有事法制反対ピースアクション

航空自衛隊のイラクからの撤退を求める申し入れ書(2006年9月23日)

航空自衛隊小牧基地  浮須基地司令様
隊員の皆様

 小牧基地から派兵されている航空自衛隊の皆さんは、ついに、バグダッドや北部アルビルまで多国籍軍(米軍)や国連の物資の輸送をはじめました。米中央軍司令官ギヤリー・ノースが、「今や韓国や日本の航空部隊の空輸が地上での作戦を可能にしている」と発言しているように、今や航空自衛隊の行っている任務なしでは、アメリカを中心とする多国籍軍の作戦も成立しないほど深く関わってしまいました。ここの隊員の意志はどうであれイラクの人たちを殺す側にはっきりと立ってしまったということです。イラクでは、国連イラク支援団(UNAMI)が9月20日に発表したイラクの人権報告書によれば、7〜8月の2ヶ月間の民間人死者が6599人で、4月から8月の間の民間人死者は12417人にのぼります。この夥しい死者の数の何倍もの人が負傷し、劣化ウラン弾の影響で子どもを含めて多くの人が亡くなっています。殺された人たちにも家族や友人がいます。これがアメリカブッシュ大統領のいう「テロとの戦い」「中東の民主化」の実態です。

 残念ながら、私たちの幾たびの訴えにも関わらず、航空自衛隊の皆さんはこの醜い現実の一方の加担者として深く深く組み込まれてしまったのです。浮須基地司令はじめ隊員の皆さんが今一度自分たちがどの立場に立って何をしているかということを真剣に考えてほしいと思います。

 9月26日に「美しい国」をめざして誕生する安倍政権は、小泉政権の継承をうたい登場します。その小泉政権下の5年間はテロ対策特別措置法でのインド洋への自衛隊の派兵、武力攻撃事態法などの有事法の制定、そしてイラク特措法での重武装をした自衛隊の戦地イラクへの派兵と日本を「戦争する国」に変質させてしまいました。安倍政権派その動き更に進めようとしています。すなわち、海外派兵を本来任務とする自衛隊法の「改正」、防衛庁の省昇格法案、改憲のための国民投票法、自衛隊をいつでもどこにでも日本の意志で派兵できる「派兵恒久法」の成立に意欲をみせているということです。これは実質的な「改憲」に等しいものです。更には、昨年10月、中間報告が出され、今年5月ロードマップで示された「日米軍事再編」を具体的に進め、イギリス並みの米軍と共に戦闘ができる体制を作ろうとしています。

 浮須基地司令、隊員のみなさま、このような事態が本当に進行すれば一番先に犠牲になるのは自衛隊員のみなさんです。いったい何のために、誰のためにこのような法律や体制を作るというのでしょうか。小泉首相が陸自派兵のときに強調した「人道支援」でしょうか。ブッシュが言う「テロとの闘い」のためでしょうか。世界最強の軍事力を持つアメリカが、アフガニスタン、イラクで行った、軍事力での「テロとの闘い」「民主化」がことごとく破綻しているのは現実が示すとおりです。平和憲法の下でまがりなりにもひとりも殺さなかった、殺されなかったという現実こそ直視すべきです。憲法が自衛隊員の命を守ってきたのです。

 次期総理は「改憲」を明言して登場します。その流れを止めるためにも、今イラクから空自を撤退させることがますます重要になります。

 来年2月に空中給油輸送機の1号機が配備される小牧基地は、空の派兵拠点として今後ますます重要な役割を担わされて行くことでしょう。小牧基地をこれ以上派兵拠点にしてはいけません。

 自衛隊のイラク派兵、とりわけ空自の活動は、憲法にもイラク特措法にも反しています。自衛隊員といえども違憲・違法な法律に従う義務はありません。浮須基地司令は、隊員の命を守り、憲法や法律を遵守する立場で空自のイラクからの撤退を意見具申してくださるよう、申し入れします。

2006年9月23日
有事法制反対ピースアクション


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