イラク戦争劣化ウラン情報 No.6      2003年9月13日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局 吉田正弘

あくまでも米国の劣化ウラン弾使用を隠ぺいしようとする、無責任極まりない政府答弁書
−−福島瑞穂議員の質問主意書に対する政府答弁を読んで−−

 参議院議員の福島瑞穂議員が提出していた「イラク戦争における米英軍の劣化ウラン弾使用に関する質問」に対して、8月29日付けで政府から答弁書が出されました。福島議員から出された質問主意書は、川口外相が衆議院特別委員会(6月25日等)で「米軍が劣化ウラン弾を使用したと言ったとは聞いていない」「人体及び環境に対する影響はほとんどない」との発言を繰り返したことに対して政府の正式の見解を表明させるために出されたものです。
 質問主意書では、イラク戦争で米英軍が劣化ウラン弾を使ったことは明白であること、劣化ウラン弾は国連人権小委員会などでも使用禁止決議がなされていること、国内法では核燃料物質でばらまけば犯罪になるような物質であること、回収(汚染除去)や健康調査が必要と国際機関も勧告していること等をあげ、政府の見解をただしたものでした。返答までに1ヶ月もの時間を要しながら、答弁書の内容は全く無内容かつ無責任極まるもので、いわば米国の共犯者の書いたものです。読んであきれ果ててしまいました。しかし、これは日本政府の正式見解なのであって、これから一つ一つ徹底的に批判し、政府批判の世論を作っていく必要があります。いくつか主要な問題点を上げて批判しておきます。

 一番最初に問題にしなければならないのは基本姿勢の問題です。政府答弁書は簡単に言えば「劣化ウラン弾が使われたかどうかは承知しない」「米にも問いただしたくない」「危険性は(安全性は)確定していない」「だから何もするつもりはない」「今後何が起こっても、そんなことには関心がない」と言うことです。一体これは一国の政府の取るべき態度でしょうか。
 イラク戦争で何が行われているのか、関心もないし知りたくもない。こんな姿勢で劣化ウランを使った新しい核戦争であるイラク戦争を彼らが全面支持したことに憤りを禁じ得ません。何が有ろうと黙って米国のいうままついていくだけだとでも言うのでしょうか。政府はこれから自衛隊のイラク派兵を強行しようとしています。多くの日本人がNGOとして現地に入っています。何よりも放射能で汚染された場所にイラクの人々が住んでいるのです。今後彼らがガンや白血病になっても、何が起こっても知ったことではない、劣化ウランがどれだけ、どこで使われ使わればらまかれたのか調べるつもりもない−−この日本国民に対しても、国際社会、人道に対して無責任極まる態度は絶対に許すことはできません。

 答弁書の具体的内容で第1に問題にしなければならないのは、質問主意書で取り上げられた米英軍の劣化ウラン弾の使用を示すさまざまな証拠、文書を全て「承知している」と認めておきながら、「米国は使用したとは言っていない」とあくまでもシラを切ろうとしていることです。質問主意書が取り上げたブルックス准将のブリーフィングについても「劣化ウラン弾を使っているのか、なぜ危険なものを使うのか」という質問に対する答えであって、現に劣化ウラン弾を使っているということを認めた発言であることは明かであるのに、政府答弁書は「保有する弾薬の中に劣化ウラン製のものがあると言っただけで、使ったとは言っていない」と明らかに嘘をついて逃げています。
 イラクでは現に劣化ウラン弾が大量に使われ、バグダッドや各地にごろごろ転がっています。これは誰が撃ったというのでしょうか。米国は「使ったかどうか公表しない」政策をとっています。その政策に当の米軍以上に忠実に従って、どんな証拠を突きつけられても「米国は使ったとは言っていない」と米国を免罪し続けています。英国は劣化ウラン弾の使用を認め、使用量(1.9トン)、使用場所も公表しています。米軍も使用について認める言動、文書公表を行っています。例えばA−10攻撃機は75トンの劣化ウラン弾を撃ったと報告書に書いて有るわけです。それでも米国は使ってないというのでしょうか。ここまで無条件に米国に忠節を尽くす日本政府、外務省とは一体誰のためのものなのでしょうか。

