グアンタナモの亡霊:ディエゴ・ガルシアの恥
アンディ・ワーシントン
2007年10月20/21日
CounterPunch原文


アングロ=アメリカン(英米)の植民地主義史の中で最も卑劣で尾を引いているケース----インド洋にあるチャーゴス諸島の主島ディエゴ・ガルシア----が、金曜日(10月19日)、ふたたび醜い姿を現した。英国の超党派からなる外交問題委員会が、2002年以来CIAがディエゴ・ガルシア島の秘密監獄でアルカーイダのメンバーと疑いがかけられた人々を拘束し尋問しているという、以前から言われていた情報について、調査を行う計画を発表したのである。

ディエゴ・ガルシア島をめぐる恥ずべき物語は1961年に始まる。この年、米軍が、地政学的に重要な基地の候補としてディエゴ・ガルシア島に目を付けた。すでにこの島には2000人が暮らしていたという事実を無視し、また、この島----ナポレオンの没落以降は英国の植民地にされていた----には18世紀後半にフランスのココナッツ栽培者が住み着き、モーリシャスからアフリカとインド生まれの労働者を船で連れてきて、ジョン・ピルジャーが言うように「穏やかなクレオール民族を形成して村々は繁栄し、学校、病院、協会、刑務所、鉄道、ドック、コプラ・プランテーションが作られていた」という事実を無視して、当時の英国ハロルド・ウィルソン政府は米国のリンドン・ジョンソンおよびリチャード・ニクソンと共謀して、島々を「掃除」し「消毒」することにした(後に機密解除された米国の文書がこの言葉を使っている)。

島々に住んでいた人々の多くは5世代にわたってそこで暮らしていたにもかかわらず、英国外務省は1966年に、英国政府の目的は「現在いる住民を・・・・・・短期的、一時的にそこで暮らしているだけの住民とする」ことにあり、そうして住民をモーリシャスに追放することができるようにすることにあると述べている。「ターザンたちとメン・フライデーズ」(別の英国政府メモが住民を指して使っている言葉)を取り除いたあと、英国は島々の実質的な支配権を米国に譲り渡し、米国はディエゴ・ガルシア島に軍事基地を設置した。年を経てこの基地は「キャンプ・ジャスティス(正義の基地)」と言われるようになり、「2000人以上の兵士、戦艦30隻の停泊地、核廃棄物、衛星スパイ基地、ショッピング・モール、バー、ゴルフ場」を備えるようになった。島々からは完全に邪魔者が排除され、また排除は完全に秘密裏に行われたため、1970年代に英国国防省は厚かましくも、「我々の記録には住民のことも立ち退きのことも何一つない」と言い張った。

亡命地で苦しい生活を送っているチャーゴス諸島の人々は、先祖代々の土地に帰還する権利を求めて闘い続けてきたが、成功しなかった。彼ら彼女らは、2000年に英国高等法院で大勝利を収めたが、2003年には大きな後退を強いられた。トニー・ブレアが、お馴染みの高圧的で権威主義的な態度をもって、太古のカビの生えた「国王の特権」を発動してふたたび島民の主張を打ちのめしたのである。2006年5月に控訴院はトニー・ブレアの決定をくつがえし、島民の帰還権は「人類にとって最も基本的な権利の一つ」であると裁定したが、島民の権利に対するこの遅すぎた司法裁定が、米国の軍産複合群島に部外者が口を出すべきではないと言い張る米国にどう向き合うことになるのかは、まだわからない。

島民の主張に抵抗して、ブレアと英国外務省ははっきりと、お仲間である米国の利益を擁護する立場を取っている。その米国にとってディエゴ・ガルシア島の地政学的重要性は、最近、高まっている。というのも、「価値の高い」アルカーイダ容疑者を拘束し尋問するために、ディエゴ・ガルシア島とそこに停泊する船舶を使っているからである。

英外交問題委員会が調査を約束した疑惑は、アメリカ合州国人たちが、他の場所にあるCIAの秘密監獄でよりも、ディエゴ・ガルシア島のパートナー----英国政府----の方が、拷問を実施するにあたりはるかに協力的であることに気付いたという点にある。この数年に現れた様々な報告によると、米国が海上で拷問ゲームを行う際のパートナー諸国----例えばタイやポーランド、ルーマニアなど----は、最初のうちは金を受け取って米国の拷問を認めるが、そのうち怖じ気づいてCIAに立ち去ってもらうようになる。

