PNカフェ資料

民主党新政権は「日米共同声明」を撤回すべきです!

日米の基地共同使用の拡大=日米軍事統合・基地の永久化絶対反対!
グアム基地への「おもいやり予算」反対!

この資料は2010.6.6PNカフェ(学習会)で使用したものに加筆訂正したものです。

1.鳩山辞任劇の裏で進む日米軍事統合・基地の固定化の危険性 - 「日米共同声明」

 鳩山首相は「普天間問題」と「政治とカネ」問題を理由に辞任表明を行いました。中央マスメディアは鳩山辞任を「政治とカネ」「小鳩体制」に局所化することで普天間問題、基地と日米安保問題を人々の視野から追いやっています。

 鳩山辞任の引き金を引いた普天間問題はあっという間に政治焦点から後景に退かされているように見えます。しかし、民意愚弄の政治権力奪取の茶番劇に目を奪われてはいけません。

 私たちが特に注意し強調しなければならないと考える点は、今回の2プラス2「日米共同声明」が、自公政権時代の2006年「米軍再編ロードマップ合意」へと単純に「回帰」したものではない、ということです。

 普天間問題の「5月決着」に向かってさまざまな県内移設案のすったもんだの末、「辺野古回帰」に帰着するどさくさの裏で、超短期間の交渉で確認された「日米共同声明」は極めて危険な内容を含んでいます。

 それは2006年ロードマップ合意を拡大・深化させ、いっそうの異様な対米追随と日米軍事統合の「毒」を含んだものです。

 鳩山の「お詫び」と辞任劇、参院選を控えたドタバタの看板掛け替えで惑わされてはなりません。今回の「日米合意」の本質を冷静に見据えて新政権へ向けて、「日米共同声明」撤回、普天間基地無条件撤去、辺野古新基地建設撤回、「たらい回し」ではなく基地撤去の運動を強めて行きましょう。。


(1) 民主党閣僚にロードマップ合意の履行を確約させた「日米共同声明」

 「米軍再編見直し」を連立政権合意に掲げる民主党政権に対して、米側は今回の交渉に当って2006年ロードマップ合意の一つ一つに再確認とその計画通りの履行を迫りました。

 「最低でも県外」を掲げた民主党政権の移転先探しの「交渉」のように見えますが、米側から見れば、それは迷走する鳩山政権に2006年ロードマップ合意を改めてしっかり約束させる「交渉」であったのです。

 つまり3党連立政権の米軍再編「見直し」の公約を骨抜きにすることを狙ったのです。今回の「日米共同声明」文書を丁寧に読むと、その様子が浮かび上がって来ます。


  今回の「合意」文書ではその合意主体について微妙な使い分けがされています。「日米安全保障協議委員会(SCC)の構成員たる閣僚」と「閣僚」および「両政府」の3種類の主語が出てくるのです。*1


*1  外務省の悪知恵的な意図的誤訳で日本語では区別がつきにくくしてありますが、「日米安全保障協議委員会(SCC)の構成員たる閣僚」は"the SCC members"、「閣僚」は"the Ministers"と明瞭に使い分けています。「両政府」は"both sides"となっています。本来2プラス2は閣僚同士の会議であり「双方」「両者」などとすべきところを「両政府」としているのは2プラス2を政府間合意としたい外務省、日本政府の意図的な誤訳と考えられます。

 2006年ロードマップ合意で既に確認済みの基本的内容は、今回の「共同声明」の中では"the SCC members"と表記しています。また"both sides"で表記した内容は一見して日米間の合意であることは明らかです。

 問題は"the Ministers"の表記で記されているところにあります。それらはロードマップ推進の確約であり、普天間代替施設の完成であり、場所と工法の8月末までの確定であり、沖縄の説得です。「合意」とは名ばかりで、それは、主語を巧みに使い分けながら、日本側がやらなければならないことを再宣言させ約束させる「証文」となっています。*2


*2  日本側大臣の英文表記は"Ministers"であり、米側長官の表記は"Secretary ”ですので、英文で素直に読めば、"the Ministers"は日本側の大臣(達)を示すと解釈できます。尚2006年ロードマップ合意の本体部分は"the Ministers"の表記で統一されていますので、この場合は一般的な(日米双方の)「閣僚」という意味で使用されていると解釈できます。

