広島G7開催に向けてー軍事化拡大へ進むのかー(高里鈴代)

広島G7開催に向けてー軍事化拡大へ進むのかー報告

高里鈴代

基地・軍隊を許さない行動する女たちの会共同代表

2000年7月開催のG8サミットとその背景

2000年7月21日~23日まで開催のG8沖縄サミットは、東京以外初の開催となった。外務省HPには、沖縄での開催を、「沖縄県では、会合の行われた名護市をはじめ県を挙げての心温まる歓迎が至る所で示され、各国首脳からも深い謝意が表明された。特に内外のマスコミを通じて、沖縄の姿が様々なかたちで世界に広く紹介されたことにより、「世界の目を沖縄に、沖縄の心を世界に」という、今次サミットに寄せる沖縄県側の期待が、文字通り実現することとなった。」と高く評価している。

確かに、沖縄県民は、いかに米軍基地が沖縄に集中配備される中、米国が関わる戦争への派兵基地として、それによる被害を沖縄が受け続けているかを世界に知らせたかった。だから、米軍基地の撤去を求めて、G8サミット開催期間の7月20日に嘉手納基地包囲「人間の鎖」を27000人が参加して成功させた。沖縄を開催地に決定したのは当時の小渕首相だと言われているが、それはサミットの5年前の1995年の3米兵による少女強姦事件を受けて、日米両政府が沖縄の米軍基地負担を軽減すると約束した「SACO合意」があったからだった。G8サミットに出席したクリントン米大統領は、激戦地に建つ「平和の礎」平和公園に稲嶺沖縄県知事と共に立ち、「SACO合意」を念頭に次のように演説した。「沖縄の人々は、日本国土の1%以下の沖縄に、日本にある米軍基地の50%以上の基地を背負うという、望まなかった役割を果たしています。私は、沖縄県民の関心を理解しようと努力してきました。5年前に我々はここ沖縄で、基地の整理縮小に向けてプロセスをスタートさせました。我々はすでに、半分以上を終えて、一つ一つの事項が遂行できる確認をしていきたいと思います。我々はこの島に残した足跡(フットステップ)を、軽減していくための努力を続けていきます。よき隣人としての責任をはたします。責任を果たさないことは許されません。」と。

「安全保障の再定義」をテーマに国際女性サミットを開催し、参加国首脳に国家予算の軍事費5%削減を要求した

2000年6月に、フィリピン、韓国、アメリカ、プエルトリコから合せて40人に沖縄、本土から参加者を加え、私たちは「国際女性サミット」を開催して、G8サミット参加国が、それぞれの国家予算の軍事費5%を削減し、国民の生活保障に回すことを提案もした。1996年に米軍の実態を訴えた第1回アメリカ・ピース・キャラバンがきっかけで、軍隊を送る側のアメリカの女性たちと、フィリピン、韓国、そして沖縄、本土の女性たちが1997年に「軍事体制に反対する東アジア-アメリカ女性ネットワーク」を結成し、真の安全保障を求めて活動してきたのが、この会議の背景にある。政府のG8サミットの沖縄開催決定は何を意味するのか。沖縄を基地の島としてさらに米軍基地の機能強化と固定化をはかり、普天間基地の移設をスムーズに運ぶために、緩和剤としてのサミット開催でないのか、と大きな疑念を持って迎えた。

「軍隊の性暴力、女性の人権侵害」「基地の環境汚染・浄化」「子どもの人権・アメラジアン問題」「不平等な日米地位協定・法律」、「紛争予防・国際ネットワーク」をテーマに各分科会で討議し、4日間の会議を通し、普天間基地の移設と称する新たな基地建設が、世界の、女性・子どもの安全保障ではなく、逆に暴力につながっていることを確認した。この軍事主義を許さない国際女性ネットワークは、軍事による安全保障でなく、真の安全保障を求めて、ネットワークを継続しており、今月末には、フィリピンで、韓国・アメリカ・グァム・ハワイ・沖縄・日本が参加して会議を予定している。

日本の軍拡の中で沖縄は

 2000年G8サミットから23年を経た現在、アメリカの足跡を軽減していく約束は守られず、逆に基地機能は強化されている。「SACO合意」のリストにあった、米海軍病院の土地は返還になったが、新たに米海軍病院は米軍キャンプズケラン内に新設されて、地域貢献を強調しているし、世界の通信を傍受してきた米軍通信基地「象のオリ」は、キャンプハンセン内に機能強化した「サルのオリ」が新設され、また、米軍北部訓練場の過半の返還と引き換えに、残る過半は新たに配備されたオスプレイ機の演習による爆音増大で住民は苦しんでいる。さらに、女性に対する殺害、性暴力事件は続き、基地から派生する環境汚染問題が深刻である。

故翁長県知事が生前、「県民の土地を奪い大きな苦しみを与え続け、基地が老朽化したから、世界一危険だから、普天間飛行場の移設は辺野古が唯一の解決策だと沖縄だけに基地を押し続けているのは理不尽である」という言葉は、まさにその通りである。クリントン米大統領のリップサービスは、パーフォーマンスの舞台にG8サミットとなったといえる。日米両政府は、サミットを用いて日米軍事同盟関係の強化を図ったともいえるのではないか。

ロシアのウクライナ侵攻から、アメリカをはじめ多くの国々がウクライナ問題を口実にして軍事強化を図っている。日本政府はまさにロシア・ウクライナ問題を口実にして軍事強化を進めている。去年の12月16日に、日本政府は臨時閣議決定で軍事力強化を決定した。すなわち、反撃の能力を含め、防衛力を根本的に強化する内容の安全保障関連3文書の改訂を決定した。すなわち、「敵基地攻撃能力」である。これまでは日本の防衛費はGDP1%台を今後5年間にGDP2%規模にまで増額する計画を示している。その通りになると、2027年には、日本は世界第3位の国防費支出国家になる。現在は、世界第10位で、韓国が9位となっており、アメリカは常に世界第一位である。

このような事態になって、今、日本にある米軍基地の70.3%を抱える沖縄が、米軍辺野古新基地建設に加え、石垣島、与那国島、宮古島など、沖縄県の南西諸島の島々に、自衛隊基地の建設やミサイル基地の増設などが急ピッチで進み、今、日米政府は沖縄をミサイル要塞化への危険性をはらんでいることに、全県的な怒りの抗議行動を起こしているところである。「日米安保」が「日本国憲法」の上にかぶさっている状態ではないか。

今月5月21日にも、全県的な県民集会が開かれる。「沖縄の島々にミサイルを持ち込み戦争の準備をすることは断じて許しません。「沖縄戦の地獄を子孫に味わわせない。」「沖縄は日本の防波堤になくことも、他国への攻撃基地となることも拒否します。」「日米両政府は沖縄の「ミサイル要塞化」を直ちに中止し、「戦争回避」・「軍縮」を、台湾・中国と話し合うことを要求します。と