所高生の自由と教育を考える委員会だより

発行者:所高生の自由と教育を考える委員会

発行日:2000年1月26日(水)

所高生の自由と教育を考える委員会だより
                    所沢高校PTA
2000.1.26           所高生の自由と教育を考える委員会発行

学習会『“学校づくり”についてみんなで考えてみませんか』報告  昨年12月18日(土)、長野県立辰野高校の宮下与兵衛先生に、生徒、父母参加 の「学校づくり」の取り組みについてお話をお聞きしました。当日は保護者、生徒、 教職員、一般の方を含め、33名の参加がありました。宮下先生のお話から、活気に 満ちた辰野高校の様子がいきいきと伝わってきました。概要をご報告いたします。 ■日本の教育の現状は・・・  生徒・父母が学校運営に参加している学校は、所沢高校、千葉県の小金高校、東葛 飾高校、それに、高知県で橋本知事が全県的に始めた例があるが、全国的に少数であ った。それらの学校はみな進学校であり、もともと生徒会活動もPTA活動も活発な 学校である。特別な学校だからできるという受け止めだったのではないだろうか。辰 野高校は普通の学校で、どんな学校でも生徒や父母が学校運営に参加できるのだとい うことを知ってほしい。  昨年ニュージーランドに学校評議会について話を聞きに行った。ニュージーランド では学校評議会で生徒と親が学校運営について決めることができ、それは最終決定権 を持っている。その時、ホームステイ先の方から日本の中学生は社会的関心が非常に 低いと言われた。これは日本の教育に対する鋭い批判だと思った。1970年頃の学 生運動が盛んな時、フランスでは子どもたちの政治、教育への参加を認めた。これは、 将来のフランス共和制を支えていくのは子どもたちであり、学校教育の場でその主権 者を育てる教育をする必要があるとの考えに基づくものである。日本では政府が、6 9年に「通達」を出し、子どもたちの自治活動を禁止し、高校生のいろいろな集会が つぶされていった。また、社研部、新聞部なども一部の進学校を除いてはなくなって いった。ヨーロッパと日本の学校は全く違う方向に行くことになった。  文部省はユネスコで決めた文書を一回も現場の教員へおろさない。ユネスコは20 年前に子どもたちを「学校運営に参加させること」「社会活動に参加させること」 「授業づくりに参加させること」を言っている。国連子どもの権利委員会は、「日本 の教育の極度の競争が子どもたちの人格形成にゆがみを与えている」という勧告を日 本政府に出している。  長野県では小中高校生の意識調査を定期的にやっているが、2年前特徴的な結果が 出た。「生まれてこないほうがよかった」という自己否定感を持つ者が21%と高い 割合を示したが、同時に「社会に対して関心がある、社会のために何かしたい」と答 えた者が45%と、初めて高い値を示した。ひとりの子どもの中に両面あるのだとい うことを理解しなければ、子どもたちに対する接し方を間違えてしまうのではないだ ろうか。 ■辰高フオーラムについて  先進資本主義国の中ではアメリカと日本が生徒・父母の学校参加という点で最も遅 れている。文部省も「開かれた学校づくり」をいよいよやらなければならなくなって きて打ち出したのが「学校評議員制度」。学校評議会とは内容が全く違う。生徒の参 加はなく、父母の参加についてもはっきり言っていない。学校評議員は校長の諮問機 関として校長の意向を受けて学校に対して提言するというものである。  辰野高校の地域の方を呼んでの教育懇談会は当初、文部省が打ち出したものと同じ ようなものだった。始まって3年目に転任してきたが、出る意見は批判ばかりだった。 そこで、生徒会役員を参加させるようにし、主催を学校とPTAと同窓会にして生徒、 父母が多く参加できるようにした。子どもたちをよく見てくれている町の人が参加し た。午後の授業を2時間一般に公開し、その後懇談会をおこなった。一方的な生徒批 判、学校批判が変わってきてそこで教育論議ができるようになった。子どもがいるこ とで大人たちも変わってくる。このような制度をつくり、「辰高フォーラム」として 毎年開催している。 ■学校憲法宣言から三者協議会へ  憲法50周年の年に「学校憲法宣言」をあげようと職員会で決めた。学校憲法宣言 委員会には15人の教員の立候補があり、辰野高校の教育を憲法、教育基本法の立場 から見直していくことを決めた。7月の文化祭で生徒会に憲法50周年をテーマにし てやろうと呼びかけたら、生徒会総務を含めて10の委員会やクラブがとりくみ、発 表した。  生徒会で学習権宣言をあげた大阪の千代田高校の生徒会顧問の先生を呼んで、夏休 みに教員で学習会をおこなった。「子どもたちは学校の主人公であり、学習し成長す る権利の主体である」ということを学ぶことができた。  秋になって、憲法宣言は、生徒・父母・教職員の三者で作ろうと提起した。どんな 辰野高校を作っていきたいか、全生徒・父母・教職員にアンケートをとった。結果は (1)平和と人権と命を大切にし、暴力やいじめ、差別のない学校づくり (2)基礎学力 をしっかり身につけ、または進路目標達成のための学力づくり (3)自然・環境を大切 にし、清潔な環境づくり、これらは三者とも順番が同じだった。また生徒では、校内 の施設・設備などの教育条件整備という項目が特に多かった。教職員が施設・設備に ついての改善要求を出しているが、生徒から意見を聞かなければいけないということ が初めてわかった。  アンケートをもとに、三者の代表が宣言文づくりを行なった。