不戦へのネットワークの活動

 不戦へのネットワーク 山本みはぎ 
(1999年6月15日発行「インパクション」114号より)


 「『廃案』になったら勝利の提灯デモをやろうよ。通ったら抗議の情宣をやろうよ」5月14日、不戦ネットの呼びかけで始まったピースアクション実行委員会での会議での会話である。この文章が世に出るころには先のどちらかの行動が行われていると思うが、たとえ法案が通ったとしても大切なことはこの法律を実際に活用させないようにすること、つまり「周辺有事」を起こさないようにすることと、自治体を始め民間を含めて「協力」をしない・させないようにすることがなによりも重要な取り組みになるだろう。

 はじめに、私たちの会の簡単な紹介をしておくと、1995年敗戦50年を機に地域で平和運動や戦後補償問題に関わる個人で結成し、4年目の活動になる。91年、湾岸戦争が起き、その後紆余曲折を経てPKO法が成立し、ここ愛知の航空自衛隊小牧基地からカンボジアに向け自衛隊が飛び立った。その時もさまざまな市民運動を行っていた個人が集まり、小牧基地でも抗議行動を始めさまざまな反対行動を行ってきたが既成事実が進行する中、関わっていた個人は個々いろいろな事情で離れていき運動の継続ということには至らなかった。(その時始まった市民平和訴訟・なごやの会は現在も続いている)。この会の結成は、個人的な思いで言えば、「反戦・平和」の運動を継続的に取り組む市民運動団体を作りたいという思いで結成した。95年の「敗戦50年」の取り組みから沖縄の問題そして新ガイドラインと必然的に取り組みを継続してきた。まだまだこの問題が浸透していない一昨年から県内の基地・軍需産業のツアー、学習会・月一回の街頭署名活動はもちろん、4回やった地域での集会・デモ(ピースアクションと言う)の積み重ね、また、自治体への働きかけなどを行ってきた。自治体への働きかけは継続的とはいえないが今後の課題にもなるのでそれを中心に報告をしていきたい。

自治体への働きかけ

 昨年5月全国基地協議会(会長 沢田横須賀市長)と防衛施設周辺整備全国協議会(会長石川福生市長)が内閣官房安全保障・危機管理室長に質問状を提出したのをふまえ、愛知県内の全国基地協議会、防衛施設周辺整備全国協議会関連の市町村(具体的には前者は名古屋市・犬山市・春日井市・豊川市・小牧市・豊山町・一宮町、後者は春日井市・豊川市・犬山市・江南市・小牧市・豊山町・大口町・扶桑町)に以下のように四項目の質問状を提出した。

@国に対する全国基地協議会並びに防衛施設周辺整備全国協議会の提出した質問状の内容は。

A要望書並びに質問状に対する国の回答は。

B全国基地協議会並びに防衛施設周辺整備全国協議会に参加する地方自治体の責任者として法案可決後具体的運用が現実になった場合、住民の生活にどのような影響があると考えるか。

C名古屋港および市民病院など市の公共施設使用について国からどのような通知(通達)があったか。

 回答のあった自治体は、豊川市、豊橋市、犬山市、春日井市、名古屋市の各自治体でこの内犬山市を除いた市が@Aの質問に関しては質問状の写しと回答の写しを送付してきた。また、Bに関してはどの自治体も「現在継続審議になっている状況なので今後明らかになった段階で検討していく」との回答があった。Cの質問に関しては「法案の資料提供はあったが具体的な依頼・説明はない」との回答であった。

 同時に県会議員へ以下のように七項目のアンケートを行った。アンケート項目は、@議会でこの問題について議論が行われているか。A行政に資料などの提出を求める予定はあるか。B自治体に協力要請があった場合無条件に応じた方がいいと思うか。C協力内容を検討する場合どのような点について政府に確認するか。D議会でチェックをする必要はあるか。E今後この問題で議会で質問をる予定はあるか。Fこの法案についてどのように考えるか。

 回答は少ないのではとの予想はあったが、返事があった議員はリベラル愛知の三議員と共産党議員のみ。共産党議員はもちろん反対の意向の回答(リベラル愛知の議員は昨年の議会で質問をしたが、今年の統一地方選で2名落選。残る一人は民主党入り)。

