1998/10/20奈良地裁五条支部で勝訴  

ニュースより


NHKニュース速報

 奈良奈良県西吉野村にある産業廃棄物の処分場で、住民が業者に大量に山積みされた廃棄物の撤去を求めた裁判で、奈良地方裁判所五條支部はきょう、「住民の生活環境に支障を生じている」として撤去を命じる判決を言い渡しました。
 県が許可した処分場で廃棄物の撤去を命じる判決が出されたのは全国でも異例のことです。
 この裁判は、奈良県西吉野村にある産業廃棄物の処分場で、業者が住民との協定で取り決めた高さより二十メートルも高く廃棄物を山積みにしたとして、村の住民八十人が業者に廃棄物の撤去を求めていたものです。
 きょうの判決で、奈良地方裁判所五條支部の田川和幸裁判官は「山積みされた廃棄物は崩壊の危険があるうえ、飲み水や農業用水を汚染して住民の健康や農産物に被害を及ぼすおそれがある」として、業者に対し協定で取り決めた道路の高さを超えている廃棄物を撤去するよう命じました。
 また判決は、廃棄物を山積みしたのは県の許可条件にも違反しているとし「県は撤去命令を出すことができたが至っていない」と指摘しました。
 きょうの判決について住民側は「長年村が団結して頑張ってきたかいがあった」と話し、住民側の弁護団は「業者と住民の協定には、撤去までは明記していないのに撤去が認められたのは全国の産廃問題への波及効果が大きい」と話しています。
 これに対し業者は「判決には納得できず撤去するつもりはない」と話しています。
 今回のように県が許可した処分場で廃棄物の撤去を命じる判決が出されたのは全国でも極めて珍しいということです。


朝日新聞ニュース速報

 建築廃材などの産業廃棄物が約五十メートルの高さにまで野積みされ、「産廃富士」と呼ばれている奈良県西吉野村の産廃処理場をめぐり、住民と処理業者が結んだ公害防止協定で認められていない分の廃棄物の撤去を求めて住民らが起こした民事訴訟の判決が二十日午前、奈良地裁五条支部であった。田川和幸裁判官は「県の許可基準にも公害防止協定にも違反しており、生活環境に影響が生じている」として、処理会社側に撤去を命じた。
 撤去を求めていたのは、「美しい水と活気あふれる農業を守る会」の西尾真守代表ら地元住民約八十人。
 判決によると、一九八九年、産廃処理会社「西吉野開発」(吉田雅亮社長)が、同村北部の夜中地区と奥谷地区にまたがる谷に産廃の投棄を始めたため、住民らは同社と公害防止協定を結んだ。同社は谷をコンクリートのえん堤でせき止め、処分場をつくった。協定によると、産廃は谷底から約三十メートルの高さにある村道までしか積み上げないとし、建築廃材や廃プラスチックなど、いわゆる「安定五品目」だけを捨ててよいことになった。
 しかし、西吉野開発は協定を無視し、村道からさらに約二十メートルの高さにまで産廃を山積みした。産廃が近隣の土地へ崩落する危険があるうえ、生ごみなどの一般廃棄物も捨てられており、悪臭
が発生し、飲料水が汚染される恐れも出た。
 西吉野開発側は、産廃は隣につくる予定の第二次処分場が完成するまで仮に置いたもので、新しい処分場ができれば移し替えると主張。第二次処分場の建設についての約束を破ったとして、村などを相手取り、七千万円の損害賠償を求めて訴えたため、住民らが今回の訴訟を起こした。田川裁判官はこの日、西吉野開発の訴えを棄却した。


共同通信ニュース速報

 奈良県西吉野村の産業廃棄物処分場で、違法に山積みされた廃棄物により、農作物が被害を受けたとして、住民ら約八十人が、処分場を経営する吉田雅亮・西吉野開発社長らを相手に廃棄物の一部撤
去を求めた訴訟の判決が二十日、奈良地裁五条支部であり、田川和幸裁判官は「山のように積み上げた廃棄物は崩壊の危険があり、放置すれば水質汚染でカキなどの農産物に被害が出る恐れがある」な
どとして、業者に廃棄物の一部撤去を命じた。         
 判決によると、同社は一九九○年、廃プラスチックやゴムくずなどの廃棄物埋め立てで、県知事から産廃処理業の許可を受けた。 その際、地元の奥谷区などと廃棄物を適正に処分するための公害
防止協定を結んだが、協定で決められた高さを約二十メートル以上超えて廃棄物をピラミッド状に積み上げていた。        
 産廃処分場の周囲に梅やカキの果樹園を所有する住民らは、九五年十一月に廃棄物の搬入差し止めなどを求めて奈良地裁葛城支部に仮処分を申請、九六年一月、同支部は仮処分を認める決定を出した。  
 住民側は公害紛争処理法に基づき、県と同社に撤去などを求める公害調停を申請していたが合意に達しなかったため、九七年十一月提訴していた。                       


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