そして、どんな立派 な宣言文を作っても、実践していくシステムを作らなければ何もならないのではない かとの思いに行き着いた。そして全国の学校づくりの進んだところから資料を取り寄 せ検討し、「三者協議会」を作って学校運営をやっていこうと決めた。 ■辰野高校の三者協議会  生徒の代表は生徒会役員、父母の代表はPTA役員とした。生徒会活動もPTA活 動も停滞気味であったため、活動を活性化してほしいという願いから役員に出てもら うことにした。協議会には最終決定権はないが、協議会での内容は絶対的に尊重され る。三者だったら誰でもオブザーバー参加でき、意見が言えるということになってい る。学校運営に関することすべてがテーマ。学期に1回定例協議会がもたれ、開催要 求が出された場合も開かれる。  協議会に提案する場合、それぞれの機関での論議が必要となる。生徒会からアルバ イトについての提案を出そうとした時、生徒総会で生徒からドンドン意見が出て、こ の時から生徒総会が変わった。授業改善については、生徒、教員それぞれがアンケー トをとってまとめ、生徒は教員に対して、教員は生徒に対して要望を提出し、次の協 議会までに、それぞれが回答することにした。生徒に最も評判が悪かったのは社会科 だったが、それを受けて社会科の教員は、全員で中学校に行って授業を見たり、生徒 参加型の授業を増やすなど、積極的に授業改善に取り組んでいる。  父母からも、「子どもたちが何を考えているのかわかるようになり、PTAの論議 が具体的なものになって諸会合への参加者も増えてきた」と評判がいい。  こうした三者協議会は、どこの学校ででもできるものであり、全国に広がっていっ てほしいものである。       ★   ★   ★   ★   ★   ★   ★        宮下先生のお話の後、意見交換を行いました。一部ですが、こ紹介します。  P:ヨーロッパと日本とでは根本的な違いがあるように思うが、今後日本でも学校    評議会のような制度が広まっていくだろうか。 宮下:韓国、台湾のようなアジア的思考の強い国でも父母の学校参加は始まっている。    日本では住民運動もどんどん起こっており、21世紀は地域の自治、学校の自    治という時代になるのではないかと思っている。長野県では、三者会議、地域    住民を含めての四者会議なども徐々に増えてきている。  P:所沢高校のことをどう見ておられるか。 宮下:自分達の自治を大切にしたいということでおきたこと。すぱらしいと思う。一    般的には様々な受け取めがあると思うが、今のこの時代の中で純枠に活動する    若者たちがいるということは非常に印象的だったと思う。 卒業生:学校では生徒が主役。教員やPTAが生徒を操作しているのではないかとい    う意見を聞くことがあるが・・・ 宮下:特別権力関係論というものがあり、日本では生徒は常に指導されるものと考え    られている。一般社会にないルールが校則という形でいっぱいある。所高のあ    り方は特別な例。    子どもたちの願いとか要求を自己表現でききる場を作っていがなければ・・・。    二者協議会の場合、教員のほうがあらゆる面で強くなってしまうが、三者にな    ると教員が少し引いて、いい関係が保てる。  P:地域と学校の関係をこれからどうしていったらいいか。 宮下:もともと学校は地域の人たちの願いで作られた。今、学校と地域との関係が弱    くなってきている。辰野高校では「地域」という授業を設け、地域の文学、歴    史、環境問題を学ぶことにした。自分たちの力で地域を良くしていくという住    民運動につながっていくのではないだろうか。  P:生徒に力がある場合、二者協議会でできるという話だったが、所高でも三者協    議会を進めていく必要があると思う。この“所高生の自由と教育を考える委員    会”も、三者が一緒に学ベ、話し合える場になってきている。  T:所高の生徒に力があるといわれるが、卒業・入学の問題に関し生徒がどんどん    引いてしまっている。ほんとうは自治の問題なのにすり替えられているように    思う。学校生活についてのアンケートをとったばかりだが、生活の面から、    「自主・自立」を結びつけていくことができるのではと思っている。 生徒:外部を意識しなけれぱならなかったため、問題の本質が何かが見えないまま決    定に至ってしまったように思う。だから、これが本来的結論かは疑問。全面的    に引いてしまっている印象があるが、話をしてみるときちんと自分の考えを持    っている。だからこそ、生徒に根付いた活動が必要。三者協議会に関してはい    いと思うが、二者も並列して必要だと思う。 宮下:所高のように、「日の丸・君が代」の問題を真正面から受けとめて生徒が論議    する学校はあまりない。教職員組合の“闘い”ではなく、教育の問題としなけ    ればいけないと思った。長野県では、5月の憲法学習、12月の平和学習を全    校一斉にやっているが、辰野高校では5月に、「日の丸・君が代」問題を取り    上げ、「私たちひとりひとりの問題です。自分の頭で考えて」と呼びかけた。    所沢高校から学んだことを、辰野高校の三者協議会に生かしていきたい。                       [担当:○○・○○・○○・○○] *参考資料:雑誌『教育』(特集/生徒の学校参加・地域参加1999年4月号) 学習会の詳細なメモがあります。ご希望の方は、○○(042−○○○−○○○○) までご連絡下さい。
(Web管理者記)
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