コロンビアにおける米国政府の「対テロ」作戦

2001年10月1日
ギャリー・M・リーチ
コロンビア・ジャーナル

ワシントンが政策の焦点をテロ対策に移行させたとき、コロンビアにおける「麻薬戦争」への軍事援助が減るのではないかと多くが考えた。けれども、ワシントンが反テロリズムの名目でコロンビアへの軍事関与を深めつつある今、逆の事態が起こっている。コロンビアの全ての不法武装集団が米国国務省のテロリスト・リストに名を挙げられているため、ワシントンは、対テロリズム戦争への人々の支援を、コロンビア軍の左翼ゲリラに対するさらなる武器提供の正当化に使うことができる。

コロンビア内でも国際的にも、コロンビアにおける米国の麻薬戦争の軍事的性格は非難の対象となってきた。特に、米国がスポンサーとなって行われた不法作物に対する薬剤空中散布は大きな非難の対象となった(「空から降る死」を参照)。コロンビア人の判事がアマゾンのインディアンの土地に対する散布一時中断を決定し、最近になって、コロンビア議会は、環境と健康を憂慮して薬剤散布を止める法案を採択した。麻薬戦争の戦略があらゆるところから批判にさらされる中、米国は、コロンビアに対する軍事関与をエスカレートさせる新たないいわけを手にしたのである。

コロンビア軍は既に、反テロリズムが軍事援助を得るいいわけになるという可能性に気づいている。9月11日の米国に対するテロ攻撃の直前、コロンビア軍は3名のアイルランド共和国軍(IRA)メンバーを、コロンビア革命軍(FARC)による5週間の爆弾取り扱い訓練に参加したという容疑で逮捕した。9月11日の後、コロンビア軍はFARCの軍司令官ホルヘ(モノ・ホホイ)ブリセノと補佐官との間でなされた、ブリセノが米国を攻撃すると示唆している無線会話を傍受したものとされる、録音テープを公開した。先週、当局はまた、ゲリラ解放区で過ごした2名のイラン人を逮捕したと報道し、また、自由党上院議員のヘルマン・バルガスは退役キューバ兵士が南部コロンビアでFARCゲリラを訓練していると主張した。

コロンビア軍がブリセノのものであると主張する無線通信の声は次のように言う。FARCは「彼ら[米国]が何であれ、それと闘う意図を持っている。我々の上に彼らがもたらした苦痛を彼らにも感じさせるために。彼らをうち負かすためにどんな手段を使っても彼らの経済資源を奪う。北米の不幸なものと接触し組織かする。北米の黒人と接触し、彼らがいかに差別されているか見せるのだ」と述べている。

FARCに米国で作戦を遂行する力が無いことはよく知られており、コロンビア外でFARCが行ってきた唯一の行動は、隣接するエクアドル、パナマ、ベネズエラの国境地帯密林であった。それにも関わらず、公表されたこのテープがコロンビア軍にとって宣伝上大きな価値があったことは明白である。

この時点で、米国は自らに対する脅しに非常に敏感であった。それがどんなに非現実的であろうと。それゆえ、コロンビア内での米国の政治経済的利益に対する脅威であるに留まるFARCを国際テロリストとすることは、「麻薬戦争」計画をアンデス地域に拡大するための正当化に好都合だったのである。

先週、コロンビア軍は、コロンビア南部のゲリラ解放区で過ごしたという2名のイラン人を逮捕したとメディアに伝えた。この二名はFARCとイランの関係を示すと示唆されたが、何も悪いことをしていないことがわかり釈放された。けれども、この出来事もまた、コロンビア軍がテロリストの手札を切るために使われたのである。

反テロリズムのプロパガンダ・キャンペーンの最近の大合唱の中で、自由党上院議員のヘルマン・バルガスはまた、FARCと国際テロとの関係を占めそうとした。彼は最近、30名の退役キューバ兵士が、10名のベネズエラ人及びニカラグア人とともに、FARCゲリラの解放区にいると主張した。キューバも、イランと同様、米国国務省によると、テロリストのスポンサー国にリストされているのである。

一方、ベネズエラのウーゴ・チャベス大統領は最近、コロンビアのゲリラをテロリスト組織と考えるべきではないと述べた。過去に、米国政府は、コロンビアの左派反乱者たちに対するチャベスの共感と、反新自由主義のレトリック、そして、石油価格を引き上げるためにOPECの減産をはかるために彼が果たした役割について、憂慮を表明していた。ベネズエラ大統領の、コロンビアの「テロリスト」に対する「支援」は、ベネズエラ政府を揺さぶるために米国がキャンペーンを行ういいわけともなりうる。

コロンビア軍は、ゲリラ解放区がテロリストの基地となっているように見せることで、米国政府がコロンビア政府にそれを破壊するよう圧力をかけることを期待している。その間、軍は自らのやり方で問題を扱おうとしているようにみえる。マリオ・モントヤ将軍によると、コロンビア軍の総司令官であるフェルナンド・タピアス将軍から、反乱軍の解放区へ部隊を送る許可を得たという。「規則はこれを許してはいないが、私は命令を受けている。もし奴らが我々を攻撃し解放区へ撤退したら、我々は彼らを追いかける」。

コロンビア軍当局は、今後ワシントンから軍事援助を引き出すためには、テロリズムに対する戦争というのが良いことを良く知っている。その結果、過去数年間、FARCが麻薬密輸と結びつけられていたと全く同様に、今後は、国際テロリスト活動と結びつけられるであろう。

コロンビアからの新たなプロパガンダ・キャンペーンから、コロンビア軍の主要な目的が、米国の支援を受けた麻薬戦争ではなく、FARCの壊滅にあることが、さらに一層よくわかる。コロンビアの戦争屋たちは、さらなる軍事援助を引き出すために現在の出来事を利用しようとしている。同時に、ワシントンの新自由主義戦争屋たちが、過去に冷戦や麻薬戦争というレトリックのもとで行ったと同様、自らのコロンビアにおける政治・経済的利害追求のために反テロリズムを用いるであろうことは時間の問題である。

  益岡賢 2002年1月16日

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