激動するタイの政局、民衆蜂起なのか? (第3報)

バンコク滞在のTMさんからのレポート

 第3報(9/11)

PADの運動は国家福祉と社会保障を目指すものではない

 

ついにパラットさん(APWSLタイ委員会)たちと会う


  T、Hさま、

 昨日(10日)、ついにパラットさん(APWSL調整委員・タイ委員会)たちと会いまし た。正午より2時間程、ヴィクトリー・モニュメント近くのレストランでランチミーティングを持つことができました。APWSLタイ委員会のメンバー、パラットさん、スリパイさん、プラウィットさん、ジェプさん、パイリンさんの5名と私(望月)の計6名。以下、議論した内容の報告です。

パラットさんとスリパイさん

パラットさん(APWSL調整委員・手前)とスリパイさん(元調整委員・正面)

1)タイの政治状況をめぐってAPWSLタイ委員会の立場

 APWSLタイ委員会は、PAD(民主市民連合)に対しては独立の立場を取っている。首相府の占拠を含むその運動からは一線を画している。しかし、個人の参加を妨げるものではない。
  PADの運動は戦略として問題がある。その運動は国家福祉と社会保障を目指しているものではないように思われる。APWSLタイ委員会としては運動が労働者の福祉と安全を目指すものでなければ賛同できない。また、労組のストライキを支持することもできない。ストライキは貧困層の利益には当面結びつかないからである。もちろんサマック首相の辞任を求めることには賛成である。
  今回の動きはこれまでになく民衆の政治意識を覚醒するものである点では、肯定的に評価することができる。機会を利用することが重要である。しかし、もし総選挙が行なわれれば、再びサマック派(国民の力党・PPP)が勝利するであろう。たしかにバンコクではPADは一定程度の支持を得ており、 民衆的基盤もあると考えられるが、北部、東北部(イ サーン)では、PPPの支持者数はPADのそれを上回っている。他方、南部ではテロリスト集団とその周辺組織が PPPに敵対しているが、彼らはPADを支持しているわけではない。タイの国民的統合は実際むずかしい問題である。

APWSLタイの若いメンバー

APWSLタイの若いメンバー

3人

筆者とパラットさん・スリパイさん

 

2)APWSL総会の開催について
 

 問題は常に資金である。総会のコーディネータを引き受けることについてはやぶさかではない。パラットさんの希望としては、早い時期に総会を開いて責任者の役割を誰かに交代してもらいたい。次期の責任者は日本委員会から出すのがいいだろう。総会に向けて の段取りはインターネットを駆使して行なうことができると思う。

 議論の概略は以上です。

 パラットさんのお父さんの病状はバイパス手術は成功し、現在は安定した状態を保っているそうです。しかし、今度はお母さんの具合が悪くなり入院しており、看病しているとのこと。というわけで、病院通いが忙しいと話していました。

 以下に当日の写真を添付します。

 TM

ヴィクトリーモニュメントの風景

ミーティングを持ったレストランが近くに位置するヴィクトリーモニュメントの風景


<続報 9/12>

 T様

 タイの政局については、タイ在住の識者(日本人の大学教員)にも意見をたずねたところ、はじめは政党レベルでのPADの反政府 運動であったものが、UDD(民主戦線)との衝突(死者1名)を経て、次第 に民衆レベルでの対立にまで深化してきている。民衆の政治意識 も、そうして高まってきている。PADの政策に関しては、「サ マック首相の辞任を要求しているのみであり、その後の政策的展望がない。サマック首相の非常事態宣言発令は遅きに失した。出すなら首相府が占拠された時点(8月26日)で出すべきであった」という意見でした。

 パラットさんたちとのミーティングの際に6月中旬から始まった無料バス/無料列車(市内を走るエアコン無しの公営バスの半数ぐらいと国鉄の3等車の一部をタダにした)のことが話題にのぼりましたが、これはやはりサマック首相の場当たり的なポピュリズム政策の典型で、一方においてそれらのバスや列車を無料にしておきながら、他方ではその他のバスや列車の運賃を値上げしている。結局、無料となった分を負担しているのは市民ではないか。そんな子供だましのようなトリックを見抜けず、喜んでいる支持者も馬鹿だ、との意見(パラットさん談)でした。

 ともあれ、タイは面白い国です。週末に再度Makkhawanを取材します。

 TM


  <第3報 終わり>

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