学校の外から

京都市のタウンミーティング不正問題で京都市教委に申し入れ

2007年1月4日掲載

蒔田です。教育基本法が改悪され、悔しさは言葉になりませんが、今年それぞれの生活の場でそんな思いを飲み込んだ方もたくさんいらっしゃることと思います。
少しアタマを冷やして再出発を、と願っていましたが、すぐに課題をもらいました。やるべきことが向こうからやって来たので、「不断の努力」を怠り、たいせつなものを捨て去った者として、立ち向かいたいと思っています。
新聞やテレビで報道されましたが、26日、京都市のタウンミーティング不正問題で京都市教委に申し入れに行きました。
年末の押し詰まった時ですが、28日午後2時に答をもらいに市教委に行きます。申し入れの内容は最後に掲載しました。


国会で教育基本法が改悪される最後の場面で明るみに出たのは、昨年11月に京都市で行われた「文化力親子タウンミーティング」での不正でした。国会質疑で初めて不正抽選(しかも私と娘を排除するために)行われたことを知り、ほんとうに驚愕しました。意見の違う者を排除するために、不正を当然のこととして行い、私の個人情報や「関係ある人」を調べ上げ、虚偽の報告の上、他の50人の親子も一緒に抽選から外したこと。国会で問題にされなかったら、その事実すら知らなかったでしょう。でも本当に心から許せないのは、このタウンミーティングで動員されたのは全国でもここだけ、子どもたちだということです。

これらの行為は内閣府と、「共催」の京都市教委が主に行ったものです。タウンミーティングの調査室補佐との電話のやり取りで、不正抽選のターゲットは私であり、私と「関係ある人」の個人名もわかりました。すべて市教委からの報告によるそうです。市教委との間で、どんなやり取りが行われたのか知りたくて、調査官と電話で何度も話しましたが、「市教委とは別組織、一切わからない、知りたければ自分で市教委に行ったらどうですか?」というお答え。それなのに内閣のタウンミーティング室長が謝罪に来られるというので幕引き謝罪をお受けするのは辞退しました。事実を知りたくて市教委に何度電話しても居留守で、やっと出て来た総務課係長は「謝罪も経過報告もしない、責任者はいない」とはっきり言うので、たまりかねて25日に申し入れに行きました。
意に添わない者の排除を行うための個人情報の垂れ流し、虚偽の報告によって名誉を傷つけ、そして、この不正が明らかになった後に重ねられた市教委による愚弄は許すことができません。しかし25日も追い払うためだけに、「責任者」は現れず係長と若い職員だけで、廊下での対応でした。

あきれ果てたのは、責任者ではないという係長が、「その時の担当者の個人的な判断で行ったことであり、教育委員会として謝罪できない。これが教育委員会の公式見解だ」と、私たちにもテレビカメラに向かっても述べたことです。不正が起こると組織の中で自殺者が出るというのは、こういうことなのだと愕然としました。係長には「あなたもそんなふうに責任を取らされてしまうかもしれないのですよ」と目を見て何度も言いましたが、与えられた役割から降りられず、でも恐れているのはわかり、胸が痛くなりました。課長くらいになると、もっと平気になってしまうのでしょう。

市教委交渉は続けますが、年明けにも私たち親子ともう一人の「関係ある者」、そして抽選を外された何人かで国家賠償裁判を提訴します。もみ消されようとするタウンミーティング不正、こんなに汚い手段で改悪された教育基本法が泣いています。
田島征三さんが描いてくれた`教育基本法の改悪をとめようポスターには「子どもたちは見ている」とあります。
この原画は我が家にあって、毎日見つめ合っています。こんなふうに絵から力が与えられるという不思議な経験も初めてです。
この間、コトバが通じない市教委や内閣府の人々とやりとりして、混乱しながらさまざまなことを考えました。身辺を知らないうちに調べ上げられ、排除されていたこと、これは今の社会で誰にでも起こることでしょう。でも、降り掛かってくるまではやはり自分のことではなく、さまざまな不正にさらされた当事者のことがわかってはいなかった、と恥ずかしく思いました。
国会で大臣が謝っている内容でも、いやな相手と話すのはエネルギーを吸い取られます。東京で「処分」された教員たちが日々晒されている暴力はいかなるものか、と震え上がりました。全く知らないところでテレビで自分たちのことが事実と違う内容で流されたりすること、東京で放映されたテレビ番組での「親子」のことを聞いて、娘が侮辱されたと感じ、それが何より悔しく思いました。まともにバッシングを受ける苦しみはどんなものかと、やっと想像できるかもしれません。

来年早々に始めることになる裁判で、心配なのはたった一つだけ、面白くやれるかどうかということです。教育基本法の改悪をとめよう!の3年間の動きは、やはり楽しかったのです。改悪されても個人の力は削がれない、そんな実感があり、そんなふうにやっていけたらと思っています。今年の言葉は、11月に台湾から証言集会に来ていただいた日本軍性奴隷被害者の92歳のアマーが言われた「怒っては駄目、怒ると老けるから」。胸に留めておきたいと思います。(2006年12月末記)


