コロンビアの検閲・覇権・メディア

ジェームズ・J・ブリテン
2006年11月27日
コロンビア・ジャーナル原文


政府の贈収賄、間接的に市民の人権侵害に関与する国家公務員、国のエリートの一部が敵を殺すために殺人者を雇うこと。こうしたことが起きれば、多くの国では、新聞の第一面を飾るか、テレビのニュース番組で最初に紹介されるだろう。けれども、コロンビアという国では、かならずしもそうではない。そうした問題がメディアで報道されたり、それを調査し報道した記者が賞を受けたりするかわりに、コロンビアのジャーナリストたちは、コロンビア政府やエリートに批判的な情報を暴露したら、解雇されたり投獄されたり、ときには殺されたりする。

コロンビアで準軍組織「死の部隊」に殺されるジャーナリストの数は世界で最も多いが、つい最近、コロンビアで最もよく知られたジャーナリストの一人に対して行動を起こしたのは準軍組織ではなくコロンビア国家だった。11月19日夕方、コロンビア秘密警察(治安行政局:DAS)が、フレディ・ムニョス・アルタミラノを拘留したのである。ムニョスは、コロンビアのジャーナリストで、カラカスに本社を置き複数の国家が所有・運営するテレスールの特派員をしていた。政府と準軍組織によりコロンビア市民が強制的に家を追われる事態をめぐる調査報道を通してラテンアメリカ中で知られているムニョスは、2002年、カルタヘナとバランキージャで起きた「テロ攻撃」に関する「反逆とテロリズム」の罪で逮捕された。

2005年秋に開局したテレスールは、コロンビアにおけるウリベ政権の治安警察について批判的な報道を行い、ラテンアメリカ中で広い注目を浴びた。しかしながら、コロンビア政府とDASによる攻撃で、欧米が支配するニュース(CNN、フォックス等)ではない情報メディアとしての同局の地域における正統性は、確実にむしばまれた。ナルコニュース速報のダン・フェダーは、さらに進んで、コロンビア政府の行為は、「独立系の批判的メディアに対する」さらに大規模な「攻撃」となっていると述べる。というのも、このような批判は、国家と国家外の暴力に機会を与えるからである。

コロンビアでは、公に「テロリズム」を非難されることは、しばしば、暗殺の標的となることに等しい。というのもコロンビアでは、準軍組織が、「ゲリラ」と見なされた者を誰でも喜んで殺すからである。少なくとも、コロンビア政府は、ムニョスに対する非難をメディアを通して報道させたことで、コロンビア政府と米国政府が左派ゲリラに対して行っている戦争の醜悪な側面を暴いてきた有能なジャーナリストの信頼を失わせようとする、非常に威圧的な策を採ったのである。

コロンビアで批判的報道を黙らせようとすることは今に始まった問題ではなく、同国の最近の政治史を通して深く確立した体系的な政策である。遡ること1950年代、コロンビア政府は、政令3000により、メディア情報を統制して人々が自由に語ることを弾圧することを可能とした。1954年に採択された政令3000は、メディアが一般の人々に何を伝えることができて何を伝えることができないかを政府が決めることを可能にしたのである。そうした状況は当時からずっと続いてきたが、それにもかかわらず、2002年にアレバロ・ウリベ・ベレスが大統領に選出されて以来、人々の思想や批判的なメディアのコメントに対する体系的な弾圧は、目に見えて増加した。

この数年間に、内戦に関わる歳出増加、米国との二国間自由貿易協定に対する多数の人々の抗議行動、法律975による準軍組織解隊の失敗などといった多くの社会経済的問題が起きたが、コロンビアの大衆メディアでは、ボス、エル・エスペクタドール、セマナを除き、こうした問題を扱うことが目に見えて減っている。

こうした事実が示しているのは、政府による経済リストラ、極端な治安政策、コロンビアの大多数が直面する社会経済状況の崩壊などについて、メディアの公平な報道が一貫して減っているということである。このような報道の制約がなされるのは、単に、情報手段に対する独占が進んでいるからだけではなく、強制と同意により情報メディアに対して政府が覇権を握っているためである。

