トップページ>労働組合法入門


労働組合法入門

 
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
労働組合法講座
西谷 敏『労働組合法』第3版に学ぶ
第7回 第1章 労働基本権 第2節 労働基本権の歴史(続き)
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

3 放 任
法律による団結の禁圧は結局成功しなかった。
労働者が他の労働者と結合して、賃金その他の労働条件の向上をはかろうとするのは資本主義的な経済構造が維持されるかぎり一種の必然であり、いかなる厳しい弾圧体制もいかなる過酷な刑罰も、それを根絶しえないのは当然であった。

そのことを自覚した国家は、団結に対する法政策を禁止から放任に転換する。
イギリスの1824年・1825年法、フランスの1864年法(持続的結社としての労働組合の放任は1884年法)、北ドイツ連邦の1869年営業法152条などが団結を禁止規定から解放するという放任政策を宣言したのである。

こうした団結放任政策を支える論理は、団結禁止の論理に対応して国によって多少異なっていたが、労働条件改善のために他の労働者と団結するのは個人の自由であるとする考え方を基底に据える点ではほぼ共通していた。
これまで個人的自由の名によって禁止されていた団結が、今度は個人的自由の名によって放任されることになった。
団結にかかわる自由の多様な側面のうち、団結によって制約される取引の自由よりも、労働者の結合の自由に優位が認められたのである。
しかし、もとより取引自由の理念が放棄されたわけではない。
労働者が労働条件をめぐる取引において他の労働者と同盟することも取引の自由の一環であるとされ、「取引の自由」の観念が拡大されたにすぎない。
言い換えると、団結禁止段階の取引の自由は、国家の強権的介入によって維持されるべきものであったが、放任段階においては、国家が経済過程に介入しないこと自体が取引の自由の内容をなすものとみなされたわけである。

もっとも、この段階では、国家の団結およびその活動に対する不介入の政策が首尾一貫していたわけではない。
団結の「放任」そのものが不徹底であったうえ、団結放任の論理そのものに重大な限界が内在していた。
すなわち、「放任」とは、団結を特別に禁止する規定を廃止することを意味したにすぎず、刑事、民事の一般法は当然の如く団結にも適用された。
しかも、団結およびその活動は、個人的自由の集合と把握されることにより、またそのかぎりで正当化されたのであり、その集団的な社会的実態がそのものとして承認されたわけではない。

そこで、労働者団結による非組合員への強制 (たとえばピケッティン グ)は、法律で明示的に禁止され、あるいは刑法上の一般規定の適用によって規制された。
またストライキは労働契約の破棄あるいは民事共謀の概念でとらえられ、 民法の一般原則にしたがって、参加者の解雇や労働組合に対する多額の損害賠償請求を惹起することとなった。
それらは、時には刑罰による団結禁止に勝るとも劣らない抑圧的機能を営んだのである。

4 積極的承認

(1) 積極的承認の諸相
団結やその行動の集団的性格を捨象し、それらを一般法による制限の下においた団結放任政策は、労働組合にとって決して満足しうるものではなかった。
労働組合が国家法による積極的な承認を求めたのは当然であった。
それはたとえば、労働組合を原則的に損害賠償義務から免責したイギリスの1906年法において結実した。
イギリスでは、1901年タッフヴェール事件判決が労働組合に対する多額の損害賠償請求を認めることによって組合に壊滅的な打撃を与えた経験から、労働党を中心として、労働組合の免責をめざす強力な運動が展開されたのである。

しかし、団結およびその行動の積極的承認を求める労働組合の運動は、国家の側からする労働組合の積極的な位置づけなしには成果を生むことはできない。
たとえばドイツでは、第一次大戦下の政労資の協力体制の下で労働組合を体制保持のための積極的要素として位置づける政策が確立し(1916年祖国労働奉仕法)、 そうした発想にもとづく団結承認がワイマール共和国において全面的に展開することとなった。
1919年ワイマール憲法159条は、史上初めて団結自由を基本的人権として宣言し、しかもそれが使用者との関係においても保障されるべきことを明記した。
さらに、同165条は、経済民主主義の発想にもとづいて経済的・社会的事項に対する労使の同権的参加の理念および労働協約制度の憲法的保障を宣言し、そうした理念を基礎として、 労働組合の各種公的機関への参加、労働協約の規範的 (不可変的) 効力の承認、従業員代表制の確立などを特徴とするワイマール労働法が全面的に開花するのである。
ワイマール労働法の基本的発想は、ナチス時代の中断を経て、現在においてもなおドイツ労働法の骨格を形成しているといってよい。
イギリスが労働組合とその行動を特別の国家不介入政策(いわゆるヴォランタリズム)を通じて積極的に承認したのとは対照的に、ドイツの法制は、労働組合を国家社会秩序の中に積極的に包摂しようとする点に特徴をもっていた。

さらにアメリカでは、これら両国のいずれとも異なった意味で、労働組合の積極的承認政策が進行した。
アメリカでは、労働組合が一応放任されてからも、様々な一般法の適用、とくにインジャンクション (差止命令)が労働組合の活動を大きく阻害していたが、こうした状況は、ニューディール政策の一環として制定された1935年全国労働関係法(ワグナー法)によって根本的に転換された。
すなわち、ワグナー法は、労働者の団結する権利、団体交渉する権利、団体行動する権利を宣言したうえ、それを具体化するために不当労働行為 (unfair labor practices) 制度を確立し、行政機関たる全国労働関係局 (NLRB)が使用者による労働者権侵害の行政救済にあたるという独特の制度を編み出した。
同法はまた、多数決にもとづく排他的交渉代表制を確立した点でも特徴的である。
これらは、労働者の団結活動権の保護を通じて団体交渉を積極的に促進し、それによって組合承認をめぐる労働争議を減少させるとともに、労働条件の向上(ひいては労働者の購買力の向上)をはかる、という政策目的を標榜していた。
こうしたワグナー法の発想は、労働組合を規制する方向でこれを修正した1947年労使関係法 (タフト・ハートレー法)を経て、現在においてもアメリカ集団的労働法の基礎を形成している。

(2) 1935年全国労働関係法 (ワグナー法)によって根本的に転換された。
すなわち、ワグナー法は、労働者の団結する権利、団体交渉する権利、団体行動する権利を宣言したうえ、それを具体化するために不当労働行為 (unfair labor practices) 制度を確立し、行政機関たる全国労働関係局
(NLRB)が使用者による労働者権侵害の行政救済にあたるという独特の制度を編み出した。の意義団結放任の論理と実態がおおむね各国で共通していたのと対照的に、積極的承認の理念と政策は国によって大きく異なっている。
しかし、そこにいくつかの共通の特徴が見られることも事実である。
すなわち、①団結およびその活動を国家の抑圧から解放したうえで、②労働者の団結を使用者との対抗関係においても実質的に保障するために、団結に対する使用者の干渉の排除と、それを通じての労働組合の自主性の確保に配慮していること、③団結およびその活動に対して、市民法上の原則の適用から生じるはずの責任を多かれ少なかれ免除していることである。

