◆ チェアムリ教会にて ◆
それはトルコ領アルメニアの蛮行ではない。
300年前ピエドエントにあった殺戮ではない。
アジア大陸の東端に行われた惨事である。
永遠の平和を期する会議中の出来事である。
我らの愛する祖国においては、
人種差別を撤退すべしと、
所謂志士がいきまきどよめいた時だ。
|
そこは都を離れた淋しいひな里、
木造りの粗末な教会堂が立っている。
白い着物をつけた土地の人々、
或る者は大病の老いたる父を離れて、
或る者は産褥に入りし妻を残して、
或る者は辛くもその日を過すたづきを去って、
今日は日曜でもないのになぜ集るか、
お布令のためだ、厳めしい憲兵のためだ。
〜「或る殺戮事件」 斎藤 勇 より〜
|
|