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個人組合員の活動方法

 
はじめに

ジャパンユニオン組合員には、組合加入と同時に、会社には通告しないで組合員として存在するだけの場合と集団的労使関係のなかで個人争議の解決をめざす場合と職場に集団的労使関係(つまり組合結成)を築く場合という三つの道があることを示しました。

そのうち、ここでは、職場に集団的労使関係(つまり組合結成)を築く場合のことを話したいと思います。
職場で労働組合を作るのは、一朝一夕にはいきません。 それなりの準備が必要です。

職場での労働組合作り

職場で労働環境を改善するためには、会社に要求を認めさせる労働組合がどうしても必要です。
そのためには、同じ職場で働く労働者同士が仲良くなり、何でも話せるようになり、労働者同士の信頼関係を築くところから始めるほかありません。
会社への疑問や不満、グチを出しあい、どうしたら劣悪な労働条件や職場環境を改善できるかを話しあえれば、大きな進歩です。
労働組合結成に向けた仲間になるのにあと一歩と言えます。

以前ある組合員に朝、職場に行った時に同僚にあいさつするのかと聞いたところ、同僚があいさつしてこないので自分もしないと返答されて、あきれたことがあります。これではダメで、相手があいさつを返してこなくても必ずあいさつする。 またなぜあいさつをしてこないのかを検討する必要もあります。 いずれにせよ団結できる、または団結すべき相手についてはとことん考え、行動すべきでしょう。 そこからしか人間関係ははじまりません。

職場では、まず人間として信頼されるために最低限次のことは実行すべきでしょう。
仲間に謙虚に。
先頭で汗水垂らす。
あいさつはしっかりする。
遅刻はしない。
仕事はしっかりする。
陰日向がない(上司のいるときだけ仕事する、人により態度を変えるのは信用されない)など。

また一方で、ジャパンユニオン本部と相談して、企業・職場の分析と職場での一人組合員自身の日常の動き方を点検し、職場での組合結成の条件を分析するようにしましょう。
一人仕事で、職場に同僚がいないとか、話すチャンスすらないとか、いろいろ個別の事情については個別に検討して解決策を見出すしかありません。
本部では、親切丁寧な対応を心がけています。

一人でも組合結成するか

もっとも一人組合員で、企業内に公然と存続できているケースもあります。
一人ないし少数組合員であっても、その企業において「生きた労使関係」が存在する限り、つまり主体的にはその組合員が会社を辞めない限り、企業の中に地域労働組合が存在し、労働組合と企業との労使関係が成立しているということです。

有名なところでは、動く大きな「かに」の看板で大阪道頓堀のシンボルとなっている「かに道楽」 がありますが、その東京の関連会社で、女性組合員が裁判で負けているにもかかわらず、一人で雇用を確保しているケースがあります。

なぜ雇用が確保されているのでしょうか。
言うまでもなく、それぞれの企業での労使関係が個人対企業でなく、労働組合対企業になっているからにほかなりません。
もしその組合員を解雇した場合はその後の展開は労使とも十分に予想できるところでです。
企業にとれば、それぞれ本店前での派手派手な抗議行動から始まり、地域宣伝やマスコミでの宣伝、労働委員会、裁判と続く長い社会的包囲との闘いが待っています。
「かに道楽」でそうなった場合は大阪まで行って、関西の協力関係にある労働組合、ユニオンの助けを借りながら、動く「かに」看板の前で抗議行動を展開するほかありません。
したがって、企業としては、社会的労働運動との闘いを決断した上で解雇するのか、雇用継続を容認するのかを天秤にかけざるをえないのです。
そこから企業内で一人でも雇用を確保し続ける条件が生まれるわけです。

問題はそのあとです。
一人ないし少数組合員がいかにして多数派に転化するのかという問題です。
企業は組合員とその他の従業員との間に行き来できない堅固なバリケードを築きます。
組合員は企業の組合つぶし攻撃に屈せず、「ハリネズミ」になって企業に対峙し、企業内に存続し続けるために多大のエネルギーを集中せざるをえません。
多数派になることを考えるどころではない、企業に自分がいることだけで精一杯という時期もあります。

しかし労働組合である以上、多数派になることによってのみ、基本的要求の獲得が可能になります。

その際、組合つぶしに屈せず企業内に存続するんだという組合員のプライドが苦しい闘いを支える重要な要素となります。
しかし同時にそのプライドが企業のバリケードと相まってその他の労働者との交流、団結の障害物になっている場合もあります。

一人ないし少数組合員が多数派になるのに、今までは当事者の人格に基づく活動にのみ依存する傾向がどうしても強かったが、「一人組合員(又は少数組合員)は企業に打ち込んだ労働組合の橋頭堡(前進拠点)」と考えるのであれば、労働組合総体としての社会的労働運動の中に正当に位置づけ、地域労働組合と個別企業内一人組合員(又は少数組合員)の相互関係強化の活動に、多数派への道を追求することが課題となります。