(3) 第二次大戦後の展開
第二次大戦後、各国の労働組合は、こうした積極的承認政策を背景として大きく伸張した。
労働組合は、おおむね使用者側からも労働者代表組織として承認を受け、労働組合との団体交渉を中核とする集団的労使 (資)関係が全国的に確立した。
労働組合はさらに多くの国におい て、狭い労使関係の範囲を超えて、国家、経済、社会の諸制度における不可欠の構成要素として位置づけられるに至っている(多元的民主主義)。
また、主要資本主義国における団結権、団体交渉権の確立を背景として、これらの権利の保障は国際条約においても宣言されるに至った。
たとえば、結社の自由と団結権に関するILO87号条約 (1948年)、団結権・団交権に関するILO98号条約 (1949年)、団結権・団体行動権を宣言した国際人権規約 A 規約 (1966年) 8条、団体交渉の促進に関する ILO154号条約 (1981年)などがその例である。
今や、団結の積極的承認は、すべての国が遵守すべき国際的な公序をなしているといってよい。

しかし他方、 団結の地位の相対的低下を意味する一連の新たな動きが生じてきた。
第一に、巨大な労働組合組織の確立にともなって、組合の非民主的運営や組合による組合員の権利侵害が関心を呼ぶようになり、そうした観点からする労働組合への監視が強められている。

アメリカのランドラム・グリフィン法がその例である。
第二に、 労働組合の経済社会への影響力の増大は、公共的視点からする組合機能の制限を促している。
労働組合の放任と積極的承認それ自体が社会・経済の円滑な運営に資することになるといった楽観論に疑いが生じているのである。
第三に、 1960年代からの合理化の進行とともに、企業や事業所レベルでの問題解決の重要性が増大するなかで、労働組合とは別個の従業員代表制度(ドイツの従業員代表委員会、 フランスの企業委員会など) の重要性が増し、その点からも産業別、職種別組合の地位が相対的に低下することとなった。

(4) 労働組合の危機
1970年代以降、低成長と失業者の増大、国際競争の激化、労働者の組織化の困難な第三次産業の増大やパートタイム労働者など非正規労働者の大幅な増加を背景として、多くの国で労働組合の組織率が低下し、労働条件決定や国家政策の決定に対する労働組合の発言力も後退してきた。

1980年代以降には、各国において労働法の弾力化 (Flexibilisierung)の政策が推進されるなかで、それに抵抗する労働組合への攻撃が強まっている。
労働法の弾力化は、市場経済を絶対視する新自由主義のイデオロギーにもとづき、企業の決定自由の拡大を求める傾向と性格づけることができるが、そこではとくに労働者保護法の規制緩和と並んで、産業別労働協約とその担い手である労働組合が攻撃対象となっているからである。

1990年代に入って加速してきた経済のグローバル化の進展も労働組合の困難を増幅する要因となっている。
IT化とグローバル化を背景とした金融資本の圧力が強まるなかで、一国単位での政策選択の幅が狭くなり、そのことが産業別労使関係の意義を後退させ、労働組合の組織率と活動力の低下をもたらしている。
こうした傾向が強まっていくならば、団結権の積極的承認という国家政策も変化しないとはかぎらない。
労働組合と労使関係、そしてそれに関する国家政策の展開は、経済のグローバル化を抜きにして語れなくなっているのである。

.<ジャパンユニオン組合ニュース編集部註>
*「労働者の団結する権利、団体交渉する権利、団体行動する権利」について、その発展の歴史的推移を論じているので、熟読に価する。
*「労働者の団結」が強化される一方で、それに対する新自由主義の攻撃が現在進んでいること、さらに反撃が求められている。
*歴史的に見て、「法律による団結の禁圧は結局成功しなかった。
労働者が他の労働者と結合して、賃金その他の労働条件の向上をはかろうとするのは資本主義的な経済構造が維持されるかぎり一種の必然であり、いかなる厳しい弾圧体制もいかなる過酷な刑罰も、それを根絶しえないのは当然であった」との経過をたどる。
*つまり、「団結にかかわる自由の多様な側面のうち、団結によって制約される取引の自由よりも、労働者の結合の自由に優位が認められたのである。 」
*そして、「1935年全国労働関係法
(ワグナー法)によって根本的に転換された。すなわち、ワグナー法は、労働者の団結する権利、団体交渉する権利、団体行動する権利を宣言したうえ、それを具体化するために不当労働行為
(unfair labor practices) 制度を確立し、行政機関たる全国労働関係局
(NLRB)が使用者による労働者権侵害の行政救済にあたるという独特の制度を編み出した。」
*さらに団結権の積極的承認へと進展する。つまり、「①団結およびその活動を国家の抑圧から解放したうえで、②労働者の団結を使用者との対抗関係においても実質的に保障するために、団結に対する使用者の干渉の排除と、それを通じての労働組合の自主性の確保に配慮していること、③団結およびその活動に対して、市民法上の原則の適用から生じるはずの責任を多かれ少なかれ免除していることである。」ということになる。
*しかし、「1970年代以降、低成長と失業者の増大、国際競争の激化、労働者の組織化の困難な第三次産業の増大やパートタイム労働者など非正規労働者の大幅な増加を背景として、多くの国で労働組合の組織率が低下し、労働条件決定や国家政策の決定に対する労働組合の発言力も後退してきた。
」という事態を生み出すことになる。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
労働組合法講座
西谷 敏『労働組合法』第3版に学ぶ
第6回 第1章 労働基本権 第2節 労働基本権の歴史
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

1 市民法と労働関係

労働基本権の確立、より広くいえば労働法の成立と発展は、市民社会とその法の成立を不可欠の前提とする。

近代社会の法、すなわち市民法を支える主要な法原理は、私的所有、契約自由、法的人格の保障である。
そこでは、すべての人は、自己の才覚にしたがって自由に利益を追求する独立・対等の人格(経済人)として把握される。
労働者もまた、労働力商品の所有者として、使用者と対等の自由な人格としてとらえられることとなった。
ここに、 労働者に対する諸々の封建的束縛を廃棄した市民法の進歩的意義があったといってよい。
市民法においては、労働契約を締結するかしないか、そして労働契約を締結する場合にそこでいかなる労働条件を取り決めるかは、原理的には当事者の自由に委ねられることになる。

しかし現実には二つの問題があった。
第一に、当事者の自由平等という市民法の原理が、労働関係においては必ずしもそのとおり実現したわけではないということである。
たしかに、労働者が契約締結の自由をもち、労働関係が契約を唯一の根拠として設定されることは、早くから法的原則として宣言された。
しかし、賃金、労働時間その他の労働条件は、必ずしも労働者と使用者との明確な合意によって決定されたわけでない。
たとえば、20世紀初頭のドイツ金属産業に関する実証研究は、大企業においては使用者を家父長 (Herr im Hause)とみる発想が支配的であり、中小企業においては、労働条件の決定権を与えられた親方 (Meister)がかなり恣意的に賃金額を決定しており、その時期に至っても労働条件決定において市民法原理が貫徹していたわけでないことを報告し ている。
イギリスでも、市民法が展開する産業資本主義の段階においてなお、制定法としての 「主従法」 (Master and Servant Acts)が労働者の契約の履行を刑罰によって強制するなど、 自由・平等原理とは異質な規制を加えていたといわれる。
労働関係における自由・平等の実現は、労働運動の重要な目標であった。

