イラク戦争劣化ウラン情報 No.18      2004年6月30日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局 吉田正弘

ニューヨーク・デイリーニュース・スクープのその後
議会を巻き込んだ劣化ウラン被曝米兵の闘い
 −− 米軍当局のサボタージュと猛烈な巻き返し


 UMRCのアサフ・ドラコビッチ博士の来日から2ヶ月が過ぎた。ニューヨーク・デイリー・ニュース(NYDN)が、イラク戦争に参加した9人の州兵の内4人が劣化ウランに被曝したという4月4日から3日間にわたるスクープをすっぱ抜いて以降、イラク戦争参加兵士の被曝問題が米国内を大きく揺さぶっている。最初のスクープ記事については、イラク戦争劣化ウラン情報No15〜.17にかけて紹介した。本号では、スクープ以降も断続的に出されているNYDNの記事を中心に、4月下旬から5月初めにかけてのこの問題をめぐる米国内の動きをまとめて紹介する。

(1) NYDNのスクープは米国内で大きな社会的波紋を引き起こした。何よりもイラクから帰ってきた多数の兵士達が、劣化ウランに被曝していることへの不安から軍当局に検査を要求したのである。すでに800人が検査を受け、予約待ちが数百人いる状況である(NYDN4/19)。本来、自国軍兵士やイラク住民に実際に犠牲を強いることはもちろん、このように健康に深刻な不安を与えるような残虐で特殊な核兵器を使うこと自体が反人間的非人道的、戦争犯罪に値するものである。米軍はこれらの兵士の健康への不安に答え、きちんと対処する義務がある。

(2) NYDYのスクープで大きな注目を浴びたために、米軍は従来のような形で劣化ウラン被曝をウヤムヤにすることはできなくなった。すなわち第442憲兵部隊の9人のように、検査はするがずるずる引き延ばす、たとえ検査しても結果を教えない、半年も放置するなどという、患者を患者とも思わないようなデタラメなやり方、サボタージュはもはや通用しなくなったのだ。

 米国世論は、米軍がイラクからの帰還兵の正当な要求を無視して、兵士達をまともに扱っていないということを知ってしまった。米軍は弁解に大わらわになったのである。現に被曝した兵士がいる。同じ部隊の他の兵士は被曝していないのか。戦闘に参加していない憲兵部隊が被曝したのだ。戦闘に参加した部隊に被曝者がいるはずだ。これは当然の疑問であり米軍が答えざるを得ない要求なのである。世論を喚起することによって、劣化ウラン被曝を米軍兵士全体、更には米国民全体の関心事にする。そうすることによって議会を動かし、軍当局を動かす。−−ここにNYDYのスクープの最大の意義がある。

 NYを選挙区に持つヒラリー・クリントン上院議員は上院軍事委員会の委員でもある。彼女は素早くこの問題に関心を抱き積極的に取り上げた。彼女は被曝兵士たちと会って、彼らの実情を聞き、軍の扱いが不当であること、適切な検査を行うように軍当局に要求した。上院の軍事委員会でのヒラリーの要求に対して、マイヤーズ統合参謀本部議長は事態の是正を表明せざるを得なくなった。サボタージュという形で自軍兵士の劣化ウラン被曝を無視してきた軍当局は何らかの対応を迫られたのである。(NYDN4/20、4/21)

(3) しかし、そこまでである。スクープから1ヶ月も経たないうちに軍当局は猛烈な反転攻勢に打って出た。早くも4月末から、あくまでも精密な検査(ウラン同位体ごとの分析)を拒否する姿勢を前面に押し出したのである。UMRCとドラコビッチ博士がやったようにウランの同位体ごとの検査をしなければ劣化ウランへの被曝を明らかにすることはできない。
 そしてこの精密検査をやらないための新方針、それが超高濃度の「ガイドライン」、つまり「ウランの総濃度が268ナノグラムを超えなければ同位体ごとの検査はしない」というべらぼうな“検査基準”を指し示すことで検査のハードルを思い切り上げ、検査対象者をほとんど全員切り捨てることであった。それは表向き「科学的」な装いをした被害者切り捨てに他ならない。以前のサボタージュ対応では、世論の非難に対応できなくなり、専門家や研究所を総動員して反撃せざるを得なくなったのである。それだけ軍当局の危機感は強くなったと言えるだろう。(NYDN4/19)

