第1部 ODAの基礎知識

4.NGOからのODA批判


Q.昔、新聞とかテレビとかでODAに対する批判をよく目にしたことを覚えています。NGOからのODA批判にはどのようなものがあるのですか?

A.次のようなものがあります。

●理念に関して

●原則に関して

 ODA大綱の原則の適用基準が曖昧である。

【ミャンマーの例】〜ODAの4番目の原則

88年 民主化要求による政情混乱、国軍によるクーデター
 →援助を原則停止  
95年7月    アウンサン・スーチーさん軟禁解除
 →援助復活
95年ミャンマー政府とNLDの対立激化
 →進展なし

このように援助の停止・再開を判断をする基準は何なのか見えてこない。

●他国との比較 (グラフは第3章参照)

●日本政府内で

 援助に関わる機関が多すぎる。(予算が19省庁にまたがり、実施機関もJICAとOECFに分かれている。また円借款のE/N締結前に四省庁で協議をする体制になっている)実施機関の職員数が少なく、1人当たりの担当額も大きい(グラフは第3章参照)。審査段階での調査や、事後評価などが十分にできず、また、予算をこなすために適当になってしまう恐れがある。

●日本国民のチェック機能

 どのような理由からその案件にODAが供与されるのか、ということが知ることができない。借款契約(L/A)、入札評価書など、公開されていない情報が多い。ODAの中身についての議論の場が国会内にない。

●住民の生活権の侵害

 ODAが供与され開発が進むにともない、環境破壊や人権弾圧を引き起こすことが往々にしてある。また、ダム・道路の大型経済インフラへの援助は住民立ち退きを伴うことが多く、しかもその立ち退いた住民に移転保証金を十分に払わない、移転先の整備も行なわないなど、十分な保障が行なわれないことがある。(例はバタンガス港の資料を参照)このような住民立ち退きは地域社会の破壊をもたらしてしまうことも指摘されている。

 問題は住民が開発に対する意見を言う場がないことが多いことで、このことが住民の生活権の侵害をもたらしている、といえる。

●事後評価

 OECFやJICAが自分たちで行った案件を自分たちで調べるのが今の事後評価であり、また人員不足も手伝って、事後評価が適切に行われていない。現地住民の利益・影響についても恣意的にねじ曲げて評価する恐れがある。

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3.ODAの現状 5.ODA改革に向けて

 

 

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