東京平和運動センター25-2

TKOPEACENEWS 　　2面　NO.25／02.2.21発行

狭山異議審申立棄却決定糾弾！緊急抗議集会1,000人
　2002年１月25日　全国都市会館

怒り・・・怒り・・・怒り・・・

狭山事件の棄却決定を糾弾する東京集会500人
　2002年２月６日　千代田公会堂

　１月23日、東京高等裁判所第５刑事部・高橋省吾裁判長は、「狭山事件」について再審開始を求める石川一雄さんの訴えを退ける棄却決定をだしました。この決定は、事実調べを全く行わず、科学的に石川さんの無実を証明した斉藤指紋鑑定は推測にすぎないとして採用せず、石川さんからも話も聞かず、東京高等検察庁が隠し持つ証拠の開示を命令すらせず、まったく不当な決定を強行しました。
　中央本部が主催した緊急抗議集会や狭山東京実行委員会が主催した集会においても、参加者から怒りの声が集中したところです。なぜ裁判長は石川さんや弁護団が指摘している。
　・あらゆる証拠から石川さんの指紋が出ていないではないか
　・脅迫上や封筒に書かれた文字は石川さんの筆跡とは違う
　・石川さんは文字が当時は書けなかった
　・脅迫状の漢字や文章は高度の学歴が無いものには書けない
　・２度の家宅捜査で発見できなかった、万年筆がなぜ３度目に突然出てきたのか
　・石川さんが履けない小さな地下足袋でなぜ10キロも歩けるのか
　・別件逮捕して自白を強要しているではないか
　・犯行現場で農作業をしていた人は被害者の悲鳴は聞いていないではないかなどなど200を越える石川さんの無罪を証明する証拠を提出しているのにもかかわらず、「推測」で棄却されたのでは全く不当であり、裁判の公正すら守られていないと厳しく高橋裁判長を糾弾しています。
　弁護団は、この裁判の特徴として
　１．39年間一度も事実調べをやらなかった。
　２．被害者がいつ殺害されたのか不明である。鑑識結果からして不明だらけだ。
　３．100万人の署名や法律の専門家80人、国際人権規約委員会などが求める「証拠の開示」をしないのは異常である。弁護団は、事実調べをして負けたのではない。全証拠が開示されて負けたのではない。狭山事件は勝てる展望はある。狭山事件は無罪を証明する証拠は山ほどある。として最高裁判所に特別抗告を行った。闘いの場は最高裁判所に移りました。司法の反動、政治の反動など厳しい環境であるが勝利まで頑張りたいと思います。

▲「本当に口惜しくてならない」身の潔白が明らかになるまで闘い抜くと石川一雄さん　１月25日記者会見にて

【狭山東京実行委員会・本郷議長あいさつ】
　大変ご苦労様です。狭山東京実行委員会議長の本郷です。
ただいま司会者からも話がありましたが、去る１月23日に狭山事件の異議申立に対して東京高等裁判所は不法・不当にもこれを棄却いたしました。
　私たちは、99年７月８日の狭山第２次再審請求棄却を不当とし、異議審闘争を闘ってきました。そしてこの間、石川さんの努力や弁護団をはじめとする多くの方達の奮闘によって、新たな証拠を科学技術の進歩とまあいまって提出してきましたが、東京高裁はこうした証拠を一切無視し、また東京高検がもつ証拠開示をも行わず、東京高
裁高橋裁判長は異議申立を棄却しました。
　もともと狭山事件は、被差別部落への偏見と差別が根底に流れる権力犯罪であった訳ですが、今回の棄却は、高橋裁判長自身がそうした偏見と差別を踏襲したものと言わざるを得ません。
　私たちは、21世紀を人権が尊重され、差別と貧困を無くす世紀として迎えたわけですが現実は逆の方向に向かっています。日の丸・君が代の法制化、首相の靖国神社参拝、テロ特措法、自衛隊の海外派兵や自衛隊法の改正、有事法制の動向などなど、政治の反動化とともに国民の人権が大きく害なわれる動向が進んでいます。今回の棄却は、こうした動向とは無縁なもとでの決定であるとは、到底言いきれません。
　本日の集会は、不当な棄却決定に激しく抗議すると共に、石川さんと弁護団はすでに最高裁に特別抗告を行っていますので、引き続き石川さんの無実を勝ち取るまで闘い抜く決意を固め、合わせて政治・司法の反動化と闘う集会としていきたいと思います。
　集会成功のため皆さんのご奮闘をお願いし、実行委員会を代表してのご挨拶とさせていただきます。

写真製作中▲主催者を代表して本郷議長のあいさつ

【狭山事件の棄却決定を糾弾する東京集会基調】
１．不当な棄却決定糾弾、真実が認めらるまで闘う
　2002年１月23日、東京高等裁判所刑事第５部（高橋省吾裁判長）は、狭山事件の異議申立に対して不当な「棄却決定」を出しました。
　この間、狭山弁護団は決定的な意味をもつ「斉藤指紋鑑定」などの新たな証拠を提出し、99年の高木棄却決定や原判決の誤りを立証して来ました。また、東京高等検察庁に対して不当な証拠隠しをやめるよう強く要請してきました。
　しかし、高橋裁判長は、これらの弁護団の活動を一切無視し、十分に証拠調べも、検察に対する証拠開示命令も行うことなく、棄却決定を強行したのです。
　このような不当な決定はありません。私たちは高橋決定を断固糾弾するとともに、真実が認めらるまで徹底的に闘う事を宣言します。