 268ナノという数字は、通常の米国人の平均10ナノグラム/リットルの25倍以上だ。早い話が検査の全面的な切り捨てである。こんな超高濃度の対象者が大勢いるはずがない。いたとしてもそれは戦闘で負傷し体内に破片などを持つ特異なケースだけである。逆に言えば、兵士たちのウランの尿中濃度が通常の25倍にまで上がっていても、劣化ウランが含まれるかどうかの検査もせずに全部切り捨てているということである。こんな高い基準で行われているとなれば、劣化ウランによる被曝兵士など存在しないのは当然だ。

 軍当局は、今のところこのデタラメな268ナノ基準を撤回するつもりはないようだ。ラモス軍曹に対する軍の再検査の結果は、「陰性だ」という。しかし、本当に陰性なのだろうか。おそらくそうではない。実際には調べていない、あるいは調べることができないのに苦し紛れに「陰性だ」と言っているに過ぎないのではないか。ラモス軍曹に関する検査結果の公開請求で、真実が明らかになってきている(NYDN4/19)。
 分析を担当した二つの研究所のうち、一つはウラン同位体ごとの検出そのものができない。もう一つは検出しても誤差が大きすぎて天然ウランと劣化ウランが区別できず、劣化ウランが含まれているかどうか判定できなかったという。こんなデタラメなやり方で「陰性」と断定するのは大間違いである。「測定できなかった」「測定するつもりはない」と正直に告白すべきである。現にラモス軍曹の場合は、UMRCが精密な調査・分析を行い劣化ウランが検出されたのである。ラモス軍曹のケースでさえこの有様だ。他の兵士に対してまともに検査をしているとは到底思えない。

 問題の核心は劣化ウランに被曝したかどうかであり、それを明らかにできるのはウラン同位体比が測定できるかどうかだ。この方法を採用せずして劣化ウランの検査をしたと言うべきではない。米議会の中でも米軍に対する追及は強まっている。軍はなぜUMRCが行ったのと同じ検査が行えないのか。ICP-MSを使った精密な検査をせよ。それをせずに被曝兵士を切り捨てるのは許されない等々という怒りと要求が強まっている。

 確かに、NYDYのスクープの衝撃で軍当局は「希望者には尿のウラン調査を認める」との通知を軍の病院に出した。しかし軍当局の腹は、268ナノというとてつもない高い値を正常値の上限に持ち出して「ウランの総濃度が基準値内だ」「だから体には影響はない」と切り捨てるつもりなのだ。米軍はウラン被曝によって健康被害が出ていることを絶対に認めようとしない。もしも認めれば膨大な除染費用の負担、損害賠償の負担にさらされるからであり、下手をすれば劣化ウラン兵器の使用が禁止されてしまう。そう考えているからである。

 しかし、天然ウランと劣化ウランは根本的に異なる。確かに体内には外的環境から天然ウランが取り込まれ、順次尿に出てくる。しかしたとえ少量でも劣化ウランは軍の作戦で被曝したものであり、それによる健康被害は人為的に付け加えられた“追加的被曝”である。
 さらに、天然ウランと、燃焼しセラミック状態になった劣化ウランとでは人体内部への被曝影響のメカニズムが全く異なる。尿中の天然ウランと比べてレベルが低くても、劣化ウランは不溶性のかたまりが肺や他の臓器に入って、そこで周辺の細胞にずっと放射線を出し続けることになる。周辺が受ける被曝線量は極めて大きな量になる。すなわち未来に向かって永遠に被曝を押し付ける特異な作用を与えるのだ。そして、ウランは粒子の吸入による体内被曝こそ最も危険であり、その内部被曝の真の危険性はまだ全体像が明らかにされ尽くしてはいない。まさにその点こそが、ICRPの被曝モデルが過小評価をしているところであり、まして米軍の基準など到底当てはまらない領域なのである。

(4) 軍当局は劣化ウランと病気との因果関係を否定する様々な議論を持ち出している。その因果関係否定の急先鋒であり、被爆者切り捨ての前面に出ているのがメリーランド・アバディーンにある陸軍の健康増進・予防医学センターのマーク・メランソン中佐である。彼は、「劣化ウランには安全レベルがある」(閾値)、「放射線が体内で均等に影響を及ぼす」という2つの議論をふっかけている。(NUDN5/6)
 軍の劣化ウラン弾による健康被害否定論の最先頭にいるのが、軍の劣化ウラン問題の責任者である軍の配備健康支援局次長マイケル・キルパトリック博士である。彼によれば、軍の検査が指し示す結果は「劣化ウランの被曝が病気を引き起こさしたわけではない」というものである。彼もまた因果関係を否定しているのだ。(AP4/30)

