、本格的に問われようとしている。
 シーハンさんの追及は、ブッシュ大統領の喉元に突きつけられた刃である。イラクの占領支配がさらに混迷を深め、ブッシュ政権の対イラク政策の破綻がますます顕著になるとともに、ブッシュ大統領に対するシーハンさんの追及はさらに鋭さを増すであろう。
※Bush ducks mother of dead solidier President using helicopter to enter, leave Texas ranch to avoid confrontation  http://www.theglobeandmail.com/servlet/story/RTGAM.20050812.wxbush0812/EmailBNStory/International/
※Death toll among part-time troops in Iraq soars.  http://www.tcpalm.com/tcp/wptv/article/0,2547,TCP_1213_3995951,00.html
※イラク撤退1カ月繰り上げ イタリア軍130人  http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050814-00000024-kyodo-int



[6]アメリカの反戦運動を鼓舞するシーハンさんの闘い−−ANSWERとUFPJが9/24行動で遂に統一集会・統一行進に踏み切る

(1)シーハンさんの直接行動が全米の反戦運動の“結節点”に浮上
 シーハンさんの闘いはアメリカの反戦平和運動に大きなインパクトを与えようとしている。ブッシュ政権による戦争と占領支配に反対する反戦平和運動、兵士の帰還を求める家族・軍人達の運動、反ストップ・ロスの運動、帰還兵の待遇改善を求める運動、カウンター・リクルータ運動(入隊勧誘反対運動)、兵役忌避者を支持する運動、徴兵制復活に反対する運動、戦争の大義を追及し戦争の真の目的を糾弾する運動(DawningStreetMemo.com等)、9・11の真相究明を求める運動、イラク人犠牲者を記録しブッシュ政権の戦争責任を追及する運動(“Iraq Body Count”)等々、多種多様な課題を掲げた粘り強い反戦平和運動が、逆風の中でも多くの組織・グループ・市民によって担われ、米国世論に警鐘を鳴らし大きな影響を与えてきた。イラクの占領支配の破綻が、誰の目にも疑いないものとなるにつれて、イラク反戦の支持者は全米の各層で増えている。−−このような闘いにさらに火をつけたのがシーハンさんの直接行動、座り込み運動なのである。


 アメリカの最大の反戦団体UFPJ(United for Peace and Justice、平和と正義のための統一)は、シーハンさんの闘いへの支援を前面に掲げ、全米各地で支援・連帯闘争を呼びかけている。地方政府庁舎や街の中心部で、ブッシュがシーハンさんの対話要求に応じるよう要求すること、地方新聞がシンディの闘いを報じるよう要請すること、ホワイトハウスに抗議電話を集中すること、等々の取り組みを呼びかけると同時に、ブッシュの保養地で起こっている出来事を全国の隅々まで知らせようとしている。9.24反戦行動への地方での組織化を、シーハンさん支援・連帯と結び付けて行うよう呼びかけている。
※「Support Cindy Sheehan A Mother's Vigil to End the War and Bring the Troops Home Now
August 9th, 2005」http://unitedforpeace.org/article.php?id=3035

 Troops Out Now Coalitionは、8月15日をシンディ・シーハン連帯デーとして、ニューヨークのユニオンスクエアなどでの行動を呼びかけた。
※Support Cindy Sheehan! Bring the Troops Home Now! http://www.troopsoutnow.org/
※Public's doubts grow about Iraq war http://seattletimes.nwsource.com/html/nationworld/2002441711_wardoubts16.html

 9.11の遺族らで作るピースフル・トゥモローズは、近親者を亡くした同じ境遇にある家族として、シーハンさんの行動「誇りと支援と悲しみがほろ苦く織り混ざった冒険旅行」に深い共感を寄せている。ホームページでは、8月17日に各地で行われたシーハンさん支援の徹夜のキャンドル行動に、多数の「9.11の母」が参加したことを紹介している。
※Seeing Cindy http://www.commondreams.org/views05/0812-23.htm
※Peaceful Tomorrows
http://www.peacefultomorrows.org/
http://www.peacefultomorrows.org/article.php?id=569