第二に、
労働者と使用者の個別的関係において、労働条件が形式的に自由・対等の立場で決定される場合も、双方の力関係の隔絶のために、その内容は使用者に一方的に有利に決定されるほかなかった。

「共同決定」の形式によって使用者の「単独決定」が貫徹したのであり、その結果は、当然労働条件の低下と職場環境の悪化であった。

こうした状況のもとで、労働者が人間らしい生存の実現を求めて他の労働者と団結して闘争にたちあがるのは必然的であった。
それは、労働関係に残存していた前近代的 (反市民法的)な慣行を廃棄してそれを近代化するとともに個別的次元では形骸化しがちになる市民法原理を集団的次元で回復しようとするものであり二重の意味で市民法原理の実現をめざすものであったといえる。

しかし、市民法秩序は労働者の団結を歓迎しなかった。
労働者団結はいずれの国においても当初は厳しい禁止のもとに置かれた。
労働組合が禁止法制の廃棄に成功し、さらに自らの積極的承認を獲得するには、 長い年月と多大の努力を要したのである。

2 団結禁止

18世紀イギリスの職人クラブを起源とする労働組合運動は、19世紀中頃から他のヨーロッパ諸国においても本格的な展開をとげる。
しかし、いずれの国においても団結はまず刑罰によってほぼ全面的に禁止された。
その際、中世以来の同業組合制 (ギルド、ツンフト)を前提として職人の自主的組織を禁止しようとする古い団結禁止が廃棄された後に、営業の自由による資本主義的生産の一定の成熟を前提とした新たな団結禁止が登場した点が重要である。
フランスの1791年ル・シャプリエ法、 イギリスの1799年・1800年法がこれにあたる。
ル・シャプリエ法は、旧体制下での同業組合への身分的拘束がフランス革命によって打破された後に、まさに「労働の自由」を根拠にしてあらゆる団結を禁止したものである。
そこには国家と個人を二極構造において対置させ、あらゆる中間団体を否認するという独特の民主主義観(ルソー・ジャコバン型モデ ル)が基礎をなしていた。
イギリスの1799年・1800年法は結社の自由を容認するコモンロー上の原則を前提としたうえで、労働者と雇主の団結は営業の自由を制限するがゆえに特別の規制の対象にされるべきであるとの理由で団結を禁止した。

これに対して、ドイツの代表的な団結禁止規定である1845年プロイセン一般営業法181条以下は、営業の自由導入を一応の前提とした団結禁止である点で古い団結禁止とは区別されるが、独特の警察国家思想を背景にしたものであった。

このように新たな団結禁止の思想・論理は国によってニュアンスを異にするが 営業の自由などの個人的自由を根拠にした団結禁止という点で共通性をもっていた。
団結は、本来、個々の労働者の自発的意思による結合であり、個人的自由の論理によってとらえられるべき性格をもっているが、同時に一旦結成された団結が、構成員(組合員) に対しては内部統制を通じて、また第三者 (使用者および他の労働者)に対しては労働条件をめぐる取引の制限を通じていずれも彼らの個人的自由を強く制約するという矛盾を内包した存在である。
これらの個人的自由の諸側面のうち、営業の自由や個々人の団結からの自由を一面的に重視し、それらを制約する自由(団結)を強権的に否定するのが、18世紀末から19世紀にかけての新たな団結禁止の論理であった。
また、こうした団結禁止政策が、当時の労働者団結の実態と密接な関係をもっていたことも否定できない。
すなわち、初期の労働組合の中心であった職能組合 (craft union)は、一定地域の熟練労働力の独占的掌握を背景として、労働者相互で協定した労働条件を労働組合の監視や違反労働者への制裁によって守らせるという方法を賃金等の労働条件引き上げの主たる手段としていたため、労働条件の自由な取引をとくに強く阻害するものと理解されたのである。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
労働組合法講座
西谷 敏『労働組合法』第3版に学ぶ
第5回 「第1章 労働基本権 第1節 憲法28条と労働組合法」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

日本の「労働組合法」は、憲法上の労働基本権を頂点とした体系をなしている。
すなわち、憲法28条は、「勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する」と規定し、いわゆる労働三権を保障しているが、それが「労働組合法」の中核に据えられ、この分野の個別的な制度がすべて究極的には労働基本権の効果的な実現という目的によって規定される点に、日本の「労働組合法」の最も顕著な特徴がある。

このことの意義は決定的に重要である。
たとえばアメリカにおいては、団結権と不当労働行為制度を確立した1935年の全国労働関係法 (ワグナー法)
はその成立の経緯から、集団的労使関係を、争議行為の減少による円滑な州際取引の促進や交渉力の均衡による購買力の向上といった政策目的からとらえていた。
1947年の労使関係法 (タフト・ハートレー法)
が、労働組合の不当労働行為の新設などにより、積極的な団結権・団体交渉促進の姿勢を後退させ、組合への規制を強めることになったのも、こうした目的論的発想と無縁であったとは思われない。

これに対して、日本においては、すべてが勤労者の「侵すことのできない永久の権利」 (憲11条) としての労働基本権の保障から発しているといってよい。
労働組合の結成や団体交渉・争議行為は、決して一定の目的実現のために政策的に保障されているというのでなく、これらの権利を基本的人権として保障すること自体が正義の要請と考えられているのである。
もとより、労働基本権の保障も、他の基本的人権との関係で無制約ではありえない。
しかし、憲法が団結権等をあえて勤労者の基本的人権として宣言し保障した意味を無視ないし軽視するのでないとすれば、労働基本権を出発点として「労働組合法」の体系を構築すべきことは、必然的な要請といわねばならない。

憲法上の基本権が集団的労働法の頂点に据えられるという点で、日本の法制はドイツのそれに近い。
ドイツにおいても、基本法9条3項の団結権保障が集団的労働法全体の核心をなしているからである。
しかし、ドイツ基本法9条3項は、その前身たるワイマール憲法159条と同じく、団結権を「万人およびあらゆる職業に」保障している。
つまり、 労働組合と使用者団体をともに団結 (Vereinigung、Koalition)の概念でとらえ、形式的には両者に対等の権利を保障するのがドイツの伝統をなしているのである。
現実には、
戦後西ドイツの判例理論において、労働組合のストライキと使用者団体のロックアウトを形式的に対等に扱うといった初期の立場が放棄され、ストライキに優越的地位を認めるなど、団結権・争議権保障の本義に沿った理論展開がなされているが、なお労働組合と使用者団体を対等に扱おうとする傾向には根強いものがある。