この10年間、社会正義の提唱者であるハビエル・ヒラルド神父は、コロンビアのエリートたちと政治的に同盟関係にあるメディア・オーナーたちは政府か軍のいずれかからしか社会経済的な問題に関する情報を得ようとしない、と述べている。このように偏向した情報源を用いることで情報操作行為が行われることになり、それは、より小さなメディア・コングロマリットやアウトレット、地域メディアでも再生産される。アナリストのギャリー・リーチもまた、ウリベが政権の座に就いて以来、「ジャーナリストたちは、公式[政府]情報源に極端に依存するようになり、その結果、内戦の報道がますます偏向している」と述べている。

2004年、コロンビアで最も著名な社会学者が、政府の手で情報を選別する中央集権的行動の拡大について述べていた。この社会学者アルフレド・モレノは、軍がもはやジャーナリストを紛争地域に入れることさえ認めなくなったため、ますます情報の伝達が阻害されていると指摘していた。

このようなコントロールにより、人々は基本的に事態を見ることができなくなるため、紛争地帯で何が起きているか誰も知らない。コロンビアでは情報統制がとても厳しく、日々、ますます厳しくなっている。紛争そして公共の秩序一般に関するニュースの90%、もしかすると100%が、文字通り、軍によって作られる。そのため、何が実際に起きているかを完全に知ることは決してできない。

ボゴタのカナダ大使館付政治顧問を務めたことがあるニコラス・コグランさえ、コロンビア軍が、政府が反対派を操作し利用するのを支援する目的で捏造された現実を誘導するためにメディアを操作していることを心配している。

政府が実際にジャーナリストの弾圧を促す、その方法の一つを、『アメリカのもう一つの戦争:コロンビアへのテロ』の著者ダグ・ストークスが明快に説明している。ストークスは、ウリベ政府が単に報道の自由に反対しているというだけでなく、体系的に反動的な方法を用いて、メディアで活動する政府に批判的な人々を黙らせたり、「黙るよう脅している」と批判する。

ウリベはまた、コロンビアの「対テロ方略」およびコロンビア軍の活動に対する報道を検閲するための法律を通して、コロンビアのメディアに対する統制をさらに強めようと画策している。「対テロ」法案の一つは、「対テロ戦争にとって非生産的」と見なされる統計を公表した者は誰でも禁固8年から12年の刑に処すると同時に、当該のメディアを「営業停止」にすることができるよう求めるものである。こうした制裁は、「軍や警察の作戦を効果的に適用することを阻害し、軍の要員や個人の声明を危険にさらす可能性がある報道」を広めた者、公共の秩序を乱すその他の行為を犯した者、そして「敵の立場やイメージを有利にした者」には誰であれ適用される。メディア検閲法はまた、人権侵害を報道することがいっそう難しくなることを意味している。

より一般的な報道風土の観点からは、リーチが、国家が覇権を及ぼすことで、ジャーナリストの報道が反動的な攻撃や懲戒処分などを恐れて制限されることになると指摘している。

コロンビア内戦の真実が主流派メディアではほとんど報じられないのは、コロンビアでジャーナリストが活動する環境によるところが大きい。海外の記者は、首都ボゴタの安全な場所からコロンビアの内戦を報ずることがほとんどであり、コロンビア軍や米国大使館が組織する報道観光ツアーのときを除けば、危険な地方部に行こうとすることはほとんどない。

コロンビアの労働組合指導者エベルト・ディアス・モンテスとフアン・エフライン・メンディサは、ムニョスへの迫害は、今ふたたび、「コロンビアで権力を握っている政権が、市民の基本的権利を----とりわけその市民が中道より左派ならば----すべて侵害している」ことを示していると発表した。この二人 ----フェデラシオン・ナシオナル・シンディカル・ウニタリア・アグロペクアリア(FENSUAGRO)の代表と書記長を務めている----は、さらに、メディアと「そして社会」の内部にいる人々の声として政府に同調する考えだけしか許されない状況がますます進展しており、それとは別の真実を公表するならば、ただちに政権から迫害を受けることになると述べている。

