4 自然環境に与える影響

 海上ヘリポートの設置・運用が生前環境に与える影響については、現地調査の結果を踏まえて検討したところ、以下に述べる結果を得ており、自然環境への影響は最小限に止まるものと考えている。

 今後の工法・設置場所の決定に係る検討に際しては、この影響を一層局限化し、自然環境を最大限保全し得るよう努めることとする。

 (l)サンゴに与える影響

 ア キャンプ・シュワプ沖水域におけるサンゴの分布状況は、前述(1.1(l)参照)のとおりである。

 イ A地点はリーフ内に位置しており、サンゴの分布はほとんど碓認されていないため、ここに海上ヘリポートを建設する場合(杭式撰橋方式)、影響ははとんどないものと考えられる。

 仮に海上ヘリポートの建設場所にサンゴが確認された場合には、鋼管杭の海底部にコンクリート製の着生基盤を取り付けること等により、海上ヘリポート周辺部においてサンゴの増殖・再生を図る。

 ウ B地点はリーフ外辺野古崎南順1水域に位置しており、サンゴが分布していることが確認されているため、ここに海上へリポートを建設する場合(ポンツーン方式)、防波堤の設置部分や海上ヘリポートの直下部のサンゴの生息に影響を与えると考えられるが、その影響を極力小さくするとの観点から、サンゴ被度50%以上の範囲を選けて建設するとともに、防波堤に着生促進のための措置を施し、サンゴの増殖・再生を図る。

 なお、その後のサンゴの状況について、モニタリングを行うこととする。

(2)藻場に与える影響

 ア キャンブ・シュワブ沖水域における藻場の分布状況は、前述(1.1(2)参照)のとおりである。

 イ A地点はリーフ内に位置しており、藻場の形成が確認されているため、ここに海上ヘリポートを建設する場合(杭式桟橋方式)、藻場への影響を極力小さくするとの観点から、できる限り藻場を避けて建設するとともに、海上ヘリポートにかかる一部の藻場については、可能な限り藻を他の適当な海域へ移植する。

 なお、その後の藻場の状況について、モニタリングを行うこととする。

 ウ B地点はリーフ外に位置しているため、周辺には藻場が存在しない。

 また、この場合、海上ヘリポートの建設によっても、水質やリーフ外からリーフ内への潮流の変化はほとんど生じないため、藻場への影響はほとんどないものと考えられる。

(3)潮流に与える影響

 現地において実施した潮流調査結果を基に、海上ヘリポートを設置した場合の潮流への影響をシミュレーションによって解析したところ、杭式桟橋・ポンツーンのいずれの方式を採用した場合においでも、潮流への影響は小さいとの結果が得られた。

(4)溶存酸素量に与える影響

 溶存酸素量の滅少は海中の生態系に影響を与えることとなるところ、杭式浅橋・ポンツーンのいずれの方式を採用した場合においても、潮流の変化はほとんどなく、閉鎖水域(ある水域が閉鎖され、他の水域との水の交換がなくなる状態)や流れのよどみ(ある水域について流れがなくなる状態)も発生しないこと等から、海上ヘリポート施設の設置によって、その周辺の溶存酸素量が大きく滅少することはないものと考えられる。

(5)プランクトンに与える影響

 抗式浅橋・ポンツーンのいずれの方式を採用した場合においても、海上ヘリポートの直下部には無光環境が生じるため、局所的には植物プランクトンの光合成が阻害されることとなる。

 しがしながら、海上ヘリポートの設置によっても潮流の変化はほとんどなく、閉鎖水域や流れのよどみも発生しないため、海水の循環により施設の直下部においてもプランクトンの流出入が生じることとなる。このため、結果的には、周辺海城における水中のプランクトン(植物プランクトンを含む)の量には大きな変化が生じることはないものと考えられる。

(6)海洋汚染の可能性

 海上へリポートからの生活排水や航空機の洗浄水については、「水質汚濁防止法」に則し、汚水処理施設によって適切な処理を行ったうえで排水することとしている。また、万が一の事故等の際にも漏油が海上に拡散することがないよう、前述(2(2)参照)のとおり十分な対策を講じることとしている。

 したがって、海上ヘリポートからの各種排水により海水の富栄養化による海洋汚染が発生し、大浦川や慶佐次川の河口に所在し幼稚魚等の生息場所となっているマングロープ林に影響を生じることはないものと考えられる。

(7)新たな潮害発生の可能牲

 以下に述べる理由により、海上ヘリポートの建設によって、新たに潮害が発生することはないものと考えられる。

 ア A地点に海上ヘリポートを建設する場合(杭式桟橋方式)

 1 リーフ内に設置するため、波高が小さいこと

 2 施設を支える鋼管杭の問隔が15mと非常に広く、また、流れの抵抗が小さい円柱となっているため、波しぷきはほとんと発生しないこと

 3 台風時に発生した波しぶきは、上部にあるプラットフォームにより飛散が防止されること

 イ B地点に海上ヘリポートを建設する場合(ポンツーン方式)

 新たに防波堤を設置することにより、暴風時には波しぶきが発生することがある。しがしながら、その場合でも、砕波が現在リーフで発生するのに比べ、更に1km以上沖合の防波堤で発生することになり、陸地から砕波の発生地点が遠のくこと


出典:『海上へリポート基本案について』
   (平成9年11月)普天間飛行場移設対策本部


『海上へリポート基本案について』 目次


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