 ちなみに愛知県議会に対しては他の団体が昨年9月、@住民の安全を優先すること、A地元自治体や労働者・住民の意見を充分尊重すること、B「周辺事態法」に関する情報は事前に公開すること、という非常に緩やかな内容の請願を出したが不採択になっている。

 今年に入り、1月から2月にかけて愛知県に対し質問状を提出し、県担当者との1回目の話し合いの場をもった。質問内容は、

@周辺事態法案について国から何らかの説明があったか。また、愛知県から何らかの照会をしたか。

A「周辺有事」の際自治体の協力を義務づける「周辺事態法」に対する愛知県の見解は。

B98年4月、渉外関係主要都道府県知事関連協議会が日本政府に対し緊急要請を行っているが、愛知県は県民の生活と深くかかわるこの法案の性質に鑑み、このような要請を国に対し行うつもりはあるか。

Cこの法案は国会承認もなく、「周辺事態」という定義もあいまいなまま米軍の武力行使に協力するということですが、憲法9条の平和主義に反し、また、地方自治体の趣旨からも危険きわまりない法案だと考えるが、貴自治体から見直しを求め何らかの働きかけは行わないのか。

 回答は、@に関して周辺事態法案については、98年(回答は元号)5月13日付で内閣安全保障・危機管理室長、外務省北米局長連盟で送付があったがその際もその後も内容については説明を受けていないし、照会もしていない。Aについて法案9条の地方自治体の協力については、今後国会において十分な論議がなされていくと思う。関心を持って注視していく。Bについて自治体の意向を尊重する要請等については、渉外関係主要都道府県知事連絡会などが行っているほか、本県も含め全都道府県としても、全国主要知事会において同様の決議が昨年7月16日なされ国に対し要請をしている。Cについて国会の論議の動向を注視していきたいが、全国知事会でも論議がされていくと考えている。

 予想していたとはいえ全くつまらない中身の無い内容だったが、これを踏まえ、2月9日に県民課課長始め4人の担当者と話し合いを持った。交渉の前日新聞紙上で政府から自治体に対する10項目の協力内容が出されたが、これも新聞紙上で知ったとのこと。積極的に情報を集めるというふうでもなく、全く緊張感がない。小樽にインディペンデンスが入港した際どのようなことが起こったかを非核市民運動・横須賀が作ったパンフレットを使い懇切丁寧に(?)説明したがこれとて「平時」のこと「有事」となればいったいどんな事態になるか県担当者は想像だにしたこともないようす。国からの情報が少ないと言い訳にしか聞こえないことをくり返すのみだった。昨年8月名古屋港へのモービルベイの入港についても、以後名古屋港への入港実績を作らないよう強く申し入れた。

 引き続き4月に県への質問状を提出した。1回目の質問・回答を踏まえ、すでに国会での法案審議がかなり進んでいるところで質問内容も詳細なものとした。質問の質問項目は@「自治体への協力要請について」だが、県の回答は3月26日の政府が都道府県向けに行った法案説明会の内容を列挙している。

1,地方自治体の協力要請について

@拒否できる「正当な理由」について(*は回答)

 政府説明は、物理的に使用できない場合、または、物理的に使用できても周辺に混乱の恐れがある場合が考えられるが、その判断は個別の法令・権限の判断に委ねられる、

*県としては施設使用の具体例と関連する法令・権限の判断例を国に照会していく。

A「協力義務」については

 政府説明は法案第9条1項に基づいて、公共性を有し、代替性のないものについて協力を期待する。協力を拒否した場合制裁措置はないが個別の法令による是正命令等の措置はありうる。

