"Our Stolen Future" に関するリンク集

• J. P. Myers による 詳細な解説
  　J. P. Myers は、 Alton Jones Foundation （1944年に創立された、持続可能な社会づく りへの研究支援を行っている財団）の Director であり、この本の共著者の一人。
  　叙述の基礎になった科学的な実験や観測の結果、そこから導かれる７つの重要 なポイント、などの系統立った解説が、堅苦しくない雰囲気で書いてある。この 本への賛辞や批判についても触れながら、さらに広い分野での研究が必要である と強調している。
  　この本において最も重要な文として「傾向は運命ではない」という言葉を最後 に引用している。レーチェルカーソンの「沈黙の春」が出たおかげで、社会は、 それをのりこえるべき挑戦と受けとめ、結果としてカーソンの予言した方向に突 き進むことをくい止めたこと。我々もそのような立場に立つべき、と結ぶ。基本 的には、科学と人類の叡知への信頼に立っているのだ。

  　なお、このページのある グローバルコ ミュニケーション協会(IGC) は、EcoNet や PeaceNet などの草の根パソコ ン通信局が合体し、発展してできた、NGO と市民運動のためのネットワークで、 世界各国で同じような目的で活動するネットワークと 進歩的コミュニケーション協会(APC) とい う連合体を作っている。化学物質の安全性ホームページを置かせてもらっている JCA も、APC のパートナー である。

• Web Inquirer（Jani Roberts によるレビュー）
  　APC ネットワークの一つ GreenNet に 開設している、「電子図書館」の中の一ページ。"Our Stolen Future" の要約とと もに、その記述の根拠になった原論文を参考文献として示すなど、学術書っぽいス タイルである。ただ、ところどころ無意味に字が大きく (HTML の記述ミスだろう) 、 読みづらいのが難点。

• 世界野生生物基金 （Barbara Rutherford によるレビュー）
  　Theo Colborn を 90 年代の Raechel Carson と紹介しながら、Our Stolen Future に示された化学物質の潜在的脅威を解説している。
  　が、より力を入れているのは、このような危険に対して有効な政策的アプロー チがとられるべきであるという点。すなわち、危険な化合物の探索、その予防的 見地からの警告と、廃止への国際的合意づくり、発生をくい止める対策や、国内 的な規制の必要性を説いている。
  　また、この本で生殖や内分泌を乱す恐れのある農薬として挙げられているリス トも載っている。以下の通りである。

      2,4,5-T,         2,4-D,           alachlor,        aldicarb, 
      amitrole,        benomyl,         carbaryl,        chlordane, 
      cypermethrin,    DBCP,            DDT,             dicofol, 
      dieldrin,        endosulfan,      esfenvalerate,   fenvalerate, 
      heptachlor,      hexachlorobenzene,                lindane, 
      malathion,       mancozeb,        meneb,           methomyl, 
      methoxyxhlor,    methyl parathion,                 metiram, 
      metribuzin,      mirex,           nitrofen,        oxychlordane, 
      permethrin and other synthetic pyrethroids,        toxaphene,
      transnonachlor,  tributyltin oxide,                trifluralin, 
      vinclozolin,     zineb,           ziram. 
  

  　この項の筆者 Barbara Rutherford は野生生物基金の農薬政策のコーディネー タ。

• ホルモン を乱す化学物質
  　グリーンピース・イギリスのホームページから。背景にたくさんの精子が泳い でいる背景にびっくりさせられるが、さらにアニメーションのドキッとする仕掛 けもあり、これだけで何を訴えたいかは明瞭というもの。
  　解説もさることながら、学術雑誌を中心に、化学物質の生殖や内分泌への影響 を証拠づける論文集を、Science, Nature, イギリスの医学雑誌などなど、あち こちから集めてきてまとめてあり（学術文献参照）、 これが大変充実している。もちろん、ほとんどは要旨だけで、本文を入手するに は一次文献に当たらなければならないが、学術文献の書誌情報は一般には手に入 れにくい場合が多いから、資料的価値は非常に高い。

• Theo Colborn へのインタビュー
  　96年3月。"Our Stolen Future" の主著者である Theo Colborn へのインタ ビュー記事。載せているのは、環境問題に関する情報提供会社 Ecology Channel の中の GREENWIRE という速報サービスのページ。
  　これは疑似科学では？という指摘があるが、というインタビュアの問いに著者 はこう答えている；
  　「たしかに、断片的な結果のつまみ食いではないかという指摘を受けます。そ れは、このような問題を直接的なテーマにした研究がなかったから仕方ない面が あります。しかし、ヨーロッパ、アメリカ、イギリスでそれぞれ別の方法論と異 なる手順で行われた研究が同じ結果を得ているということに注目するなら、直接 的な研究の成果よりパワフルだともいえますね。しかも、それらは世界的にみて も最高の研究室、科学者の手によるものですし」
  　また、この問題に関して希望的ですね？　という問いには、「そうです、この ことに気付いてすぐの時期よりはだいぶ楽観的になりました。だって、いままで 気付かなかったのは重大な問題でしたけれども、気付いてしまえば、いくらでも 取る対策はあるのですから」
  