(5) 今回のNYDNのスクープを調査・分析面、理論面からバックアップしているのがUMRC、すなわち私たちがカンパ・キャンペーンを行っている米の独立研究機関、その代表者であるアサフ・ドラコビッチ博士である。
 UMRCの調査・分析が明らかにしたのは、米英軍が劣化ウラン/ウラン兵器を使用したことによって、イラク全土が放射能で汚染されているという事実である。推測・推定で言っているのではない。学術的な調査方法を採用し、データとして具体的な分析結果を出し、それが学術論文として学会に提出され受理される。UMRCはそういう“厳然たる事実”と“データ”を突き付けたのである。

 本来なら国連やWHOなどの国際機関が大量の人員と費用を掛けてやらねばならない調査・分析である。イラクから帰還した米英兵士、その他有志連合の兵士達、そして何よりもイラクの住民や子どもの全面的で継続的な調査が必要である。彼らは全て米英軍の劣化ウラン戦争、新型放射能兵器の犠牲者である。イラク民衆を殺しまくっている米兵についても、この問題では切り捨てを認めてはならない。現在もまだ、米の大量の劣化ウラン/ウラン兵器使用によってイラク中にまき散らされた劣化ウランの微粒子はイラクの土、水、空気、そして人間を汚染し続けているのだ。イラク民衆−米英軍兵士−有志連合軍兵士。彼ら全員の徹底的な調査・分析を通じて放射能汚染の実態と戦争犯罪を暴露すること、最後的に劣化ウラン兵器を禁止することが必要である。

(6) 米軍兵士で起こった劣化ウラン被曝は自衛隊員にも無縁ではあり得ない。自衛隊の第1次イラク派遣部隊は、第2次部隊と交代し帰国した。サマワから帰還した陸上自衛隊の兵士達に健康被害は出ていないのか。たとえ今は出ていないくても、今後も出ない保証はない。彼らは上述した被曝米兵達が展開していたまさにそのサマワに配備されていたのだ。UMRCの調査によれば、米兵士のみならず、バスラの住民、バグダッドの住民も被曝しており、さらに調査のためにわずか2週間イラクに入ったUMRCのメンバー自身も劣化ウランに被曝したことが明らかになった。サマワに限らずイラク全土の都市で被曝する可能性はあるのだ。

 政府は口から出任せを繰り返している。自衛隊員は携行している個人線量計で「被曝していないことが確かめられた」と。冗談ではない。ウランの微粒子を吸入した場合、外部からのガンマー線を測る線量計で被曝を測定できるわけがないのだ。
 イラク派兵の自衛隊員が本当に被曝しておらず、将来もそのことによって健康被害が生じないことを確認するためには、尿中のウラン同位体を測定し、劣化ウランが取り込まれていないことを確認するしかない。一度だけではない。継続的な健康管理と検査をやる必要がある。政府は自らの責任でこの精密な検査体制を整備すべきである。それなしに、自衛隊員は被曝していない、安全だと言うべきではない。

 私たちは今後もこの問題を政府に追及していきたい。米英軍で大量に発生し今も無責任に放置され苦しんでいる多数の湾岸戦争症候群にかかった一般兵士たち、この深刻極まりない放射線障害が、米軍やNATO軍に引き続いて、日本の軍隊に初めて起こる可能性がある。イラクの地に、しかも激しい戦車戦が戦われた南部にあるサマワに配備されたという事実は、この劣化ウラン被曝の危険性を確実に高めることになる。

 あのデタラメな小泉首相の政治的延命のため、政府与党や財界の石油利権・復興利権や中東覇権への食い込みの野望のために、人身御供としてイラクに送り込んだ自衛隊員達を切り捨てることは許されない。この問題は、これら自衛隊員が侵略軍として一方的にイラクに派兵され、現地で米英占領軍、米英多国籍軍の一員として殺戮と破壊に加担することとは相対的に別のことである。自衛隊員はイラク民衆に対する加害者である。しかし、劣化ウランに被曝するとなればその自衛隊員は政府の誤った軍事外交政策の被害者でもあるのだ。





ニューヨーク・デイリー・ニュース
G.I.達は軍にウラニウムの検査を受けたいと表明
G.I.S PRESS ARMY FOR URANIUM TEST
http://www.nydailynews.com/front/story/185258p-160518c.html
ホアン・ゴンザレス
2004年4月19日(月曜日)