 第2の問題は劣化ウランの危険性についてあきれるような居直りをしていることです。劣化ウランは政府答弁書でも認めるように、人の生命、人体に危険を及ぼしうる核燃料物質であり、国内でまき散らせば当然犯罪になるのです。そんな物質を米英軍がイラクで大量にまき散らしたことに対して「判断停止」、目をつぶって危険性を問題にせず、逆に積極的に弁護に回っています。政府自身が「健康への被害はほとんどない」根拠として国連環境計画UNEPの報告をあげました。
 質問主意書では政府が根拠にしたUNEPの最新のボスニア・ヘルツェゴビナ調査の勧告が、健康被害をもたらす可能性があるので少なくとも劣化ウランの使用場所の確認、住民への周知、撤去と汚染除去、健康調査等を要求していることを指摘しているのです。たとえ「健康被害等については国際的に確定的な結論が出」ていなくても、健康被害の可能性が少しでもある場合には当然の措置です。今回の答弁書は、その最低の措置の必要さえ否定し、「国際調査の動向を注視する」=危険が確定するまでは何もしないというのです。これは米英占領軍がUNEPの調査団のイラク入を認めない現状の下ではまさに詐欺的な言いぐさであり、米国と口裏を合わせて被害防止や被害調査を妨害するような立場です。許し難いと思います。

 第3に、劣化ウランの被害を恐れているのは米英政府も例外ではないのです。英政府は自国兵士が希望すれば尿のウラン調査を行います。米兵士も血液などの検査を受けることになっています。両国政府は劣化ウランのせいで再び湾岸戦争症候群が出てくることを恐れ、それに備えているのです。米英軍は今回のイラク戦争では自国兵士に劣化ウラン弾で燃えている戦車には近づくなと指示をしました。ブッシュ政権の「健康被害はない」の繰り返しは、イラクの人々、イラクに入って活動しているNGO、そして各国の兵士を余分な危険にさらし続ける犯罪的な行為です。これらの人々に少しでも健康被害の可能性がある限り、米国に対して劣化ウラン/ウラニウム使用の有無、使用量、使用場所等について明らかにするよう要求するのが当たり前のことです。しかし答弁書は、「米国政府に問い合わせを行った結果、米国は今回のイラクに対する軍事行動において劣化ウラン弾を使用したか否かについて、今後とも明らかにすることは予定していない」と言われたので、それで「承知」したというのです。

 第4番目は貫通型の誘導爆弾にウラニウムが使われている疑惑についてです。この問題はUMRCのアフガニスタン調査でほぼ確実な事実であると思われます。そして、今回のイラク戦争では大量の、1000発、2000発もの貫通型爆弾が使われた可能性さえ否定出来ません。その場合ばらまかれたウラニウム量は500トン、1000トンに跳ね上がります。政府はこの重大問題を米国に問い合わせようともしません。

 政府答弁書は劣化ウラン問題で日本政府がおよそ被爆国の政府とは思えない、米国政府べったりの姿勢を取っていることを改めて示しました。恥ずかしいことにこれが日本政府の公式見解なのです。質問主意書を提出した福島瑞穂議員事務所は、今後もさらに政府の姿勢を追及し続けると聞いています。私たちも政府見解を徹底的に批判することで大きな世論を作り、政府の姿勢を変えるよう迫っていかなければならないと思います。イラクでは多くの人々が劣化ウランの被害を受け、あるいは劣化ウランの危険が有るところで生活しています。この危険性を広く明らかにすること、それを通じて米英軍の犯罪性を明確にする必要があります。すでにお知らせしたように私たちがアフガニスタンの調査で協力してきたUMRCはイラクでも劣化ウラン/ウラニウム汚染の本格的な調査に着手しています。彼らの活動を支援するなかで、事実を明らかにし、それを大きな力にすることで日本政府の態度を根本的に改めさせなければならないと思います。



【政府答弁書】(質問事項を付け加えました)
内閣参質156第44号
 平成15年8月29日
                         内閣総理大臣 小泉純一郎
参議院議長 倉田寛之 殿

参議院議員福島瑞穂君提出
 イラク戦争における米英軍の劣化ウラン弾使用に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。

