子どもに関する事件【事例】



注 :
被害者の氏名は、一人ひとりの墓碑銘を私たちの心に深く刻むために、書籍等に掲載された氏名をそのまま使用させていただいています。ただし、加害者や担当教師名等については、個人に問題を帰すよりも、社会全体の、あるいは学校、教師全体の問題として捉えるべきではないかと考え、匿名にしてあります。
また、学校名については類似事件と区別するためと、隠蔽をはかるよりも、学校も、地域も、事実を事実として重く受けとめて、二度と同じ悲劇を繰り返さないで欲しいという願いを込めて、そのまま使用しています。
S.TAKEDA
880229 いじめ報復
殺人
2001.12.7 2001.12.15更新  
1988/2/29 大阪府大阪市福島区のアパートで、市内中学校の男子生徒2人(中3・15)が、中学の野球部の先輩で無職の少年(15)にトランプ賭博で負けた借金が払えず、殺害。
経 緯 中学校の野球部の先輩のKくんは、練習後に後輩にカバン持ちなどをさせた。逆らうと暴力を振るい、付き合いをやめようとしても、けっして許さなかった。

中学校を卒業後もKくんは無職で、A、B、Dくん(16)の3人の後輩をアパートに呼んで、こまごまとした世話をさせたりした。

Kくんは、賭トランプ・オイチョカブを強要。トランプで常に親を独占し、いかさままがいの博打をしていたために、3人は負け続けた。掛け金は最初は10円単位だったが、Kくんから「負けを返したかったらレートを上げろ」と言われ、最高1万円単位まで上がった。結果的に、Aは40万円、Bは10万円、犯行に加わらなかったDくんは100万円、3人で計150万円の負けを背負った。

Kくんから、「月々2万5千円ずつ払え」と言われ、1月分はお年玉などで工面できたが、2月には返済のめどが立たず、犯行を決意。
殺害までの経緯(犯行態様) Kくんが自宅アパートでファミコンに夢中になっているところを後ろからネクタイで首を絞め、部屋に飾ってあったサバイバルナイフで、背中・腹など6カ所を刺して殺害。
その後、AとBは、家に帰り着替えると、Dくんの家に行き、アリバイづくりと凶器の処分を頼んだ。
動 機 このままでは一生、Kくんに従わなければならなくなるとして、殺害を決意。
処 罰 大阪家庭裁判所は、AとBを初等少年院に送致。

事件の背景にKくんのAおよびBに対する日常的な暴力的支配関係があったこと、そのため仕返しを恐れたAおよびBは両親や教師に相談できなかったことを認め、A及びBには同情すべき事情があるとしたうえで、事実が重大かつ悪質で反省も十分でなく、暴力肯定的な資質上の問題もあるとして、家庭的には全く問題はないが少年院送致が相当だとした。
参考資料 別冊宝島410「殺人百貨店」/1998.11.2宝島社発行、年表・昭和の事件・事故史/小林修著/東方出版、「イジメと子どもの人権」/中川明編/信山社
TAKEDA私見 AとBには暴力肯定的な資質上の問題があるとして、初等少年院送致となった。
しかし、いじめの加害者でKくんを含めて見たときに、中学校の野球部内に暴力肯定的な資質があったのではないかと疑いたくなる。部活内での先輩後輩の上下関係が日常生活にも影響し、卒業後も、特に進学もせず、就職もせず、鬱々と日々を過ごすKくんの格好の鬱憤晴らしとして使われた。
学校や部活内にそうした先輩による後輩支配が当然とする雰囲気が伝統的にあったとしたら、生徒は教師に相談することはできないだろう。また少年ら自身も、そういうものだと慣らされてしまっていたのではないだろうか。
もし2人が事件を起こさなかったとしたら、次は自分たちが後輩を支配する立場として、Kくんと同じようなことを繰り返したのではないだろうか。
学校や部活動での問題が問われていい事件だったのではないか。(2003.3.16)



ページの先頭にもどる | 子どもに関する事件 1 にもどる | 子どもに関する事件 2 にもどる

Copyright (C) 2000 S.TAKEDA All rights reserved.