２．棄却決定は独断と推論に満ちている
　今回の棄却決定の最大の問題は、なにより十分な証拠調べも行うことなく、ただ「高木決定に誤りはない」と繰り返していることです。
　狭山弁護団はこの異議審で、３次にわたって提出した「斉藤指紋鑑定」など、科学的で客観的な新証拠を多数提出しました。斉藤鑑定は①「自白」通りに脅迫状を作成した場合、脅迫状や封筒に石川さんの指紋が付着するはずであるのに、実物から石川さんの指紋が全く検出されていない。②脅迫状封筒の「あて名」が、石川さんが「犯行前に入手不可能」だったはずの万年筆もしくはペンによって書かれている。③脅迫状封筒などから「消された文字」が発見されたが「自白」には全くそんなことは出てこない、ということを科学的に立証しました。脅迫状については、おもに筆跡の面から、これまでも石川さんが書いたものではない事実が立証されてきましたが、今回の斉藤鑑定によって、石川さんと脅迫状のつながりが客観的に断たれたのです。ところが高橋裁判長、「（斉藤鑑定は）独断」「一つの推測にすぎない」として、高木決定に何の文言を加えることもなく棄却したのです。
　斉藤さんの鑑定は客観的かつ科学的な分析結果であり、これが推測にすぎないとするならば、日本の刑事裁判における検察側の鑑定はすべて推測にすぎなくなります。高橋裁判長の判断は独断と推論に満ちたものと言わなくてはなりません。

３．検察庁の証拠隠しを追認
　東京検察庁は、事件発生から39年目となった今も、狭山事件の多くの証拠を裁判所に提出せずに隠し持っています。
　これらの証拠には、（1）確定判決が「犯行現場」と認定している雑木林の血痕反応検査報告書、（2）真犯人が現れた畑から収集された足跡の写真、（3）証拠全体のリストなど開示されていないこと自体に驚かざるをえない重要証拠が多数含まれます。日本の検察が狭山事件について取っているこの不当な態度については、国際人権規約委員会も
問題にし、正式な改善勧告を行っていますが、依然検察庁は「証拠の開示はできない」と主張しています。
　異議審において弁護団は、「裁判所の職権でこれらの証拠の開示・命令してほしい」と申し入れしていました。しかし、高橋裁判長は、証拠に関して一切沈黙し、その申出を無視しました。そして検察の証拠隠しを追認したのです。
「全ての証拠を法廷に」は、刑事裁判の基本原則です。公正な裁判を保障するために最低限守れなければならないことです。ところが狭山事件ではこの原則が守られていません。そして検察ばかりか裁判所までがその事を「容認」しています。こんな不当な裁判があるでしょうか。こんな法の不正義が許されてよいのでしょうか。

４．闘いの舞台は最高裁に、真実を主張し不正義を糾そう
　１月29日、石川さんと狭山弁護団は、棄却決定に抗議し最高裁に特別抗告を行いました。闘いの舞台は最高裁に移りました。
　特別抗告というのは、刑事訴訟法が規定する法的手続きです。刑訴法第405条および第433条によれば、高裁の決定に対して不服があるときは（1）憲法違反、（2）最高裁判例違反、を理由として最高裁に抗告できると定められています。今回石川さんと弁護団はこの規定に則って最高裁に特別抗告を行ったわけです。
　特別抗告審は、再審申立に対する最初の審理や異議審と違って、今回の「高橋決定」が憲法や最高裁判例に違反しているかどうかが争点となります。したがってかなり厳しい闘いになることが考えられます。弁護団は、最高裁であくまで事実調べを強く求めて闘っていく方針です。
　私たちも、最高裁が事実審理に踏み込むことを求めて全力で闘います。また同時に、最高裁がたとえいかなる決定を出したとしても、この特別抗告の闘いを第３次再審申立にむけた取組としても位置づけ、これまで以上に粘り強い闘いを作ります。
　まともに証拠を調べようともせずに棄却決定を出し続けている裁判所の不当性、無実の証拠を隠している検察の不当性を広く訴えましょう。国際社会が非難を強めているとおり、狭山事件の捜査や裁判はきわめて不公正な物です。こんなことは決して許されてはならないことです。
　私たちは、棄却決定をうけた悔しさと怒りをバネに、一人でも多くの人に狭山の真相を知ってもらう取組を進めます。「真実は必ず勝利する。法の不正義に対して、何年かかろうと我々はからなずうち勝つ」を合い言葉に、石川さんとともに全力で闘います。

▲社民党を代表して決意を表明する福島幹事長

石川一雄さんの談話
　ただ今裁判所より棄却という知らせを聞き、前回同様に強い憤りを感じています。
　私、石川一雄としては斉藤・柳田鑑定や足跡鑑定などの新証拠、科学的な鑑定によって、高橋裁判長の勇気ある判断を期待しておりましたが、再び再審が棄却されて、法の正義とは力によるものか、と心の中で自問自答しながらも、最高裁に再度自分の真実を貫き通すため上訴しょうと思います。
　真実は一つであり、私はあくまでも自分の信念を貫き、そして身の潔白が明らかになるまで闘い抜くつもりでおります。
2002年１月24日
石　川　一　雄

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