委員会が調査を徹底的に行うかどうかはまだわからない。しばらく前からこうした調査を求めてきた英国の法律慈善団体「レプリーブ」は、すでに、外交問題委員会に提出した提案書の中で、英国政府は「失踪、拷問、外部との連絡を絶って長期にわたり人を拘束することといった人道に対する最も重大な犯罪について体系的に共謀している可能性がある」と述べている。レプリーブの法律担当代表クリーブ・スタフォード・スミスはガーディアン紙に対し、容疑者がディエゴ・ガルシア島に拘束されていることは「全面的に疑問の余地なく確かである」と語っている。

この問題を熱心に扱っているチチェスター出身の保守党議員アンドリュー・タイリー----彼はCIAによる「特別身柄送致」に強く反対している----の質問に対して、英国政府はこれまで一貫して、米国政府からディエゴ・ガルシア島にテロ容疑者を拘束してはいないという「確約」をもらってきたと主張してきた。しかしながら、それとは逆に、英国政府が本当は真実を隠してきたことを示す有力な証拠がいくつかある。

身柄送致のためにCIAが使っている飛行機に対する調査によると、2002年9月11日、9/11の陰謀者ラムジ・ビン・アル=シブが銃撃戦ののちカラチで拘束された日に、CIA機が一台ワシントンからディエゴ・ガルシアにアテネ経由で飛んだという。ビン・アル=シブの名がふたたび現れたのは2006年9月で、このとき彼はグアンタナモに移送された。彼の指導者とされるカリッド・シェイク・モハメドとは違い、ビン・アル=シブは今年になってから行われたグアンタナモにおける彼の裁判に参加することを拒否したが、慎重な調査者たちが再構成した拷問のジグゾーパズルのピースはこれだけではない。

2006年6月、欧州会議のために「特別身柄送致」について詳細な報告書を作成したスイスの上院議員ディック・マーティもまた、ディエゴ・ガルシア島が秘密監獄として使われていると結論している。調査の過程で彼はCIA高官に聞き取りをしており、欧州議会の前で「我々は、アメリカ合州国の組織がディエゴ・ガルシア----国際法上英国の責任範囲にある----を重要な被拘留者を扱うために使っていることについて様々な方面から一致して確証を得た」と語っている。

実際、マーティの調査結果は他の情報源からも確認されている。マンフレッド・ノヴァック国連拷問特別報告者は、「信頼できる情報源」から、米国が「インド洋の船に捕虜を拘束している」ことを聞いており、また、グアンタナモ基地に拘留されている捕虜も弁護士に対して、米国船バターン号とペレリウ号に拘束されている人々のほかに、自分たちも米国船に拘束されていたと語っている。バターン号とペレリウ号に拘束された人々については、私の本「グアンタナモ・ファイル」で論じている。ある捕虜は、リプリーブの調査者に「グアンタナモで一緒に捕虜となっていた一人はグアンタナモに来る前、他の約50人とともに米国船に載せられて洋上にいた。彼は、船内には他に約50人の人々がいたと述べている。全員が船底に閉じこめられていた。船に拘留されていた人々は、グアンタナモ基地で殴られるよりもさらにひどく殴られていた」と語っている。

しかしながら、何よりも犯罪をはっきりと示す証拠は、グアンタナモに反対する人々からでも、あるいは米国政府の最も忌まわしい虐待を受けた人々から間接的にもたらされたものでもなく、内部にいた人々からもたらされている。引退した四つ星の米国軍人バリー・マッカフリーは現在ウェスト・ポイント軍士官学校で国際治安研究の教授をしているが、二度にわたり、ディエゴ・ガルシア島がテロ容疑者を拘束するために使われていることを口外した。これは米国政府に反対する人々が主張してきたことに合致している。2004年5月、彼は陽気に、「たぶん我々は3000人を、バグラム空軍基地、ディエゴ・ガルシア、グアンタナモ、イラク全土の16の基地に拘留している」と述べ、さらに2006年12月にはふたたび口をすべらせて、「奴らは鉄格子の後ろにいる・・・・・ディエゴ・ガルシア、バグラム空軍基地、そしてグアンタナモに拘留してるんだ」と述べている。

これ以上の証明が必要だろうか?

