新プラン・コロンビア

ダビッド・マルチン
2005年5月2日
ZNet原文


アルバート・アインシュタインは、狂気(insanity: 狂気・愚行)を「異なる結果を期待して、同じことを繰り返し繰り返しすること」と定義した。彼が今日生きていたら、米国の対コロンビア政策を狂気の政策と見なしていただろう。

先週、コンドリーザ・ライス国務長官が、南米最大の米国援助の受け手であるコロンビアを訪問し、プラン・コロンビアを「非常な成功」と賞賛した。2000年、米国議会は「プラン・コロンビア」を採択した。その表明された目的は、米国に対するコカインの供給を減ずることだった。5年が過ぎ、40億ドルが費やされたのち(その40億ドルの80%すなわち32億ドルはコロンビア軍に与えられた)、プラン・コロンビアは期限が切れることになっている。けれども、ブッシュ政権はすでにこのプランに資金提供を続けるために、6億ドルの要求を出した。ライスがコロンビア訪問の際述べたように、「大きな効果を上げていることを途中でやめはしない」ということらしい。

けれども、実際のところ、プラン・コロンビアはどれだけ「効果を上げて」いたのだろう? 米国の人々がコロンビアに一日200万ドルを継続してつぎ込むよう求められる前に、このプランを詳しく見ておく必要がある。

プラン・コロンビアがコカインの供給を減らして費用を高め、それにより利用者の数を減らすことを目的にしているのであれば、この計画は高くついた失敗である。5年後のこんにち、米国のコカイン価格は低下し、コカイン使用者数は増加している。全米麻薬情報センター[訳注:米国司法省の機関]は、最近公開された報告の中で、「国内のコカイン入手可能性の基本指標からは、全米の麻薬市場でコカインの入手可能性は以前と同様かあるいは少し増加している」と述べている。

プラン・コロンビアが米国へのコカイン供給を減らすのに失敗したことに驚くべきではない。永年の経験と多数の研究から、それが成功すると期待すべきではないことがシメされている。1980年以来、米国は、不法麻薬の国内流入を断つために450億ドルを費やしてきた。同じ時期、不法麻薬の価格は劇的に低下した。

1994年、米軍と全米麻薬取締政策局はRANDに研究を依頼し、その研究は、重度のコカイン使用者を治療することの方が、麻薬作物根絶をはじめとする生産国での対策よりも23倍効果的であると結論した。この研究は、「麻薬取締に資金をつぎ込むならば、供給阻止計画にではなく治療に費やすべきである」と勧告している。

つまり、コロンビアへの援助として費やされた数十億ドルは、米国で治療を必要としながら受けていない数百万人の麻薬使用者を治療するために費やした方がよかったということである。その予算を使って、教育そして貧困や失業といった社会環境----これによりコミュニティの麻薬使用率が高くなりがちである----の改善により麻薬使用を阻止することができたかも知れない。

そうするかわりに、米国はコロンビアでの戦争に資金を提供し、コロンビアの人権危機と人道危機を悪化させた。今年2月、国連人権高等弁務官は、「人権状況は依然として危機的である。治安部隊をはじめとする政府関係者による超法規的処刑が増加したという報告がある。拷問と強制失踪の頻発も続いている」。

米国が永年にわたり訓練を提供し軍を強化してきたコロンビア軍は、昨年、コロンビア現代史の中で最大の軍事作戦を行なった。この作戦は、ニューヨーク・タイムズ紙によると、「石油が豊富にありそうな地域で私企業と政府の石油公社が安全に探索をできるように」するためのものであった。軍事作戦の矢面に立たされているのは民間人であり、このことは、「人権・移送コンサルタンシー」が発表したように、強制的に追放されたコロンビア人の数が2003年の20万7607人から2004年には28万7581人と、38%も増えていることからも伺える。

ゲリラはといえば、モハメド・アリに関する本を参考に、政府軍の攻撃に対して「ロープ・ア・ドープ」作戦を採っている。すなわち、コロンビアのゲリラはジャングルに撤退し、今年の始めから、大規模な反撃を開始している。この反撃は、ゲリラが軍事的に打倒されたなどとは言い難いことを示しており、米軍とコロンビア軍が戦場で勝利したと主張していることに疑問を投げかけている。

米国は、軍事的攻撃に資金を提供するかわりに、政治的解決による平和を促すこともできたはずである。40年におよび断続的に戦争が続いてきたことから、この紛争を解決するためにはその根に対処し----たとえば農民に土地を再分配したり寡頭政治体制を開かれたものにしたり----なくてはならないことは明らかである。

つまり、コロンビア軍による油田候補地の治安作戦に提供するかわりに、より生産的な40億ドルの使い方が米国にはあり得たはずである。この資金があれば、米国内で教育と治療により麻薬使用を阻止し社会的需要を満たせたし、コロンビアで戦争を激化させるかわりに、長期にわたるコロンビア内戦の平和的解決を促す政策を米国が採ることもできたはずである。