これに対して、日本国憲法28条は、当初から「勤労者」に対してのみ労働三権を保障している。
つまり勤労者=労働者の基本権が法体系の頂点に据えられているという点に、 日本の集団的労働法の、他とは異なった顕著な特徴があるわけである。
憲法はなぜ「勤労者」に対してだけこうした基本権を保障したのか、それが規範的にいかなる事がらを意味するのかは検討を要する基本問題であり、この点に関する私見は後に述べる。
いずれにしても、労働者の基本的人権としての団結権・団体交渉権・団体行動権の保障は、あらゆる個別問題の検討にあたって、たえず立ち返るべき原点をなすといわねばならない。

憲法28条の労働基本権規定が法体系の頂点に置かれるということは、下位にある諸々の法律は、たえず憲法28条の趣旨に照らして検証され解釈されねばならないことを意味する。

間違っても、下位の法律の趣旨から憲法28条の意味内容を解釈し、限定するようなことがあってはならない。
そのことは、とりわけ、アメリカ占領軍の強い圧力のもとにきわめて短時日の間に作成されたため、拙劣な規定や憲法に照らして妥当性が疑わしい条項を含んでいる1949(昭24)年改正労組法にあてはまる。
労組法のそうした性格を考えれば、その文言に拘泥し、そこから出発して「労働組合法」を構成しようとする態度は決して妥当ではない。
労組法が本来憲法28条の趣旨の具体化を基本的任務にしている以上、その解釈にあたってはたえず憲法28条の趣旨そのものに立ち返ることが必要なのである。

さらに、「労働組合法」の分野では、法律に明確に規定されていない問題が多数存在する。
たとえば、いかなる争議行為が正当と認められ、民事免責や刑事免責を与えられるか、の問題について、労組法その他の法律の規定から解答を引き出すことは不可能である。
こうした問題についても、当然、 憲法28条の解釈にもとづいて適切な判断基準が定立されねばならない。

以上のことから「労働組合法」の体系的構成にとって憲法28条の解釈が決定的に重要な意義をもつことは明らかであろう。
憲法28条は、「労働組合法」のアルファでありオメガである。
しかしながら、憲法28条はきわめて簡単な文言から成っており、そこから客観的に妥当な解釈を引き出すのは決して容易な作業ではない。
少なくとも、そこで用いられている概念を様々に操作しただけで正しい解釈を導くことができないのは明らかである。
それではどうするか。
われわれは、憲法28条の労働基本権が形成されるに至った内外の長い歴史を振り返ってみなければならない。
なぜなら、「人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果」 (憲97条)である基本的人権は、まさに「自由獲得の努力」の過程を探ることによってしか、その意義を知ることができないからである。

<ジャパンユニオン組合ニュース編集部註>
〇アメリカのワグナー法やタフト・ハートレー法などの集団的労使関係法に比べ、日本の憲法や労働組合法の優位性を指摘している。
〇また、労働基本権についての憲法28条の持つ基本的重要性を繰り返し指摘している。言い換えれば、「労働組合法の体系的構成にとって憲法28条の解釈が決定的に重要な意義をもつこと」となる。労働組合法の核心点と言える。熟読し、理解を深める意義のある節である。
〇「憲法が団結権等をあえて勤労者の基本的人権として宣言し保障した意味を無視ないし軽視するのでないとすれば、労働基本権を出発点として「労働組合法」の体系を構築すべきことは、必然的な要請といわねばならない。」との個所は、重要。
〇「日本国憲法28条は、当初から「勤労者」に対してのみ労働三権を保障している。
つまり勤労者=労働者の基本権が法体系の頂点に据えられているという点に、 日本の集団的労働法の、他とは異なった顕著な特徴があるわけである。」
それはなぜかについては後述。
〇「労組法が本来憲法28条の趣旨の具体化を基本的任務にしている以上、その解釈にあたってはたえず憲法28条の趣旨そのものに立ち返ることが必要なのである。」
この労組法その他を憲法28条の趣旨の具体化として見るのは、本書の一貫した立場である。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
労働組合法講座
西谷 敏『労働組合法』第3版に学ぶ
第4回 「第4節 労働組合と労働法」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

1 労働組合と法政策

「労働組合法」は、以上のような労働組合の現実に対していかなるスタンスで臨むべきであろうか。

第一に、「労働組合法」について考える場合、日本の労働組合が上述のような状況にあることを直視しなければならない。
もちろん、6万に近い労働組合が実際に果している役割には相当の偏差があり、法の適用にあたっては、当該労働組合の具体的な機能も考慮に入れるべきである。
しかし、日本の労働組合が全体として、労働者利益を擁護するというその最も基本的な機能の点で、ヨーロッパ諸国の労働組合に比較して大きな限界をもっていることは明らかである。

したがって、
労働組合があたかも、使用者に対抗して労働者利益を適切に代表するという本来の役割を現実にも十分に果たしえているかのような認識にもとづいて、立法論や解釈論をたてる(たとえば、労働条件の規制を「労使自治」に委ね、労基法などの法律的規制を緩和するという法政策) ならば、不適切な結果をもたらすおそれが強い。

第二に、法は、労働組合の今後の発展方向にも関心をもたざるをえない。
しかし、労働組合が労働者の自主的な組織である以上、その基本的なあり方は、労働組合が自主的に決定すべきであり、法が労働組合に代わって決定すべきものではない。
労働組合が危機的な状況に陥っているとしても、そこから脱出する真の力は労働組合そのものから出てくるほかないのである。

第三に、しかし、法は、歴史的経験が教えるように、労働組合の自主的運動に強い抑圧的作用を及ぼすことがありうるし、逆に労働組合の自主的な発展への障害を取り除いてそれに促進的作用を加えることもできる。

日本では、憲法が、労働基本権の保障 (28条)によって、労働組合を国による抑圧と使用者による妨害から保護して、その自主的な発展を支援するという立場をとっている。
したがって、「労働組合法」を扱う者は、憲法に忠実であろうとするかぎり、こうした労働基本権保障の趣旨をふまえて、労働組合の自主的な発展方向を見きわめつつ、その促進のために法が果たすべき役割は何かという観点から、立法や解釈のあり方を考えなければならない。

もちろん、その際、労働基本権はいかなる意味内容をもつのか、労働組合の発展を「促進」するとは具体的に何を意味するのか、をめぐっては様々な見解が存在しうる。

私は、憲法の想定する労働組合は、個々の労働者の自己決定にもとづく連帯であって、現実の労働組合もその方向に発展せざるをえないと考えており、本書の叙述も当然そうした基本的態度決定を前提としている。

2 労働法体系における「労働組合法」

労働組合法あるいは集団的労働関係法は、労働者個々人と使用者の関係を扱う個別的労働関係法、および職業紹介・雇用政策などを扱う雇用保障法(労働市場法)とともに、労働法の重要な一分野を形成する。
とりわけ、労働組合法と個別的労働関係法の関係をどのように考えるのか、言い換えれば、労働法体系において労使自治をいかに位置づけるかはきわめて重要な問題である。

個別的労働関係法の中心は、労働条件の最低基準の法定を中心とする労働者保護法であるが、そこでは、国家による個別的労働関係の規制が中心的な特徴をなす。
これに対して、労働組合法においては、労働組合および労使関係の国家からの自由が不可欠の前提をなす。
こうして、一見すると両者は正反対の性格をもっているかに見える。

