有事法制反対ピースアクション

航空自衛隊のイラクからの撤退を求める申し入れ書(2006年11月25日)

航空自衛隊小牧基地司令 浮須一郎様
航空自衛隊小牧基地隊員・家族の皆様

 11月23日、バグダッドのサドルシティーで、自動車爆弾により、200人以上が亡くなったと報道されました。14日には教育関係者150人が拉致され、殺害されました。10月中だけで3,709人のイラク市民が殺害されました。米兵も10月ひと月で100人が殺されています。イギリスの医学誌は、イラク戦争が始まってから今までで、65万人のイラクの人が犠牲になったと言っています。
 なんという状況でしょうか! これは大変な「数字」です。この凄惨すぎる現実に私たちは言葉を失います。イラク戦争を始めた人、それを支持した人。彼らは今何を思っているのでしょうか? 自分のなしたことについて思いをめぐらせることがあるのでしょうか? 失敗などと言ってすまされる問題ではありません。そして今、私たちは何をどうしたらいいのでしょうか。絶望的な状況です。本当に無力さを思い知らされます。
航空自衛隊はこれまでに、この11月23日までに、のべ417回の輸送業務をおこなったとしています。そのなかみはあきらかにされていませんが、米軍・多国籍軍の人員・物資を運んでいるとされています。陸上自衛隊の撤退以降、アメリカの「希望」で、C130は、この7月からバクダッドに飛行していますが、これは「掃討」をくりかえしている米軍の後方支援をおこなっていると考えるのが自然です。現在のイラクの凄惨な状況にたいして、自衛隊は胸をはって、関係ないと言えるのでしょうか? 「安全確実な輸送任務の遂行」は、隊員のみなさんにとっての「誇り」だと思いますが、イラクの人にとってそれは何を意味するでしょうか! 
今年3月、イラク中部のマハムディアで、米兵により14歳の少女がレイプされ、少女ら家族4人が殺害されました。その事件のバーカー被告は「イラク人が憎かった」と証言しています。この米兵も当初は「イラク人を助けにいくのだ」と考えていたのかも知れません。何かが彼を「変えて」しまったのだと思います。私たちは自衛隊員のみなさんの「人道復興」への熱意を疑うものではありません。しかしながら、イラクの病院には薬がまったくないと言われます。電気などの生活基盤施設もいっこうに復旧していません。自衛隊の「人道復興」の成果は、残念ながら、イラクの人の目には見えません。米軍に協力する姿しか見えないのです。イラクの人たちが航空自衛隊のC130に攻撃を加えることも十分考えられます。イラク戦争という現実の泥沼のなかに踏み入り、自衛隊が、そして隊員の人たちが、「変わっていく」のが心配です。
 アメリカの中間選挙で共和党は敗北し、ラムズフェルド国防長官が責任をとるかたちで、解任されました。ようやくアメリカのイラク政策の「変更」の兆しがみうけられるようになりました。「撤退」も検討され始められました。しかしなぜか、日本政府、安倍首相から「変更」や「撤退」の言葉はまったく聞かれません。それどころか、久間防衛庁長官は22日に、「イラク特措法」の延長に言及さえしています。
 浮須基地司令様。
私たちの要望をお聞きください。隊員のため、日本のため、そして残念なことではありますが、イラクの人のためにも、航空自衛隊は撤退するしかありません。もはや自衛隊はイラク戦争の泥沼に足をとらわれ始めています。ぜひ航空自衛隊の撤退を上申してください。今がその時だと思います。
アメリカの陸軍中尉アレン・ワタダさんは、この6月に、イラク戦争が違法であることを明言し、イラク派遣を拒否しました。アレンさんの行動は軍人としても、一人の市民としても、正当な行動だと思います。アレンさんは拘束されましたが、自衛隊の基地司令にとって、「上申」は、自衛隊のなかで認められた正当な行為と思います。ぜひ航空自衛隊の撤退を進言してください。
私たちは、「イラク派兵差し止め訴訟の会」、「名古屋YWCA」の2団体とともに、安倍首相にたいして、「イラクとその周辺に派遣している自衛隊員をただちに撤兵させることを求める要請書」を提出しました。私たちは、イラク戦争を支持した小泉首相と、それを継承した安倍首相の責任を追及していくつもりです。イラクの悲惨な現状と航空自衛隊のみなさんがおかれた状況を思い、微力ながら努力する決意です。
浮須基地司令様。私たちの気持ちを汲んでいただき、イラク撤退の上申をしてください。イラク特措法に基づく派遣は、12月14日で期限が切れます。再々延長をしないよう上申してください。

2006年11月25日
有事法制反対ピース・アクション


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