ピース・ニュース学習会報告

軍事力の海外展開をも視野に入れた日本の急速な右傾化の『衝動力』は何か

集団自衛権容認、有事法制整備、改憲に徹底して反対してゆくために、
      日本のアジア支配の現実をしっかりと学ぼう!

姿を現した米ブッシュ政権の強硬な姿勢

 ブッシュ政権は2月16日、イラク、バクダッド近郊のレーダ基地など5箇所を爆撃した。女性・子どもを含む3人死亡、30名負傷と報道されている。ロシア、中国、仏は不快感を表明し親米アラブ諸国も批判をした。4月1日には沖縄嘉手納基地から飛び立った、米軍偵察機EP3が中国軍戦闘機と接触し中国機は墜落、EP3は海南島飛行場に緊急着陸するという事態が起きている。さらにNMD推進の強調、台湾への武器売却をめぐる対中国強硬姿勢、金正日への牽制と米朝協議再開の事実上の放棄、ロシア外交官50人の追放、原発推進へのエネルギー政策の転換、CO2削減のための京都議定書からの離脱宣言等々。こうした事実は、ブッシュ政権が自らの権益を最優先し、他の一切を省みない侵略的、攻撃的で傲慢な政策をとろうとしていることを明らかにしている。

軍拡勢力、反動派の次の狙い目は「集団自衛権容認」

 こうした米の非道な政策に対し、日本政府、自民党、与党は批判するどころかそれにこびへつらい追従している。さらに政府・防衛庁は、米の要求の尻馬に乗る形で、安保外交政策と自衛隊の戦略転換を進めている。最近の米と日本の政府、支配層の軍事力強化の狙い目は、日本がこれまで憲法九条の制約から「集団自衛権は保持するが行使できない」という政府見解を変更しようとすることにある。「脱派閥」、「構造改革」の派手なパフォーマンスで登場した小泉首相は総裁選勝利直後に靖国公式参拝、集団自衛権容認への憲法解釈の変更の発言をしている。

 こうした動きを支えるかのように、国内での右傾化・反動化の動きが進んでいる。「新しい歴史教科書を作る会」の製作した教科書が検定を通過した。「歴史教科書」は彼ら自身が述べているように神話にもとづく非科学的な歴史観を植え付け、さらに「公民教科書」により「国防の大切さ」を理解し「必要な場合には生命をも犠牲にしなければならない」という戦前の教育勅語と変わらない驚くべき反動思想を植え付けることにある。卒業式、入学式での日の丸君が代強制に反対し抵抗する教組、教員個人に対し、職務命令や処分の恫喝を露骨にかけ、昨年以上に強硬な攻撃が進められた。野党の中からも「集団自衛権容認」の発言やPKOの武器使用基準の緩和、PKF本体業務凍結解除を求める動きが出てきている。

 このような状況のもとで我々がしなければならないことは、先ず米と日本の支配層、政府が進めようとしているこうした反動的な政策推進、日本の軍隊を海外派兵できるようにする、かれらの狙いとその具体的な行動を、はっきりと暴露することである。

急速な右傾化、反動化の「衝動力」をしっかり掴み徹底して反対していこう

 これを行うために、米外交文書や日米政府の動き、自衛隊の変化等を追いかけるだけでは一面的で表面的なものとなる。日本社会全体がこの間急速に保守反動化し次々と反動的な帝国主義的政策を打ち出す背景を同時にしっかり把握することが重要である。

 50年代半ば、東南アジア諸国への戦後賠償協定、60年代の借款を通じて再び経済的進出と支配の足掛かりを作った日本帝国主義は、70年代から直接投資を本格的に開始した。80年代からNIES諸国(韓国、台湾、香港、シンガポールなど)の追い上げのもと、ASEAN諸国(マレーシア、タイ、フィリピン、インドネシア等)への進出と、従来の個別的な進出から東南アジア全域での分業生産体制を構築しコスト競争を行ってきた。いまや東南アジアを中心に進出しているのは大企業だけではなくその下請け、孫受けの中小企業にまで広がっている。すでに中小企業が生き残りをかけてアジアに進出する時代なのである。90年以降のバブル崩壊と「失われた10年」のあいだにも日本帝国主義は猛烈な勢いでアジア進出を行ってきた。

 95年以降の急速で劇的な反動化、軍事的拡張路線への動きは、戦後50年以上にわたり築きあげてきた日本のアジア進出、アジア経済支配の実態をいきいきと把握することによって、始めてそのリアルな姿を捉えることができる。日本のこの間の急速で劇的な右傾化、海外展開をも視野に入れた軍事力強化の「衝動力」、それを無批判、無抵抗に受け入れてしまう社会の背景をしっかりと把握することが大事である。「衝動力」、「本当の狙い」をはっきりと把握することにより我々の反戦・平和の宣伝はより説得力をもったものになる。

 このような問題意識のもと、ピース・ニュースでは4月7日-8日の2日間合宿形式で学習会を行った。以下、この学習会の内容を紹介したい。

「集団自衛権」容認により自衛隊海外展開を目指すブッシュ・小泉政権
日本の戦後のアジア経済進出の実態