 本紙[デイリー・ニュース]がニューヨーク州兵部隊の4人のメンバーが劣化ウランで汚染されていることを明らかにした後、イラクから戻っている数百人の兵士が放射線被曝について検査をするように軍に依頼した。すでに800人にものぼる兵士(G.I.)達が24時間尿のサンプル(試料)を軍に提出した。そして、ウォルター・リード陸軍医療センターによると、数百人が予約を待っている。

 しかし先週、ウォルター・リードの医師が兵士達に提供したという最初の公式の分析結果の1つを再検討した何人かの独立のウラン専門家達は、陸軍の検査方法が適切なものであるか否かに疑問を持っている。「彼らは、どう見ても正確とはいえない装置を使っている」と、グレン・ローレンス教授は言った。彼はロング・アイランド大学の生化学の教授である。「彼らが使った道具は、正確な測定値を与えるほど精巧でない」と、レナード・ディーツ氏も認めた。彼はノールス原子力研究所を退職した科学者で、ウラニウム同位体の測定装置の一つを発明した。

 検査の要求は、米軍が発射した劣化ウラン砲弾からのホコリによって第442憲兵中隊の4人の兵士が放射能に汚染されたという本紙の調査に誘発されたものだ。兵士の一人、レイ・ラモス2等軍曹は、先週ウォルター・リード病院で陸軍の検査から返ってきた彼の尿の検査結果は陰性だったと聞かされた。

 ラモスは、説明のつかない病気に数ヶ月苦しんでおり、彼の尿を分析した2つの軍の実験室に報告のコピーを要求した。1つの実験室は、サンプルの中の種類の異なるウラン同位元素は「検出できない」と報告した。もう一つの実験室は、分析の際の誤差の比率が大きいのでラモスの尿のウランが天然ウランなのか、劣化ウランなのか、それとも濃縮ウランなのか確実に言うことは不可能だと記載した。

 「我々は、このデータが報告される方法が人を惑わせるものだいうことを知っている。」と、マーク・メランソン中佐は言う。彼は第2の実験室で保健物理のプログラムの責任者をしている。主な問題は、ラモスから総量でどれだけのウランが見つかったかである、とメランソンは言う。そして、彼の(尿中の)ウランの総量は、1リットルあたり6.3ナノグラム(ナノcは10億分の1c)だった。その値は「疾病管理予防センター(CDC)によって報告された摂取規定量の範囲内にあり、安全だ。」、とメランソンは言った。メランソンによれば、陸軍は天然ウラン総量濃度が1リットル当たり268ナノグラム以上でない限り、劣化ウランの検査のためにサンプルを分析することさえしない。

 「それは並み外れて高い値での切り捨てだ。」と、トム・ファジイ博士−−シナイ山医療センターの病理学者は言った。陸軍の方法に対する批判を聞いたとき、メランソンは「追加のチェックとして、我々は独立した分析のためにCDCにもサンプルを送っている」と言った。軍の劣化ウラン検査の仕方に対して詳しい調査が行われたのはこれが初めてではない。去る12月、2人の下院議員が会計検査院に(劣化ウラン検査)プログラムの調査を要求した。チロ・ロドリゲス議員(民主党・テキサス)とロベルト・フィルナー議員(民主党・カリフォルニア)は、1991年の湾岸戦争の時の兵士の劣化ウラン被曝について、以前に国防総省が調査官を欺いたと攻撃した。




ニューヨーク・デイリー・ニュース
クリントン、G.I.達の健康検査を後押し
CLINTON TO PUSH G.I. HEALTH TESTS
http://www.nydailynews.com/news/wn_report/story/185408p-160678c.html
テイマー・エル−ゴバッシー
2004年4月20日(火曜日)

 ヒラリー・クリントン上院議員は今日、国防総省の当局者に、イラクから帰っている兵士の放射能レベルを追跡するプログラムを強化するよう求めるだろう。クリントンの行動は、イラクで勤務したニューヨーク州兵部隊の兵士の9人のうちの4人が劣化ウランの検査で陽性の結果がでたことを示した本紙[デイリー・ニュース]の調査をフォローするものだ。

 上院の軍事委員会の公聴会で、クリントン議員(民主党・ニューヨーク)は、ポール・ウォルフォビッツ国防副長官に、なぜイラクに向かう兵士達は事前と事後に適切に検査をされなかったのか質問する予定だ。「有毒物質に囲まれ、劣化ウランの陽性の結果が出ることになった放射線被曝は疑問を提起している。」と、クリントンは昨日言った。

