不戦へのネットワーク


南スーダン派兵の第一次隊先遣隊10数人が11日成田空港から出発しました。
この派遣中止を求める要請書を首相官邸、防衛省に送りました。


自衛隊スーダン派遣への要請書(2012年1月10日)

内閣総理大臣  野田佳彦様 
防衛大臣    一川保夫様

 1月11日南スーダン派遣第一次隊先遣隊が出発します。1月下旬から3月上旬にかけて第一次隊約210名が出発します。さらに現地での人員輸送等に小牧基地からC130H輸送機も派遣されます。今、現地の状況を考える時、この派遣にはあまりの無理があり、大きな危険を自衛隊員の皆さんに押し付ける事態になると考え、政府に派遣の中止を求め、要請いたします。

 今回の「派遣」は準戦争状態にある現地に自衛隊員を「派遣」し続けることになります。日本の安全と防衛にはまったく無関係の作戦行動になると言わざるを得ません。すでに、野田政権の「PKO5原則に従って派遣する」という方針も「紛争地から500qだから安全だ」という認識も崩れていると言わざるを得ません。3・11東日本大震災と原発事故以来、政府の言う「安全だ」という言葉は誰にも信用されていません。

 今回の「派遣」装備には大量の武器も含まれています。拳銃84丁、小銃297丁、機関銃5丁です。第二次隊以降の施設部隊330人、現地支援調整所要員40人、輸送支援の航空自衛隊も含めてほぼ全員が武装できる数量です。

 通常の警備(部隊活動の警備や宿営地警備)ではこれほどの武器は必要としないはずです。道路建設などのインフラ整備にあたるはずの隊員も武装しなければならないほどに、「危険」な地域ということを防衛省―自衛隊は認識しているということです。

 政府の安全認識に対して私たちの現地認識は以下です。

 11月中旬、スーダンバシール政権の打倒を共通目標にして弾圧されたダルフール、南コルドファン、青ナイル州の反政府勢力が統一戦線(スーダン革命戦線)を結成しました。スーダン政府はこの「スーダン革命戦線」の支援を、7月に分離独立を果たした南スーダンが行っているとみなし、南スーダン側の拠点に空爆を含む攻撃を先制的に行なっています。また、南スーダン政府を形成する軍事組織スーダン人民解放軍は、分離独立ではなくバシール軍事独裁政権の打倒を目標にしてきた軍事勢力です。今の段階は、宣戦布告のない両国の戦争状態であるといえます。

 野田政権はそこに自衛隊を送り込む決定をしました。スーダンのバシール政権は、国連を介してイギリスやアメリカが南スーダンを支援していると断定し、南スーダンのPKO部隊はその尖兵であるとみなしています。南スーダンの首都ジュバの近辺には、現政権が天然資源を私有化していると批判する部族の武装勢力も存在しています。このような状態の中で自衛隊が作業をすることは、スーダン政府や南スーダン政府内の反政府勢力からは南スーダン政府支援の行動とみなされます。

 現地の軍事・政治情勢を無視した「南スーダン派遣」は、無謀でアフリカにおける日本への信頼をぶち壊す有害な行動といわざるを得ません。

 11月23日、東京都内でスーダンや南スーダンに関わってきた学者、国際支援組織のメンバーが討論集会を開きました。スーダン選挙監視団の経験があり、南北国境地帯に10月11月と訪問をしてきた一橋大学の岡崎彰教授は「北部・南部とも治安面、軍事面とも悪化の一途をたどっており、南スーダンでは各地の反政府勢力が衝突を繰り返している」と報告しています。また、南スーダンで活動する日本の多くのNGO団体からは、医療、教育、農業分野での大きな実績が報告され「国際的には軍事組織とみなされる自衛隊が行ってやれることはない」という共通の報告がなされました。

 12月13日から南スーダンなどの視察を渡辺防衛副大臣が行いました。今回の視察で副大臣はJICAの事業で完成した橋や、河川港、道路架橋の事業現場なども視察し、現地のJICA,NGOなどの日本人関係者との意見交換会もおこなっています。ODA援助やNGO活動がすでに大きな成果をあげていることを副大臣はしっかりと確認しています。
インフラ整備のためなら、武装した自衛隊を送り込む必要がないことを十分に理解できているはずです。

 政府、とりわけ外務省は、現地の正確な情勢認識から再検討を始めなければなりません。現地の実情を無視した「はじめに派遣ありき」は「ウソ」の現状認識になります。「ウソ」の認識から出発する軍事作戦が成功した例はこれまでただの一度もありません。今後、取材などで現地にはいる マスコミにとってもやがて共通認識になると思います。

 海外派遣、私たちは海外派兵と言っていますが、これが自衛隊の本来任務でも、隊員一人ひとりの危険がないことがPKO五原則の基本です。派遣隊員全員が武装しなければならないというように、派遣の原則が崩れている以上、「南スーダン派遣」を断念する以外にないと私たちは考えます。

 3月に発生した東日本大震災と福島第一原発事故に際して自衛隊は10万人に及ぶ人員を被災地に投入しました。行方不明者の捜索活動、被災者支援、がれき撤去などの復旧活動によって多くの被災者から自衛隊員への感謝の言葉が寄せられました。それは隊員一人ひとりの被災者のためになることをしたいという願いと活動によるものです。色々な困難に直面しながらもひたむきに取り組んだ隊員にとっても今回の活動は大きな達成感を得ることができました。

 自衛隊員が培ってきた使命感や達成感は戦場に赴くことで得られるのではなく、困難に直面している人たちを助ける、救うということによって得られるのです。しかしながら、内外からよせられる自衛隊の「人道支援」活動への期待の声を、野田政権、外務省、防衛省は都合よく利用して、アメリカの世界戦略を担っていくことに利用しているのが現実です。「派遣先」はアメリカの世界戦略にそって、アメリカ政府、アメリカ軍の意向を汲んで決められています。日米同盟を絶対視してすべての政策や自衛隊の活動が決められています。

 今回の「南スーダン派遣」も先に述べたようにすでにNGOだけでなく、日本政府の援助によって民間企業も活動し大きな成果を生み出しています。「軍事組織」として武装した自衛隊を送り込むことは不安定な政治、軍事情勢に関与するという表明以外のなにものでもありません。これはすでに純粋な「人道支援」とはいえない行動です。

以上のことから以下を要請いたします。

野田総理大臣、一川防衛大臣は南スーダンへの自衛隊派遣をすぐに中止してください。

                    2012年1月10日

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