TKOPEACENEWS
  1面 NO.20/01.9.7発行

核のない笑顔の世紀に!被爆56周年原水爆禁止世界大会の報告

子ども平和のパフォーマンス「核のない平和な21世紀に!
メッセージfromヒロシマ」世界から日本から1500人結集!

ー被爆56周年原水爆禁止世界大会の報告ー

平和資料館前から折り鶴平和行進に出発
子ども平和のパフォーマンスに参加したアメリカ子ども代表

 被爆56周年原水爆禁止世界大会は、核のない平和な21世紀に! をメインスローガンに広島大会4,000人、長崎大会3,000人が結集し、特別企画として21世紀の主役となる世界の子どもたちに核兵器の廃絶の願いを託そうと原水禁などの呼びかけで1,500人が広島県立体育館にあつまり、折り鶴7万羽で子どもの顔のモニュメント(縦5メートル、横6メートル)を仕上げたり、21世紀を戦争も核兵器もない世紀にしようとメッセージを国連や首相官邸に電子メールを送信するなど、大人も子ども平和への誓いを新たにするとともに、「核と人類は共存できない」ことを確認し、内外の反核・平和運動、環境運動と連携を深めいっそう運動を発展させることを誓い成功裡のもと終了しました。
 なお、東京からは広島大会23団体、労働組合から302名、子ども代表団45名。長崎大会70人が参加しました。


▲折り鶴7万羽で子ども顔のモニュメント完成

〈被爆56周年世界大会をめぐる情勢〉
(1)
国際的反核・非核の流れは、1996年に出された「国際司法裁判所の勧告的意見」、1999年に開催された「ハーグ平和アピール」、そして、2000年の「核不拡散条約(NPT)再検討会議」、さらには、2001年1月の「北東アジア非核地帯化会議準備会」の立ち上げなど、着実に成果を上げています。
  特に、2000年のNPT再検討会議においては、ニュージーランドや南アフリカをはじめとする新アジェンダ連合などの努力と、それをささえた私たちも含むNGOとの連携により、「究極的核兵器廃絶」から「核兵器廃絶への明確な約束」をさせるという大きな成果をあげました。

(2)原子力発電の問題についても、世界の潮流は脱原発へと確実に進んでいます。特にヨーロッパにおいては、ドイツが2030年までに、原発を全廃するという政府と電力会社の合意を成立させましたし、スウェーデンも脱原発を選択するなど、風力や太陽光、バイオマスなどの自然エネルギーへの転換が、多くの国の努力によって急速に進んでいます。
  私たちは、こうした世界の潮流に学び、「北東アジアの非核地帯化」の実現や「在外被爆者問題」「原発輸出問題」などの課題をアジア地域においても積極的に進めることが求められていますし、そうした活動の条件も整いつつあると考えます。

(3)今日、地球上には、約3万発の核兵器が存在し、うち実戦配備されているものだけでも19,000発にのぼり、それらがアメリカ、ロシア、中国、フランス、イギリスの5大国に集中し、それにインド、パキスタン、イスラエルなどが潜在的保有国とされています。

(4)クリントン政権に代わって登場した米国・ブッシュ政権は、国際政治の場で唯一絶対の力を獲得しようという米国の世界戦略を露骨にふりかざしてきています。
  それは、世界最強の核軍事力を背景に、一層の核戦略強化(絶対化)をはかろうとするものであり、現在彼らが進めているミサイル防衛構想(NMD、TMD)が、弾道弾迎撃ミサイル制限条約(ABM)を破棄し、新たな核軍拡競争への引き金となることも確実です。
  こうしたミサイル防衛構想が、米国の中国や朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)に対する孤立化政策と一体のものであり、その背景に米国軍需産業の生き残りをかけた強い要求があることにも留意する必要があります。
  さらに、第2次戦略兵器削減条約(START)の停滞や、包括的核実験禁止条約(CTBT)の批准についても、米国の批准が、条約発効の足かせになっていることも重要です。

