チョコ先住民の闘い

テリー・ギブス&ギャリー・リーチ
2003年11月10日
コロンビア・ジャーナル原文


我々を案内してくれた先住民のガイドは、ダグアウト・カヌーを注意深く操って、オポゴド川の浅い流れを、熱帯雨林深くコロンビアのチョコ地域へと導いた。州都キブドからアトラト川を12時間ほど旅したのち、我々は、石を敷いた停泊地にカヌーの群が停泊している場に近づいた。それまでの3時間というもの、人がいる兆しをほとんど目にしなかったため、突然現れたエムベラという、20ほどの木で支えられた壁のない藁葺き小屋からなる小さな先住民の村は、魔法のような光景であった。緑の泥まみれの丘を霧に包まれた村に歩いて上っていくのは、1000年もの昔にさかのぼり旅するような感じだった。けれども、エゴロケラに到着したときに我々を迎えてくれた平和な感じは、ほとんど幻想であることがわかった。エムベラの現実は全く平和どころではなかった。この先住民コミュニティは、栄養失調、病気、政府からの無視、コロンビアの武装集団との継続的対立に対処すべく苦闘していた。

エムベラ人の多くは、数世紀にわたりあまり変わらない生活を送ってきた。エゴロケラにはほとんど現在の商品が見あたらないことからもそれは明らかだった。ダグアウト・カヌーによる長距離の旅では、小さな船内モーターがパドルに取って代わり、大きなポリバケツが飲料水として雨をため、男たちの一部はTシャツと長ズボンをはいていた。こうしたいくつかのものがエムベラ人の世界に入り込んだ以外は、すべてが伝統を保っていた。家族全体が、壁のない藁葺き小屋に暮らし、そこでは、料理用の火が絶えることなく燃やされていた。エムベラの食事は、基本的に、自家製の穀物と回りの熱帯雨林で捕まえた猟鳥からなる。女性たちは、飾りとしてボディ・ペイントをほどこし、伝統的な鮮やかな巻き付け式スカートを身につけている。水道水も電気も通っていない。

数世紀のあいだ、エムベラ人たちは、他のコロンビア社会とは断絶して暮らしてきた。けれども、過去半世紀にコロンビアを席巻した暴力は、エムベラ人たちにも及んできた。先住民族は、左派ゲリラと右派準軍組織、コロンビア軍のあいだの紛争に巻き込まれた。チョコでは、武装グループが領土の統制権を巡って闘っている。この地域は大規模な運河計画の場所とみなされ、また、麻薬および武器商売の主要交易路なのである。人権と移送のコンサルタンシー(CODHES)のハーベイ・スアレスによると、この地域では、「領土をめぐって[準軍組織]自衛集団がゲリラから領土を奪い取ろうとし、地域の大部分の領有を宣言している。これは地政学的利益のためだけでなく、経済的利益のためでもある」。

紛争のため、エムベラ人たちはコミュニティの深刻な健康問題に対処することができなかった。先住民の子供たちは、頻繁に、下痢や熱、マラリアに悩まされた。これらは実質上、この地域での流行病である。我々がエゴロケラを訪問する1カ月半前に、1歳半の少女がマラリアで死亡した。両親が彼女をビヒア・デル・フエルテの医者に連れていくことができれば、あるいは薬を村に持ってくることができれば、彼女は死なずにすんだはずだった。悲しいことに、どちらも可能ではなかったのである。

エムベラ人がビヒア・デル・フエルテに6時間のカヌーの旅をするにあたり、最初に直面する問題は、選外モーター用燃料を購入する金がないことである。ビヒアまでカヌーをずっと手で漕ぐとしても、次に、国家治安部隊から嫌がらせにあう。ロセリニオという名の若いエムベラ人によると、「軍と警察の嫌がらせを恐れて、多くのコミュニティ・メンバーが行きたがらない」。別のエムベラ人は、「ビヒアに行く者もいるが、多くの尋問を受けるので、我々は恐れている。彼らは我々のドキュメントを取り上げ、破ったりする。ドキュメントは何の意味もないと示すために」。これが病気になったエムベラ人にどう影響するかについて、彼は、「我々の中には、恐れのために、子供や女性をここで死ぬに任せる者もいる」と付け加えた。

エムベラ人がビヒアや隣のベジャビスタから薬を入手することが難しい理由には、また、軍と警察が村に持ち帰ることのできる薬の量を制限していることもある。ロセリニオは、「我々はゲリラに物資を提供していると疑われているため、我々がコミュニティに食料や薬を持っていくことを軍が妨げる」と述べる。エゴロケラ周辺ではコロンビア革命軍(FARC)ゲリラが昔から活動していたため、軍は先住民がゲリラのシンパであると考えている。ビヒアに駐留するコロンビア軍司令官ハビエル・パストラン大尉は、「この地形はとても難しいが、ゲリラは---[準軍組織]自衛軍と同様---この地形の地域を容易に動き回る。入り込んだ先住民コミュニティが沢山あるのだ」と語った。