しかし、角度を変えて見ると、両者は使用者の単独決定の規制という点で共通の目的を追求するともいえる。
すなわち、後にも述べるように、資本主義経済においては、労働者と使用者は形式上は対等の契約当事者であるが、圧倒的に多くの場合、両者は支配従属関係(非対等性)の下におかれており、そこでは労働条件や職場環境などが使用者によって事実上一方的に決定されることにならざるをえない。
そこから生じるのは、労働条件の無限の低下と職場環境の際限のない悪化の可能性であり、国家はそれを放置することはできない。
そこで、そうした使用者の単独決定に内容上の歯止めをかけるために生み出されたのが工場法などの労働者保護法である。
労働組合もまた、労働者の団結とそれを基礎とした交渉・ 闘争によって、使用者の単独決定を制し、可能なかぎり労働条件を共同で決定しようとする。
国家は、労働者保護法の制定と労働組合の法認により、両者あいまって使用者の単独決定が適切に規制されることを期待して、労働法を体系化してきたのである。
そのように考えると、労働法の最も基本的な目的は、労働者の人間らしい生活を保障するために、使用者の単独決定を規制することにあるといえる。

労働者保護法と労働組合法の位置づけは、国によって、時代によって大きく異なる。
たとえば、ヨーロッパ大陸諸国では、伝統的にこの両者を不可欠の柱として労働法の体系を形成してきたが、アメリカ労働法の中心は労使関係法に置かれており、労働者保護法は現在もなお十分な発展を見ていない。

今後の法政策を検討するにあたって、この両者をどのように位置づけるかは、原理的な問題であると同時に労働組合が実際にいかなる力をもちいかなる役割を果たしうるか、という現実的な判断の問題でもある。

現在のように、労働組合の力量が後退しつつある状況の下で、国家が、使用者の単独決定の規制による労働者の人間らしい生活の保障という労働法の根本目的を追求するためには、従来よりは労働者保護法の方にウェイトを置くことは避けられない。

労働組合や労使自治が一般的に重要性をもつことは今さらいうまでもないが、国家的規制を後退させて、問題の扱いを労使自治に委ねるという規制緩和論が主張するような法政策は、現実の条件の下では、使用者の単独決定を再び一人歩きさせるおそれが強いのである。

3 従業員代表制度に関する立法論

日本では、ヨーロッパと同様の意味で企業・事業所における労働者代表機関が必要とされるわけではないが、日本でも従業員代表制度に関する立法論上の議論がさかんになっている。

その背景の第一は、労働組合の組織率が低下し、労働組合だけで労働者の集団的利益が代表されえないという上述の事情である。

議論のもう一つの背景は、現行の労基法などの労働者過半数代表制度に大きな問題があるとの認識である。
労基法等は、事業場の労働者の過半数を代表する者に、労使協定の締結 (代表的なのは労基法36条による時間外・休日労働協定 = 三六協定)や、就業規則の作成・変更にあたっての意見聴取 (労基90条1項) などの重要な役割を与えている。
事業場に労働者の過半数を組織する労働組合が存在する場合には、その労働組合が自動的に代表になると規定され、実際に大企業では労働組合が過半数代表となっている場合が多い。

しかし、この点については、本来組合員の利益を代表するにすぎない労働組合を直ちに事業場の労働者全体の代表とみなしてよいのかという原理的な問題があり、その問題は、とくに労働組合が非正規労働者を事実上排除している場合や、労働者に不利な協定等を締結する場合に顕在化する。

また、事業場に労働者の過半数を組織する労働組合が存在しない場合には、代表選出のあり方について定めた規定(労基則6条の2)が不十分であることもあって、非民主的な手続で代表が選ばれる場合が多いという現実がある。

こうした問題を解決するために、日本でも複数の労働者代表によって構成される従業員代表機関 (労働者代表委員会)を法定することが提案されているわけであり、こうした提案は十分検討に値する。
しかし、こうした制度は、労働組合の発展を阻害する危険性がないとはいえないし、事実上使用者が一方的に決定した内容に「労使合意」の衣をかぶせるだけに終わる可能性もある。

制度設計においてはこの二つの点に十分留意することが必要であり、その点からすれば、従業員代表機関には、現行の過半数代表制に与えられている権限を越える大きな権限を付与すべきではないであろう。

今後いよいよ「第1章 労働基本権」に入ります。
次回は、そのうちの「第1節 憲法28条と「労働組合法」」です。

<ジャパンユニオン組合ニュース編集部註>
〇西谷敏が強調する、
<労働組合が労働者の自主的な組織である以上、その基本的なあり方は、 労働組合が自主的に決定すべきであり、法が労働組合に代わって決定すべきものではない。
労働組合が危機的な状況に陥っているとしても、そこから脱出する真の力は労働組合そのものから出てくるほかないのである。>
との主張は、当然とはいえ、労働運動・労働組合の弱体化を法制度でカバーしようとする最近の風潮に対する強い警告として受けとめるべきであろう。

〇<こうした制度(従業員代表制度)は、労働組合の発展を阻害する危険性がないとはいえないし、事実上使用者が一方的に決定した内容に「労使合意」の衣をかぶせるだけに終わる可能性もある。

制度設計においてはこの二つの点に十分留意することが必要であり、その点からすれば、従業員代表機関には、現行の過半数代表制に与えられている権限を越える大きな権限を付与すべきではないであろう。>
との見解は、現在、労働組合の役割を軽視し、「従業員代表制度」にすべてを委ねようとする傾向が少なからず見受けられるので、重視すべきと思われる。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
労働組合法講座
西谷 敏『労働組合法』第3版に学ぶ
第3回 「日本の労働組合」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

1 支配的な企業別組合

(1) 統計からみた実態
2010年の厚生労働省「労働組合基礎調査」によれば、日本では単位労働組合の数は5万5910、組合員数は998万4541人、推定組織率 (労働者のうち労働組合に加入している組合員の比率) は18.5%となっている。

民間労働組合の93.5%は企業別組合であり、そこに民間労組組合員の87.7 %が組織されている。
このように、労働組合の圧倒的多数が企業別組合である点に、国際比較からみた日本の労働組合の最大の特徴がある。
何よりも組合数の多いことがその分散状況を象徴している。
たとえば、ドイツの代表的ナショナル・センターであるドイツ労働組合総同盟 (DGB) に加入する労働組合は8つにすぎないのである。

労働組合の組織率は、企業規模が大きいほど高い。
企業規模1000人以上(民間) では46.6%、1000人未満100人以上で14.2%、100人未満では1.1%である。

日本の民間労働組合の64.3%はユニオン・ショップ制度をもっており、組合に加入しない者や、組合から脱退したり組合から除名された者の解雇を使用者に義務づけることによって、組合加入を事実上強制している。