 9人の兵士達は、全員がロックハンド郡のオレンジブルグに基地を置く第442憲兵中隊に属しているが、彼らと他のメンバーは昨年の夏にイラクのサマワの町に配備された時に病気になったと言う。クリントンは、問題が確認されればすぐに、派兵前と派兵後のスクリーニングと、より厳格な健康状態の追跡を命じる法律を提出すると予想されている。「過程を真剣に考慮するまでは、何が兵士達が罹っている症状を引き起こしているのか知りようがない」と、彼女は言った。




ニューヨーク・デイリー・ニュース
ヒラリーが将軍を追及、G.I.達が勝利
HIL TAKES BRASS ON & G.I.S WIN
http://nydailynews.com/front/story/185906p-160988c.html
ワシントンのリチャード・シスクおよびニューヨークのマキ・ベッカー
デイリー・ニュース・スタッフライター
2004年4月21日(水曜日)

 米軍トップの将軍は、昨日、イラク戦争でウラニウムのホコリに被曝したかも知れない兵士のスクリーニングと追跡を改善するためにシステムに活を入れると誓約した。「我々は、兵士のために一流の仕事をしなければならない」と、リチャード・マイヤーズ将軍は言った。

 統合参謀本部の議長であるマイヤーズは、議会の公聴会でヒラリー・クリントン上院議員(民主党・ニューヨーク)によってこの問題が明らかにされた際に誓った。「あなたは確かに正しい。」、将軍はクリントン議員に言った。議員は、帰国して検査を受けた兵士の未消化分の検査を解消するために、軍の「医学的追跡と検査」の方法の性能向上を要求した。

 「我々は、物ごとを見落としていないことを確かめるために監視をする必要がある。」と、マイヤーズは言った。システムの短所は、ニューヨーク州兵第442憲兵中隊の9人の兵士達が昨年イラクから帰ってから説明のつかない病気にかかっていると言い私たちのところにやってきた後で本紙[デイリー・ニュース]の一連の独占リポートによって暴露された。本紙の依頼で行われた独立の検査は、彼らの内の4人が劣化ウランの検査で陽性だったと結論づけた。

 劣化ウランは比重が大きいために、砲弾と装甲車両の装甲に使われる。1990年の陸軍による研究は、劣化ウランに「腎臓損傷を引き起こす化学的毒性」があるとした。

 その兵士達は、軍の上層部がついに彼らの病気を深刻にとらえていると聞いて元気づけられた。「それはすばらしい」と、アウグスティン・マトス軍曹は言った。彼は劣化ウランのテストで陽性だった。「すばらしい、彼女[クリントン]はうまく我々に注意を向けてくれた。」しかし、ホアン・ベガ軍曹は、「それが現実になってから信じることにするよ」と言った。

 クリントンがニュージャージーのフォート・ディックス基地で治療を受けている数百人の兵士−−彼らは汚染を受けたかも知れないので検査を待っている−−が検査待ちであると告発した時、マイアーズはドキッとしたようだった。「私はそういう報告を見たことはない。」とマイヤーズは言い、未消化の検査の調査を約束した。

 「我々の軍隊はもっとよい報いを受けるに値する」と、クリントンはマイヤーズに言って聞かせた。クリントンにせき立てられたマイヤーズは、軍の検査で見逃されているごく微量の劣化ウランを見つけているドイツや日本で使われている方法を調査するつもりだ、と言った。




ニューヨーク・デイリー・ニュース
米国防総省のウラニウム否定
PENTAGON'S URANIUM DENIAL
http://www.nydailynews.com/news/col/story/187818p-162614c.html
ホアン・ゴンザレス
2004年4月27日(火曜日)

 米国防総省は、元第3装甲師団の戦車運転手ジェリー・ウィートは劣化ウランの被曝による病気ではないと言う。かつてアパッチ攻撃ヘリに劣化ウラン製の対戦車砲弾を積んだことがあるマーク・ゼラーもそうではないと言う。そしてダグ・ロッキー、彼は退役した陸軍少佐で湾岸戦争の後で劣化ウランの危険を初めて評価したのだが、国防総省はロッキーは科学的に見当違いをしていると言う。

