TKOPEACENEWS
  2面 NO.20/01.9.7発行

被爆56周年原水禁世界大会国際会議

・2001年8月1日〜2日
・東京四谷 プラザ・エフB2会議室

▲折り鶴7万羽で子ども顔のモニュメント完成
▲長崎県の高校生による「高校生一万人署名活動」の訴え


 核兵器廃絶問題
 米国・ブッシュ政権の核戦略と世界の核の状況について報告と問題提起をおこなったブルース・G・ブレアさんは、1970年代に戦略空軍のミサイル発射担当員だった経験に基づいて、米国の核・ミサイル防衛計画について次のような提唱をしています。

 @米国のミサイル防衛は、米国の攻撃的戦力と合わせてみた場合に、ロシアや中国の核抑止戦力を向日にする可能性をしめすものではあってはならない。ミサイル防衛がこれら両国にもたらす新たな脅威は、攻撃的戦略戦力の削減によって十分に相殺されなければならない。
 Aすべての国の核戦力を高度の警戒態勢からはずし、その発射に必要な時間を現在の数分の単位から、数日、数週間、数か月あるいはもっと長いものにすべきである。これによって、核保有国は、センサーからの警報が出次第迅速かつ大量にミサイルを発射するという戦術を放棄することになる。警戒態勢解除は、誤認による、あるいは許可されていない発射のリスクを低減することに大きく貢献する。それはまた、核廃絶の道をさらに進む事を意味する。
 B核兵器の役割とミッションは、核攻撃を抑止することに厳密に限定されなければならない。米国は、先制不使用政策を採用し、地下壕を破壊するために設計された新しい低威力の核兵器を開発・実験すべきだとする提案を拒否しなければならない。
 C米ロは、すべての戦術(短距離)核兵器を廃棄すべきであり、中期的な核兵器の総量の上限を1,000発とすることに合意すべきである。
 D核保有国は、その核兵器とミサイル防衛についての透明性を大幅に高め、お互いの攻撃的・防衛的運用をモニターすることによって、核兵器の廃絶についての信頼できる検証態勢のための基礎作業を進めるべきである。
 ●ブルース・G・ブレアさんのプロフィール
 CDI(防衛情報センター)ブルッキングズ研究所で外交政策研究プログラムの上級研究員を13年勤めた後2000年3月にCDIという元軍人の多い軍縮NGOIに入った。ディアラーティングなど、核戦力およびコマンドコントロールシステムを専門とするアメリカおよび旧ソ連の安全保証政策のエキスパート。

 ヨーロッパ、オランダで核兵器廃絶について活動しているキャレル・コステルさんは次のように問題提起をしています。

 現時点での最優先事項
 多くの国の多様な立場の反核運動間で緊密な協力関係を築くこと。NGOと中堅国家の議会間の優先的なコンタクトが必要である。そのためには、我々は、シンプルなメカニズムを形成する必要がある。具体的には、中堅国家において何が起こっているか(または起こっていないか)に関する情報、NGOの間の定期的なコンタクトである。会議は有益であるが、再重要ではない。様々な国ごとの濃くない政策とその国が抱える困難への配慮は絶対的に不可欠である。単一の行動モデルを課すことは出来ない。それは機能しないからである。なかんずく、政治過程の特性が理解されなければならない。外交官や政府首脳との対話、あるいはそういった人物との文書による通信が、政府の政策を変えることはない。このことが多くの反核活動家が犯している過ちなのである。
 ●キャレル・コステルさんのプロフィール
 NPT会議の成果をオランダなどヨーロッパでどう生かすかなどに取り組む。1951年生れ、ユトレヒト大学卒業(社会学)。アパルトハイト反対運動やエコロジー運動の経験をもつ。96年から欧州核作業委員会のコーディネイター。

