わたしの雑記帳

2003/4/20 ジャミーラ高橋さんと「人間の盾」の報告会(2003/4/15)。
イラク戦争は終わりではない。新たなる戦争の始まりである。


4月15日〔火)午後6時半より、アラブイスラームの子供たちを助ける会とアース・チャイルド(地球の子ども新聞)主催のジャミーラ・高橋さん緊急報告会「もうこれ以上の流血を許さないで!」が、渋谷勤労福祉会館であり、参加した。報告者は、ジャミーラ 高橋さん(アラブイスラームの子供たちを助ける会)、志葉 玲さん(ジャーナリスト、ドーラ浄水場「盾」に参加)、神崎雅善さん(NGO活動家、ドーラ発電所「盾」に参加)、白井耕祐さん(NGO活動家、「荒野の声」の活動に同行)、軍事ジャーナリストの加藤けんじろう(?)さん、ジャーナリストのつねおか(?)さん、平和活動家の小野さん、JAPACの高橋さんほか。緊急の報告会であったにもかかわらず、会場は多くの立ち見が出るほどの盛況だった。

今回、イラク戦争に反対する「人間の盾」のまとめ役として、3月16日にバクダッド入りし4月8日に帰国したジャミーラ高橋(高橋千代)さんとは、以前にNGO広場でお会いして、プラッサの原稿を依頼して以来(ただし原稿は、その後ずっと多忙のためいただけていませんが)、劣化ウラン弾のビデオ(me011218参照)を紹介していただいたり、大塚モスクでパキスタン人のハルーンさんからアフガニスタン難民キャンプの報告を聞く会(me011103参照)に参加させていただくなど、多くの学びの機会を提供していただいた。そして、別の場所で知り合った志葉玲さんが今回、人間の盾としてイラクに行かれたことを、私たちはテレビ報道で知った。

最初に志葉さんから、ビデオを使った「人間の盾」の活動紹介があった。道路に転がる死体や黒こげになった乗用車。ただ地面に穴を掘っただけの防空壕や、単にコンクリート壁があるだけ、土嚢(どのう)を積み上げただけのシェルター。爆風で一瞬にしてヒビが入るガラス窓。ガレキの山と化したビル。そして病院では、クラスター爆弾という、いくつも小型爆弾が飛び出る爆弾により、体中に金属片が突き刺さった男の子の映像。麻酔も満足な医療器具もないなか、ただベッドのうえで、一瞬にして家族全員を失った悲しみと全身の痛みに耐えていた。

何人かの報告から、テレビでは報道されない現地の様子が伝えられた。
長年の紛争に慣れた市民には驚くほど動揺が見られなかったこと。むしろ米が入ってバクダッド市内が陥落してから略奪が始まり、パニックが広がったという。
テレビでは、いかにも現地の人たちがアメリカを歓迎しているような映像が流されたが、あれ広い広場のなかのごく一部の人たちの映像を切り取って流したものだという。そして引き倒された銅像。あれはフセインではなく前の大統領かなにかの銅像で、そのことは現地にいるマスコミも知っているはずだという。また、喜んでいる人たちはアメリカ亡命のイラク人で、同じ顔が何度も映っていたりして、あれはヤラセだという。
参加者の一人は、「無傷な家族はひとつもない」「一人のひとが怪我をしても大変なのに、家族のほとんどが全滅するというような大変なことが行われている。開放だと言って喜んでいるひとは一人もいないと思う。特に子どもたちにとっては癒えない傷になるだろう」と語った。

また、ピンポイント爆撃はかなり正確で、昼間見ると大砲や主な政府の建物はほとんど穴があいていたという。
そして、劣化ウラン弾は戦車を貫通するだけでなく地中深くの建物まで破壊する威力を持つ。地震のように地面が揺れ、ガラスが割れたり、看板が吹き飛んだという。およそ1786名の民間人が死亡し、その10倍から20倍の人々が負傷したとみられている。
電気もストップして冷蔵庫もないなか、病院には死臭が漂い、ひどい悪臭を放っているという。たくさんの死んだひとたちは、やむなく病院の庭に埋められている。

しかし、ほんとうに死者が増えるのはむしろこれからだ。劣化ウラン弾の使用は、湾岸戦争で広島原爆の何万倍にもあたる300トン、アフガニスタンで700トン。イラクではもっと多くの劣化ウラン弾が使用された。その汚染の影響は45億年ともいわれる。これはアメリカの核戦争だという。
しかも、経済制裁で薬がない。多くの病院が爆撃で吹き飛ばされている。医師やスタッフも逃げ出した。停電になっても自家発電器がない(大きなホテルは持っている)。略奪が始まってからは、機材はおろかベッドまで持ち出されているという。ある病院では、湾岸戦争で使用された劣化ウラン弾により骨髄炎を患った医師が患者の治療にあたったていたという。

過去の劣化ウラン弾の影響として、白血病やガン、先天性異常、医者もみたことのない病気が生まれている。イラクは今、砂嵐の時期で、汚染された塵がイラク中を舞っている。吸い込めば肺ガンの危険性も増す。
しかし、アメリカは劣化ウラン弾との因果関係を認めていない。それは、これからの戦争でまた使おうとしているからだという。アメリカは今度はシリアを言論で攻撃している。

爆撃で電話局が破壊されたために電話が通じない。親族の安否もわからない。
第二次調査団の通訳をつとめ、現地にとどまった婚約者との音信が途絶えているイラク人のアリさんは、「こんな悲しいことを繰り返さないような道を考えてほしい。力をあわせて、わたしたちを助けてください!」。叫ぶように言ったあとは言葉にならず、嗚咽をもらした。

