有事法制反対ピースアクション

2004年1月26日航空自衛隊小牧基地司令への申し入れ

 航空自衛隊小牧基地司令    溝口 博伸 様

前 略
 私たちは、一人一人の自衛隊員の皆さまに対し、平和運動をやってきた者として、派遣命令を撤回させることができなかったことの力のなさを恥じています。
 正門前での四日間の座り込み中、門を出入りする隊員の皆さまに対し、かける言葉もなく、ただただ頭を下げご挨拶するのみでしたが、多くの隊員の方々が会釈を返してくださいました。正門前で、派遣反対を口に出し、ただ座っているだけの気楽な連中だと思われてもしかたがないと思っていましたので、会釈をしてくださるたびに驚き、なおさらこちらの力のなさを感じさせられました。私たちは命令を出した最高司令官の小泉首相に対してこそ、中止のための圧力を集中しなければならなかったのですが、地元の愛知でできることに限定せざるを得ませんでした。皆さまに直接声をかけられる機会を持つために、座り込みを行うことになったのは、私たちにとってはぎりぎりの選択でした。

 発足から50年、自衛隊は戦闘行為によって一人も殺していないし、一人も殺されていません。このことは誇るべきことであって、なんらひけ目を感じることではありません。ですから、憲法九条のもと、隊員の皆さまも、ご家族の皆さまも、今回のような大きな不安を持ったり、悩んだりする必要はなかったと、私たちは理解しています。

 ところが、小泉首相が、アメリカが勝手に始めたイラクへの先制攻撃という名の侵略をいち早く支持し、状況もわきまえずに、ブッシュ大統領に軽々しく「今度は血を流します」と約束したばかりに、皆さまに今まで経験したことのない大きな不安と苦しみとを、強いる結果となりました。さらに、小泉首相は、全自衛隊員に軽々しく命令を出し続けています。今日も、陸自本隊への派遣命令を出そうとしています。陸上部隊が外国領土へ足を踏み入れるのは、敗戦後初めてのことです。

 日の丸を掲げて、日本軍が戦闘地域へ出て行くことを、イラク民衆ばかりか全アジア民衆がどう受け取るか。それは、歴史的な大問題として、「脅威」であると思われていることは、各国報道より確認できることです。

 イラクは、全土アメリカ軍によって占領されており、それに抵抗する人々との戦闘が耐えまなく続いている場所であると、改めて認識してください。皆さまの思いがどうであれ、米軍の指示・支配の中で動かざるを得ないわけで、中立的な「人道支援」などという甘い認識が通用するかどうか、それは予断を許さないところです。こちらが、いくら「中立だ」「人道支援」なのだと言ったところで、反米、反占領を主張しているイラクの人々から、こちらの思惑通りに受け止められるかどうか、わかりません。アメリカの手先としてしか認知されない恐れは十分あります。

 したがって、陸自も空自もともに、「日の丸」をつけている以上、標的にされます。なぜなら、日本は、最初からイラク攻撃を支持し、日米同盟を「国益」として宣言しているからです。もし、襲われる事態となれば、皆さまは当然防衛し、反撃するでしょう。何の恨みもない人々と「殺し、殺される」関係にならざるを得ません。こんな馬鹿げたことがありましょうか。こんな理不尽なことがありましょうか。もう一度、よく考えてください。とりわけ、各状況で、命令を出す立場にある方々は、大変辛く、判断に困る立場に立たされますが、あちらの命、こちらの命こそが一番の価値であること、その前では、卑怯も勇敢もないことをはっきり自覚され、隊員の命とイラクの人々の命を守っていただきたいと思います。

 今日、C130輸送機が出発するにあたって、私たちは、ただただ一刻も早く戻ってきて欲しい、一人も傷つくことなく、イラクの人々を傷つけることなく、もちろん、殺し、殺されることなく、帰ってきてほしいと、強く訴えます。人の命を政治利用する責任者を許しておくわけにはいきません。私たちの言葉は、皆さまには軽く聞こえるかもしれませんが、私たちは言わずにはおれない、言わなくてはならない、その一念で敢えて呼びかけています。

 繰り返しますが、私たちは、非力な市民運動に過ぎません。けれども、何度も言います。「人間の鎖」でも、「座り込み」でも「街頭情宣」でも、ずっと繰り返してきました。「行かないで下さい」。イラクにたどり着いたら、「すぐに引き返して下さい」。

 市民の皆さんに今よりももっと強く働きかけて、一日も早く小泉首相に対し、「あなたは間違っていた。イラクからの撤退命令を出してください」という大きな声をあげ、大きな圧力にしていくことを今後もめざしながら、頑張っていきます。
以下、心より申し入れを致します。



一、小泉首相の命令よりも、隊員一人一人の命を大事にしてください。
二、隊員の中からも、イラクの人々からも、一人の犠牲者も出さない前に、派遣を中止し、撤退するように、政府に対し意見具申をしてください。



以  上
                   有事法制反対ピースアクション
                     <共同代表> 水田  洋(名大名誉教授)
                               影山  健(愛教大名誉教授)
                               寺尾 光身(名工大名誉教授)
                     <連絡先> 名古屋市昭和区白金1−13−10   TEL 052−881−3573


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