アンディ・ワーシントンは英国の歴史家で、「The Guantanamo Files: The Stories of 744 Detainees in America's Illegal Prison」(2007年10月にPluto Pressから出版予定)の著者。


■[持たざる者]の国際連帯行動

日時:11月4日 午後1時30分〜
場所:代々木八幡区民会館 集会後デモ
詳しくは持たざる者の国際連帯行動HPをどうぞ

■武力で平和はつくれない! 11・3市民集会

日時:11月3日(土)14:30〜16:00
場所:東京日比谷野外音楽堂
内容:国会報告・韓国からの連体挨拶・リレートーク
   集会後、銀座パレード
主催:市民集会実行委員会

■新テロ特措法の問題点

米軍再編ってどうよ?ブログにまとまっています。

■パレスチナ報告会「報道されないガザの素顔」

イスラエルに占領されているパレスチナに数少ない外国人として4年以上暮らす寺畑由美さんによる報告会です。すでに終わったところもありますが、10月末にかけても各地で行われます。日程は、寺畑由美さん報告会「報道されないガザの素顔」スケジュールをご覧下さい。

■辺野古・高江

どうか、辺野古からの緊急情報辺野古からの緊急情報(携帯版)基地建設阻止(毎日更新)基地建設阻止(毎日更新携帯版)高江の現状をご覧下さい。

そのときどきで、できることの情報などもあります。

■東京 さらば戦争!映画祭2007

日時:2007年11月17日(土)
   10:00〜20:00
場所:東京ウィメンズプラザ ホール
   (渋谷区神宮前5−53−67
プログラム
10:05 『夕凪の街 桜の国』
 12:05 被爆者の方のお話
 12:20 休憩(50分)
 13:10 『オレの心は負けてない』
 14:45 休憩(15分)
 15:00 『花の夢 ―ある中国残留婦人― 』
 16:40 中国残留婦人栗原貞子さんへのインタビュー
 17:00 休憩(15分)
 17:15 『パッチギ!LOVE&PEACE』
 19:20 井筒和幸監督トーク
入場料:2500円(当日)/2000円(前売)
主催:さらば戦争映画祭実行委員会

■シンポジウム どこまで強まる? 外国人管理〜
 「テロ対策」と日本版US-VISIT〜

バリー・スタインハードさん(米自由人権協会)を招いて
日時:10月27日(土) 14:00〜17:00 (13:30開場)
会場:在日本韓国YMCA 9階ホール(定員150名)
   東京都千代田区猿楽町2-5-5
参加費:1000円 通訳あり

■市民憲法講座

第28回 12月1日(土)6時半
「日本の歴史認識のいま〜『慰安婦』問題からみえてきたもの」
お話:西野瑠美子さん(ルポライター)
文京区民センター3C

■宋神道さんドキュメンタリー「俺の心は負けてない」上映会

内容:在日朝鮮人「慰安婦」宋神道のたたかい
   「俺の心は負けてない」上映会
   朱秀子さん(在日の慰安婦裁判を支える会)講演会
主催:兵庫コリアン青年学生協議会
日時:2007年12月9日(日)10時〜パネル展示
    13時〜映画上映 15:00〜講演会
場所:新長田勤労市民センター
   神戸市長田区若松町5-5-1
   TEL: 078-643-2431
参加費:1000円(前売り券も販売。金額は同じ)

■南京大虐殺から70年 幸存者の証言を聞く会 in 神戸

日時:2007年12月4日(火)午後6時30分
会場:神戸学生青年センターホール
   TEL 078-851-2760 阪急六甲下車徒歩3分
参加費:1000円(学生500円)
証言者1:張秀紅さん(女性、1926年生、81歳)
証言者2:伍正禧さん(男性、1923年生、84歳)
※幸存者招請のための募金をお願いします。
送金先・郵便振替<00930-6-310874 むすぶ会>
主催:神戸・南京をむすぶ会
 (代表/佐治孝典、副代表/佐藤加恵、林同春)
 〒657-0064 神戸市灘区山田町3-1-1神戸学生青年センター内
 TEL 078-851-2760 FAX 078-821-5878
 http://www.ksyc.jp/nankin/ e-mail hida[atat]ksyc.jp
益岡賢 2007年10月24日

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