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定例研究会




第16回 定例研究会



環境共生都市づくり

谷口 孚幸氏

 今回の研究会(9月25日)は.「地球環境時代」とか「環境ホルモン」といったいま話題にはなっているが.私にとってその内容が今ひとつぼやけた感じである文言を含むテーマなので、この際少しでも理解を深めたいと思い出席した。
 研究会では二つのテーマが用意されていて、それぞれ膨大な内容の割には短時間の講演であった。いずれも、機会があればじっくりと聞きたい話である。




谷口孚幸氏の「地球環境時代の都市づくりの考え方」について

氷上 克一

 氏の長年の経験と研究の成果が披露された感じがする。全体にわたって明解で歯切れが良く聞き易い講演であった。今まで地球温暖化を防ぐにはC02の排出量を減らさなければならないし、まちづくりや建設に伴ってC02が排出すること説明はよく聞いた。できあがった後のCO2排出量削減がキーポイントになるという説明には「ハッ!」とするものがあった。
 日本における干潟問題に現れている行政のあり方や、土木建築屋だけのまちづくりの様子を聞くと、いま取り組まなければいけない地球規模の環境保全に対しては、日本はリーダーシップがとれないのではないかと心配になった。

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谷口孚幸氏「地球環境時代の都市づくり」の講演感想

白子 定治

 歴史を振り返れば、古くは農村で仕事のない人たちが都市に集まり構成員となり、生活は快適とは言えない状態だったようだ。例えば、現在では趣のあるとされているポンペイの石畳も実は単に道路としての機能を持っているだけでは無かったと聞く。町にひしめいて生活していた人々が石畳にごみや汚物を捨て、現在の美しい道とはだいぶ違った様相を示していたようだ。また、テムズ川に水洗便所排水が流され、腐敗していた頃の都市在住の男子の平均寿命は40歳に満たなかったという。
 21世紀を迎え、世界の人口増加が最も問題となっている今日、後進国では都市への人口の集中が加速している。現在の都市は、仮の住まいではなく長期間にわたり人々が生活してゆく主要な場所になっている。このような中で都市の住民が、自らが存在する空間を快速にしようとするのは人情である。都市は、暮らして行ければよい場所から、より高度な価値を持った場所へと変わるべきだと人々の意識は目覚め始めている。ここに思想を持った都市づくりが生まれてくる。
「基本は独自のアイデンティティを持った街づくりであり、 @アメニティ環境創造、 Aエネルギー循環型都市システム、 Bサステナビリティシステムの三つの観点で捉える」と講演は明快であった。
 小生は、特にエネルギーについて関心が強い。現代は、石油、天然ガス。原子力といった限りある埋蔵燃料を用いて発電し或いは自動車を走らせ、人間の力を誇示している。この科学に基礎を置いた現代文明は、消滅させることはおろか台風の進路を変えることすら出来ない。もちろん、近年問題となっているエルニーニョなど海水温の変化による気象変動にも全くお手上げである。自然のエネルギーは現在の技術では制御できない程桁違いに大きい。 シュツットガルト市の都市計画は、このような自然を知り、そのエネルギーを利用した好例である。若干のロマンを感じながら楽しく拝聴させていただくことが出来た。このような考えをより小さな空間であるプルに適用し、内部の温度差による気流を考慮た省エネルギー構造を取ることが出来れば、少ないエネルギーで快適な室内環境が実現するのでは無かろうかと考えたりした。
 三番目のサスティナビリティについてのウプサテの例は。 92%の石油依存率が5%にまで落とすという実例には、脱石油化を目指す現在、勇気づけられる思いがした。
 一番目のアメニティは、思いのほか重要であり難しいと考える。人の心までも変えてしまうのではなかろうか。
20年程前オランダのボンエルフが注目された頃、街を歩き、道路の単調さに気づいた。現在では多くの都市では道が楽しい。カラーの敷石でも銀座と新宿ではまるで違う。舗装がその街を表現すらしている。平坦な街から複雑で個性のある街へ、地球環境時代の都市づくりは街を豊かに楽しくするのでは無かろうか。そして講演で例示された都市のように街づくりの思想が明らかであれば、住人に誇りすら生まれる。このような街づくりを実現する大きな原動力のひとつは思想の定着と考える。それ故、講演の中での「思想がおかしいと環境は変えられない」との一節に含蓄を覚えた。
 初めて下水道文化研究会に参加させていただきありがとうございました。これからの時代の知識人の集まりとの感触を受けることができました。

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