CODHESのスアレスはチョコ州の地方部で軍が輸送を妨害しているというロセリニオの言葉を確認している:「治安部隊からこれらのコミュニティは大きな圧力を受けている。治安部隊は燃料や薬、資源を統制している。囲い込み、コミュニティの封鎖が人道的危機を引き起こしている場所もある・・・・・・外に出ることが出来ないコミュニティ、包囲されたコミュニティ、経済封鎖を被っているコミュニティ」。2003年6月の報告書の中で、国連人権高等弁務官事務所コロンビア局もまた、この地域で軍が「交通と食料や薬品などの必需品の運搬をひどく制限している」と非難している。

コロンビア軍がエムベラ人コミュニティへの食料供給を制限しているため、多くの先住民の子供たちが栄養失調に苦しんでいる。エムベラでは主にメイズと米、プラタノを自らの消費用に育てている。とはいえ、余剰作物をビヒアやベジャビスタで売ろうとはするのだが。こうした作物を売って得た現金は、塩や燃料、石鹸や食事を補給するための他の食料の購入に使う。けれども、軍が食料の輸送を制限しているため、エムベラ人たちは、ユッカや米、プラタノといった澱粉質の多い食事で生き延びなくてはならず、そのために多くの子供たちが栄養失調になる。

エムベラ人たちはまた、小さな猟鳥や漁労で肉を補給しようとするが、浅いオポゴド川には食べられる大きさの魚は多くはない。武装グループがいるため、エムベラ人たちが狩猟や漁労のために村から遠く離れるのも危険である。我々が訪問した3つの先住民の村を結ぶ川には、準軍組織の検問所があり、コミュニティ間の交通を危険なものにしている。エゴロケラのあるエムベラ人男性は、「ゲリラは移動性なので問題としては小さい」と言ったが、この地域で活動しているゲリラも村に嫌がらせをする。ある年取った先住民男性は、ゲリラの一団が訪れたときのことを次のように語った:「ゲリラが最近やってきて、我々のメイズを掠奪した。メイズが作付けされている土地はエムベラ人の土地ではないと言って」。

軍と警察、ゲリラ、準軍組織というすべての武装集団が、定常的にエムベラ人を標的とする。ときに、村人たちは、嫌がらせをしているのがどのグループなのかわからないことさえある。我々がエゴロケラを訪問する少し前に、武装した男たちが村を訪れた。あるエムベラ人は次のように言う:「彼らが鋸を二つわれわれから奪ってから15日がたつ。我々はあそこの木を切っていた。それは、キブドの集会で我々が得た権利だったからだ。準軍組織かゲリラかわからないが、その集団は、鋸を奪うよう上官から命ぜられたと述べた。そうして我々は脅迫を受け、これからは何一つ切ることは許されないと言われた」。

エムベラ人が直面する多くの問題を長期的に解決するためには、複雑で多面的なプロセスが不可欠である。エゴロケラのような村の保健と安全に関する問題を解決するための適切な方法をめぐる問題もある。この地域の22の先住民コミュニティは、独自の民主的な意志決定と問題解決の方法により地域を統治してきた強い伝統がある。解決策が持続可能なものであるためには、いまあるこうした先住民の文化的・政治的組織の文脈に根付いたものでなくてはならない。

長期的に見るならば、数十年と続いてきたコロンビア内戦が終わらない限り、エムベラ人の生活は大きく改善されはしないだろう。エゴロケラで我々が目にした諸問題は、チョコ州に広がる多くのコミュニティが抱える問題でもある。この州では人口の80%が赤貧状態で暮らしているのである。エゴロケラのエムベラ人のように、多くの人々が、武装集団のどれかが統制する地域に住んでいることになり、その集団のシンパと見なされる。さらに、中央政府の政策が治安に焦点をあてているため、貧困や低開発に関係した紛争に油をそそぐ懸案事項の多くは扱われないままである。けれども、短期的にできることは多い。

コロンビア政府に、この地域で先住民に嫌がらせをしている軍や治安部隊を対処するよう圧力をかける必要がある。司令官は部隊を統制し、地域住民の脅迫に関与した兵士たちを懲戒処分にしなくてはならない。米国の政策立案者たちは、コロンビアのゲリラ活動を統制することはできないが、軍と警察の振舞いを監視することについては強い影響力を振るうことができる。エムベラ人に対する日常的な嫌がらせを行なっている中心は軍や治安部隊なので、これは重要である。これらの手だてにより、先住民たちは地域コミュニティ同士で交易することもでき、食料や薬、その他の必需品を村に持ってくることもでき、病人が必要ならば緊急治療を受けられるようにすることもできる。

