要   請


 昨年の痛々しい少女暴行事件以来、沖縄県民の軍事基地に反対する運動の火は大きく燃え広がり、その持続した戦いは益々勢いを増し、日米安保体制の根幹をも揺るがすほどに発展しています。

 それに対して、日本政府は、沖縄の燃えさかる火を消すために「沖縄に基地の負担を強いたことへの反省」「基地の整理縮小にとり組む」「基地負担に見合う財政的支援」等をとなえています。その意図は、基地の整理縮小をとなえながら、内実は、日米安保の適切な運用と基地機能を低下させないでの基地維持・基地の固定化にほかなりません。それは基地の県内移設(基地ころがし)として出されてきています。

 これらの状況の中で、九月八日に歴史的に壮大な実験としての「県民投票」が実施されました。それは常に外圧に翻弄され虐げられてきた沖縄県民が、自らの意思で自らの将来を決するという歴史的事業でありました。種々の悪条件の中で、投票率約六○パーセント、基地に「ノー」と答えた県民が約九○パーセントとの結果は、五一年間も軍事基地と日本政府の沖縄蔑視の差別政策に苦しめられてきたことへの率直な回答でありました。それは日本政府の差別政策に敢然と立ちはだかり、沖縄県民の人間としての尊厳の回復と平和的生存権を要求し、軍事基地の撤去を求め、米軍用地の強制使用に反対して「代理署名」「公告縦覧の代行」を拒否して斗っている大田県知事への熱烈な支持表明でもありました。日・米両政府は平静を装いつつもその結果に驚愕し沖縄県民の斗いの火を消すために奔走しています。

 このような中で九月一○日の橋本・大田会談がもたれました。沖縄県民は、県民投票が示された後だけに何らかの解決策があるものと期待をしていました。しかしマスコミを通して流れている内容は、一番根幹である基地問題については、従来の線を一歩も越えるものはなく、県民の怒りを増幅させています。五○億円の沖縄振興策での特別調整費を計上し、沖縄県民の「基地の整理・縮小」を金に換算して本質をそらし、「政争の具にしてはならない」と言いつつ、最大の政争の具にしている日本政府 橋本内閣には、沖縄県民の人権を回復するとの政治的責任はみじんも感じられず、その手段の卑劣さに怒り心頭に発します。

 私たち沖縄県民が県民投票で求めたものは、基地の整理・縮小がテーマであり、振興策ではありません。知事の言うように基地の撤去なくして振興計画も策定できません。そのために基地の整理・縮小が見える形で示されなければ「代理署名」はあり得ない、とする知事の確固たる姿勢に共鳴し、今日のような基地問題への運動の盛り上がりも生まれています。また、国民的にも知事の姿勢に共感し、沖縄への支援と安保条約の見直しへの運動もたかまっています。

 私たちは今日、政府が種々の手段を用いて沖縄への懐柔策を強めていることを察知しています。また反動マスコミが運動の分断を画策していることも知っています。そして、そのねらいは米軍基地の沖縄への押しつけの継続であり、固定化にほかなりません。政府はそして財政的援助を拡大することによって、反基地の世論を押さえ込むことができると目論でいます。

 私たちは、自分の土地が戦争のために使用されることを拒否して、あらゆる差別と妨害をはねかえしながら一貫して斗ってきました。

 そして今回大田県知事が、私たちの土地の強制使用に反対して立ち上がったことに心から感謝し、歓迎いたしました。

 私たちは、大田知事が私たちの人権を踏みにじる強制使用に反対して、「公告縦覧」を拒否し続けることを強く要求します。

 「判決」を司法に求めたように、「歴史の審判にたえうる若者が二一世紀の希望のもてる沖縄の創造」に向け、断固「公告縦覧」拒否を今後も堅持していただくよう強く要望いたします。私たちも知事の「代理署名」拒否の確固たる姿勢を支持し、沖縄県民の勝利の実現に向け、大衆運動の強化に努力します。

 沖縄の軍事基地の縮小が明確にされてない中、マスコミが報道しているこれまでの方針を変更することは絶対に許されないことと考えます。

 以上の通り、要請します。

    一九九六年九月一二日

               権利と財産を守る軍用地主会
               一 坪 反 戦 地 主 会

 沖 縄 県 知 事
  大 田 昌 秀 殿


声明・決議等][沖縄・一坪反戦地主会 関東ブロック