[パンフレットの紹介]
ルーレン・モレさん講演会の記録
劣化ウランの危険性とアメリカでの反対運動


7月5日、大阪で開催したルーレン・モレさんの講演と資料集

 A4判 55頁  頒価 400円 送料 210円(冊子小包)

 発行
  グリーン・アクション/美浜の会/
  アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局


 お申し込み、お問い合わせは署名事務局まで。
  e-mail: stopuswar@jca.apc.org
  *パンフレットご希望の方は、宛て先と希望冊数をお知らせください。
     パンフレットと振り込み用紙をお送りします。代金は後払いで結構です。


はじめに

 7月5日、米国の環境地質学者であり独立系科学者のルーレン・モレさんをお招きし、劣化ウラン弾と低線量被曝の危険性についての講演会を開催しました。このパンフレットは、その時の講演内容の記録です。
 講演会前日の衆院本会議では「イラク特措法」が市民の反対を押し切り可決され、審議の過程で川口外相は「米国は(劣化ウラン弾を)使ったといっていない」という、驚くべき発言を繰り返していました。「劣化ウランの危険性とアメリカでの反対運動−アメリカの劣化ウラン反対運動と連帯しよう」というモレさんの講演会は、このような状況の中で行われました。会場は、約100名の参加者で一杯となり、モレさんの力強く、そしてユーモアたっぷりの講演に参加者一同力づけられました。
 講演会に参加できなかった方にも、是非モレさんのお話を伝えたい、そして、非常に貴重な講演内容について記録にとどめておきたいとの思いから、このパンフレットを発行することにしました。

 講演の前半は、劣化ウラン弾の危険性等に関するお話です。0.1ミクロンという超微粒子化した劣化ウランは、防護マスクも通過し、肺に入り、さらに血流に乗って全身の組織にまわります。しかも、劣化ウランは燃焼によって水に溶けないウラン酸化物となるため、いったん吸い込んでしまうとほとんど排出されずに体内に蓄積されます。この劣化ウランの微粒子は環境中に広がり、空気、土壌、水、そして食物を汚染するのだと、環境汚染と人体への被害のメカニズムについて、具体的な数字や事例をあげながら分かりやすく説明されました。
 カナダ人の湾岸戦争帰還兵であるテリー・ライオデンさんは、戦争後重い病気にかかったため、死後、自らの体を湾岸戦争症候群の調査のために献体することを決意したという話が紹介されました。そして実際に亡くなった後、軍が遺体を取りにやってくるのに先んじるため、テリー夫人は、待機していたUMRCのドラコビッチ医師に死亡直後に遺体を渡しました。政府・軍による巨大な圧力と妨害の中、帰還兵とその支援者の運動が、ぎりぎりの所で進められている現状を実感させる驚くべき話でした。ドラコビッチ医師による検査の結果、テリーさんの身体の、脳、骨、あらゆる臓器にガンが見つかったとのことです。
 劣化ウラン弾は、イラク、アフガニスタン、コソボ等で、そして米英カナダ各国国内で帰還兵とその家族に被曝者を生み出し、被害を広げています。地球規模で劣化ウランの微粒子が広がっている。これこそが「グローバリゼーション・オブ・ヒバクシャ」だと強調されました。

 講演の後半は、米国の原子力発電所・核兵器関連施設周辺での低線量被曝の危険性に関する話でした。モレさんを含め、8人の良心的な科学者・研究者が中心となって(「放射線と公衆衛生プロジェクト」Radiation and Public Health Project (RPHP))、子ども達の乳歯を集め、歯に蓄積したストロンチウム90の量とガンの関係を調査している活動について紹介されました。原発周辺の子ども達の乳歯のストロンチウム90の量は経年的に増大しています。さらに小児ガンにかかった子どもの乳歯では、その放射能の量が格段に高くなっています。これらの調査結果は、原発が放出する放射能と小児ガンの因果関係を示していました。また原発に近い程、飲料水や牛乳に含まれるストロンチウム90の量も増えているとのことです。飲料水や牛乳を通じて子ども達は放射能を取り込んだというRPHPの報告が紹介されました。他方、原発が閉鎖された地域の調査では、小児ガンの発生率が18%も低下したとのことです。原発から日常的に放出される放射能による低線量被曝が、いかに危険であるかを痛感させられた話でした。
 また、核のゴミ捨て場が先住民の土地に狙われている事、黒人層の住む地域に原発周辺の乳製品が優先的に送り込まれている事など、「先住民のための科学者」会長でもあるモレさんは、「環境レイシズム」の実態についても話されました。

 講演を通じて、モレさんの一貫した主張は、「小さな人間でも大きな力を持つことができる」でした。モレさんは、市民が抵抗の声をあげ、闘うことが最も重要なことだと、自らの経験を交えて、何度も強調されました。
 ヒバクシャ、先住民、弱者と被害者の側に立つ戦闘的・良心的科学者の揺るぎない姿勢と言葉に勇気づけられた講演会でした。


 なお、このパンフレットの終わりにある資料編では、講演会当日に配布した資料に加え、講演の中で紹介された乳歯の調査に関する「放射線と公衆衛生プロジェクト」のプレス・リリースを翻訳し紹介しています。また、集会で採択された「特別アピール」と共に、その後福島瑞穂参議院議員によって出された劣化ウラン弾に関する質問主意書等を掲載しています。

 このパンフレットが、劣化ウラン弾に反対する人々、米国の戦争と日本の戦争荷担・軍国主義化に反対する人々、原発と核に反対する人々の活動の一助になれば幸いです。

2003年8月

グリーン・アクション
美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局



 目   次 


 ○はじめに

 ○ルーレン・モレさん講演の記録

 ○資料編
  ◇モレさん紹介の記事[2003.8.2毎日新聞]

  ◇原子力発電所と小児ガンに関する調査報告
   「南フロリダの小児ガン
      原子力発電所から放出された放射能が原因と判明
      摂取ルートは飲料水が有力」
     2003年4月9日「放射線と公衆衛生プロジェクト」 (RPHP) プレス・リリース

  ◇福島瑞穂参議院議員提出の劣化ウラン弾に関する質問主意書
  ◇講演会当日の配布資料より
   ・特別アピール
   「米軍の劣化ウラン弾使用を認めない川口外相と日本政府を追及しよう」
   ・モレさんの紹介
   ・モレさんが書かれた記事の翻訳資料
   ・ウラニウム・メディカル・リサーチ・センター(UMRC)の
     劣化ウラン被害調査の紹介
   ・関西電力の劣化ウラン兵器転用疑惑に関する資料
   ・劣化ウラン弾被害に関する新聞記事