しかも企業規模が大きいほどその普及率が高い。
さらに、 企業別労働組合の多くは、パート・アルバイト・嘱託・派遣労働者などのいわゆる非正規労働者を組織対象から除外しており、たとえばパートタイム労働者の推定組織率は、近年増加傾向にあるとはいえ、5.63%にとどまっている。

このように、日本の企業別組合は、中規模以上の企業における正社員の全員加盟制組合という色彩が強いのである。
公務員の労働組合 (職員団体)は、ユニオン・ショップ制度をとることはできないが、正職員中心の「企業」別組合である点では、民間と異ならない。

(2) 企業別組合の問題点
こうした組織形態は、幾多の欠陥をもっている。
すなわち、労働組合が企業別に分断され、その規模が小さくなって弱体化するだけでなく、組合が企業意識に支配されやすく、企業間競争が激化するにしたがって、他の労働組合と連帯して行動するよりは、使用者と協力して企業の繁栄に努めるという行動をとりがちになる。

その結果、労働条件の平準化という労働組合本来の機能の発揮において大きな限界をもつことになる。
また、企業別組合においては、失業者を含む産業分野の労働者全体への関心が稀薄にな る。
さらに、少なくとも正社員について全員加盟制を原則としていることから、積極的な加入意思をもたないのみか、労働組合の存在意義さえ十分に理解しない大量の労働者が組合に組織されるため、組合員多数の意思を尊重して民主的に運営しようとすれば組合の活動力が低下し、積極的な活動を展開しようとすれば運営が非民主的になる、というディレンマを抱えることになる。

たしかに、企業別組合は、職場に密着した活動を展開しやすいという利点をもっており、欧米諸国でも技術革新の進展によって企業間の相違が拡大するにつれて、企業段階の労働者組織の意義を評価する傾向が強まっている。

しかし、日本の企業別組織は、ヨーロッパ諸国のように、産業別・職業別の超企業組織 の存在をバックにしていない点で大きな相違がある。

日本の企業別組合は、 長期雇用制 (閉鎖的労働市場)、年功的処遇などの日本的雇用慣行とも密接な関係をもって確立してきたと考えられるが、近年、こうした日本的慣行は大きく変化し、パートタイムなどの非正規労働者が急増し、正社員についても企業間移動が一層活発になろうとしている。

そうした状況のなかで、特定企業の正社員のみを組織対象とする企業別組合は、一層後退していく可能性がある。

2 合同労組とユニオン

一般に中小零細企業においては、使用者の権力が強く、企業別組合さえ組織しえない場合が多い。
1955(昭30) 年総評大会は、このような中小零細企業における組織化を方針として掲げ、それ以来、合同労組の結成が推進されてきた。
合同労組の基本的性格は、企業別組合に組織しにくい労働者を地域ごとに個人加盟原則によって組織する点にあるが、その組織形態は多様であり、産業別組合、職種別組合、一般労働組合などの形態をとる。

一般労働組合にも、主要な産業別の労働者を主たる組織対象としつつ、それ以外の労働者にも広げるものと、文字どおり産業・職種を問わずに広く労働者を組織する組合が存在する。

近年、「ユニオン」と称する労働組合の活動がめだつが、これも個人加盟を原則とする合同労組の一種と考えることができる。
その組織対象はやはり多様であるが、とりわけ地域ユニオン (コミュニティ・ユニオン) は、企業別組合から排除されたパート・アルバイト・派遣労働者などの非正規労働者や管理職などを対象とすることが多い。
地域ユニオンをはじめとする多くのユニオンには、労働者が解雇・雇止め、労災、いじめなどの深刻な問題に直面した後に、問題の解決を求めて加入する場合も多い(駆け込み加入)。

ユニオンに対しては使用者が拒否反応を示すことが多く、団体交渉拒否をはじめ多くの労使紛争が生じている。

これらのユニオンは、労働者の権利救済など個別紛争の解決に大きな役割を果たしているが、労働条件基準の引き上げという組合本来の役割という点で大きな限界をもっているのは否めない。
また、個別問題の解決をめざして組合に加入する労働者が、組合員として定着しにくいという組織上の問題を抱えてい る。

3 単位組合と連合体

個々の労働者が構成員となって組織する基本的組織は単位 (組織) 組合と呼ばれる。
ひとつの組合が支部・分会などの下部組織をもち、これらの支部・分会等も一個の労働組合として独立性をもつ場合、その組合全体は単一(組織) 組合と呼ばれる。
この場合、労働者は支部・分会等と単一 (組織) 組合に二重に加入していることになる。

これらの単位組合もしくは単一組合は、他の労働組合とともに連合体を結成するのが通例である。
日本の企業別組合の多くはまず、産業別の連合体(いわゆる単産)を結成する。
日本の単産は、一見すると欧米の産業別組合と似ているように見えるが、企業別組織を基本単位としている点で、個人加盟原則にもとづく欧米の産業別労組とはまったく異なるものと見るべきである。

たしかに、単産によっては、企業別組合の組合員が同時に単産に個人加盟する形式をとり、企業別組合を支部と称する場合があるが、その場合でも単産の実態は企業別組合の連合体にすぎないのが通常である。
大規模な単産は、各地域に地方本部 (地本) あるいは地域本部をもうけている。
地域の合同労組は、単位組合と個々の労働者を同時に組織している場合があり、混合組合と呼ばれる。

多くの単産もしくは単位組合は、ナショナル・センター (全国的な労働組合の連合体)に加入している。 日本では、現在、日本労働組合連合会(連合)、全国労働組合総連合(全労連)、 全国労働組合連絡協議会(全労協) という三つのナショナル・センターが併存している。

4 労働組合の課題

日本における労働組合の組織率は、1949年の55.8%を頂点として次第に低下し、2010年には18.5%となっている。
それだけでなく、全体として労働組合の活力と社会的存在感が弱まり、「労働組合の危機」 が叫ばれる状況である。
日本の労働組合が遭遇している困難の原因には、欧米諸国の労働組合と共通する面がある。
それは、伝統的に労働組合運動の中核を担っていた第二次産業の比重が後退し、組織化の難しい第三次産業の比重が増大してきたこと、社会保障の充実などにより相対的に労働者生活が向上してきたこと、グローバル化の下での激しい経済競争により一国単位の労働組合の果たしうる役割に限界が生じてきたことなどである。

しかし、 日本における労働組合の危機については、企業別組合というその特有の組織形態に重要な原因があることもほぼ共通の認識となっている。
上述のとおり、企業別組合は、企業間競争が激しくなればなるほど、使用者と一体となって企業の存続・発展のみを追求する傾向をもち、企業を超えた労働者の労働条件を全体として向上させていく力を失っていく。

個々の組合員にとって、労働組合が労務管理の一機構とさえ映じることもある。
また、正社員のみを組織対象とする労働組合が、労働者の急激な非正規化(1990年の約20%から2010年の約35%へ)とともに組織基盤を脆弱化させていくのは必然的である。
さらに、集団主義というべき労働組合の伝統的な体質が、個人化しつつある労働者の組合離れの原因となり、さらに人事・労務管理の個別化に対応できないという現象も生じている。
また、戦後の歴史において、とくに1948年以来、国が一貫して官公労働者の労働基本権を否定し、これらの労働組合運動を抑圧してきたことも見逃すことはできない。