 この3人は湾岸戦争で胸を張って国のために働いた。そして3人全員が説明のつかない病気になって帰国した。湾岸戦争に行く前に、彼らは劣化ウランのことなど聞いたことがなかった。その金属は最強の装甲さえ貫通する能力がある砲弾を製造するのに使われている。 湾岸戦争で初めて使用され、今ではイラクで広く使われている。そして、イラク戦争から帰還した兵士達が劣化ウラン汚染の検査で陽性の結果となったのだ。

 ウィートは、彼のブラッドリー戦車が誤射によって2度直撃弾を受けたとき、恐ろしい衝撃を直接経験したと言う。「それは、私のヘルメットを吹き飛ばして、そして私を車両の前部に突き飛ばした」と、ウィートは言った。「後で、私の装備と服は黒いホコリで覆われた。」 砲弾の爆発は、弾丸のごく小さい幾つかの破片を彼の頭と身体に残した。

 「誰も、我々にその時[劣化ウラン]が命中したと話してくれなかった。」と、ウィートは言った。「私は2、3日間、晩は戦車で眠った。全く心配しなかった。」数週間後に、ウィートはドイツの基地に送られた。そこでは彼の妻と3ヶ月の息子が生活していた。それからだ、彼の問題が始まったのは−−ひどい頭痛、激しい腹の痛み、または複合した痛み、呼吸器の問題と慢性疲労。彼は食べ物を吐かないではいられなかった。彼の体重は、220ポンドから160ポンドまでがた落ちした。1991年11月に退役して、彼はニューメキシコ州のラス・クルスの家に帰ったが、職に就くことができなかった。

 その次の年、彼の父は、医者が彼の体から取り出した砲弾の検査の手配をした。ウィートはようやくその時に、放射性の砲弾で撃たれたことを知ったのだ。彼は、劣化ウラン汚染について検査するように陸軍と闘った。独立の検査は、彼が劣化ウランに被曝したことを示した、しかし、ウィートは軍医が1993年に天然ウランについてだけ検査をしたと言った。そして医師は彼に、通常レベルの上限値だと告げた。それ以来ずっとウィートは、劣化ウランに被曝した数千人の湾岸戦争帰還兵のうちで陸軍が研究を続けている小グループの一部となっている。

 ゼラーは、第101空挺師団の第229ヘリコプター大隊に勤めていた。彼は放射能で汚染されているイラク南部地域で過ごした。「帰国したとき、私の毛が抜け落ち始めた。」と、ゼラーは言った。「私の舌はいつも腫れ上がっている。私は頭と首の痛み、あらゆる種類の腸の不具合のため、あまり食べることができない。」ゼラーはまた短期的な記憶喪失に悩んでいると言った。そして、血液検査の結果は、彼の赤血球細胞の染色体が損傷を受けていることを明らかにした。軍医は彼が慢性の疲労に苦しんでいると話す。ジョージアに住んでいるゼラーは、戦争で肉体的な負傷をしなかった。しかし彼もまた、陸軍の劣化ウラン監視プログラムに加わることが認められた。

 そして、ロッキー。1991年3月に、劣化ウラン砲弾が命中し汚染された米国の車両の除染を監督するために、陸軍は彼をサウジアラビアに送った。ロッキーは、兵士達が「Tシャツと半ズボンで、何の防護もなしに」放射性の車両を除染し、汚染された可能性のある場所で眠っているのを確認した。彼は適切な道具を取り入れて、戦車とトラックを除染した。ありとあらゆる用心にもかかわらず、ロッキーは、彼と彼のチームの何人かのメンバーが汚染されてしまった、と言った。「我々全員が直ちに呼吸器の、それから腎臓の不具合にかかった。」と、ロッキーは言った。彼は、陸軍当局が2年間も彼が高い放射能レベルにあることを話さなかった言う。そして彼は、重要な記録がなくなったと主張する。

 「私は、ロッキーが国に尽くしたことは尊敬する」と、マイケル・キルパトリック、国防総省の配備健康支援局次長は言った。しかしキルパトリックは、ロッキーが湾岸戦争での戦闘損傷評価チームにおける彼の役割を誇張している、と言う。「ロッキーは人々にたくさんの不安と心配を吹き込んでいる」と、キルパトリックは言った。「科学は彼が言うことを支持しない。」帰還兵のグループの研究を陸軍が続けた結果、如何なる「臨床上重要な健康結果」もない、例えウランのレベルが高い兵士であろうともだ、とキルパトリックは語った。




AP通信
米国防総省:「ウランはニューヨークの部隊に危害を加えなかった。」
Pentagon: Uranium Didn't Harm NY Unit
http://www.military.com/NewsContent/0,13319,FL_uranium_043004,00.html
2004年4月30日