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ジャミーラ高橋さんの話。(一部、テープをおこしました)

ヒータという病院にいたときに、1週間に150人の患者が入ってきたんですね。クラスタ爆弾でやられた負傷者がほんとうに苦しんで悶えている様子ですとか、レントゲン写真を見ますと腰にたくさんの弾の破片が入っていて、これは手術してもとれないよとお医者さんがいうのを目の当たりにしてきました。その子は今頃、どうしているんだろうといつも思います。それが現実です。お医者さんは、「これは悪魔のしわざだ、悪魔の戦争だ」と言いました。人間わざではないですね。

本当にイラクという国は、みんな楽しげに生きている国なんです。地下資源もあるし、川もありますから農業もできる。食べ物も採れます。ずっと育んできた川の間の文明もあります。豊かで何ひとつ不足ない国なんです。
その国がどういうわけか、ずっとやられているんです。ほんとうに気の毒です。それが、サダム・フセインのせいだとか大量破壊兵器のせいだとか言われているんですが、そんなことは絶対にないんですね。
なぜ、あの国はそうなるのか、私は爆撃の下で不思議に思っていました。爆弾が飛んでくるたびに、どうしてこの人たちは、こんなに爆弾を降らせるんだろうと。そんなことを国際社会が、どうして許しているんだろうと不思議だったんです。

まさかと思った爆撃がはじまり、何日もかからないうちに終わってしまいました。本当に残念です。私はその間、人間の盾、平和をつくり出す盾になりたくてイラクに行きました。そして、また人を連れていきたいと思って、出てきました。私の思いとは別に、戦争というのはそんなに甘くなくて、やはりアメリカ軍が勝ちました。

シリアを出たとき地元では、イラクの次はシリアがやられる、レバノン、エジプト、サウジアラビアが順番にやられると言われていました。それは、これから展開すると思います。なぜならば、戦争屋はもうずいぶん前から、何年もかけて計画しています。
また、こういうことが言われます。イラクというところは内陸に攻めていくのにとてもいい土地なんですね。ペルシャ湾から攻めていくのに。戦略的に足がかりになるんですね。カスピ海には資源がいっぱいありますしね。南ロシアとかそういうところに攻め込むのにいい足場になる。
アメリカが軍事力で突出してきましたが、それは一例であって、たとえばフランス、ドイツ、ロシア、中国。利害にからんで必ず対立していくんですね。そして対立させる勢力があるんです。それがこれから、また世界を動かして戦争に駆り立てていく。だから、今の劣化ウラン弾による核戦争。これから行われる戦争はこんなものじゃないですね。もっとももっとすごい戦争が行われていくと思います。

昨日、そういう話をしていたんですが、そういう時に私たちは、その下で国が傷ついて、食べられなくて、それでいいんですか?やっぱり私たちは人間として主張して、勝たなければいけないですよね。私たちの力というのは、まとまれば絶対に強いんです。私はイスラム教徒ですから、悪魔に負けたくないんですね。私たちの信仰が悪魔を負かすと思っています。ただ人間が愚かであって、することをしなければ負けます。私たちはとっても尊い人間なんです。勝たなければならないんです。だから本当にこれからが大変な勝負時なんです。みなさん、それを自覚してください。力をあわせていきましょう。

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イラクでは、爆撃で病院が破壊され、建物も医者やスタッフも足りない。経済制裁の影響で薬や医療器具が足りない。送電がストップしているために電気が使えないなど、その機能が奪われている。
また、浄水場が破壊されたため、半分のひとが大腸菌がウジャウジャいる川の水を飲んでいる。食糧はサダム・フセインが6カ月間前倒しで配給したものに依存しているが、今後はどうなるのか。
早急に援助が必要だが、一方で政府のやった援助は形ばかりで無駄が多いという。
ジャミーラさんは訴える。こうした物質的、資金的な援助のほかに、ぜひ市民調査団を組織してイラクのなかに入って、戦争というものがどういうものかよく見て欲しいという。そのために再び、現地にトンボ返りをして、受け入れの体勢も整えたいという。

暗く悲惨な話ぱかりのなかでも、希望の光があった。それはイラク人の親族は必ず助け合うということ。
それから強制退去を命じられたグループが帰国途中に、路上に放置された破片か何かで車のタイヤがパンクして乗っていたアメリカ人が怪我をした。現地の病院で治療を受けたときに、隣の民家に爆撃が落ちているという状況下で、兵士ではないとはいえ敵国のアメリカ人に対して、親切に治療をおこなってくれたという。
こんな状況下においても、人間らしい心を失っていない人びとの話を聞いてほっとするとともに、この人たちを私たちは見捨てるべきできないと思う。

インフォメーションコーナーに、アラブイスラーム文化協会が窓口になっている寄付金送付先の口座番号とジャミーラ高橋さんのメッセージを掲載した。この資金をもって近隣諸国で医薬品を買い付け、再び現地入りする予定だという。
政府や大きな団体への寄付金は、集まりやすいが無駄が多い。現地で必要としているものを必要としている人の手へ、アラブの人たちと共同で直接、届けている。スピードと無駄のなさはこの会にまさるものはないと思う。これから失われる命がひとつでも救われるよう、激痛に黙って耐えるしかない子どもたちにせめて痛み止めが届くように、劣化ウラン弾の影響に苦しめられる人びとの治療に役立てるために、ぜひ協力していただきたい。
戦争を止めることのできなかった私たちが、せめてこの場でできることを一人ひとりが考えていきたい。




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