京都市教育委員会 門川大作教育長様
2006年12月25日

「文化力親子タウンミーティング イン 京都」(2005年11月)に関する抗議及び質問状
蒔田 直子(「不正抽選」により応募を拒否された当事者)

教育基本法「改正」の国会審議の中で、内閣府が開催したタウンミーティングにおいて、「やらせ質問」や参加者の動員、さらに不明朗な会計処理などの事実が明らかになり、政府の調査委員会による調査が行われました。
12月13日に『調査報告書』が公表されましたが、その中で、昨年11月に京都市で開催された「文化力親子タウンミーティング イン 京都」(以下、「TMイン京都」)で特定の応募者を抽選段階で意図的に排除した事実が明らかになりました。この『TMイン京都』について「調査報告書」では、「作為的な抽選をしたことは、タウンミーティングの趣旨からして、決して認められるものではない。」(P51)と指摘し、さらにある委員(内閣府法令遵守対応室法令顧問)の「補足意見」では、「手続き的な不正の度合いが極めて高く、決して許容できない。」(P59)と厳しく批判しています。
この問題については、12月14日の参議院教育基本法改正特別委員会でも取り上げられました。山本大臣官房長は「決して認められません。きわめて遺憾であります。」と答え、さらに調査委員会委員長でもある林内閣府副大臣も、「私も、委員長として、また担当の副大臣として、このことが明らかになって愕然としました。」、「これはもう看過できないことです。」、「精査いたしまして、抽選にもれた方がどういう方であったのか分かる範囲で、ベストを尽くしてきちんと責任者からお詫びさせます。」と約束しています。
 この問題は、まさに「公平であるべき住民参加の機会を奪うもので、民主主義のルールに反する悪質な行為」(「京都新聞」社説 2006.12.15)であり、許せるものではありません。

私は、この「TMイン京都」に、高校生の娘と連名で参加を応募したのですが、「落選」とされたため参加できなかった当事者です。内閣府の調査委員会の方からも事情を聞かれ、内閣府タウンミーティング室長の谷口氏が直接謝罪したいと再三連絡をいただいています。しかし、詳しい経過等について何も明らかにしないまま「謝罪」というのは、事件の幕引きをはかろうとするものであり、今の時点では認められません。
ところが、一方の当事者である京都市教委は、この間、私が事実経過について確認したいと電話しても、その都度、「担当者がいない」 と不誠実な態度を取り続けました。12月21日に「責任者」として電話で対応された企画広報課の西田氏は「何も言うことはない」、「謝罪するつもりもない」とはっきり述べられました。
このような一連の市教委の対応は、国会で明らかになった不正に加え、更に居直りと被害者を愚弄する対応を重ねるもので、強く抗議します。 京都市教委が全ての事実経過を明らかにし、被害者に謝罪することを強く求めます。
 また、以下の点について、事実を明らかにしてください。

1.京都市教委から内閣府に、私に関連してどのような内容を伝えたのか、明らかにしてください。
『調査報告書』では、京都市教委は内閣府に、「他のイベントにおいて、会場内でプラカードを掲げ、指名されなくても大声を発するなどしたことがある者及びその者と関係がある者が応募している」(P51)と伝えたとされています。
ところが、12月14日の参議院教育基本法特別委員会において、山本大臣官房長は「他のイベントにおいて会場内でプラカードをあげたり、指名されなくても大声を発するなどしたため会場が騒然とし、警察まで動員して排除させたという内容の連絡があった。」と説明しました。
この点について内閣府に問い合わせたところ、調査委員会は、京都市教委から、「今回応募している蒔田直子が、(過去のイベントで)会場内でプラカードをあげ、大声を発したため、警察を動員して退場させたという連絡があった」と認めています。(12月19日 内閣府「タウンミーティング調査委員会」の「委員会補佐チーム」 加納克利氏)
  京都市教委は、まず、私に関してどのような内容を内閣府に伝えたのか明らかにしてください。
また、私に無断で、私の氏名やこのような内容を内閣府に伝えたことは、私の基本的人権というべきプライバシー権を侵害しています。見解をお示しください。

2.内閣府に伝えた内容について、いったいどのような事実があったのか、明らかにしてください。
 上記のように、内閣府の調査委員会のメンバーは、私が、「①会場内でプラカードをあげ、②大声を発したため、③警察を動員して退場させ」、と市教委から連絡があったと認めておられます。
 市教委は、この①②③の内容について、いったい、何時、どのような事実があったのか説明してください。特に、「警察を動員して退場させた」という内容は、全くの虚偽であり、そのような虚偽の報告が、全国が注視していた教育基本法審議の最後の参議院特別委員会で出され、私の名誉は著しく侵害されました。