 ロードマップが進まないのは日本側の責任だとして一歩も譲らず、「5月決着」の期日が迫る中で米の傲慢で高飛車で支配者的な交渉態度の前に日本政府・官僚が全面屈服したことが、この記述に如実に現れています。

 こうした経緯をできるだけぼかすために、日本の外務省はこのような意図的な誤訳をしていると考えられます。

[米軍と自衛隊の施設の共同使用=日米軍事統合化、米軍基地返還後の自衛隊基地化の危険性]

 今回、あらたに「米軍と自衛隊との間の施設の共同使用を拡大」の検討が盛り込まれました。

 ロードマップ合意では日米共同訓練のための自衛隊施設の整備と共同使用が盛り込まれましたが、今回は「共同訓練」という制約も「自衛隊」施設という制約も外されています。

 自衛隊基地だけでなく在日米軍基地も米軍と自衛隊が共同使用することが可能となります。米軍は共同訓練だけでなく独自の訓練や作戦行動のために自衛隊施設を使用できるようになるのです。一方で米軍基地を自衛隊が共同使用することは、米軍と自衛隊の一体化・統合化を進め、将来の米軍基地の返還時には基地をそのまま自衛隊管理とすることの布石となります。*3


*3 2010.3.6付け産経新聞記事でこれを裏付ける報道がされています。
 http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100306/plc1003060200000-n1.htm
  「沖縄県の米軍普天間飛行場(宜野湾=ぎのわん=市)の移設問題で、普天間飛行場が米側から返還された後も防衛省・自衛隊が管理する案が政府内で検討されていることが5日、明らかになった。台湾海峡や朝鮮半島で有事が発生した際には米軍の緊急時使用を認めることで、抑止力の維持を図る狙いがある。ただ、平成8年の普天間返還に関する日米合意以来の協議を根底から覆すことにつながりかねず、地元などから反発がでることも予想される。」



 米軍の自衛隊基地の自由な使用、在日米軍基地を自衛隊が共同使用。これら2つを組み合わせれば当面の日米軍事統合は極めてやり易くなります。更に、将来の米軍基地返還時にも、それを自衛隊基地とし、その自衛隊基地を米軍はいつでも使用できることになります。

 恐るべき日米軍事統合化、日本が米の軍事植民地としての性格を一層強める異様な姿です。ただし、これは日本独自の軍事力を強化しながら有事の際は米軍支援もあてにするという民主党内の改憲、軍拡路線の側面もあります。こんなに卑屈で危険な合意が、「5月決着」の短期間の交渉のどさくさまぎれに織り込まれているのです。

[グアム・日本国内の米軍基地への「再生可能エネルギー技術」を「おもいやり予算」で導入する]

 今回の「合意」の中に「緑の同盟」と称してグアムおよび日本の米軍基地に再生可能エネルギー技術を導入することがうたわれています。

 バイオ、風力、太陽発電などを基地の設備として導入して環境保全を推進するというのです。しかし、戦争そのものが最大の環境破壊であり、戦争準備そのものである新たな基地を、自然破壊をして建設しながら再生可能エネルギーで環境保全をするというのはまやかし以外の何物でもありません。

 鳩山が「辺野古の海を埋め立てるのは自然への冒涜だ」と言いながら、辺野古回帰後も自信たっぷりに「現行案とは異なる」「環境に配慮する」と言っているのはこの項目を指したものでしょう。

 更に大問題なのは、この再生可能エネルギー導入に「思いやり予算」を使うというのです。しかも「思いやり予算」は国内の米軍基地だけでなく、海兵隊移転に伴い現在建設中のグアムの基地にまで適用するというのだから驚きです。

 「再生エネルギー技術」を拡大解釈すれば簡単に基地のインフラ拡充にまで適用できます。米軍再編の重要な一環として進められている、グアム統合軍事開発計画は米の環境保護局(EPA)のアセスメントによりインフラの拡充など大幅な見直しを迫られています。米はこのインフラ拡充予算をそっくりそのまま日本の「思いやり予算」でやらせる可能性も透けて見えます。