 メディアの論調も変わっている。シーハンさんが示唆したように、彼女の行動とそれをきっかけとした運動の高まりを単なるエピソードではなく、運動の大きな転換点と考え始めているのである。
※Cindy Sheehan's Symbolism http://seattletimes.nwsource.com/html/editorialsopinion/2002444929_momed19.html
 これはシアトルタイムスの社説で、「STOP THE WAR」と書かれたゼッケンをつけた小さな女の子の写真とともに掲載されている。社説はシーハンさんが果たしている役割を運動の「触媒」と表現している。彼女の抗議が始まるまでは、イラク反戦は、横断幕やバンパーステッカーで表現されていた、人々は軍を支援しないことを非難されることを恐れて、戦争を公に侮辱することを控えていた、ところがシーハンさんはこれに風穴をあけた、シーハンさんは、戦争と軍に対して違った見解をもつ様々なグループを結びつける触媒としての役割を果たした、少なくとも、今のところこれらのグループは大部分は1つの傘の下にある、と。命とドルという戦争のコストはますます膨れ上がり、シーハンさんは、この日々のコストを表す人間の顔であり、戦争に対して強まるフラストレーションのシンボルになった。
 しかし記事は次のようにも言っている。シーハンさんが流れを変えたのではない。すでに潮流は変化していたのだ、この変化のシンボルはますます成長するだろう、と。
※「Cindy Sheehan’s Moral Alternative to Bush and Dean」by Norman Solomon August 13, 2005 Antiwar.com http://www.antiwar.com/solomon/?articleid=6928
 この記事では、これまでイラク反戦を主張してきたハワード・ディーン、そしてあの映画監督マイケル・ムーアのそれぞれをシーハンさんと対比している。ディーンは2004年はじめ、イラク反戦を掲げた民主党の大統領候補として「ディーン旋風」を巻き起こした。一方、マイケルムーアは、映画「華氏911」や著書「アホで間抜けなアメリカ人」などでブッシュ政権をこき下ろしてきた。しかし、シーハンさんはこれらの人とは違う。彼らは、当事者たちとは一歩引いたところで政権を批判していたが、シーハンさんは戦死者遺族として直接ブッシュに対峙している。しかも彼女の力は衰えない。なぜなら戦死者は今後ますます増え続けるからである。最近ディーンは、イラク戦争反対を控えるべきと表明した。許し難い裏切りである。しかし、これはあらためて、息子を殺したブッシュを腹の底から追及するシーハンさんと、時代の波に乗りすぐに変節する民主党候補の違いを見せつけるものである。
※The grieving mother who took on George Bush http://news.independent.co.uk/world/americas/article306158.ece
 この記事も、シーハンさんの行動が広範に支持され、空前の支援活動が展開されていることについて、勝利なき戦争に関与し続けることによる増大する不安へのメタファーとなっていると述べている。


(2)ANSWERとUFPJが9/24行動において遂に「統一集会・統一行進」することで合意
 ANSWERとUFPJは、8月19日共同署名で、「9月24日の統一集会および統一行進に関する声明」を発した。そこでは、9月24日のワシントンでの大衆的な反戦行動を企画し組織してきた2つの主要な反戦団体は、統一集会と統一行進を組織することに合意したとしている。声明は全国ですべての人々が立ち上がり、9月24日にできる限りの最大のデモンストレーションを成功させることを呼びかけている。


ANSWERのポスター
http://www.internationalanswer.org/

UFPJのポスター
http://unitedforpeace.org/article.php?list=type&type=91

 これまで行動日と行動場所は統一したものの、統一集会や統一行進を実現するには至らなかった米国のこの2つの反戦統一戦線組織が、遂に真の意味での統一行動に合意したのである。ここにシーハンさんの今回の直接行動とそれへの支援・連帯が大きな役割を果たしたと考えるのは大げさであろうか。おそらく間違いなく、シーハンさんの行動がもたらしたものであると私たちは確信する。シーハンさんの支援行動と9月24日の行動は、イラク撤退のますます大きなうねりを作り出すであろう。
※Statement about a joint rally and joint march for September 24  http://www.internationalanswer.org/