(5)ブッシュ政権は、気候変動枠組み条約締約国会議の京都議定書の否定や原発推進政策を打ち出すなど、世界の平和への流れに逆行していることは明らかです。

(6)このような米国の動きに対する日本政府の対応が、世界的にも注目され期待されていますが、小泉政権は、アメリカの核戦略の一翼を担う戦域防衛ミサイル(TMD)への協力の姿勢を鮮明にしたばかりか、相変わらず原発推進路線も堅持するなど、世界の流れから孤立しているといわざるを得ません。加えて、憲法改正問題、有事法制問題、さらには教科書問題、靖国公式参拝問題など、国内はもとよりアジア各国との緊張を高める反動的な動きを強めています。

(7)日本には現在、52基の原発が稼働していますが、国の原子力政策は、2015年までにさらに20基もの新規立地や増設、プルサーマル計画の力による推進、高速増殖炉もんじゅの再開、山口県上関などの新規立地を国内の世論を無視して推進しようとしています。

(8)私たちは、このような情勢の中にあっても、反核・非核、そして平和を求める国際・国内世論の高まりに確信と展望をもつことができると考えます。それは、2000年のNPT再検討会議を始め、多くの国際会議や活動におけるNGOの理念と世界的連携のもとに展開される機敏な行動が、国際機関を通じて世界の国々をも動かし得るまでに発展し、信頼と参加と影響力を着実に伸ばしているということです。
  また、国内においても、プルサーマル計画を凍結させるに至った福井、福島、新潟における運動の積み重ね、とりわけ、刈羽村のプルサーマル計画の是非を問う住民投票の画期的勝利によって、計画を当面断念するところまでに追い詰めた反核・非核の力強い世論に依拠して前進していこうと言うことです。
  このような成果は、私たちの原水禁運動が積み上げてきた理念と活動によって、地域に着実に定着し国内世論を押し上げてきたことの証明であると確信します。


〈運動の基調〉
1.核廃絶にむけての課題

 ブッシュ政権が進めているミサイル防衛構想に反対する活動は、当面の重要課題です。ミサイル防衛構想の危険な本質を、世界のあらゆるNGOや平和勢力を結集して明らかにし、中止させる運動を積極的に作り出していくことや、日本が進めようとしているTMDの共同研究についても、中止させる運動を強化していくことが重要です。
 そして、2000年のNPT再検討会議で合意された「核廃絶への明確な約束」の具体的な実行、アメリカをはじめとするCTBT未批准国に対する早期批准の要請や、いまだに続いている未臨界核実験の中止、全ての核保有国が参加する核軍縮交渉や米ロの核兵器を減らすための二国間あるいは多国間協定に基づく検証体制の確立、カットオフ条約の即時交渉開始、核保有国に対する核の先制不使用宣言を求める取り組みなどを国際的連携のもとに強めます。
 さらに、今年1月に開催された、北東アジアの非核地帯化のための日韓合同会議の取り組みも、北東アジアの緊張緩和と日朝国交正常化を展望する際の重要課題です。準備会の立ち上げを機に、近隣諸国のNGOとの信頼関係を醸成し、周辺国の参加を進めることが大切です。
 その際、日本が米国と共同研究しているTMD開発問題、そして、米国の核の傘の下に入っている問題の重要性についても認識し活動を強めることが必要です。
 また、台湾への原発輸出については、国内における新規立地が困難となってきた中で、金儲けのために何でもやってのけるというものであり断じて許すことはできません。まして、50年にわたり植民地支配をおこない戦争責任も果たしていないことも踏まえて反対運動を強化することとします。
 国内的にも職場、地域から運動を盛り上げ、被爆国である日本が、核兵器廃絶に向けて、世界的にリーダーシップを発揮するよう強く日本政府に求めていきます。
 特に、HOYAの、米国が進めている核兵器研究・開発施設である国立点火施設への特殊ガラス納入を中止させる取組みは、被爆国である日本の企業のあり方が鋭く問われている問題です。また、同時にCTBTを批准している日本の義務違反をとわれることになりかねません。
 このような事態になった以上、日本の企業や各種機関が、いかなる核兵器の研究や開発にも協力しないという原則の確立が求められています。
 こうした視点に立って、HOYAのNIFに対するレーザー光線増幅用ガラスの納入を阻止するために、政府とHOYAに向けた署名活動や要請行動を全国的に進めることとします。