 ここまでくると悪乗りとしか言いようがありません。米側は相手の弱みに付け込み、とことん自分に都合の良い形で利用してくる典型です。この事実を大々的に暴露して批判してゆかなければなりません。


[「訓練移転」名目で、全国で軍事訓練拡大。徳之島の軍事基地化。グアムでの日米共同訓練の拡大]

 「沖縄の負担軽減」の名目で「訓練移転」を県外で行うことを明記しました。ロードマップ合意でも日米共同訓練の県外移転が決められています。しかしロードマップ合意では日米共同訓練の場所や年間の訓練日数、1回あたりの訓練日数が決められていましたが、今回は場所も訓練日数の制限も明記されていません。制約のない訓練の増加につながる可能性が極めて大きいと言えます。

 ロードマップ合意での「訓練移転」は既に実施されていますが、嘉手納基地での騒音被害は減っていないどころか増加しているのは沖縄では周知の事実です。訓練が移転した分だけ、海外からの飛来機による訓練が増えているのです。*4

 一方、移転により本土各地での共同訓練による騒音、火災などの被害は確実に増えています*5。嘉手納の例からすれば、「沖縄の負担軽減」どころか、沖縄でも全国でも基地周辺の騒音被害等の負担は更に格段に増えることになります。本土の沖縄化が進められることになるでしょう。



*4 2010.5.24付け朝日新聞「嘉手納の騒音被害、過去5年で最多 移転で負担減に疑問」http://www.asahi.com/special/futenma/TKY201005240436.html
 「騒音を減らすために米軍機の訓練の一部を本土の基地に振り分けている沖縄県の米軍嘉手納基地周辺で、昨年度の騒音発生回数が過去5年で最多だったことが、地元の嘉手納町による調査でわかった。普天間飛行場(同県宜野湾市)の県内移設に理解を得ようと、政権は沖縄の負担軽減策として嘉手納の「訓練移転」を打ち出しているが、騒音軽減には結びつかないことを示す調査結果に、地元の不信は募る。」


:*5 2010.6.6付け 北海道新聞「矢臼別演習場で3度目の火災 海兵隊訓練」
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/donai/235406.html

 「5日午後0時半ごろ、米海兵隊が実弾射撃訓練をしている陸上自衛隊矢臼別演習場(根室管内別海町など3町)内の着弾地で火災が起き、枯れ草約1・4ヘクタールを焼いた。けが人はなかった。今回の訓練で火災は3度目で、住民から強い懸念の声が出ている。」

 訓練移転では徳之島の活用が明記されました。しかもこれは「適切な施設が整備されることを条件」としています。言いかえれば訓練移転のために、徳之島を軍事基地化するということになります。最近の岡田発言では「訓練移転だけとは考えていない」としており、部隊配備の可能性も依然とし残っています。

 更にグアムへの訓練移転が明記されました。グアムでの日米共同訓練は既に2005年より空自を中心に行われているが、今回の「合意」により「沖縄の負担軽減」と称して際限なく強化される可能性があります。


「日米共同声明」の危険な内容を宣伝し、民主党政権に対して「声明」撤回を迫っていきましょう!


  今回の「日米合意」は鳩山の「裏切り」「嘘つき」として沖縄の民衆の怒りの憤激の姿が内閣支持率低下をもたらし、鳩山辞任の直接の引き金を引きました。この「日米合意」がそのまま単純に受け入れられ実現されるものではないことは明らかです。

 しかし、既に菅首相は「日米合意」を「しっかり踏まえる」と発言しています。新政権んは普天間問題を極力政治問題化しないよう後景に追いやり、陰でカネのバラマキによる地元切り崩しを進めてくることが十分に考えられます。

 私たちは何より。この「合意」の危険性を徹底して暴露することが大事だと考えます。

「日米合意」撤回、普天間基地無条件閉鎖・返還、辺野古新基地建設阻止、どこにも基地はいらないという声を大きくしていきましょう。


2010.6.7