 ワシントン−イラクで劣化ウランに被曝した後に病気になったと言った州兵憲兵部隊のメンバーはこの金属(ウラン)の異常な水準を示さなかった、と米国防総省当局者は木曜日に語った。しかしその結果は、兵士の誰ひとりとして安心させなかった。

 ニューヨーク州のオレンジバーグに基地を置く、442憲兵中隊のメンバー達は、頭痛、痛みと不眠の苦痛を訴えた。私的な検査は今月、彼らの4人の尿中に健康に害のある水準のウランが存在することを示した。

 米国防総省によると、軍による更なる検査は劣化ウランの被曝が病気の原因ではないことを示したという。
「それらの兵士全員が、尿中のウラン濃度は通常の水準だった。」と、配備健康支援局次長のマイケル・キルパトリック博士は述べた。

 劣化ウランは、原子炉燃料あるいは核兵器の材料を作るための濃縮ウランの副産物として生み出された硬くて重い金属である。それは、天然ウランよりも約40パーセント放射能が低い、とキルパトリックは言った。

 米軍はM1エイブラムス戦車とA−10ジェット攻撃機が敵の戦車の装甲版を貫通するために発射する砲弾にこの劣化ウランを使用している。そのことが兵士や民間人に不必要な危険を引き起こすと非難されている。「これがあなたの体の外にある限り、全く危険はない。そして、それを環境から体内に取り込む可能性は極めて小さい。」と、キルパトリックは言った。

 ほとんどの研究は、劣化ウランへの被曝が兵士に害を与えないことを示している。しかし、2002年の英国王立学士院による研究は、十分多くの劣化ウランを摂取するかまたは吸い込んだ軍人がおり、腎臓損傷を経験するかも知れないと表明した。同報告は、その結果が結論に達したものではないと警告し、劣化ウランに被曝した兵士達の長期の研究を勧告したのである。

 イラクから帰還している約1,000人の兵士が、劣化ウランの被曝の検査を受けた。それらのうちで、3人は尿のサンプルで健康に害のある水準を示した。この3人は全員、体内に破片が入っていた、とキルパトリックは述べた。

 兵士達は劣化ウランの検査を受けるかどうかを決めなくてはならない。第442部隊の全てのメンバーは希望すれば検査を受けることができる、とキルパトリックは言った。部隊の27人のメンバーが今までのところ検査を受けた。

 中隊メンバーの一人、レイ・ラモス軍曹は、最新の結果は彼を安心させるものではなかったと述べた。彼は、9月にイラクから帰って以来、偏頭痛、呼吸障害、肘の痛みに苦しんできた。

 以前の検査は、劣化ウランが部分的に彼の苦痛に責任があったかも知れないと示唆した。彼は、結果を比べるために独立した医者に第3のテストしてもらうつもりだと語った。

 「私が病気になるとき、あるいはやがて病気になるという時に備えて準備をしておきたい。」と、ニューヨーク市のラモス(41歳)は言った。

 米国防総省は、体内に劣化ウランの破片を埋め込まれた最初の湾岸戦争からの帰還兵70人の退役軍人の一団をモニターリングしている。キルパトリックは彼らの誰も劣化ウランに関連する健康上の問題を示さなかったと言った。

 核政策研究所の代表で湾岸戦争帰還兵でもあるチャールズ・シーハン・マイルズは、劣化ウランに関する不安が妥当かどうか確かめるために、軍はイラクから帰還する全ての兵士を検査すべきだ、と語った。




ニューヨーク・デイリー・ニュース
病気のG.I.達のはっきりしない事実
MURKY FACTS ON SICK G.I.S
http://www.commondreams.org/views04/0507-13.htm
ホアン・ゴンザレス
2004年5月6日(木曜日)

 イラクから帰ったニューヨーク州兵部隊の隊員のうち、これまでに検査を受けたどの兵士からも劣化ウランの検査で陽性の結果を得なかった、と国防総省の医者が今週語った。「処理されたどの尿サンプルも測定できるほどの量の劣化ウランを含んでいない」と、メリーランド・アバディーンにある陸軍の健康増進・予防医学センターのマーク・メランソン中佐は言った。