これらの要因の複合によって今日の事態が生じているというべきである。

<ジャパンユニオン組合ニュース編集部註>
〇本編は、「序章 第3節 日本の労働組合」からの抜粋です。
〇2021年の就業者数は6,650万人。正規の職員・従業員数は3565万人、非正規の職員・従業員数は2064万人。総務省の調査によると、役員を除く雇用者のうち正規雇用者の割合は63.3%、非正規雇用者の割合は36.7%となっており、約4割が非正規雇用者ということになる。
〇労働組合員数は1007万8千人、推定組織率は16.9%。(厚生労働省「労働組合基礎調査」2021.12.17)
〇ここでいう、単一(組織) 組合は全国一般東京東部労組で、その支部のジャパンユニオンが単位組合となります。
〇ジャパンユニオンは、東部労組の支部であり、全国組織としては全国一般労働組合全国協議会に属し、「ナショナルセンター」的には、全国労働組合連絡協議会(全労協)に属しています。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
労働組合法講座
西谷 敏『労働組合法』第3版に学ぶ
.第2回 「労働組合の組織形態」「労働組合と労働者利益代表」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

3 労働組合の組織形態

労働組合の組織形態、すなわち労働組合がどの範囲の労働者を組織対象とするかは、歴史的な変遷がみられるし、現在でも多様である。

(1) 職能組合 (craft union)
労働組合の最も古典的な形態で、同一職種 (機械工、建設工、印刷工、パン工など)の熟練工によって組織される。
初期の職能組合は、地域的もしくは全国的な熟練労働力の独占によって、賃金その他の 労働条件の引き上げをはかる点に特徴があった。
そこでは、具体的な労働条件について組合員間で協定を締結し、それを強い統制によって労働者に遵守させると同時に、その条件に同意しない使用者のもとでの労働を拒否 (多くの場合、退職)することが、労働条件引き上げの主たる手段であった。

(2) 産業別組合 (industrial union)
職種別組合が次第に統合され、職種のいかんを問わず、同一産業に属する労働者をすべて組織対象とするようになったのが産業別組合である。
今日の欧米における最も代表的な組織形態であるといってよい。

(3) 一般組合 (general union)
これは、職種・産業のいかんを問わず、 すべての労働者を組織対象とする。
19世紀末以来、イギリスにおいて非熟練労働者を組織するための組織形態として発展してきた。
日本では、零細企業に分散している労働者や、パートタイム労働者、派遣労働者、管理職など、企業別組合から事実上排除されている労働者を組織化するためにとられる形態である。

<ジャパンユニオン組合ニュース編集部註>
〇ジャパンユニオンも、東京東部労組も、既述「3 労働組合の組織形態」でいう「一般組合 (general union) 」であるが、それについては詳しく後で出てくるので、そこで学びたい。

(4) 企業別組合 (enterprise union、 company union)
これは、 事業所もしくは企業を単位として、 職種を問わず、そこに属する労働者を一括して組織する労働組合の形態である。
欧米における労働運動の歴史は、使用者が労働組合に対抗するために組織した企業別組織 会社組合、黄色組合) との闘争に彩られており、これらの国では今日企業別組合はほとんど見られないが、後に述べるように、日本では大部分の労働組合がこの形態をとっている。

4 労働組合と労働者利益代表

(1) 任意団体としての労働組合
労働組合は、労働者が自由意思で結成する任意団体である。
労働者の加入を法律などで強制する、ファシズムや社会主義の体制に見られる団体は、労働組合とはいえない。
もっとも、組合に加入しない労働者や組合から脱退した労働者の解雇を労働協約によって使用者に義務づけるクローズド・ショップ制度やユニオン・ショップ制度は、労働者に事実上組合加入を強いるものにすぎないので、こうした制度をもつ団体も労働組合であり、むしろ日本ではきわめて多い。

(2) 労働者利益代表としての労働組合
任意団体としての労働組合は、第 一次的には加入した組合員の利益を追求する。
しかし、労働組合の活動は、労働協約の適用または拡張適用、あるいは事実上の影響力によって、同一の職種、企業、産業の非組合員の労働条件にも大きな影響を及ぼさざるをえない。
こうして労働組合は、客観的には、多かれ少なかれ一定範囲における全労働者の利益代表という側面をもつことになる。
この労働者代表的側面は、一方では労働組合の社会的な存在意義を高めるが、他方では組合加入のメリットを低下させ、労働組合の組織基盤を掘り崩すおそれがある。
企業別に組織され、ユニオン・ショップ制度によって従業員の組合加入を強制する日本の労働組合は、このようなディレンマからは自由であるかにみえるが、とくに関連企業の労働者や同一企業の非正規労働者を組織対象としない場合に、労働者代表性が欠けているとの批判を受ける。

(3) 労働組合と従業員代表制度
従業員代表制度は、労働組合と同様に労働者の利益を集団的に代表するものであるが、通常は法律にもとづいて企業ないし事業所における全従業員の代表を選出させる制度であり、両者の間には原理的な相違がある。

第一に、労働組合は、労働者と使用者の利害の基本的対立を前提とした存在であり、争議行為をともなう団体交渉によってその対立を解決しようとする。
これに対して、従業員代表は、企業ないし事業所という使用者と共通の基盤のうえで労使の利害を調整することを任務とするものであり、通常は争議行為を主導することはできない。

第二に、労働組合が労働者の「加入」にもとづいて結成され、独自の規約と財政をもったひとつの社団的組織であるのに対して、従業員代表を選挙する従業員団は、ある企業や事業所の従業員であるという属性にもとづいて人為的にくくられた集団にすぎない。

そこで、労働組合と使用者との協定である労働協約が組合員を拘束する根拠が、最終的に労働者の加入意思に求められるのに対して、従業員代表が使用者との間で締結した協定が拘束力をもつ場合、その根拠はもっぱら法律の規定に求められる。

第三に労働組合の財政は、任意団体としての性格上、主として組合員の支払う組合費によってまかなわれるが、従業員代表の活動に必要な経費は通常は使用者が負担する。

ヨーロッパ諸国においては、産業別など超企業的に組織された労働組合と、企業・事業所レベルの従業員代表制という異なった性格をもつ機関が、労働者利益のより効果的な実現のために相互に補完する役割を果たしている。
これに対して、日本の企業別組合は、それ自体が従業員代表制度に近い性格をもっており、ヨーロッパのような意味で別個に従業員代表制度を必要とするわけではない。
しかし、日本でも、別個の観点から従業員代表機関の設置が提案されている。

<ジャパンユニオン組合ニュース編集部註>
〇労働者側に立つと思われる学者・弁護士でも、「従業員代表制度」について、無条件に支持・賛同する意見を見かけるが、本書での労働組合と従業員代表制度との違いについての分析・見解はよく吟味されるべきと思われる。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
労働組合法講座
西谷 敏『労働組合法』第3版に学ぶ
.第1回 「労働組合法の意義と労働組合の性格」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