武装集団に囲まれたエムベラで2日間過ごしたあと、我々はカヌーに乗って、ゆっくりとオポゴド川を下った。地域交通の大動脈である流れの速い川幅の広いアトラト川に近づくにつれ、川は幅を広げていった。エムベラ人の世界をあとにする中で、我々は、エゴロケラのある先住民の強固な言葉を思い出していた:「我々は自分たちの土地を脅かされている。・・・・・・けれども今もここにいる。我々は500年間抵抗してきたのだ」。

テリー・ギブスは北米ラテンアメリカ評議会(NACLA)の代表。ギャリー・リーチはコロンビア・ジャーナルの編集者。この記事は、コロンビアのチョコ地方に関する三部からなる報告の第三部である。第一部は「過去の亡霊」、第二部は「チョコでの強制移送」。


メールやFAXによる要請の依頼

チョコのエムベラの人々とは直接関係有りませんが、コロンビアのドラモンド鉱山関係で、労働組合リーダーのジミー・ルビオ・ソアレスさんがコロンビア準軍組織から暗殺の標的にされています。昨年暗殺された184人の労働組合員と同じように、ソアレスさんが暗殺の標的となっているのは、単にコロンビアで労働組合活動をしているからです。姉と従兄弟の二人は既に準軍組織に殺されました。この犯罪により、ルビオさんを脅すためです。

準軍組織は5億ペソ(約17万8000ドル/2000万円)の賞金を彼の暗殺にかけています。ただちにコロンビアを離れ別の国に亡命しなければ、彼がまもなく暗殺されることはほとんど明らかです。

不幸にして、米国大使館はルビオさんと人権オフィサによる面会要請にまだ応えていません。駐コロンビア米国大使ウッド氏に、ボゴタの米国大使館を通して米国への亡命を認めるよう手紙を送って下さい。

背景はこちらを(英語です)。
http://www.drummondwatch.org

行動の案内はこちらを(英語です)。
http://capwiz.com/voice4change/issues/alert/?alertid=4077001&type=CU
http://www.voice4change.org/stories/showstory.asp?file=031112~dw.asp


米国以外の方は、下記のサンプルをカット&ペーストして、適宜書き換えて、
AmbassadorB@pd.state.gov
FAX: 010 (571) 315-2197, 010 (571) 315-4155
のいずれかに送って下さい。



Ambassador William Wood
AmbassadorB@pd.state.gov

US Embassy in Colombia
Fax: 011 (571) 315-2197, 011 (571) 315-4155

Re: Asylum application of Jimmy Rubio Suarez

Dear Mr. Wood,

I am writing on behalf of Jimmy Rubio Suarez, who is a party to litigation against Drummond Company, Inc. for the numerous death threats and assassination attempts directed at him and his family by paramilitaries working on behalf of the company. Like the 184 trade unionists assassinated last year, Mr. Rubio, a trade union leader in Sintramienergetica, is a target for assassination for no other reason than that he is a unionist in Colombia. At the moment, Mr. Rubio is in a special governmental protection program under the auspices of the Fiscala; de Derechos Humanos; however, it has been discovered that information as to his location has been leaked and that his assassination is imminent. Indeed, the paramilitaries have offered $500,000,000 pesos (US$178,000) as a reward for his murder.

We are well aware of the danger faced by Mr. Rubio. Three of his fellow union leaders were murdered by the paramilitaries in 2001. In early 2003, Mr. Rubio received threatening phone calls, and noticed armed paramilitaries circling his house on a motorcycle, and he was forced to flee his hometown and go into hiding. His sister and two of his cousins have been murdered by paramilitaries, who were apparently using these crimes to send a threatening message to Rubio.

Two Human Rights officers from the Fiscala; and the Procuradura;, Claudia Ortiz and Luis Carlos Toledo, respectively, share our deep concern for Mr. Rubio and his family. As they can inform you, there is little question that he will be murdered by the paramilitaries unless he is able to leave the country immediately and seek asylum in another country. Unfortunately, the US Embassy has not yet granted previous requests for a meeting with Mr. Rubio and the human rights officers.

I ask you to meet with Ms. Ortiz and Mr. Toledo to review this information and to take the extraordinary step of allowing Mr. Rubio to seek asylum in the US through your office in Bogota;, or, alternatively, granting him a travel visa for the US to then be able to safely seek asylum here or in a third country. We are aware that the International Labor Rights Fund, recognizing the urgency of the situation, is willing to pay for all airfare, as well as to seek additional economic support upon his arrival in the US.

Sincerely,

あなたのお名前


益岡賢 2003年11月14日

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