*県としてこれ以上の情報がないためコメントをひかえたい。

B個別の法令を「改正」して罰則規定を盛り込む懸念があるが県としては。

*国からは個別の法令の改正は考えていないと説明を受けている。

C危険な状況下で職員が従事するような職務命令は出すべきでない。

*県は現時点で職員を危険な状態に置くような職務命令を出すつもりはない。

2、港湾・空港使用について

@名古屋港の使用について

*具体的なものが示されていないので国に説明を求めていきたい。

A平時の米艦船の入港が日常化するようなことはないか。

*周辺事態法案によると事態ごとの閣議決定される基本計画に従い協力が求められるものであり日常化することはない

B非核神戸方式の導入の取り組みをするつもりはあるか。

*国と自治体の役割をどう考えるかという難しい問題を孕んでいるが、国は非核3原則を認識しており、現在のところ非核神戸方式の実施は考えていない

C実際「有事」のさいの名古屋港使用のシュミレーションはできているか。

*国に情報を求めていきたい

D名古屋空港について

*国の管理する空港であるが、今後国に対し情報提供を求めていきたい。また、平時の米軍機の飛来については事前通知は受けていない

E軍事基地の存在は沖縄を見るまでもなく地域住民に物理的・精神的重圧がある。空港・港湾の軍事利用を拒否すべきではないか。

*国に対し情報提供を求めていきたい。

3,「建物・施設・医療関係・物資など」について

@政府の出した自治体協力の具体例をみると「地方公共団体の物品や施設、土地の一時的な貸与」とあるが具体的には。

*この具体例は4月23日の衆議院特別委員会理事会に配布されたもので、国から説明を受けていない。今後説明を求めていきたい。

A「地方公共団体による車両による輸送」とか「給水」「公共医療機関への患者受け入れ」「危険物貯蔵所の設置許可」等多数の項目があるが許認可の手続きはどうなるか、また、事故が起きた場合の保証や責任はどうなるか。

*今後関係省庁から調整が図られ、関係省庁ごとに通知があると説明されている。損失があったっ場合、9条3項で国が財政上の措置を講じる。

B病院への輸送

*県 軍事・外交は国の専管事項

C「人員及び物資の輸送」について県民生活に多大な影響を及ぼすと考えられるがどのような影響があるか調査・研究をしているか。

*国に対して情報提供を求めていく

4、地方自治体職員の動員について

@「水道・清掃・土木・医療・公園・港湾など」多くの自治体職員が「後方支援」に「協力」させられるが、職務命令という形であれば基本的人権の侵害であり、労基法にも違反している。

A多くの職員が「戦争協力」に動員された場合、本来の職務に支障をきたすことがでるがこれについて。

*県の回答は@〜Bとも質問1。のCと同じ回答

5,戦争マニュアルという日米新ガイドライン関連法案全体について

@平和外交を推進し、近隣諸国から愛される国をめざすべき。そのために、宣言・提言を進んで行うよう求める。

*62年(昭和38年)議会において「平和県宣言決議」を行っている。こうした自治体宣言は県民の代表機関である議会で意志決定される。したがって、議会の意向を尊重する。

A情報公開全国ワースト1の愛知県。情報収集や公開が遅れているのでは。

*国の情報提供が十分でなかったので。県が正式に得た情報はできるだけ知らせたいが、この法案については県が国に替わって明する状況にない。

B全国200以上の自治体で反対・慎重審議等の決議をあげているが、県としてはどうか

*新ガイドライン関連法案の国会での議論には大きな関心を持っている。具体的な事例や安全確保については全国の自治体に関わる問題であり、全国知事会を通じて情報を求めるとともに適切な処置をしていきたい。

 以上のような回答が5月12日付で届いた。聞くべきこと、言うべきことはたくさんある。第2回目の話し合いを5月28日に持つ。

 朝鮮戦争当時、小牧基地に駐留していた米軍は52年からの3年間で東海3県で27回の墜落事故を起こしている。ベトナム戦争時は損傷したヘリコプターがアメリカのヘリ専用空母で名古屋港まで運ばれ応急修理した後、岐阜県各務原の川崎重工岐阜工場に運ばれ修理が行われ、事故も起こっている。新ガイドラインには「航空機の修理・整備・修理部品の提供・整備用資材の一時提供」の項目があり、当然日本最大の軍需産業である三菱重工名古屋航空宇宙システム製作所と先の川崎重工の存在はこの東海地方が兵站基地として最も利用される可能性が高い。「戦争協力をしない・させない」ことをめざし引き続き他の自治体にも働きかけていきたい。


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