“私たちには力がある!”
シンディ・シーハン
August 13,2005 by HuffingtonPost.com
「We Have the Power」By Cindy Sheehan
http://www.commondreams.org/views05/0813-26.htm


 今日私の一日はとても早く始まりました。3時間眠った後、今日のショーに間に合うようにと呼びかけられながら、私は6時半に誰かに起こされたのです。私はこの街にきてからトレーラーの中で寝泊まりしています。テントに蟻が群がってしまったためです。

 今日はとてもおもしろい一日でした。ブッシュが二度、とてもとても素早く通り過ぎていったのです。ローラ(ブッシュ夫人)がちらっと見えました。私は、彼女が私を見た後、あることを期待するようになりました。彼女がキャンプ・キャセイにチョコレートケーキとレモネードを持って訪ねてくることです。私は彼女を待ち続けました。しかし、彼女はついに来ませんでした。

 ブッシュ夫妻は、資金集めのバーベキューパーティーに出かけるために、私たちのところから道を下っていきました。私はとても驚きました。私たちがブッシュにこんなに近いところに居ることを彼らが許容するとは。愛する者を失った家族たちは、ブッシュが通り過ぎていく間、アーリントン墓地の息子たちの十字架を掲げていました。賭けてもいいですが、彼の残酷な政策に抗議するこれほど多くの人々を見て、彼が消化不良を起こしたというようなことはまずないでしょう。

 ブログを開いている右翼の連中や右翼偏執狂の「ジャーナリスト」の側からすると、私はずっと取れないでいるトゲのようなものなのでしょう。フィル・ヘンドリーという男は私のことを、「無知な雌牛」と呼びました。しかし皆さんがご存じのように、国中いたる所から来ては私を抱きしめ、平和の大義を支持してくれる人々が、私をおおいに感動させ圧倒するのです。私には、否定的なことや憎悪に対して思い悩む時間などありません。私を非難している人々は、狂気の戦争で不当にも子供を殺されるということが、どんな思いがするものなのか全くわからないのです。さらに、彼らは、真実に対して闘ういかなる真実も持ち合わせていません。だから彼らは、さらなる嘘と憎悪をもって真実と闘うのです。

 フォート・フード基地から来た3人の現役兵たちが私の元を訪れ、私のやっていることを本当に高く評価していると言ってくれました。そして彼らは、もし自分たちが戦争で殺されたら、自分たちの母親も同様のことをするだろうと語ってくれました。右翼の連中からあらゆる非難を聞かされてきた後だっただけに、この出来事は私の気持ちをとても和ませてくれました。また、私が小さな子どもたちを膝に乗せて、その間に彼らの母親あるいは父親が私たちの写真を撮るというということもありました。私は、戦争を終わらせるという私たちの使命を実現するために私が行なっている活動に、人々が共感してくれていることを光栄に思います。

 私たちは今、クロフォード・ピース・ハウスにいます。私は怒りに駆られてここに来ましたが、いま私は全国いたる所からの支援に激励され、圧倒されています。私は、私たちのような進歩的な自由主義者がこれ以上怒らなければならないような理由はもう何もないと考えてきました。私たちには力があります。普通の市民でも変化をもたらすことができるということを、一人の母親が示しました。私たち民衆は、ジョージ・ブッシュに説明責任を果たさせなければなりません。ブッシュが私たちに確実に答えるようにしなければなりません。議会に対して、あるいはメディアに対して、彼が答える必要が無いのであれば、私たちは、彼に否が応でも私たちに対して答えさせましょう。

2005年8月20日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局