ウリベ政権は、単に情報とメディアの自由という権利を制限する政府というだけにとどまらず、政府の政策やコロンビア大衆の苦しみに関する情報を広めるにあたっては人権を実際に制限するような不穏な政府の相貌をますます強くしている。ムニョスの投獄が長びかず、正義が実現されることが望まれる。

ジェームズ・J・ブリテンはカナダ、ニューブランズウィック大学の博士候補生・講師。研究関心はラテンアメリカにおける革命運動と社会運動、古典的マルクス主義の現代地政学における妥当性、国際開発と社会改革のオールタナティブなあり方。


教育基本法の改悪に続く、共謀罪の強行採決の動き、そして防衛庁の防衛省への「昇格」が11月30日、衆議院本会議で可決。

異様な事態が進行しています。

教育基本法が改悪されると、一人一人の心までストーキングされます。共謀罪が成立すると、友人や仲間の集まりがストーキングされます。

当たり前の日常が、そして一人一人の心が、国により監視されることになります。

今回ご紹介したコロンビアの記事は、こうした動きを前に何もしなければ、日本がどのような状況になるかを具体的に見せてくれる先達として、残念ながらとても適切なものであるように思えます。

コロンビアに広がる巨大な貧富の差とメディア検閲、邪魔者の排除。

コロンビア社会の状況は、日本で1990年代末以降、急速に進められてきた「新自由主義」政策による格差の拡大と弱者切り捨て、現在、採択が狙われている教育基本法「改悪」や共謀罪の行く末を写す「鏡」となっています。

もちろん、そうとだけ捉えるためにコロンビアの情報を紹介し続けてきたのではなく、コロンビアについて、コロンビアとしてもっと知っていただければと思います。

以下、色々な集会やアピール・デモ・パレード・行動の情報です。できるだけ、回りにも声をかけて参加することが力になります。また、参加できない場合は、FAXや電話で反対の声を継続的にあげましょう。

■教育基本法に反対するFAXや電話を

安倍晋三首相/首相官邸 FAX:03−3581−3883
伊吹文明文部科学相 FAX:03−3502−5382
自由民主党 FAX:03−5511−8855
公明党 FAX:03−3353−9746

ほかに、参議院教育基本法特別委員会名簿を参考に、与党議員には反対のFAXを、野党議員には、徹底的に反対するよう求め激励するFAXを送りましょう。

■教育基本法に反対するメールを

FAXや電話の方が効果的ですが、メールも。
http://www.hyogo-kokyoso.com/webmail/kyoikukihonho1.shtmlを参考にして下さい。

■教育基本法「改正」案を廃案に 12・3 ピースパレード

日時:12月3日(日)
 12:50−13:00 オープニング
 13:00?14:00 パレード
 14:00?15:00 駅前宣伝
場所:宮下公園出発−渋谷1周パレード−宮下公園着
   その後、渋谷駅駅前で街頭宣伝
参加対象:40歳くらいまでの若い人、及び気持ちが若い人
問合せ先:教育基本法の改悪をとめよう!全国連絡会
  〒113-0033 東京都文京区本郷5−19−6坪井法律事務所内    Tel&Fax 03−3812−5510
  (平日午後2時?5時半以外は留守電の場合あり)
  メール:info@kyokiren.net

サウンドデモパレードとは・・・車の荷台にDJと音響機材を乗せて音楽を流しながら、その後ろを歩くデモパレードのことです。心地よい音楽に身をゆだねて、街を歩くのは楽しいですよ。着ぐるみ、変装大歓迎。楽器、鳴り物、もちろんOK。派手におしゃれに表現しましょう。街を歩く人に届くようなメッセージをプラカードにして持ってくると、アピール効果大です!