5年にわたるプラン・コロンビアのあとに、米国は、米国人とコロンビア人の双方を利する政策を採るべきである。同じ政策を繰り返し繰り返し行なって別の結果を期待するかわりに。

ダビッド・マルチン(たぶんデーヴィッド・マーティン)は、新たに結成されたオースチン・アンデス連帯行動プロジェクト(オースチンASAP)のメンバーで、2000年にはデンバー正義と平和委員会の会長として、コロラド州でプラン・コロンビアに反対するキャンペーンを率いた。


むしろ、「おおやけに主張される目的の達成には完全に失敗しているのに、繰り返し繰り返し同じことをやるからには、別の目的があったのではないか」と考えてみる方がよいかも知れません。実際、そうであることを示す資料も捜し出すことはできます。米国の対外政策が一貫して比較的その基本的意図(公言された意図ではなく)を反映しまたかなりの成功を収めてきたことを論ずるものとしては、『アメリカが本当に望んでいること』(ホーム・チョムスキー著・現代企画室・1300円)をご覧下さい。

とはいえ、少なくとも政治家の発言を見る限り、日本でも米国でも、そこまでの論理性が維持されているのかどうか、疑問なしとしませんが。

さて、いくつか、すでに紹介したものも含め集会等のご案内です。

■パレスチナの報告会

つくば(10日・終了)・東京1(11日・新宿文化クイントビル)・京都(12日)とあり、東京2は以下の通りです。なお、全報告会の案内はこちら

 『占領下で暮らすということ』----瓦礫と分離 悲しみの和平----
 ガザの話:寺畑由美  ゲスト:古居みずえ
 日時:5月14日(土)18時半〜(18時会場)
            21時15分終了予定
 場所:明治大学リバティタワー11階  1113号室
 (所在地)千代田区神田駿河台1−1
      明治大学リバティタワー
      JR御茶ノ水駅御茶ノ水口より徒歩3分
      都営三田線・新宿線
      半蔵門線神保町駅より徒歩5分
 (地図) http://www.meiji.ac.jp/campus/suruga.html

寺島さんは、ガザに2年以上暮らし、占領下の過酷な暮らしを人々とともに味わいながら、さまざまな思いを抱える子どもたちと日々向き合ってきた方とのこと。その寺島さんが一時帰国するために急遽計画された報告会。確実に、お勧めです(報告会はどんなに発表者がよくてもオーガナイザの準備によってかなり質に違いが出ますが)。

■日本の入管に関する報告会

 『牛久入管センター面接支援の体験から
  ----外国人報道のかげにあるもの----』
 日時:5月25日(水)
    午後6時45分〜8時30分
 お話:齋藤 紳二 さん 
    (さいたま教区終身助祭)
 場所:カトリック麹町教会(聖イグナチオ教会)
    信徒会館203B室
    JR・東京メトロ四ツ谷駅下車すぐ、上智大学手前
 参加費:無料
 主催:カトリック麹町教会メルキゼデクの会

■辺野古

活発な反対活動を展開しているグループのグループの案内、「辺野古への海上基地建設・ボーリング調査を許さない実行委員会HP」には様々な情報があります。また、わかりやすいまとまった情報が、こちらにあります。4月29日の現地からのメッセージは、来れる人は来て下さいと呼びかけています。

意見の送り先については、こちらをご覧下さい。

■リトル・バーズ

1999年前後、東ティモールでも活発な取材活動を続けた綿井健陽さんによるイラクのドキュメンタリー映画「Little Birds」、東京でロードショーが始まっています。ぜひご覧下さい。映画の公式サイトはこちら、綿井さんの公式サイトはこちらです。

なお、対応する本は、『リトルバーズ』(晶文社・1600円)として出版されています。こちらも様々なかたちでぜひ皆さんに知っていただきたい、あらためて見ていただきたい内容の本。

■アサヒビール

アサヒビールの名誉顧問・中條高徳の名前で靖国神社に関して、「国事行為たる戦争の犠牲者を祀る靖国神社に詣でる事をしない政治家に、国政に参加する資格はない」と公言しました。文章はこちらです。

偉大なるニッポンの著名なる在原業平氏(aka. ザイハラギョウヘイ君)は、
 ちればこそ
 いとどさくらは
 めでたけれ
 うきよになどか
 ひさしかるべき
と歌っています(これがザイハラ君のものかどうか確実だったかしら?)。これを、文部省御用達の
 よのなかに
 たえてさくらの
 なかりせば
 はるのこころは
 のどけからまし
と並べてみると、何のことはない、色々浮世にトラブルばっかりで世を拗ねた我らがギョウヘイちゃんが、「おまいら、浮かれて桜桜って騒いでっけど、うるせーんだよ」と言っていると読めます。

アサヒビール、スーパードライは前から嫌いだったし、ほかにめぼしいものもないので飲みませんが、これからはコカコーラ商品とともに、避けることになりそうです。
益岡賢 2005年5月10日

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