3.「私と関係がある」としてさらにもう一人の応募者の名前を内閣府に連絡されたのは何故ですか?
また、調査委員会は、『調査報告書』の「その者と関係がある者」とは、「蒔田直子と関係がある人」ということを認めました。その応募者の方も、「私との関係」を理由に「作為的な抽選」により、参加を拒否されたのです。
しかし、調査委員会は、私に対して、「この方は、蒔田さんとどういうご関係の方でしょうか?」と聞いてきました。京都市教委は、ただ、「関係がある」と内閣府に伝えただけで、どういう関係なのか、何故、その方が会場に入ると「懸念」されるのか、全く伝えていないのです。また内閣府も、それらをいっさい確かめずに、その方の参加を拒否したのです。
京都市教委は、その応募者の方が、「私と関係がある」とした根拠を示してください。また、「関係がある」というような抽象的、主観的な理由で特定の人物の名前をあげたことは、私と、その方の人権を侵害するものではありませんか?

4.市教委が私が応募していることを知ったのは何故ですか?
 「TMイン京都」では、応募者からの参加申し込みは、東京の「タウンミーティング イン 京都 参加係」にするようになっていました。『調査報告書 資料編』によれば、この「TMイン京都」の参加者募集業務については、内閣府と契約を結んだ⑭朝日広告社が担当していたことが明らかになっています。(P74)
 京都市教委は、どのような経過で280名の応募者リストを見られたのでしょうか? 内閣府から京都市教委に応募者リストを送ってきて、不審なものがいないかどうかチェックを依頼してきたのでしょうか? あるいは、京都市教委から内閣府に対して応募者リストを送るよう依頼したのでしょうか? どちらのケースか明らかにしてください。

5.市教委として、私を含め、不正な抽選により参加できなかった人たちに謝罪されるのでしょうか?
先にも述べたように、今回の件について政府は謝罪を約束しているのに、共催者であり、しかも虚偽の事実まであげて特定の市民の名前を内閣府に報告し、不正抽選のきっかけを作った京都市教委はまだ、謝罪の姿勢をみせていません。
 京都市教育委員会は、私を含め、抽選から外された人たちに対して謝罪される予定があるのでしょうか? 責任者の処分とともに、誠実に謝罪されるよう要求します。

6.「発言依頼」「発言者の座席の事前の把握」「発言内容の事前の把握」などの詳細を明らかにしてください。また、市教委の「参加依頼」の実体を明らかにしてください。
「TMイン京都」では、私のように、応募したにもかかわらず、不正な抽選によって参加、意見表明の機会を奪われた人が大勢いる一方で、内閣府タウンミーティング室から京都市教委に対して発言者を準備するよう依頼があったことが明らかになっています。市教委は5人に依頼し、そのうち4名が実際に発言したとされています。これらの依頼された発言者の氏名は「事前に把握」され、その座席も「事前に把握」されていました。また、発言内容も「事前に把握」されており、実際に事前に把握されていたとおりの発言が行われたことも確認されています。(以上の事実は、「調査報告書 資料編」(P121、P135)) この、「発言内容の事前の把握」というのは、発言内容に踏み込んで市教委がアドバイス等をしたのではないかという疑念が拭えませんが、事実はどうでしょうか? 
さらに、不正な抽選により50組以上の応募者を排除しておきながら、京都市教委は、参加依頼をして参加者を「動員」しているのです。(上記「資料編」P133) いったい市教委は誰に「参加依頼」をしたのか明らかにしてください。また、応募要項によれば、参加申込をしたものだけが参加できるはずですが、参加申込もなしに市教委が「参加依頼」して動員するのは手続違反ではないでしょうか?
また、「TMイン京都」の映像記録によれば、当日は、12名が質問していますが、そのうち10名が小・中・高校生でした。これらの質問者は、全て公平な抽選を経て参加が認められた人たちでしょうか? 抽選によらない「別枠」の参加者があったのかどうか、明らかにしてください。

7.経費の使途の明細を明らかにしてください。
「TMイン京都」では、内閣府が支出しただけでも、14,105,105円という膨大な経費が使われました。この経費は2005年度に行われた23回のタウ ンミーティングの中で3番目に高額のものです。他のタウンミーティングではホテルや会館を利用したものが多いのですが、この「TMイン京都」では、市教委の施設を利用しています。また、144人しか参加者がなかったように、同年度でも下から2番目に小さい規模のタウンミーティングでした。
すでにハイヤー等の使用において「精算台数が実台数よりも多く適切ではない」という指摘もされています(『政府報告書 資料編』P178)が、経費の使途についてその内訳を明らかにして下さい。京都市教委も共催者として、こうした経費支出について説明責任があるはずです。


以上の質問に、12月28日までに文書回答されるとともに、私を含めた被害者に謝罪することを求めます。