■教育基本法の改悪をとめよう! 12・5黒海前集会

日時:2006年12月5日(火) 18時〜19時
場所:衆議院第二議員会館前
(地下鉄千代田線・丸の内線「国会議事堂前」駅下車3分)
発言:全国連絡会呼びかけ人
   (大内裕和、小森陽一、高橋哲哉、三宅晶子)
   国会議員から
   さまざまな立場から
参加のしかた:場所へ行けば、どなたでも参加できます
主催:教育基本法の改悪をとめよう!全国連絡会
問合:電話/03−3812−5510
   メール/info@kyokiren.net

■「ヒューマンチェーン」(人間の鎖)

教育基本法改悪、少年法改悪、防衛「省」、改憲手続き、共謀罪反対!

日時:12月6日(水)午後4時集合
場所:参議院議員面会所(地下鉄有楽町線永田町駅下車)
発言:呼びかけ人&国会議員などから
  午後5:00〜6:30 参議院議員会館前
  キャンドル・ ヒューマン・チェーン
  コール&リレートーク  <呼びかけ人&国会議員など>

■教育基本法「改正」反対リレーハンスト

呼びかけ:リレーハンスト&座り込み行動
主催:リレーハンスト&座り込み行動実行委員会
日時:11月30日(木)〜参議院審議終了まで
   土日を除く毎日 9時〜18時まで
場所:衆議院第二議員会館前(〒100-8982千代田区永田町2-1-2)
   リレーハンスト&座り込み行動(日程等は情勢により変更あるかも)
※ハンストに参加できなくても、応援に立ち寄るだけでも力になります。

■「日の丸・君が代」強制は教育基本法違反!
 〜9.21東京予防訴訟判決を現場に広げよう!〜

講演:永井栄俊さん(東京・予防訴訟原告団共同代表)
日時:12月2日(土) 14:00〜16:30
場所:大阪府福祉人権推進センター「ヒューマインド」
  (JR大阪環状線「芦原橋」下車10分)
資料代:800円。
主催:「日の丸・君が代による人権侵害」市民オンブズパーソン


■憲法改悪、教育基本法改悪に反対する連続講座のご案内
 抵抗への招待〜 私が出遭った『平和市民』

講師:田中伸尚(ノンフィクションライター)
日時:12月3日(日) 午後6時15分〜9時(開場6時)
場所:エル大阪(地下鉄天満橋下車5分)
会場費:700円
主催:アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局

教育基本法の改悪に反対する数学の会がアピールを出しています。

■このほか、教育基本法に反対するアクションや情報は、教育基本法の改悪をとめよう!全国連絡会のウェブサイトを随時参照して下さい。

■防衛省法案・国民投票法案・共謀罪法案の成立を阻止しよう!
「教育基本法改悪を許すな!市民の絆大集会」

日時:12月7日(木)18:30〜
場所:社会文化会館 5F 大ホール

■各地の憲法九条の会関係イベント案内があります。

■共謀罪反対のビデオ

共謀罪が成立すると何が起きるかのビデオにアクセスできます。ぜひ、皆でご覧下さい。

■共謀罪反対12月1日緊急議員面会所集会

とき:12月1日(金)12:00-13:00
ところ:衆議院議員面会所
(地下鉄丸の内線国会前下車)
 東京メトロ有楽町線南北線永田町駅・千代田線丸の内線国会議事
 堂前駅(衆議院第1分館)
発言:国会議員、市民団体ほか
共催:共謀罪法案反対NGO・NPO共同アピール/共謀罪の新設に反
 対する市民と表現者の集い実行委員会/共謀罪に反対するネット
 ワーク
連絡先
 アムネスティ・インターナショナル日本:Tel.03-3518-6777
 反差別国際運動日本委員会(IMADR-JC):Tel.03-3568-7709
 日本消費者連盟 Tel.03-5155-4765


■共謀罪に反対するFAXを

衆議院法務委員会委員名簿を参考に、反対の声を表明しましょう。

■共謀罪に反対するサイバーアクション

グリーンピース・ジャパンのページから、共謀罪に反対するメールを送ることができます。

■海外派兵のための防衛省なんかいらない!12・4行動

日時:12月4日(月)19:00〜
場所:防衛庁正門前(JRほか市ヶ谷駅より徒歩7分)
主催:新しい反安保行動をつくる実行委員会
千代田区三崎町3-1-18 近江ビル4F 市民のひろば気付
益岡賢 2006年11月30日

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