不戦へのネットワーク


年明けにも自衛隊が南スーダンへ派遣され、なし崩しに海外派兵の常態化がなされようとしています。12月4日、空中給油機の覚書問題と共に、小牧基地への申し入れ行動を行ないました。以下。申し入れ書です。


「南スーダン派遣」中止を求める要請書(2011年12月4日)

防衛省 防衛大臣   一川 保夫様
小牧基地司令     谷井 修平様

 12月下旬にも「南スーダン派遣」命令が出されようとしています。今、現地の状況を考える時、この命令にはあまりの無理があり、大きな危険を自衛隊員の皆さんに押し付ける事態になると考え、政府に派遣の中止を求め、基地司令には中止を求める意見具申をしてもらいたく要請いたします。

 命令が発動されれば、野田政権の計画では5年間に渡って小牧基地の皆様には、準戦争状態にある現地に自衛隊員と必要物資を空輸し続けることになります。日本の安全と防衛にはまったく無関係の作戦行動になると言わざるを得ません。すでに、野田政権の「PKO5原則に従って派遣する」という方針も「紛争地から500qだから安全だ」という認識も崩れていると言わざるを得ません。3・11東日本大震災と原発事故以来、政府の言う「安全だ」という言葉は誰にも信用されていません。政府の安全認識に対して私たちの現地認識は以下です。

 11月中旬、スーダンバシール政権の打倒を共通目標にして弾圧されたダルフール、南コルドファン、青ナイル州の反政府勢力が統一戦線(スーダン革命戦線)を結成しました。スーダン政府はこの「スーダン革命戦線」の支援を、7月に分離独立を果たした南スーダンが行っているとみなし、南スーダン側の拠点に空爆を含む攻撃を先制的に行なっています。また、南スーダン政府を形成する軍事組織スーダン人民解放軍は、分離独立ではなくバシール軍事独裁政権の打倒を目標にしてきた軍事勢力です。今の段階は、宣戦布告のない両国の戦争状態であるといえます。

 野田政権はそこに自衛隊を送り込む決定をしました。スーダンのバシール政権は、国連を介してイギリスやアメリカが南スーダンを支援していると断定し、南スーダンのPKO部隊はその尖兵であるとみなしています。南スーダンの首都ジュバの近辺には、現政権が天然資源を私有化していると批判する部族の武装勢力も存在しています。このような状態の中で自衛隊が作業をすることは、スーダン政府や南スーダン政府内の反政府勢力からは南スーダン政府支援の行動とみなされます。

 現地の軍事・政治情勢を無視した「南スーダン派遣」は、無謀でアフリカにおける日本への信頼をぶち壊す有害な行動といわざるを得ません。南スーダン派遣が開始されれば、この小牧基地が空輸作戦の拠点になってしまいます。つまり、小牧基地が無謀かつ有害な行動の後方支援基地と化すのです。

 11月23日、東京都内でスーダンや南スーダンに関わってきた学者、国際支援組織のメンバーが討論集会を開きました。スーダン選挙監視団の経験があり、南北国境地帯に10月11月と訪問をしてきた一橋大学の岡崎彰教授は「北部・南部とも治安面、軍事面とも悪化の一途をたどっており、南スーダンでは各地の反政府勢力が衝突を繰り返している」と報告しています。また、南スーダンで活動する日本の多くのNGO団体からは、医療、教育、農業分野での大きな実績が報告され「国際的には軍事組織とみなされる自衛隊が行ってやれることはない」という共通の報告がなされました。

 以上が私たちの現地認識です。マスコミにとってもやがて共通認識になると思います。政府、とりわけ外務省は、現地の正確な情勢認識から再検討を始めなければなりません。現地の実情を無視した「はじめに派遣ありき」は「ウソ」の現状認識になります。「ウソ」の認識から出発する軍事作戦が成功した例はこれまでただの一度もありません。命令を実行することは、軍事組織の絶対的な本分でしょうが、基地司令にとっては一人ひとりの隊員の命と安全を守ることもまた絶対的な本分だといえます。海外派遣、私たちは海外派兵と言っていますが、これが自衛隊の本来任務でも、隊員一人ひとりの危険がないことがPKO五原則の基本です。原則が崩れている以上、「南スーダン派遣」を断念する以外にないと私たちは考えます。

以上のことから以下を要請いたします。

一川防衛大臣は、南スーダンへの自衛隊派遣を中止してください。
小牧基地司令は、一川防衛大臣に、南スーダン情勢を踏まえ、派遣の中止を意見具申してください。


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