 参議院議員福島瑞穂君提出イラク戦争における米英軍の劣化ウラン弾使用に関する質問に対する答弁書

質問1 劣化ウランは人体に有害な影響を与えるアルファ放射能である。また重金属として人体に対する化学的毒性も持っている。このような物質を環境中にばらまき、一般住民に無差別に被害を与えることは、国際法上も許されない。例えば、1996年国連人権小委員会は、劣化ウラン弾は非人道兵器・大量破壊兵器であると決議している。また欧州議会も今年二月、劣化ウラン弾使用禁止の決議を行っている。政府は、これら決議を承知しているか。また、これらの決議を尊重すべきものと考えているか。

質問2 川口外務大臣は、2003年6月30日の衆議院イラク人道復興支援並びに国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動等に関する特別委員会において、「劣化ウラン弾については、国際機関で調査、先ほど申しましたけれども、WHOがし、あるいはUNEPもしております。そして、それぞれの機関の報告において、劣化ウラン弾の人体及び環境に対する影響はほとんどないという結論であったということです。」と答弁している。しかし、最も新しい調査結果であるUNEP・PCAU(国連環境計画・紛争後評価ユニット)のボスニア・ヘルツェゴビナ調査団の報告書(2003年3月)は、「劣化ウラン弾を集めて処理すること」「汚染地点はアスファルトかきれいな土で覆う」「汚染地点の地図を作る」「健康被害を調査する」などを勧告している。政府はこの国際機関の勧告を承知しているか。また、この勧告を尊重すべきと考えているか。

1及び2について
 1996年8月29日に国際連合人権委員会の下に設けられていた差別防止・少数者保護小委員会が、劣化ウランを含む兵器等、大量破壊兵器又は無差別に影響を与える兵器の製造及び拡散を制限するよう各国に求めること等を内容とする「人権、特に生命に対する権利の享受のための必須条件としての国際平和と安全に関する決議」を採択したことや、本年2月13日に欧州議会が、欧州連合加盟国に対し劣化ウラン弾等の使用の一時停止を求めること等を内容とする「不発弾及び劣化ウラン弾の有害な影響に関する決議」を採択したことは承知している。また、国際連合環境計画が、同年3月のポスニア・ヘルツェゴビナにおける劣化ウランに関する調査報告書において御指摘のような勧告を行っていることは承知している。しかし、政府としては、劣化ウラン弾の影響について国際的に確定的な結論が出されているとは承知しておらず、国際機関等による調査の動向を引き続き注視していく考えである。

質問3 日本国内では、劣化ウランは「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」(原子炉等規制法)に規定される核燃料物質として特別な管理の下に置かれている。核分裂性が低いとはいえ、れっきとした放射性物資であり、輸送・貯蔵などの取扱いについても、厳重に法律で定められている物質である。日本で、この劣化ウランを故意に散布した場合、これは犯罪とはならないのか。また輸送中等の過失により、劣化ウランを散布した場合、その劣化ウランはそのままその場所に放置しておいても問題ないとされているのか。

3について
 劣化ウランは、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和32年法律第166号)第2条第2項に規定する「核燃料物質」に含まれるものとして、同法による規制の対象となっている。
 まず、犯罪の成否については、捜査機関が収集した証拠に基づいて個別に判断すべき事柄であるが、あくまで一般論として申し上げれば、日本国内で核燃料物質を故意に散布した場合において、例えば、核燃料物質をみだりに取り扱うことにより、その原子核分裂の連鎖反応を引き起こし、又はその放射線を発散させて、人の生命、身体又は財産に危険を生じさせたと認められるときは、同法第76条の2違反の罪に該当し得る。    
 また、製錬事業者等が過失により核燃料物質を散布した場合については、同法第64条第1項及びその関連省令に定めるところにより、速やかに汚染の広がりの防止及び汚染の除去等の措置をとることが求められる。

