子どもに関する事件【事例】



注 :
被害者の氏名は、一人ひとりの墓碑銘を私たちの心に深く刻むために、書籍等に掲載された氏名をそのまま使用させていただいています。ただし、加害者や担当教師名等については、個人に問題を帰すよりも、社会全体の、あるいは学校、教師全体の問題として捉えるべきではないかと考え、匿名にしてあります。
また、学校名については類似事件と区別するためと、隠蔽をはかるよりも、学校も、地域も、事実を事実として重く受けとめて、二度と同じ悲劇を繰り返さないで欲しいという願いを込めて、そのまま使用しています。
S.TAKEDA
S750715 学校災害 2004.5.16新規
1975/7/15 神奈川県横浜市中山中学校で水泳の授業中、男子生徒Yくん(中3)が教師の指導に従って飛び込んだ結果、水底に頭が激突。首の骨を折り、全身麻痺となる。
経 緯 教師は、スタート台上に静止した状態で頭から飛び込む方法では、水中深く入ってしまったりも空中で姿勢が整わなかったりするなど未熟な生徒が多く、その原因は足の蹴りが弱いことにある考えた。
2、3歩助走してスタート台に上がってから飛び込む方法を指導。
Yくんは教師の指導に従って飛び込む際、空中でバランスを失い、水深約1メートルのプールの水底に頭を強打。
後遺症 第4頚椎骨折、頸髄損傷を負った。四肢麻痺、知覚障がい、排泄障がいで車イスを使用、常時、看護人の介添えがなければ生活できない状態になった。
プール 水深が1メートル未満だった。
その後 1977/ リハビリセンターで訓練し、改造した自宅に戻る。
1981/3/ 養護学校を卒業。
裁 判 Yくんと両親は、「教師の指導に過失があった」として、横浜市を相手取り損害賠償請求の訴訟を起こした。
判 決
(一審)
1982/7/16 横浜地裁で原告勝訴。
横浜地裁は、
他の体育科目に比較して事故が発生し易く直接生命に対する危険性をも包含しており、殊に飛び込みは、その蓋然性が高いため、この学習を指導する教師は、一般的に生徒の身体の安全に対して、充分な配慮を行い、事故を防止する高度の注意義務を負っている」とし、教師には被害者に対して「具体的指導を一切行うことなく」試みさせたことに対して、「身体の安全を保護し、事故を防止すべき注意義務を怠った」として、過失責任を認めた。
また、生徒は「教師の指示を信頼して、安心して行動するのが通常」とし、被害者本人には過失なしとした。
判 決
(二審)
1984/8/30 東京高裁は、市に約1億5000万円の損害賠償を命じる。

「教諭が指示した飛び込みの方法は、体育の水泳指導書などによったものではない。踏み切りのタイミングや位置もむずかしく、安全な空中姿勢をとることも困難となる危険性を含んでいる。指導教諭は注意を怠った過失がある」とした。

賠償額は、Yくんの逸失利益約5300万円(49年間就労を想定)、付き添い看護費用約4800万円(52年間分)、療養のための自宅改造費・雑費約1100万円、慰謝料2000万円、両親への慰謝料700万円、弁護士費用1100万円の合計約1億5000万円。
判 決
(最高裁)
1987/2/6 最高裁第一小法廷は、市側の上告を棄却。二審を支持。原告勝訴確定。

「学校の教師は、学校における教育活動により生ずるおそれのある危険から生徒を保護すべき義務を負っており、危険を伴う技術を指導する場合には、事故の発生を防止するために十分な措置を講ずるべき注意義務があねことはいうまでもない」
「助走して飛び込む方法、ことに助走してスタート台にあがってから行う方法は、踏み切りに際してのタイミングの取り方及び踏み切る位置の設定が難しく、踏み切る角度を誤った場合には、極端に高く上がって身体の平衡を失い、空中での身体の制御が不可能となり、水中深く侵入しやすくなるのであって、このことは、飛び込みの指導にあたるA教諭にとって十分予見しうるところであったというのであるから、スタート台上に静止した状態で飛び込む方法についてさえ未熟な者が多い生徒に対して右の飛び込み方法をさせることは、極めて危険であるから、原判決のような措置、配慮をすべきであったのに、それをしなかった点において、Aには注意義務違反があったといわなければならない。もっとも、Aは、生徒に対して、自信のない者はスタート台を使う必要はない旨を告げているが、生徒が新しい技術を習得する過程にある中学3年生であり、右の飛び込み方法に伴う危険性を十分理解していたとは考えられないので、右のように告げたからといって、注意義務を尽くしたことにはならないというべきである。したがって、右と同旨に帰する原審の判断は、正当として是認することができる」とした。
参考資料 「学校災害ハンドブック」/喜多明人/1993.9.12草土文化、「あぶないプール」/有田一彦/1997.7.15三一書房、「教育判例ガイド」/船木正文/有斐閣、
学災連ホームページ:http://www.cpi-media.co.jp/gakusairen/



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