激動するタイの政局、政局の行方は?

バンコク滞在のTMさんからのレポート(続)

 

 今年9月にバンコックからデモ隊による首相官邸占拠など揺れるタイ政局を報告(ホームページ掲載 http://www.jca.apc.org/apwsljp/)してくれたTMさんが、再びタイを訪れ、昨日から現地報告を再開してくれた。APWSL日本の会員MLとホームページに掲載します。このレポートについて質問や意見などこのMLに投稿ください。TMさんからお答えいただけると思います。
               2008/12/9     高幣真公

 第5報(12/8〜9)

民主党を中心とした連立内閣樹立のため、臨時会議を要求

 <第1信> 12月8日(月) 

 Tさま
  昨日、再びバンコクへやって来ました。今回は、2週 間滞在する予定です。PADが占拠を解いたスワンナブー ム国際空港は、5日より定期便の運行を再開。しかし到着した空港ロビーはやはり閑散としていました。市内の生活は、とくに変りはないようです。但し、外国 人が少なく、観光客が激減していることが判ります。昨夜、早速にPさん(タイAPWSL)へ電話連絡、今回は工場見 学に連れて行ってもらい、こちらの工場労働者とも交 流を持つ予定です。

 さて、タイの現在の政治情勢について、今朝8日月曜日の英字新聞(バンコクポスト紙)の1面より要約し て紹介します。

バンコクポスト紙12/8

 民主党書記局長、ステープ氏によると、民主党は、今日、民主党を中心とした連立内閣を新たに樹立するため、臨時会議の開催を要求する嘆願書をチャイ・チットチョプ下院議長に提出する見込みである。民主党党首のアビシット・ウェチャチワ氏が次の首相候補として挙っている。アビシット氏を含む民主党メンバーは、バンハーン・シルパ−アーチャ氏の率いる新党 チャート・タイ・パッタナ党(解党命令を承けて、新たに結党された。但し、バンハーン氏は5年間の公職 追放処分を受けている)の協力を要請するため、今日、氏を公式に訪問する予定。
  民主党を中心とするグ ループは、下院の過半数を超える257〜263議席 を確保する見通しである。一方、憲法裁判所により解党を命じられたPPPの残党は、失職を免れた後継議員の受け皿となる新党プエ・タイ党を立ち上げたが、同党は政権の継続を主張しつつも確保できそうな議席は200をやや下回る見通し。旧与党系のグループは、首相候補にプラチャ・プロムノーク氏を挙げているが、 氏は首相候補としての擁立を拒否している。プエ・タ イ党の党首には、ヨンユート・ウィチャイディット氏 が選ばれた。政権がどちらに渡るかを占う鍵となるのは、旧与党系のネウィン派の動向である。同派の議員のうち、26人がプエ・タイ党への入党を拒み民主党との連立に応じており、また11人が態度を保留している。なお下院議長のチャイ氏はネウィン・チット チョプ氏の父親である。

 1面トップには、政権への意欲を語る民主党党首アビシット氏がインタビューに応じている写真が大きく載っています。以上のように、タイの政治情勢は、依然どうなるかわからない状況です。旧与党系グループからタクシン派の首相が選ばれるようなことがあれば、PDAの反政府活動が再燃することでしょう。先週、タクシン元首相の元妻が、突然帰国しましたが、これはネウィン派を抱き込む政権工作のためと見られてい ます。昨日は、風邪で静養中の国王が欠席のまま、国王の81歳の誕生日パーティーが賓客2,800人を招いて開かれ、夜、全てのテレビ局がこれを中継していました。

 それでは、また状況に変化があり次第、リポートしま す。日本に帰ると多忙でいけません。こちらにいたほうが何かとゆっくり仕事をすることができます。ではまた・・・
       (TM)


 <第2信> 12月9日(火)

   「3日以内に臨時会議が招集される」、下院議長が語る

 Tさま
  今朝の新聞からです。プエ・タイ党が、政局の流れを変えようと必死の巻き返しをはかっている。ネウィン派の離反した議員37 名を奪回するために危機対策会議を開き、議員たちを呼び戻すための説得工作に200万バーツを使う用意 があることにも言及。一方、民主党は、党首アビシッ ト氏の首相候補擁立を支持する議員数を260にまで広げながらも、昨日提出された臨時会議招集の嘆願書 に署名した議員は240名と、現状では過半数を下回っている。下院議長のチャイ氏は、3日以内に臨時会議が招集されると語った。
  民主党のアビシット氏と その支持者たちは、昨日、バーン・シルパ−アーチャ 氏の自宅を訪問し、ネウィン派議員数名が所属する新党チャート・タイ・パッタナ党の支持を要請した後、さらに新党タイ・ラーク・タイ党の党首ソムサク/アノンワン・テープスティン氏夫妻を訪問して支持を要請。こうした状況について、プラチャラート党を率いるサノー・ティエントン氏は、党派を超えた挙国一致内閣を樹立して国難に立ち向かう必要があると語った。なお、プラチャート党は、現在のところ民主党を支持していないが、近いうちに支持に回る可能性がある。
  タークシンの元妻クンユイン・ポチャマン・ダマポン 女史(離婚し、旧姓に戻っている)は、ネウィン・ チットチョプ氏と接触することに失敗した。タークシン氏自身が国外から電話で接触を試みたが、結局、「すべては終わった」という拒絶の答えが返ってきたという。

 国王の風邪は治ったみたいで、新聞によれば投薬も止めて健康は快復したとのことですが、執務に戻るまでにはまだもう少しの時間が必要のようです。

 取り急ぎ   <TM)

 <終わり>


注 

PAD : Peoples Alliance for Democracy(黄色いシャツ、8月以来、首相府を占拠。11月末からスワンナブーム国際 空港を約1週間にわたり占拠。)

UDD : United Front of Democracy Against Dictatorship(赤いシャ ツ、タークシン派、現政権を支持し、PADの活動をテロ リズムであると糾弾する。)

PPP : People's Power Party(タークシン派の政権政党、憲法 裁判所の命令により他の与党とともに解党後、プワ・ タイ党が党員の受け皿となる。)

 


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