2.原子力政策の転換にむけた課題
 脱原発・原子力サイクル政策の転換を求め、積み重ねてきた原水禁運動、そして福井、福島、新潟県などの先進的な取り組み、そして、刈羽村の住民投票に対する活動に学び、引き続きプルサーマル計画の転換、そして、動き始めたもんじゅの運転再開に反対する取り組み、さらに、溜まり続けている核廃棄物の処理問題の取り組みが極めて重要です。これらの運動を強化し、原子力サイクル路線の転換を求める運動と一体のものとして取り組むことが重要です。特に、この間のプルサーマル反対闘争において作り上げた各県間の連携した行動の成果を全国的につなぎ合わせ発展させることです。また、600人を越す被爆者を生み出したJCO臨界事故を風化させない取組みや、第二、第三の被爆死者をつくらない運動の構築と原子力安全行政に、市民的立場からの積極的関与や改革の提言などをおこなって行くことが重要です。
 そのためにも、JCO臨界事故総合評価会議の成果を継承し、引き続き被爆者との連携を強めていくこととします。
 脱原発に向けた政策転換については、ヨーロッパの脱原発の活動に学び、自然エネルギーを活用した地域エネルギー開発の具体的な取り組みを進めることが必要です。
 風力、太陽、バイオマスなど、地域の特性に合ったエネルギーの開発を、地域おこしなどと結合して、具体的な取り組みを進めることとします。
 また、そのための指針づくりと、自然エネルギーへの政策転換の研究・提言などをまとめるプロジェクトの設置をいそぐこととします。
 さらに、日本、米国、EU、ロシアが共同で進めてきた国際熱核融合実験炉(ITER)について、原子力委員会が6月5日に「日本に実験炉を誘致する意義は大きい」とする考えを示したことにより、日本での誘致合戦が始まっています。しかし、経済性や安全性の面から疑問視されているなかで、原子力委員会の示した基準についても信頼性が問われています。さらに、調査活動を徹底しながら反対闘争を強化することとします。

