CPR NEWS LETTER No.24 1999年10月8日発行
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6月26日、99年CPR総会・監獄人権セミナーを開催

拘禁二法案の国会上程に反対する。

9月10日の3名に対する死刑執行に抗議する。

99年総会・監獄人権セミナー開催

 さる6月26日、東京・お茶の水で、99年総会・監獄人権セミナーが行われた。総会では、98年の活動報告・会計報告、99年の活動方針案が提起された(13ページ)。続いて、監獄人権セミナー「日本の監獄・世界の監獄―Kさんの体験と、犯罪と刑罰をめぐる世界の動向」が開催された。冒頭、副代表の菊田幸一さんから、「CPRが発足してから5年になりますが、いま極めて重要な時期に来ています。みなさんの努力で各方面に大きなインパクトを与えて来ている。6月18日にも『週刊金曜日』(271)に大々的に監獄問題の特集が組まれました。国連の勧告等の影響もあるのでしょうが、実際の裁判にも影響を与えている。今日のような実利ある集会というのは今後も欠かせないと思います。『検証・プリズナーの世界』(明石書店)という元受刑者にインタビューした本に続いて、『受刑者の人権と法的地位』(日本評論社)を出版しました。こういった形で今後ともCPRの運動に協力していきたい」とあいさつを受け、「日本の監獄・世界の監獄」をテーマに世界の監獄のスライドを使って海渡雄一さんの講演が行われた(2ページ〜)。
 講演を受けて、インタビュー形式で「日本の監獄 Kさんの体験を聞く」が行われ、Kさんの生々しい刑務所体験をお聞きすることができた(6ページ〜)。Kさんは、91年2月、宮城刑務所に服役中、大雪でえさのないハトにえさをやるため残飯の豚肉一切れを居房の窓の外へ投げた件で、刑務所の懲罰委員会に「受刑者遵守事項違反」として、監獄法に基づき軽屏禁7日間・文書図画の閲読禁止の懲罰を受け、国家賠償請求訴訟を起こしていた(ニュース第20、22号参照)。一審の仙台地裁は98年10月、「行為に対して均衡を欠く懲罰で違法」と一部勝訴判決を下し、双方が控訴していた。8月31日、仙台高裁(小林啓二裁判長)は、「原告の行為は衛生上の問題が生じるだけでなく、結果的に刑務所にハトを呼び寄せ、防犯装置が誤作動するなどの影響を与えるおそれがあり、懲罰の内容も、原告が以前刑務所内で起こした暴行行為を含めて判断したもので適切」として一審判決を破棄し、「刑務所側の判断に誤りはなかった」と国側の主張を認める判決を言い渡した。被拘禁者の人権救済に司法がまったくの無知無関心であることを示した愚挙であり、強く抗議したい。

法務省が「自自公」で拘禁二法の成立を図る?!

 法務省、日弁連、国会等の情報を総合すると、法務省は過去3回いずれも廃案になった拘禁二法案(刑事施設法案・留置施設法案)を次期国会に提出することを準備しているらしい。法案は作成当初から人権侵害と批判されていたばかりか、作成からすでに20年近く経過しており、今となっては「時代錯誤」とすら言えるが、法務省によれば「矯正の分野において二十世紀中に実現しなかった最大の課題あるいは夢は監獄法の全面改正」(『刑政』平成11年8月号)という。法案の問題点について、あらためて海渡雄一さんが解説します。(下の記事参照)

拘禁二法案の再提出にどう立ち向かうか 海渡 雄一

9月10日の死刑執行に強く抗議する。

 法務省は9月10日午前、死刑囚3名の死刑執行を発表した。死刑執行は昨年11月、名古屋、広島両拘置所で行われて以来、小渕政権下では2回目。法務省は前回に続いて執行の事実と人数だけを公表したが、氏名などの情報は伏せた。執行されたのは福岡拘置所のMさん(69才)、東京拘置所のSさん(62才)、仙台拘置支所のTさん(61才)。3人はいずれも別の事件で無期懲役となり、仮釈放中の事件で死刑判決を受けていた。法務省は9月7日に金嬉老さんを仮釈放(無期懲役で21年間服役)する一方、今後とも仮釈放を厳しく制限していくことを政治的に意思表示するため、この3人を執行したのではないかとの情報もある。福岡地裁には彼らを含む計4人の人身保護請求が申し立てられていたが、同地裁は7日に請求棄却決定を出していた。申立人側は最高裁への特別抗告を準備中であり、人身保護請求に対する判断が確定していない段階で行われた今回の執行は明らかに裁判を受ける権利の侵害である(その後、申立人は13日に特別抗告)。陣内孝雄法相は9月14日の閣議後記者会見で、「法の秩序を守って社会正義を実現する観点から適正な手続を進めた」と述べた。超党派の「死刑廃止を推進する議員連盟」から、一定期間執行を停止して死刑制度の是非をめぐる国民的議論をするよう求められたことについて、「社会の法秩序を守っていくという大きな使命があるという考え方は今まで通りだ」として、現段階では執行を停止する意向のないことを明らかにした。
 CPRは、死刑執行に強く抗議し、一日も早く国連規約人権委員会の勧告に基づいて、死刑廃止、死刑執行停止と死刑確定者処遇の抜本的改善を行うよう求める。

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