広島電鉄の労働組合の多数派への経験に学ぶ

広島電鉄の労働組合は、春闘での契約社員全員の完全正社員化実現や路面電車を守る闘いの成功でマスコミでも有名になりました。
しかしこの組合(私鉄総連広電支部)の真骨頂は組合分裂攻撃を受けていったん少数派になりましたが、その後の幾多の闘いと活動によって二六年かけて多数派になり、ついには第二組合を吸収合併したところにあります。
河西宏祐は、広電支部への二六年間の「定点観測」を通じて、『路面電車を守った労働組合―私鉄広電支部・小原保行と労働者群像』(平原社、2009年5月発行)において、その間の事情を詳しく分析総括しています。
以下、「広電闘争に学ぶこと」を箇条書きで列記します。目からウロコの記述が多かった。

(1)組合員拡大
1959年には組合員数は支部の歴史上、最少の376人(組織率16.3%)にまで落ち込みました。
ピケストを二組に突破されて敗北した後、最少数派になり何をやってもどうにもならないとなったとき、「成果がないということで、みんな評論家的になる」「幹部が動くと差別と弾圧が強まるばかりだ」、そんな雰囲気が広がっていきました。

①落ちるところまで落ちれば労働者は立ち上がる、というのは絶対にありえない。
②他力救済はやらず自力救済でやる。他力救済は裁判所を使うが、自力救済は自分で、実力で差別を粉砕する。法廷闘争ではその推移が組合員の目に見えにくい、組織人員の拡大にはつながってこない。差別や弾圧を実力ではねつけて不当労働行為を是正させることが大事だ。
③ただ闘争に勝っているだけでは組合員は増えない。職場のなかで一本釣りをやれ。
④一回あたって(組合加入のオルグをして)、これはだめだなと腹を立てるようなら、初めからしないほうがいい。いったんねらいを定めたら、(組合加入の)ハンコを捺すまで説得する。何年かかってもいいというぐらいの根性であたっていたら、だんだん増えてきた。
⑤第二組合員は未組織労働者、経営側に組織された者とみて、そこからいかにして支部に獲得していくか、それが組織化運動だ。
⑥絶えざる組織化運動なくして労働条件の向上はない。
⑦派手な闘争をやれば加入者が増えるかといえば、そうではない。職場における地道な日常活動、そして説得活動、この二本立てしか王道はない。「説得活動なしには、絶対に(組合に)入ってきません」。

(2)単年度決着でなく数年がかりで要求獲得
①広電においては、いかなる課題であれ、その年度内に決着することはほとんどなかった。数年後(ときには十数年後)に決着するのが通常のことだった。
②「ゼロの闘い」と称し、三要求闘争を長期無期限の闘いである、何年かかっても勝ちとるまで闘う決意で闘い、かちとった。
③絶対的な少数派で、労働条件を引き上げるというような闘いはできない。それよりも自分たちの運動を第二組合のなかにどう影響力をつくっていくか、いわば物的な成果よりも運動の成果をどう高めていくか、という意思統一をした。
④郊外バス分会は第二組合1000人にたいして支部は370人という少数下での差別反対闘争であっても、闘えば成果が上がる、問題は闘い方だ。一年間に90回近い奥地オルグをやった。

(3)反差別闘争
①支部対第二組合という構図ではなく、一部の優遇者対その他多数の労働者間差別と見る。
②差別は、相手方の鋭い権力であると同時に、差別する側をも斬りつける「両刃の剣」だ。人間の正義感にたいしてものすごく憤りをもたせ、団結させる要素をもつ。
③差別そのものは怖くない。差別を黙認、見逃し、寛容であったりがよくない。怒り、攻撃の姿勢があれば組合の団結を促進する要素になる。
④第二組合員全員を敵視してはならない。第二組合のなかにも多数の「冷や飯食い(被差別者)」がいる。それを見つけ出せ。それをこちら側に組織化する。
歴史的に見ても「少数派から多数派へ」を実際に実現した労働組合はそんなに多くない。その点で広電支部の業績は大きい。

同時に一方で、広電の特殊性も見ておかなければなりません。少数派と言っても370人の組合員がいたことや、私鉄総連の支部、一つの県を代表するほどの企業、その企業の持つ社会性、公共交通機関などの問題もある。また労働委員会や裁判所を使わないで闘いがやれることが羨ましい向きもあるでしょう。いずれにしても、そのまま使うわけにはいかないのは当然ですが、学ぶ点は山ほどあります。

* (参考動画)ジャパンユニオン研修講座
「ジャパンユニオンのめざすもの、一人組合員の活動方法と集団的労使関係」

【組合費】入会金2,000円(初回のみ)、月額組合費1,000円(できるだけ年12,000円、半年6,000円の一括払いでお願いします)
*詳細は「加入方法とその後の流れ」を参照してください。/加入申込書