3.ヒバクシャ運動の課題
 私たち原水禁は、世界のヒバクシャとの連携を重要な課題と位置付け、原水禁世界大会や国際会議を積み重ねてきました。また、二度にわたる「核被害者世界大会」の成功が世界のヒバクシャとの連帯と信頼関係を築き、共同行動を発展させてきたと思います。
 そのことが、世界各国で行ってきたヒロシマ、ナガサキの原爆被爆展や被爆証言などを通じて、二度とヒバクシャをつくらせないという理念と行動をあらゆる反核・非核の運動に注ぎ込むために多くの貢献をしてきたと確信します。
 また、被爆者の証言と被爆者の援護を基礎とした活動が、原水禁運動を発展させ現状に到達させたことを重視し、引き続き被爆者援護法の充実や被爆証言などの活動を重視します。
 あらゆるヒバクシャとの連帯こそが非核社会を構想する力となります。チェルノブイリ、JCO臨界事故など核の民生利用から発生するヒバクシャと連帯していくことが21世紀の重要な課題です。
 現在日本国内には、291,824人(2001年3月現在)の被爆者手帳保持者が存在していますが、今年もまた新たに1,000人近い人達が、「被爆者健康手帳」を取得するなど、今なお原爆の爪跡は残され続けています。被爆者の平均年齢は、70歳を超え高齢化と病弱化が進んでいます。
 こうした状況は、被爆者の援護と貴重な被爆体験の継承が一段と急務になっていることを、私たちに示しているといえます。
 私たちが求めてきた国家補償の精神に基づく被爆者援護法の改正要求や、在外被爆者の援護法の適用については、21世紀に持ち越されています。現行の被爆者援護法では、社会補償法として規定され「国家補償的配慮(最高裁判決)のある社会保障」とされており、国家補償法にはなっていません。引き続き国家補償を求めて活動の強化が必要です。
 また、在外被爆者に対する援護法の全面適用については、今年の6月1日に、大阪地裁の判決が「援護法が国内居住者にのみ適用される」としてきた旧厚生省公衆衛生局長通達(1974年)を明確に否定しました。この判決は、まさに画期的であり政府と大阪府に控訴を断念するよう求めてきました。
 しかし、6月15日に政府と大阪府が、これを不服として控訴しました。裁判の長期化をゆるさず、高齢化する在外被爆者に対する援護を求めて、海外被爆者との連携活動を重視し取組みます。
 被爆二世・三世の課題も21世紀に積み残されています。
 現行の援護法からは適用除外されている被爆二世・三世は全国に50万人もいると言われていますが、現在は何らの補償も受けていません。被爆二世を被爆者と認めさせ被爆者援護法を適用させることが急務です。
 そのため、全国被爆二世団体連絡協議会との連携を強める活動の前進をはかります。
 20世紀において、被爆者が中心となって進められてきた「被爆証言」などの活動を21世紀に継承することも私たちの重要な責務です。原水禁国民会議の理念と思い、そして、こだわりとを被爆実相の継承としてビデオ「君たちはゲンバクを見たか」を作成しました。全国の自治体数にあたる3,000カ所での上映運動を展開するとともに、若い世代に運動を継承するため学校や図書館、そして公民館や地域の子ども会などへ「ビデオを送る運動」を全地域で展開することをお願いします。
 また、全国の被爆者の証言や戦争被害などを収録し戦争展などの活動を各地域で展開していきましょう。ビデオやテープ、文章などさまざまな形で後世に伝えていく継承運動を地域から起こしましょう。

〈まとめ ー 核のない平和な21世紀に!〉
 私たちは、原水禁運動を発展させ核も戦争もない社会を実現するために、粘り強い活動を進めてきました。それは、あらゆる国のあらゆる核を廃絶することでありましたし、脱原発の社会を達成することでありました。
 しかし、実現にはいたらず21世紀に持ち越されてしまいました。
 21世紀を迎えた今日、核も戦争もない平和な社会、自然と共生する持続可能な社会を未来の子どもたちに残していくことをもう一度みんなで強く決意しようではありませんか。
 私たちが昨年の世界大会から高く掲げてきた運動課題と原水禁運動が確立してきた「核と人類は共存し得ない」という理念を基に、国際的にも国内的にも運動を強め21世紀の展望を切り開こうではありませんか。
 幸いなことに、21世紀の幕開けの今年、若い世代が取り組む「核のない平和な21世紀に!メッセージfromヒロシマ」が開催されます。若い世代への運動と被爆実相の継承が若い世代の主体的活動によって、いま力強くそして着実に進められようとしています。
 また、ビデオ「君たちはゲンバクを見たか」による全国的な継承活動も準備されました。そして、運動の国際化についても着実に前進しています。
 平和を求める世界の潮流は間違いなく大きな流れになっています。
 私たちが主張しこだわり続けてきた理念が、思いが今世界の大きな流れになってきていると思います。
 スローガンに掲げた「核のない平和な21世紀に」の実現に向かって共に走り出そうではありませんか。

 ヒロシマの心を、ナガサキの心を、
   そして私たちの心を世界に向かって
              発信しましょう!

▲長崎県の高校生による「高校生一万人署名活動」の訴え

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