 核問題について米ロの状況に詳しい、パブェル・ボドビィッヒさんは、ミサイル防衛について次のように問題提起をされました。

 政治的課題として、ミサイル防衛システムの配備によって米国が戦略的に有利な立場に立つかもしれない。中国がミサイル戦力を拡大してミサイルと弾頭の数の面でロシアを追い越すかもしれない。ということをロシアは懸念している。ロシアの対応としては、米ロは、攻撃用兵器と防衛用兵器について協議を始めることに合意している。これによってABM条約の修正と攻撃用兵器の削減が実現出来るだろう。中国の対応は、中国はいかなるミサイル防衛にも反対している。戦略・非戦略ともに。したがって中国はその戦略核戦力の近代化を開始するかもしれないが、大だい的な増強はしないだろう。
 ミサイル防衛については
 @国際的な安全保障の枠組みの構築の障害となる。ミサイル防衛は、攻撃的核兵器の削減のような国際安全保障の本当の問題に対処することから関心と資金の両方を奪ってしまう。
 A安全保障の幻想である。どのようなミサイル防衛システムにせよ、決意をもった敵は、それを無効にする手段を見いだすことができる。弾道ミサイルは、唯一の運搬手段ではない。
  ミサイル防衛にたよると、無責任な政策を招くかもしれない。
 Bミサイル防衛は、資金がかかり、技術的に実行不能−有効な対抗措置を講じるのは、弾道ミサイル自体と比べ特に複雑ではない。防衛システムを無効にする措置は、防衛システムよりずっと安上がり。
 ●パブェル・ボドビィッヒさんのプロフィール
 物理・技術モスクワ研究所の軍備管理研究センター(現在プリンストン大学)

 アメリカのNMD・TMDミサイルと日本の協力:中国の視点として、夏 立平さんはつぎのように問題提起をされました。

 現在、アメリカは全土ミサイル防衛(NMD)と戦域ミサイル防衛(TMD)を含むミサイル防衛を進めています。NMDは世界で最も問題となる安全保障問題のひとつです。同時に日本政府はTMDに関する研究においてアメリカと協力をおこなっており、そのことは、中国を含む近隣諸国に、TMDが台湾防衛のために使用される可能性があるということから、懸念を引き起こしています。もしNMDの問題が適切に対処されない場合、それは世界の不安要素のひとつとなり、核兵器のコントロールに対する障害にもなりうるものです。
 小泉政権は、台湾の前指導者である李登輝氏の日本入国にピザを発行したり、歴史教科書を改訂し、侵略の内実を否定したりしているため、中国は日本の将来の方向性に強い懸念を有しています。TMDに関する日米協力は中国の人々の懸念を非常に強めたとして、その理由を以下のとおり明らかにしました。
 @TMDに関する日米の共同研究はアメリカのNMDの計画に対して技術的・資金的支援をもたらすことになる。一旦それが北東アジアに配備されると、北東アジア地域はアメリカのNMDシステムの最前線となる。
 A日米軍事同盟が有する攻撃・防御能力を、冷戦中のそれよりも高い段階へと引き上げることになる。
 B日本が軍国主義の道へと回帰する足掛かりになる可能性がある。軍事費用の水準、軍備、技術的能力からみて、日本はすでに事実上の軍事大国である。TMDの協力により、中国を含む多くのアジア諸国に警戒心を抱かせている。
 C朝鮮半島の緊張を増大させることになる。
 ●夏 立平さんのプロフィール
 上海国際戦略研究所教授・事務局長。上海国際研究所米国研究部門、上海環太平洋戦略・国際研究所副責任者。専門はアジア太平洋安全保障と軍備管理、中国人民解放軍参謀本部において軍事将校、現在は予備役の大佐。

 国際会議においては、このほかフランスの核実験反対運動を続けているロラン・オルダムさん、アメリカピースアクションで核軍縮活動を監視するトレーシー・モベロさんら総勢16人がそれぞれの専門分野での活動報告や問題提起をおこなった。詳しい内容については別途報告集を見ていただきたいと思います。

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