• EIC（環境情報センター）
  　これもかなり詳しいページで、いくつものサブページがあり、ここからたどれ る。主な内容は以下の通り；
  • 一般情報：　　　書評、短い まとめ、著者紹介
    
  • 科学的事実：　　ホルモン内 分泌に悪影響を及ぼす化学物質の紹介
    
  • ファクトシート：ホルモ ンと神経の働きにかんする背景の解説
    
  • 識者の意見：　　科学者や 医師等から寄せられた論評集
    
  • バイアス：
    ニューヨークタイムスに出た Gina Kolata 署名記事がこの本のもとになってい る科学的事実に疑問を投げかけている。その点に反論したページ
    
  • 工業界の情報操作：
    "Our Stolen Future" の内容に対して工業界からなされた反論に再反論している ページ
    

• 内分泌のミステリーと CIIT の役割
  　アメリカ合衆国で、工業界の出資によって設立され、非営利的に運営されてい る CIIT（化学工業毒物研究所）という、 毒物学の研究所（５０人近いシニアスタッフがおり、かなりの規模）のページ。
  　Our Stolen Future が出版される以前から、内分泌異常に基づくと思われる生 殖器生育阻害に注目し、そのメカニズムをさぐるプロジェクトをスタートしてお り、その内容（１．レセプターの媒介機構、２．動物実験による代謝調節機構へ の影響評価、３．細胞学的な薬物代謝と恒常性、４．生物数理科学的モデリング） が解説されている。

• IFIC（国際食料情報評議 会）
  代謝、殺虫剤、食物の安全性など、"Our Stolen Future" をめぐる問題のＱ＆Ａ 集
  

• 化学的つむじ 風
  　ローマクラブレポート「限界を超えて」の共著者の一人 Donella H. Meadows （ダートマス大学環境学研究室教授）によるレビュー。Our Stolen Future の投 げかける問題の存在を認め、嫌疑が晴れるまではあらゆる合成化学物質を疑って かかる姿勢と、そういった物質を百万トン単位で自然界に放出したとき、その後 始末をするのは我々の子孫だ、と警鐘を鳴らしている。

• フロ リダ日刊環境産業ニュース
  　９６年４月。本の内容紹介と客観情勢の短いコメント。EPA（環境保護局）や NAS（国立科学協会）が問題自身を深刻に受けとめているのに対し、産業界の一 部には、このことが規制強化につながる可能性をおそれて、この本の信用をおと しめるような反応を始めている、などの記述がある。

• 内分泌異常にかんする情報
  　RTK NET（知る権利ネットワーク）のデータベースから。RTK NET は、 EPA（環境保護局）などいくつかの米国立の機関のデータベースをソースにして いる民間のデータベース。この記事は、Peter L. deFur（環境研究、バージニア コモンウェルス大学）、Carolyn Raffensperger（科学と環境健康ネットワーク） の共著による解説で、Our Stolen Future について大きく取り上げている。

• 沈 黙ばかりもしていられない春
  　９６年４月。グリーンビジネスレターという環境ビジネス向けページによる紹 介。科学的事実としてどうかは問題にせず、企業家はこれにどう対応するか？　 と問いかけ、問題は長期化するという予測のもとに、リスクの最小化を提言して いる。極めてリアリスティック。
  

• 長寿命有機汚染物質が生命の危機を増大
  　９６年４月。環境問題のニュースサービス「アースタイムズ」の記事。

• すべての精子は尊い
  　９６年４月。カナダの JAM! という、メディア関係の情報を集めたページの中 の、書籍の紹介コーナーにある Bruce Kirkland による書評。社会的影響や化学 企業からの反発に配慮しながらも、注目に値する内容だ、という感じ。

• 化学物質の環境へ の影響
  　シアトルの「エスキモー北」というプロバイダの「ページグル」という、名前 はちょっと怪しげだが、本の内容とその反響をまじめにコンパクトにまとめてい るページ。

• 環境研究上位５０冊
  　Ingram Book という本屋さんがジャンルごとの書籍売れ行きの上位５０冊を紹 介しているページ。近刊書については数行のコメントもある。
  　Our Stolen Future は６月１０日付けでは第５位にランクされている。ちなみ に「沈黙の春」は第６位。

• ペンギンブックス
  　ペーパーバックス界の最大手ペンギンのホームページの新刊紹介コーナー。非 常に客観的な紹介。

• これが世界 の終わり方だ
  　Soundprint というラジオ局が、こういうタイトルの番組を持っている。 Ｗｅｂページがアンケート形式になっていて、合成化学物質の脅威に対してどう しますか？　という答えに「勝手にしろ」「文明社会を捨てる」「呼吸をやめる」 「タイムマシンを発明する」「無視する」などの返事をする趣向。ふざけている だけかと思うと 解説のページ では Colborn らが1993年に書いた論文の要約 を掲載していたりもする。