イラク戦争劣化ウラン情報 No.11      2004年1月23日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局 吉田正弘

イラクの環境破壊についての国連報告−−−−−−
米英が劣化ウラン使用を認めたことを明記

(1) 1月7日共同通信配信の『「戦争で深刻な環境破壊」イラクの現状、国連が報告』という記事に紹介されている国連環境計画UNEPの報告書が後ればせながら分かりました。
http://news.kyodo.co.jp/kyodonews/2004/iraq4/news/0107-211.html

 これは昨年10月20日付で公表されたもので、UNEPの中の戦争後評価部隊PCAUがだしたものです。URLは以下のところにあります。
http://postconflict.unep.ch/publications/Iraq_PR.pdf

 この報告書は昨年4月にUNEP・PCAUが公表したイラクの環境調査についての報告書(正確には現地環境調査のための準備のデスクワーク)の続編です。入国者や国内からの報告をもとに前報告書への追加をまとめたものです。4月の報告書は全面的な環境評価・調査のために作られましたが、UNEPの調査を米英占領軍が許可していない(!)ので未だに実施されていません。こうした米英の環境調査に対する妨害そのものが、犯罪的で非人道的なものです。

 全体について紹介する事はできませんので、その中で「2.7 劣化ウランの使用」に関する部分だけを紹介します。報告書の中では、この他にイエローケーキがばらまかれ周辺住民が深刻なウラン汚染に曝されていると思われるツワイサ原子力施設に関する部分も含まれています。

(2) 報告書の中で特徴的なことは、第一に、国連環境計画は「米国防総省と英国防省は、米国および英国の連合軍が2003年のイラク戦争でも劣化ウランでできた弾薬を使ったことを認めました。」(下記の仮訳参照)とはっきり書いていることです。「米国は使っていない、少なくとも使ったとはいっていない」などとしつこく繰り返す日本政府、外務省や防衛庁のデタラメが改めて浮き彫りになります。彼らは、この報告書を否定するのでしょうか。

 第二に、イラク国内には劣化ウランで破壊された車両が今なお放置されており、その危険性に警鐘をならしていることです。そして汚染地点の確認、隔離、住民の検査とモニタリングの必要性を提起しています。何一つまともな調査もせずに、恐ろしいほどファナティックな金切り声でただ戦争をやりたいだけ、派兵をやりたいだけの小泉首相、明らかに放射能で汚染されている地域に平気で自衛隊員を送り込んで良心の呵責さえ感じない日本政府は、報告書のこの勧告をどう受け止めるのか。

 汚染車両、汚染地点を調査確定し隔離すること−−この基本的なことが今に至ってもなされず、何も知らない子供や住民を危険にさらし続けていることに怒りを禁じ得ません。
米英軍の責任は極めて重大です。彼らのやっていることは、わざと人々を放射能に被曝させ危険にさらしているとしか思えません。「人道に対する罪」とはこのような行為を言うのではないでしょうか。

 小泉首相と日本政府による自衛隊派兵は、このようにイラクを放射能で汚染させた米英に加担し、共犯者になることを意味するのです。放射能戦争、劣化ウラン戦争への参戦であり、加担です。そして自衛隊員自身をも無防備なまま被曝させようとしているのです。

(3) もちろん、この報告書は根本的な欠陥を持っており、多くの問題点もあります。すぐに気が付くだけでも以下の何点かが出てきます。

−−そもそも私たちが支援しているUMRCやドラコビッチ博士が主張するように、劣化ウラン/ウランによる人体影響、環境への影響の全面的な評価をするには、このUNEPなどの国際的な公的機関が本格的な調査をやることが必要なのに、米英の恫喝を恐れてそれをやろうとしていないことです。米英との摩擦を恐れていては、真実を追求することはできません。本格的な調査を拒否してイラクの人々、そして米英の兵士さえ危険にさらしている米英政府を公然と批判、弾劾して調査を要求するべきなのです。

−−従ってこの報告書では、UNEP自体が最低限の環境調査もやらずに、伝聞や聞き取りだけに終わっています。しかし現地のイラク人の尿検査や細胞検査、水質や環境中の汚染調査をやらなければ結論を出せないはずです。

−−しかし、にも関わらず劣化ウランをまき散らした加害者である米英側の言い分だけは、ちゃっかり採用していることです。例えば英国防省の科学者達の言い逃れ「戦車の周辺で劣化ウランのレベルがたいへん低い」「ほとんどの戦車が低レベルの放射能を示していること」をそのまま垂れ流したり、「劣化ウラン弾が命中していることを示すペンキによってはっきり印を付けられている」と、米英が注意義務を果たしているかのようなデタラメです。

−−UNEPの、劣化ウランの危険性についての見解はデタラメです。この問題での立場はますます後退しているように思われます。例えば、上記のように「戦車の周辺で劣化ウランのレベルがたいへん低い」と言い、劣化ウランで破壊された車両の近くに寄らなければ危険性は小さい、とという立場を取っていることです。劣化ウラン/ウラン被害で最も危険なほこり、ダスト状の内部被曝の重大な影響については全く取り上げていません。

