クリントンの援助パッケージ

2000年1月18日
ベルナルド・ルイス
コロンビア・ジャーナル

クリントン政権が提案した、コロンビアが不法薬物及び汚職と闘うことを支援するためと称する13億ドルの援助パッケージは、世界で最悪の人権記録を持つ国の一つであるコロンビアの人権状況をさらに悪化させることになる。アムネスティ・インターナショナルは、1999年に、政治的目的の殺害により、推定2000人のコロンビア人が死亡あるいは「失踪」していると述べている。提案された援助パッケージにより援助が与えられるコロンビア軍は、残虐行為を行ってきた長い歴史を持ち、また、暴力的な準軍組織と関係を持つとされており、マドレーヌ・オルブライトが示唆するように「我々の支援に値する」ものではとてもない。

米国自体の侵略や人権侵害支援を考慮すると、「我々の支援」にぴったりという見方も成り立つ。

コロンビア軍は、ゲリラに対抗するために市民を武装させる権限を軍に与えた1965年の法律を長年活用してきた。コロンビア軍への資金提供は、米国納税者のお金を人権侵害をさらに支援するために活用することに等しい。コロンビアは、既に、エジプトとイスラエルという他の2つの人権「成功」物語国に次ぐ、米国からの軍事援助第3位の国となっている。1994年に、人権に対する憂慮から援助が一時的に停止されたにもかかわらずである。現在提案されている援助はコロンビアへの米国の関与を増大させ、それはまた、ラテンアメリカに関するワシントン・オフィスが言うように「コロンビアの重大な危機を悪化させこそすれ、解決に貢献しはしない」ものである。

クリントン政権は、人権侵害に直接関わる外国の軍隊への援助を阻止することを目的とするリーヒー法を支持するという積極的な一歩を踏み出しはしたが、それはあまりにわずかであまりに遅い。さらに、米国政府は、麻薬取引とそれに関わる暴力についての左派「麻薬ゲリラ」の役割という誤った見解を強調し続けているが、一方で右派準軍組織の役割をほとんど無視している。1997年の米国国務省報告では、同年の最初の9ヶ月における武力攻撃の60%が準軍組織によるものであり、23.5%がゲリラによるもの、そして7.5%が軍によるものである。誰も、コロンビア最大の反乱軍であるコロンビア革命軍(FARC)と麻薬取引との関係の存在に疑念を挟むことはできないが、クリントン政権がゲリラのみに注目することはコロンビアで具体的な平和を実現するためには何の役にも立たない。

米国の市場に流れ込むコカインの少なくとも半分は、グアテマラ−そしてメキシコ−から来るにも関わらず、クリントン政権はコロンビアを米国の反麻薬活動の中心に据えている。また、米国麻薬取締局(DEA)が1990年以来グアテマラ軍の麻薬取引への関与を調査しているにも関わらず、麻薬取引に関与する個別の軍人を取り締まる手だては全然取られていない。また、今回の援助は米国の麻薬消費という問題を扱っていない。1998年の麻薬不当使用に関する全国家庭調査によると、推定1360万人の米国人が現在不法薬物利用者である。これは人口の6.2%に相当する。コロンビアに提供される援助の一部でも、リハビリテーションと拘束に替わる扱いにあてるならば、麻薬が北に流れ込むのを大きく減らすことができ よう。

最後に、援助パッケージが和平プロセスを支援するという目的の人道的提案としてなされているにもかかわらず、明らかに別の要因が働いている。パナマ運河を失い、プエルトリコのビエケ島における米軍駐留に対する抗議が増大している中で、軍事戦略家たちは代替を求めているのである。カリブ海及び太平洋双方に面するコロンビアは、パナマ運河やベネスエラにも近く、米国の利益にとっても地政学的に最も重要なのである。

マイアミに基地を置く米国南方司令部のチャールズ・ウィルヘルム将軍は、コロンビアは今や西半球の治安にとって主な問題となっており、米国プレゼンスの増強が必須であると述べる。エクアドルのハミル・マフアド大統領が最近自国通貨スクレを米ドルに置き換えると発表したことを考えると、ラテンアメリカ地域での米国プレゼンスの増大は、ますます現実的なものになりそうである。

  益岡賢 2002年4月10日

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