質問4 2003年7月1日の衆議院イラク人道復興支援並びに国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動等に関する特別委員会で、参考人として意見陳述した藤田祐幸氏は、委員会で配付した参考人意見陳述書の中で、イラクでの現地調査において、イラク計画省の「建物の周辺で多数の劣化ウラン弾を発見しました。劣化ウラン弾にとってコンクリートは紙のように柔らかいため、ウラン弾は発火せず、弾頭のまま散乱しておりました。建物の中にはさらに多量の弾頭が散乱していることが想像されます。測定すると6マイクロシーベルトほどの放射線を放出しており、環境放射線の百倍ほどの値を示しておりました。」と述べている。藤田氏は、ほかにも多数の劣化ウラン弾頭を発見し、高い数値の放射線を測定している。また、劣化ウラン砲弾で撃ち抜かれた戦車の貫通口から高い数値の放射線を確認している。藤田氏だけでなく、日本や米英の多くのマスコミ関係者、ジャーナリストがイラクに調査入りし、いずれも劣化ウラン弾を発見し、高レベルの放射線を確認している。例えば、米紙クリスチャンサイエンスモニター紙5月15日に掲載されたスコット・ピーターソン記者による「劣化ウラン弾から千三百倍の放射線を確認」という記事などがある。米軍がイラク戦争において劣化ウラン弾を使用したことを証明する数々の証拠事例について、政府はこれを否定するのか。否定するのであれば、その理由は何か。

4について
 本年7月1日の衆議院イラク人道復興支援並びに国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動等に関する特別委員会における藤田祐幸氏による参考人としての意見陳述の内容については承知している。また、イラク共和国(以下「イラク」という。)内において劣化ウラン弾を発見し、又は高レベルの放射線を確認したとの内容の報道についても承知している。しかし、アメリカ合衆国(以下「米国」という。)が今回のイラクに対する軍事行動において劣化ウラン弾を使用したか否かについては承知していない。

質問5 当事者である米国でも、国防総省及び米軍当局が繰り返し劣化ウラン弾の使用を認める発言を行っている。米軍のジム・ノートン大佐は、イラク現地で、イラク戦争直前の3月14日のブリーフィングにおいて、劣化ウラン弾はタングステンよりも有効なので使うという使用予告とも言える発言を行った。また、3月26日の記者会見でも、米中央軍のブルックス准将が、イラク戦争での劣化ウラン使用を認める発言を行った。この発言は、現に米軍がイラクで侵攻作戦を展開中に、その現地司令部による、この侵攻作戦に関する記者会見の場での発言である。この作戦で使用する米軍の兵器への劣化ウラン使用についての質問に、ブルックス准将は「我々の兵器(our munitions)」と答え、その「わずかな部分」としながらも劣化ウランの使用を認めたものである。同じ質問で、イラク市民への影響についてどう考えるかと問われたのに対し、「我々が作戦を遂行するやり方は、戦闘行為を目的とするものとしては安全」と答えている。さらに、同じ記者会見の別の質問で、なぜ今回も劣化ウランを使い続けるのかと問われたのに対し、使っていないと答えるのではなく「我々が使うものは安全と信じる」と答えている。
 複数の日本の主要な新聞社や通信社も、ブルックス准将の発言を劣化ウラン弾の使用を認めたものと報道した。しかるに川口外務大臣は、このブルックス准将の発言を「米軍の保有する劣化ウラン弾」に関するもので使用については言及していないと繰り返し答弁している。これらの発言が劣化ウラン弾の使用を認めたものではないと、川口外務大臣が主張する根拠は何か。

5について
 本年3月14日のノートン大佐の会見及び同月26日のブルックス准将の会見については承知している。お尋ねのブルックス准将の発言については、米国の軍隊の保有する弾薬のうちに劣化ウランを使用した弾薬がわずかにあることを述べたものであって、米国が今回のイラクに対する軍事行動において劣化ウラン弾を使用したことを述べているものではないと理解している。

質問6 米軍の同盟軍である英軍当局自身が米軍による劣化ウラン弾の使用を認めている。例えば英ガーディアン紙は、4月25日付けのポール・ブラウン記者の記事で、英国国防省スポークスマンが英軍の劣化ウラン弾使用を認め、その使用場所と使用量の詳細を公表するとともに、米政府にも劣化ウラン弾の使用場所、使用量を明らかにするよう希望すると発言したと書いている。英国自身が劣化ウラン弾使用を認めるとともに米軍による劣化ウラン弾使用を認めている。政府はこの事実を知っているか。この発言を踏まえても、米軍が劣化ウランを使用していないと主張するのか。主張するのであれば、この英国国防省スポークスマンの発言が事実ではないとする根拠を示されたい。