 検査結果は予備的なものだ、とメランソンは言った。そして彼は今、それぞれの兵士の検査を分析した完全な報告書を待っているところだ。第442憲兵中隊のうち、全部で56人の兵士が、先月ワシントンのウォルター・リード陸軍病院かニュージャージー州のフォート・ディックスで尿サンプルを提出した。そしてその大半はまだ分析されていない、とメランソンは言った。たとえ、もし何人かの兵士の体内にわずかな量があるにしても、「劣化ウランの吸入に関する安全レベルというものが存在する。個人は1年あたり1cまでなら50年間毎年吸い込んでも大丈夫だ。」と、メランソンは言う。

 「それは全くばかげたことだ」と、アサフ・ドラコビッチ博士は主張する。彼は陸軍の予備役大佐で退役軍人省の病院の核医学の元責任者である。
 ドラコビッチと科学者のチームは、本紙[デイリーニューズ]の依頼で第442部隊の9人の兵士を検査して、彼らのうちの4人が劣化ウランで汚染されたとの結論を下した。ドラコビッチは、4人が劣化ウラン製の弾丸の爆発でできた放射性のホコリを吸い込んだことは「ほとんど確実だ」と言う。陸軍によって検査された最初の一団にはドラコビッチ博士が検査した9人が含まる。

 「彼らの設備は、いくつかの種類のウラン同位元素を正確に測ることができない」と、ドラコビッチは言う。彼は陸軍の研究所の予備的な報告を読んだ。ドラコビッチは、1991年の湾岸戦争から帰還した兵士の一団が劣化ウランで汚染されたことを発見した最初の軍医であった。彼はそれ以来、戦争で劣化ウランを使用することへの反対者であり劣化ウランの専門家になった。

 メランソンは、放射線が事実上全身に均等に広がるとの「誤った仮定」を使っている、とドラコビッチは言った。「吸い込まれた劣化ウランのホコリは、肺から近くのリンパ腺へ移る。そして、そこでそれは強烈なアルファ放射線で、すぐ近くの少数の細胞を攻撃するのだ。」と、ドラコビッチは言った。

 劣化ウランに安全レベルが存在するというメランソンの主張も、放射線防護と測定に関する全米評議会のメンバーで、オークリッジ国立研究所の上級研究者であるリチャード・レゲットによって疑問を投げかけられている。「劣化ウランについてどこからが危険かという点については多くの不確かさがある」と、レゲットは言った。「誰も確かなことは分かりません。」劣化ウランは極めて重い金属であり、その「化学的毒性」は放射能よりも大きい問題でさえある、とレゲットは言った。

 「私が知っているのは、私がまだ体調が悪いということだけだ、そして、陸軍はなぜそうなのかを説明しようとしない。」とレイ・ラモス二等軍曹は言った。彼は専門家の一斉攻撃を浴びたうちのひとりである。ラモスと他の兵士達は、彼らがイラクのサマワという町に配備された昨夏以来、慢性疲労、偏頭痛、泌尿器の病気、強い関節痛や他の原因不明の病気に苦しんできた。「陸軍は、私は(劣化ウランに)陰性だと言い、一方ドラコビッチ博士は私が陽性だと言う。そこで私は今、第3の独立した検査をして欲しいのだ。」と、ラモスは言った。

 兵士達が言うには、本紙[デイリーニュース]が彼らの苦境について報道し始めた後で、ようやく陸軍が検査することに同意した。特に、第442部隊についての報道を引用した先週のメモの中で、陸軍医学本部のジェームス・ピーク中将は、医学部門の責任者全員に現在の劣化ウランのモニタリング政策の再確認を求めた。「もし、・・・患者が、DUの被曝の可能性に関して妥当性のある懸念を表明し、尿のバイオアッセイ(生物学的検定法)を要求したら、検定が命じられるべきである」とピークは言った。

 「それは、かなり以前からの政策だ、しかし、ある人々はそれを十分真剣に受け取らなかった。」と、ウォルター・リード病院の予防医学の長ダグラス・ハック大佐は認めた。それでも、ペンタゴンの現在の劣化ウランに対する政策は、英国と比べると気を配っているとは言えない。英国ではイラクに配備された英国兵士一人一人が以下のように書かれた財布大のカードを国防省から持たされているのだ。
 「あなたは、劣化ウラン弾が使用された戦域に配備されました。DUは弱い放射性を持つ重金属です。それは病気を引き起こす可能性があります。あなたは配備の間にDUを含むホコリに曝されるかも知れません。」カードの裏面は、各々の兵士に助言している;「あなたは、ウランを測るための尿検査をする資格があります。・・・本国の基地に帰還したら、あなたの部隊の医療担当者に相談して下さい。」



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