今回から、西谷 敏『労働組合法』第3版(有斐閣2012/12)を使って、労働組合法講座を行います。
同書のなかから、ジャパンユニオン組合員にとって、知っておいた方がよいと思われるところをピックアップして、いっしょに学んでいきたいと思います。
ご期待ください。

西谷 敏『労働組合法』第3版は、10年前の出版ですが、労働組合法自体があまり変化がないこともあって、古びていず、いまでも労働者の側に立った最良の「労働組合法分野における体系書の決定版」、「労働組合法を中心に、その周辺法を含む広義の「労働組合法」を体系的にとらえた本格的教科書」と言われています。

そのせいか、『労働組合法』第3版は定価は4100円なのに、いまAmazonで17、980円の高値がついているほどです。

主な目次を紹介すると次の通りです。
序 章 「労働組合法」の意義
第1章 労働基本権
第2章 労働組合
第3章 不当労働行為
第4章 組合活動
第5章 団体交渉
第6章 労働協約
第7章 争議行為
第8章 労働紛争の調整

ではそろそろ本編に入っていきましょう。
講座第1回目の今回は、序章の第1節の「労働組合法」 の意義と第2節 労働組合の性格について述べています。
労働組合や労働組合法とはそもそもどういうものなのか、といういわゆる「そもそも論」ですが、ここは基本となるところなので、しっかりつかんでおきましょう。

まず、序章の第1節 で、「労働組合法」 の意義について、次のように解説しています。

―――――――――――――――――――――――――――――
本書の対象は、広義の「労働組合法」である。
それは、労働組合をめぐる法、すなわち労働組合の内部関係と対外関係 (とくに対使用者関係)の双方に係わる法領域である。
労働団体法、集団的労働法、労使関係法などと呼ばれることもあるが、すべてほぼ同義である。

狭義の労働組合法は、 1945(昭20)年に制定され1949 (昭24) 年に全面改正された法律を意味する(以下、労組法と略す)。
労組法は、広義の「労働組合法」 において重要な役割を果たすけれども、決してこの分野における唯一の法律ではない。
他に、労働関係調整法(労調法)、 特定独立行政法人等の労働関係に関する法律 (特独労法)、 地方公営企業等の労働関係に関する法律 (地公労法) が
あり、さらに国家公務員法(国公法)、 地方公務員法(地公法) の該当規定も、公務員の集団的労働関係に重要な役割を果たしている。
そして、何よりも憲法28条がこの領域の頂点に位置する最も重要な規範である。
その意味で、本書は、決して労組法の解説を試みるものではなく、広義の「労働組合法」について体系的に叙述しようとするものである。
―――――――――――――――――――――――――――――

ついで、「第2節 労働組合の性格」に進み、まず「1 労働組合の意義」についてつぎのように述べています。

―――――――――――――――――――――――――――――
労働組合とは、労働者が主として経済的目的を追求するために自主的に結成する団体である。
労働者の自主的な団体にも様々なものがあるが、労働組合は、その主たる目的・機能が労働者の労働条件の維持・改善など経済的地位の向上にある点に特徴がある。
また、労働組合は、こうした目的達成のために労働者自らが主体的に結成する団体であるという点で、市民や知識人を中心とする労働者支援団体と区別される。
要するに、労働組合は、「労働者による、労働者のための」 団体なのである。
―――――――――――――――――――――――――――――

ここでのポイントは、労働組合とは、「労働条件の維持・改善」をおもな目的とする、労働者自身による団体だ、というところにあります。

つぎは、「2 労働組合の目的機能」です。

―――――――――――――――――――――――――――――
(1) 経済的機能
労働組合の成立過程においては、その政治機能や相互扶助機能が前面に出ることもあったが、現在では、労働組合が主として経済的機能を担う団体である点について、国際的にも共通の理解がある。

経済的機能の中心は、賃金その他の労働条件の維持・改善や雇用の保障である。
資本主義経済において個々人としては使用者に対して弱い立場にたたざるをえないことを自覚した労働者が、団結して集団の力で労働条件の引き上げをはかるために、思想の相違を超えて結成したのが労働組合である。

そのための中心的な手段は、現在では団体交渉=労働協約であり、その過程におけるスト ライキなどの争議行為である。
そこでは、組合員あるいは一定範囲の労働者に共通する労働条件の統一的基準の確立が主要な関心事となる。
しかし、諸状況の変化のなかで、 労働組合の経済的機能は、2つの方向へ拡がりを見せる。

第一に、国家の経済的機能が肥大化するなかで、労働立法や雇用政策が賃金などの労働条件に直接的・間接的な影響力をもつようになり、さらに社会保障、税金、物価、住宅、
環境などの諸問題も、労働者の経済的地位を大きく左右する。
そうなると、労働組合としてもこうした国家政策、ひいては政治そのものに関心をもたざるをえなくなる。

第二に、いずれの国においても、労働者の多様化が進み、それに応じて労働条件の個人別決定の重要度が増している。
日本においても、1990年代以降の経営政策の転換のなかで、年俸制に代表される成果主義賃金の普及など、労働条件の個別化が顕著な傾向となっている。
こうした状況のなかで、労働組合の役割は、伝統的な統一的労働条件基準の設定から、次第に、労働条件を決定するための枠組みの設定と、個人別交渉への関与支援の方向にシフトしていく傾向を見せ、また、個々の労働者が職場で直面する人権侵害や個別人事上の紛
争の解決も、労働組合に期待される重要な機能となっている。

(2) 政治的、社会的、文化的機能
労働組合は、歴史的に組織の基本目的である経済的機能と並んで、多様な付随的目的を追求してきた。
労働者の経済的地位の向上と政治との不可分の関係が意識されるにつれて、労働組合が政治への関心を深めるのは当然のなりゆきであったし、労働組合は、労働者の平和や民主主義への関心を代表して、これらの課題にも取り組んできた。

もっとも、
労働組合の政治への関与が特定の政党との関係を通じてなされる場合、組合員の思想・信条の自由との軋轢を生み出し、また、労働者政党が分裂している場合には、労働組合の分裂をもたらすことにもなる。

文化・スポーツの分野も、組合員の要求を実現し、その教養を高め、さらに組合員の結束をはかるために、労働組合が重視して取り組んできたところである。
また、近年ではボランティア活動などの社会的諸活動に積極的に参加する労働組合も多い。 この場合、労働組合は NPO に近づくことになる。
―――――――――――――――――――――――――――――

以上で、労働組合法講座~西谷 敏『労働組合法』第3版に学ぶ~第1回は終わりです。
次回は、「労働組合の組織形態」と「労働組合と労働者利益代表」を扱います。
ご期待ください。



【LINEでのご相談も可能です】
上部団体(東京東部労働組合)の公式LINEからご相談できます。
こちらのQRコードから。

【組合費】組合費】月額組合費1,000円、入会金2,000円(初回のみ)、(月額組合費は、できるだけ年12,000円か、半年6,000円の一括払いでお願いします)
*詳細は「加入方法とその後の流れ」を参照してください。/加入申込書