6について
  本年4月25日付けのガーディアン紙の記事及びグレートブリテン及び北アイルランド連合王国(以下「英国」という。)政府が自国による劣化ウラン弾使用を認めていることは承知しているが、英国歌府は、米国の軍隊が使用した兵器については米国の問題であるとの立場であると承知しており、英国が米国の軍隊による劣化ウラン弾使用を認めたとは承知していない。

質問7 米中央軍空軍(USCENTAF)は4月30日付けで「Operation IRAQI FREEDOM-By The Numbers」という報告書を司令官モーズレイ中将の名で公表した。この報告書の中で、米中央軍空軍は30ミリ弾31万1597発を使用したことを認めている。米空軍には30ミリ砲弾を発射する航空機はA‐10攻撃機しかなく、この攻撃機の発射する機関砲弾はアメリカ科学者連盟によれば、5発中4発が劣化ウラン弾である(この混合比はコンバットミックスと呼ばれる)。そして一発の劣化ウラン弾は0.299キログラムの劣化ウランを含む。これによれば、米中央軍空軍がA‐10攻撃機から発射した劣化ウラン弾だけで約75トンの劣化ウランを含んでいることになる。また、この件について前出の5月15日付けクリスチャンサイエンスモニター紙のスコット・ピーターソン記者は、中央軍のスポークスマンの公表としてA‐10が劣化ウラン75トンを使用したことを認めたと述べ、このことを裏付けている。これらの文書からA‐10攻撃機だけ取り上げても70数トンの劣化ウランを使用したことは明らかであると考える。政府はこれを認めるか。もし認めないとすればその根拠を示されたい。

7について
 米国の中央空軍が本年4月30日付けで公表した「数量で見るイラクの自由作戦」と題する報告書の中に、イラクの自由作戦において合計31万1597発の30ミリ機関砲弾が使用されたことが記載されていることは承知しているが、米国が劣化ウラン弾を使用したか否かについては承知していない。

質問8 前出の参考人招致で、藤田祐幸氏はバグダッドでの硬化目標貫通型誘導爆弾(通称「バンカーバスター」)の爆撃クレーターの中で、通常値の1.5倍の放射能を検出したことを指摘している。このことは貫通型誘導爆弾にも劣化ウランあるいは非劣化のウラニウムが使われている可能性を示している。アフガニスタンではカナダのNGOであるUMRC(ウラニウム・メディカル・リサーチ・センター)によって、米軍の爆撃地点の風下側の住民の尿から通常の二百倍もの高濃度のウラニウムが検出され、爆撃のクレーターからもウラニウムが検出されている。これは米軍が従来の対戦車兵器以外に、貫通型誘導爆弾でも劣化ウラン、あるいはウラニウムを使っていることを示している。このことによって従来の数倍のウラニウムを環境中にばらまき、住民に健康被害を与えている可能性が大きい。政府はこのような事実を知っているか。

8について
  米国が今回のイラクに対する軍事行動において、一般に「バンカーバスター」といわれているレーザー誘導装置を付けた地中貫通爆弾であるか否かを問わず、劣化ウラン弾を使用したか否かについては承知していない。

質問9 英軍当局及びUNEP・PCAUなどの国際機関が述べているように、重大な健康被害を及ぼす可能性がある劣化ウラン弾が使われたならば、その汚染除去と住民への健康被害防止のために、劣化ウラン及びウラニウムの使用量、使用場所、使用兵器の種類について、米軍に公表させる必要がある。政府は、このようなデータの公表と、汚染除去作業、住民への健康調査などを行うよう米国に要求すべきであると考えるが、どうか。もし、それを否定するのであれば、その理由を示されたい。

9について
  米国政府に問い合わせを行った結果、米国は今回のイラクに対する軍事行動において劣化ウラン弾を使用したか否かについて、今後とも明らかにすることは予定していないと承知している。また、劣化ウラン弾による健康被害等については国際的に確定的な結論が出されているとは承知しておらず、国際機関等による調査の動向を引き続き注視していく考えである。