−−劣化ウランの危険を否定するため、IAEAを持ち出していることです。現に甲状腺癌などの被害が出ているにも関わらずチェルノブィリ原発事故の被害を一切否定してきたのがIAEAです。米の影響力が強く、そもそも原子力推進のための国際機関であり、平気で放射能の人体と環境への影響を否定してきたのがIAEAです。クウェートが第一次湾岸戦争時の被害について調査を依頼したのですが、IAEAに調査を依頼すること自体、結論は最初から決まっているのです。曰く。「劣化ウランは、クウェートの人々に長期的な放射線による危険を引き起こしませんでした。」

−−また本格調査もせずに、強く疑われている貫通弾への劣化ウラン/ウランの使用を否定していることです。曰く。「硬化目標貫通爆弾(153発が使われた)やバンカーバスター爆弾が劣化ウランを含んでいるという証拠は現在のところ有りません。」これは無責任というものです。一体何を調べて「証拠はない」と断言したのか。その根拠を示すべきです。


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「イラクの環境」 国連環境計画UNEP中間報告 2003年10月20日

2.7 劣化ウランの使用

 1991の湾岸戦争は、劣化ウラン(DU)弾が広く使われた最初の戦争でした。この戦争中に合計で約300トンの劣化ウラン弾を米国と英国が発射し、劣化ウランは環境中にほこりや小さな破片として残っています。

 米国防総省と英国防省は、米国および英国の連合軍が2003年のイラク戦争でも劣化ウランでできた弾薬を使ったことを認めました。例えば、英国のチャレンジャー戦車は1.9トンの劣化ウラン弾を使いましたが、それは1991年の湾岸戦争で英国兵が使った量の約2倍です。劣化ウランはバスラの南西と西部で、英国兵をも含む戦車戦で使われました。

 英国防省は、英国の劣化ウランの目標場所の詳細をUNEPに提供して、市街地での劣化ウランの危険評価と水資源を含む環境中での長期にわたる劣化ウランのモニタリングの実施についてアドバイスを申し出ました。英国防省によると、目標エリアは、発射地点から3 kmという最大限の距離の場合が多いようです。2003年6月に、英国防省の科学者達が劣化ウラン弾で破壊されたであろう何台かの戦車について予備的な技術的評価を終えました。さしあたり、英国防省の結論はこれらの戦車の周辺で劣化ウランのレベルがたいへん低いことを示しています。軍の重装備の大部分は、主に兵士達によってすでに戦場からスクラップヤードに移動されています。このことが英の科学者たちが残っている戦車または他の重装備を実際の戦場地域で見つけることを難しくしましたが、科学者達はほとんどの戦車が低レベルの放射能を示していること、それらが劣化ウラン弾が命中していることを示すペンキによってはっきり印を付けられていることに言及しています。

 UNEPはイラクにおける環境評価に関しても、劣化ウラン汚染の除去についても米国から何も情報を受け取っていません。

 米国が航空作戦、戦車戦闘、地上作戦でどのくらいの劣化ウランを使ったのかは未だにわかりません。エイブラムス戦車(M1A1、M1A2)、ブラッドレー戦闘車両(M2)、そして軽装甲車(LAV-25)などふつう劣化ウラン弾を携行している車両が戦闘に関わっていました。戦争中に使用されたミサイルまたは爆弾、特にAGM-86DCALCM硬化目標貫通爆弾(153発が使われた)やバンカーバスター爆弾が劣化ウランを含んでいるという証拠は現在のところ有りません。

 メディアは時々イラクの破壊された車両がおかれているスクラップエリアの場面を映しました。これらの映像はその地域の人々が普通自由にこれらのエリアに近づけること、そして彼らが鉄板などの材料に引きつけられている事の証拠です。これらの地域には劣化ウラン弾が命中した車両が含まれている事が予想されます。従って、遅滞なくこれらのエリアは調査されるべきであり、劣化ウラン弾が命中した車両は接近が厳しく管理されている場所に移動されるべきです。

 2003年8月に公表された最新のIAEAの報告書によれば、1991年の湾岸戦争で使用された弾薬からの劣化ウランは、クウェートの人々に長期的な放射線による危険を引き起こしませんでした。クウェート政府は2002年2月に、クウェートの11地点で劣化ウラン残留物が与える長期的な放射線的衝撃の可能性について評価するようIAEAに頼みました。この報告の結論は警鐘を鳴らすものではありませんでしたが、イラク戦争での劣化ウラン弾の使用と影響に関する不確実性を解決するために、さらに政策的活動と追加調査を行う必要があります。利用できる情報に基づけば、2003年のイラク戦争中に使われた劣化ウランの多くは、市街地や近郊で使われたようです。そしてそこは人々が住み、働き、水を引き食物を作っている場所なのです。それゆえに、汚染された地域がどこであるのか明らかにされるべきであり、評価される必要があります。そしてそこに住んでいる人々は被曝しているか検査されモニタリングし続ける必要があります。人々は一般に劣化ウランに被曝することによる危険性を明らかに知りません。危険性を知らせること、防護手段を紹介する緊急のステップが必要です。その中には警告のサインや汚染された場所や貯蔵サイトへの接近の管理が含まれます。 (仮訳吉田)




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